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第86話「2022/10/16 ⑦」
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『君は、それをぼくに確かめたくて、今ここにいるというわけだ』
『一番の目的は、もちろんナユタに身体をあげることだよ。
ボクが今ヨモッちとこんな話をしているのは、あくまでナユタに身体をあげるついで。
本物のコヨミちゃんがどこにいるのか、いい加減知りたくなっただけだよ』
『そうか。でも残念だけど、ぼくはレデクスもエクスも持ってはいないんだよ。
ぼくが持っているのは、ただの"eyePhone13"だ。
レデクスやエクスはまだ、人には過ぎた代物だからね。
超拡張現実機能が人の心身にもたらす影響は計り知れないから』
『開発責任者の言葉とは思えないんだけど』
『開発責任者だからこそ、その危険性を熟知しているんだよ。
この人工の島に、エクスやレデクスのばらまくことで、超拡張現実機能が人の心身にもたらす影響を、ぼくは観察しているんだ』
『ボクたちは、実験用のマウスってわけね』
『そうだよ。だから、ぼくはコヨミに似せたエクスマキナを作ることはできても、その人工頭脳に宿すべき、人工知能を持っていないんだ』
『だってさ、ナユタ。ちゃんと録画してくれてた?』
『録画? 君は今のぼくとの会話を録画していたのか?』
『そっか。ありがと。じゃあ、もし、ボクの身に何かあったら、後はよろしくね』
ユワとナユタのやりとりがここにあったようだが、ナユタの声はユワにしか届いておらず、動画からは確認できなかった。
ユワはどうやら、最悪の場合、自分が死ぬかもしれないと、あらかじめ覚悟してあの場にいたようだった。
『応えたまえ。君はなぜ録画なんかしている?』
『あ、ちょっと黙ってて。
うん、そうそう、この動画をネットにアップするか、メールで送るかして、イズモくんやロリコちゃん、あとはシヨタくんだったかな、あの子たちに届くようにしてほしいんだ。
どうやら、ここにいる比良坂ヨモツは、自分が影武者だってことも知らない、かわいそうな操り人形みたいだから』
『ぼくが影武者? 操り人形? ふざけるな、ぼくは比良坂ヨモツだぞ。
いずれはヒラサカグループのトップに立つ人間だぞ』
『あんたに、そんな日は来ないって。本当のヨモッちは別にいるみたいだし』
『そんなはずはない。ぼくが比良坂ヨモツなんだ……』
『だったら、教えてよ。
ボクのレデクスが4台目で、3台目を持ってるのはイズモくんでしょ。それから2台目をコヨミちゃんが持ってて、でもその2台目は今はコヨミちゃんの偽物が持ってる。
コヨミちゃんの執事のシヨタくんが、エクスマキナを与えられて比良坂家を追い出されたのは、彼がそばにいたら自分が偽物だってことがばれちゃうから、そうしたんだよね。
あんたが1台目のレデクスを持ってないって言うなら、1台目はどこにあるの? 誰が使ってるの?
前の世界を書き換えて今のこの世界を作ったのは誰? 世界を書き換える方法は?
あんたが本物の比良坂ヨモツなら、全部答えられるはずだよね?』
『ちょっと待ってくれないか』
『何?』
『さっきから何度も出てくる、イズモやロリコ、シヨタというのは誰のことだ?』
ユワは大きくため息をついていた。
『本当に何にも知らないんだね。
そうだよね。本物のコヨミちゃんを知らないんだから、シヨタくんのこともイズモくんやロリコちゃんのことも知らないよね』
『世界を書き換える力とは何のことだ? 前の世界だとか、今の世界だとか、君は一体何の話をしてるんだ?』
『あーあ、コヨミちゃんが生きてるか死んでるかくらいはわかると思ってたんだけどなぁ。
ま、いっか。うちのヤマヒトとか、ムラクモの人たちに頑張ってもらお。
あ、そうそう、最後にいいこと教えてあげる。
ボクはね、比良坂コヨミのことをコヨミちゃんなんて一度も呼んだことないんだよね。
だから、あんたが本物の比良坂ヨモツじゃないことは最初からわかってたよ。
ボクはコヨミのことはいつもコヨミンって呼ん』
その瞬間、大きな鈍い音がした。
『でたか……ら』
ロリコがぼくの母の頭部を壁に叩きつけたときによく似た音だった。
ユワを殺したのは母ではなかったのだ。
爆発事故が起きる前に、ユワはすでに匣の影武者に殺されていた。
動画は、耳をつんざくような爆発音によって終わっていた。
ナユタのエクスマキナの疑似心臓が爆発した音だろう。
「この端末にフィリアはどこにもいないようだよ」
シヨタは動画が終わると言った。
「どうやら雨野ユワが考えていた通り、この世界で私たちが比良坂コヨミだと思っていたのは、匣のメイドのフィリアだったようだ」
『一番の目的は、もちろんナユタに身体をあげることだよ。
ボクが今ヨモッちとこんな話をしているのは、あくまでナユタに身体をあげるついで。
本物のコヨミちゃんがどこにいるのか、いい加減知りたくなっただけだよ』
『そうか。でも残念だけど、ぼくはレデクスもエクスも持ってはいないんだよ。
ぼくが持っているのは、ただの"eyePhone13"だ。
レデクスやエクスはまだ、人には過ぎた代物だからね。
超拡張現実機能が人の心身にもたらす影響は計り知れないから』
『開発責任者の言葉とは思えないんだけど』
『開発責任者だからこそ、その危険性を熟知しているんだよ。
この人工の島に、エクスやレデクスのばらまくことで、超拡張現実機能が人の心身にもたらす影響を、ぼくは観察しているんだ』
『ボクたちは、実験用のマウスってわけね』
『そうだよ。だから、ぼくはコヨミに似せたエクスマキナを作ることはできても、その人工頭脳に宿すべき、人工知能を持っていないんだ』
『だってさ、ナユタ。ちゃんと録画してくれてた?』
『録画? 君は今のぼくとの会話を録画していたのか?』
『そっか。ありがと。じゃあ、もし、ボクの身に何かあったら、後はよろしくね』
ユワとナユタのやりとりがここにあったようだが、ナユタの声はユワにしか届いておらず、動画からは確認できなかった。
ユワはどうやら、最悪の場合、自分が死ぬかもしれないと、あらかじめ覚悟してあの場にいたようだった。
『応えたまえ。君はなぜ録画なんかしている?』
『あ、ちょっと黙ってて。
うん、そうそう、この動画をネットにアップするか、メールで送るかして、イズモくんやロリコちゃん、あとはシヨタくんだったかな、あの子たちに届くようにしてほしいんだ。
どうやら、ここにいる比良坂ヨモツは、自分が影武者だってことも知らない、かわいそうな操り人形みたいだから』
『ぼくが影武者? 操り人形? ふざけるな、ぼくは比良坂ヨモツだぞ。
いずれはヒラサカグループのトップに立つ人間だぞ』
『あんたに、そんな日は来ないって。本当のヨモッちは別にいるみたいだし』
『そんなはずはない。ぼくが比良坂ヨモツなんだ……』
『だったら、教えてよ。
ボクのレデクスが4台目で、3台目を持ってるのはイズモくんでしょ。それから2台目をコヨミちゃんが持ってて、でもその2台目は今はコヨミちゃんの偽物が持ってる。
コヨミちゃんの執事のシヨタくんが、エクスマキナを与えられて比良坂家を追い出されたのは、彼がそばにいたら自分が偽物だってことがばれちゃうから、そうしたんだよね。
あんたが1台目のレデクスを持ってないって言うなら、1台目はどこにあるの? 誰が使ってるの?
前の世界を書き換えて今のこの世界を作ったのは誰? 世界を書き換える方法は?
あんたが本物の比良坂ヨモツなら、全部答えられるはずだよね?』
『ちょっと待ってくれないか』
『何?』
『さっきから何度も出てくる、イズモやロリコ、シヨタというのは誰のことだ?』
ユワは大きくため息をついていた。
『本当に何にも知らないんだね。
そうだよね。本物のコヨミちゃんを知らないんだから、シヨタくんのこともイズモくんやロリコちゃんのことも知らないよね』
『世界を書き換える力とは何のことだ? 前の世界だとか、今の世界だとか、君は一体何の話をしてるんだ?』
『あーあ、コヨミちゃんが生きてるか死んでるかくらいはわかると思ってたんだけどなぁ。
ま、いっか。うちのヤマヒトとか、ムラクモの人たちに頑張ってもらお。
あ、そうそう、最後にいいこと教えてあげる。
ボクはね、比良坂コヨミのことをコヨミちゃんなんて一度も呼んだことないんだよね。
だから、あんたが本物の比良坂ヨモツじゃないことは最初からわかってたよ。
ボクはコヨミのことはいつもコヨミンって呼ん』
その瞬間、大きな鈍い音がした。
『でたか……ら』
ロリコがぼくの母の頭部を壁に叩きつけたときによく似た音だった。
ユワを殺したのは母ではなかったのだ。
爆発事故が起きる前に、ユワはすでに匣の影武者に殺されていた。
動画は、耳をつんざくような爆発音によって終わっていた。
ナユタのエクスマキナの疑似心臓が爆発した音だろう。
「この端末にフィリアはどこにもいないようだよ」
シヨタは動画が終わると言った。
「どうやら雨野ユワが考えていた通り、この世界で私たちが比良坂コヨミだと思っていたのは、匣のメイドのフィリアだったようだ」
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