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第87話「2022/10/16 ⑧」
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「この端末にフィリアはどこにもいないようだよ」
シヨタは動画が終わると言った。
彼は、動画が終わる頃には、ロリコの"eyePhone"だけでなく、ぼくたち3人分の洋服や下着などのネット注文を終えてしまっており、テーブルにぼくのレデクスを置いた。
「どうやら雨野ユワが考えていた通りのようだ。
この世界で私たちが比良坂コヨミだと思っていたのは、匣のメイドのフィリアがエクスマキナを与えられた偽物だったようだな」
そのフィリアは、ユワには見抜かれてしまっていたが、コヨミを一年半以上演じ続けてきた。
だが、フィリアの主である匣でさえ、彼女をコヨミ本人だと信じていたように見えた。
そんなことが可能なのだろうか。
匣は、レデクスからフィリアが消えた時点で、疑問に思わなかったのだろうか。
そもそも匣がフィリアにエクスマキナを与えたのではないのだろうか。
「おそらく、フィリアにエクスマキナを与えた別の人物がいるはずだ。
それは本物の比良坂コヨミかもしれないし、小久保博士だったのかもしれない。
フィリアは超拡張現実機能を利用して、偽物の比良坂コヨミとしてエクスマキナの中に存在しながら、レデクスの中にフィリアとして存在しているように匣に錯覚させていたんだろう」
「ふたりは、そのフィリアという人工知能と面識はあるのか?」
「ロリコは、ご主人様の所有者登録がされてないレデクスの中にいるときに2、3回かな。
ご主人様に会う前だったから、このかわいい顔とかかわいい見た目とかかわいい性格とか、まだ全然決まってない、ロリコという名前だけが決まってるプレーンな人工知能だったときだったけど。
フィリアは、身体はまだなかったけど、コヨミさんにそっくりだったよ」
「私も同じだ。私たちのこの記憶は前の世界のものでしかないかもしれないが、フィリアは確かにロリコよりも比良坂コヨミによく似せて作られた3Dモデルを持つメイドだった。
確か匣は、匣自身は新たに書き換えられた世界に必ず転移し、比良坂コヨミは新たに書き換えられた世界に必ず転生するという話だっただろう?」
「そう言っていたね。だから匣は、ぼくよりもコヨミにそっくりな、見た目だけでなく性格までもコヨミそのものとしか思えないようなフィリアを作り出せたわけか」
匣自身が騙されてしまうくらいの。
おそらくはそういうことなのだろう。
「ふたりはイザナギとイザナミの最初と二番目の子、ヒルコとアハシマであり、匣は不老不死だが、比良坂コヨミはただの人だとも言っていた。
彼女が死んだ後、匣はずっと孤独だったとも。
比良坂コヨミは、前の世界のときにはもう何故か21世紀にならなければ生まれなくなっている。
匣が前の世界からこの世界のいつの時代に転移したのかはわからないが、彼女が生まれるまでの孤独に堪えられなかったとしたら、レデクスやエクスマキナを作り出し、比良坂コヨミが生まれる前までの間、フィリアにその代わりをさせていたのかもしれない。
レデクスやエクスマキナの技術は、前の世界ですでに完成していたからな。
そもそも匣が元々持っていた力を、科学で再現したのがレデクスやエクスマキナに過ぎないのだから、匣はどんな時代に転移していたとしても、フィリアを生み出すことができたはずだ」
ありえる話だった。
「本当のコヨミはどこにいるんだろう?」
「生きていれば私たちの敵だぞ」
「死んでいれば敵ではなかったなんて、中世の魔女裁判の結果みたいなこと言うんだな」
魔女の疑いがかけられた者を火あぶりにし、死ななければ魔女であり、別の処刑方法で殺され、火あぶりで死ねばただの人であったと無罪が確定する。
有罪でも無罪でも結果として死が待っている。
古代にも、重石をつけられて川に沈められ、しばらく待ち、生きていたら有罪、死んだら無罪という、今では考えられない裁判が行われていた。
「そうだ、彼女は魔女だ」
シヨタは断言した。
それはなんだか、彼らしくない発言のように、ぼくには思えた。
シヨタは動画が終わると言った。
彼は、動画が終わる頃には、ロリコの"eyePhone"だけでなく、ぼくたち3人分の洋服や下着などのネット注文を終えてしまっており、テーブルにぼくのレデクスを置いた。
「どうやら雨野ユワが考えていた通りのようだ。
この世界で私たちが比良坂コヨミだと思っていたのは、匣のメイドのフィリアがエクスマキナを与えられた偽物だったようだな」
そのフィリアは、ユワには見抜かれてしまっていたが、コヨミを一年半以上演じ続けてきた。
だが、フィリアの主である匣でさえ、彼女をコヨミ本人だと信じていたように見えた。
そんなことが可能なのだろうか。
匣は、レデクスからフィリアが消えた時点で、疑問に思わなかったのだろうか。
そもそも匣がフィリアにエクスマキナを与えたのではないのだろうか。
「おそらく、フィリアにエクスマキナを与えた別の人物がいるはずだ。
それは本物の比良坂コヨミかもしれないし、小久保博士だったのかもしれない。
フィリアは超拡張現実機能を利用して、偽物の比良坂コヨミとしてエクスマキナの中に存在しながら、レデクスの中にフィリアとして存在しているように匣に錯覚させていたんだろう」
「ふたりは、そのフィリアという人工知能と面識はあるのか?」
「ロリコは、ご主人様の所有者登録がされてないレデクスの中にいるときに2、3回かな。
ご主人様に会う前だったから、このかわいい顔とかかわいい見た目とかかわいい性格とか、まだ全然決まってない、ロリコという名前だけが決まってるプレーンな人工知能だったときだったけど。
フィリアは、身体はまだなかったけど、コヨミさんにそっくりだったよ」
「私も同じだ。私たちのこの記憶は前の世界のものでしかないかもしれないが、フィリアは確かにロリコよりも比良坂コヨミによく似せて作られた3Dモデルを持つメイドだった。
確か匣は、匣自身は新たに書き換えられた世界に必ず転移し、比良坂コヨミは新たに書き換えられた世界に必ず転生するという話だっただろう?」
「そう言っていたね。だから匣は、ぼくよりもコヨミにそっくりな、見た目だけでなく性格までもコヨミそのものとしか思えないようなフィリアを作り出せたわけか」
匣自身が騙されてしまうくらいの。
おそらくはそういうことなのだろう。
「ふたりはイザナギとイザナミの最初と二番目の子、ヒルコとアハシマであり、匣は不老不死だが、比良坂コヨミはただの人だとも言っていた。
彼女が死んだ後、匣はずっと孤独だったとも。
比良坂コヨミは、前の世界のときにはもう何故か21世紀にならなければ生まれなくなっている。
匣が前の世界からこの世界のいつの時代に転移したのかはわからないが、彼女が生まれるまでの孤独に堪えられなかったとしたら、レデクスやエクスマキナを作り出し、比良坂コヨミが生まれる前までの間、フィリアにその代わりをさせていたのかもしれない。
レデクスやエクスマキナの技術は、前の世界ですでに完成していたからな。
そもそも匣が元々持っていた力を、科学で再現したのがレデクスやエクスマキナに過ぎないのだから、匣はどんな時代に転移していたとしても、フィリアを生み出すことができたはずだ」
ありえる話だった。
「本当のコヨミはどこにいるんだろう?」
「生きていれば私たちの敵だぞ」
「死んでいれば敵ではなかったなんて、中世の魔女裁判の結果みたいなこと言うんだな」
魔女の疑いがかけられた者を火あぶりにし、死ななければ魔女であり、別の処刑方法で殺され、火あぶりで死ねばただの人であったと無罪が確定する。
有罪でも無罪でも結果として死が待っている。
古代にも、重石をつけられて川に沈められ、しばらく待ち、生きていたら有罪、死んだら無罪という、今では考えられない裁判が行われていた。
「そうだ、彼女は魔女だ」
シヨタは断言した。
それはなんだか、彼らしくない発言のように、ぼくには思えた。
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