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第80話「2022/10/16 ①」
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ロリコが比良坂47のライブに行った翌日の日曜日、
「スマホケース買ったから、ロリコもスマホがほしい」
そんな「卵が先か鶏が先か」という形而上学的問題のようなことをロリコに頼まれて、スマホを買いにでかけることになった。
スマホがほしいと言い出したときには、ロリコは出かける準備がばっちりできていた。
せっかくよく似合っていたセーラーパーカーやスカートなどを、雨野家のリムジンで生着替えした際に置きっぱなしにしてしまったせいで、ロリコはユワからもらった例の赤ずきんちゃんのような服しか持っていなかったのだが、その赤いAラインパーカーの下、白いキャミワンピースの上に、上村コノカちゃんのご尊顔の全面プリントTシャツを着て、ご尊顔のサコッシュを肩からかけ、首には比良坂47のロゴが入ったネックストラップをかけ、スマホケースをぶらさげていた。
これは……うまく着こなして……いるのか?
ぼくにはロリコが何を着ていてもかわいく見えてしまうため、よくわからなくなっていたが、彼女を見たシヨタが「ブフーッ」と吹き出しているのを見て、あ、駄目なんだ、と思った。
たぶん、ライブに行くときならアリだが、普段のおしゃれ着やデート着にはならないのだろう。
確かに、よくよく考えてみたら、アニメキャラの全面プリントTシャツを着ているのと大して変わらないもんな。ガールズプリントTシャツだと言い切ることもできそうだけど。
よし、スマホを買いに行くついでに、洋服を何着か買ってあげるとしよう。
ぼくも毎日同じデート着だったから、何着か欲しかったし。
ぼくにはレデクスがあり、一時的にロリコやシヨタに所有者権限を移すことができるブルークスもあったが、身体を持ったことでぼくやコヨミのレデクスから離れてしまったロリコやシヨタにもスマホがないのは確かに不便だった。
レデクスの超拡張現実機能が自由に使えたときは、ふたりは機械の身体からぼくの透過型ディスプレイに自由にアクセスできるようだったが、ロリコは人工知能のくせに機械音痴であり、シヨタしかその機能を使いこなせていなかった。
今はもうその超拡張現実機能もブルークスにしかなかった。
「シヨタも一緒に行くか? ふたりとも戸籍や住民票がないから、ひとりじゃスマホを買いに行けないだろ?」
「私は比良坂コヨミのレデクスを使うから大丈夫だ。SIMカードもまだ使えるようだしな」
と、シヨタは言った。
彼は元々コヨミのレデクスに住んでいた人工知能であったから、愛着があるのだろう。
「この県は、県民全員にエクスが配布されているから、市内にはあまり携帯ショップはないぞ」
とも言った。
「まじでか。おい、ショタ半ズボン、それ、まじで言ってんのか」
それは確かに盲点だった。
「マジだ、エロみっとも。
この街でエクス以外のスマホをどうしても買いたいなら、ネットで買った方が便利だ。
明日にはスマホ本体とSIMカードが届く」
「でも、今は届いても学生寮には戻れないぞ」
警察がまだ張り込みをしているかもしれない。
ぼくやロリコが帰宅するのを待ち構えているかもしれなかった。
「現住所を我が主の学生寮の部屋にしておき、届け先をホテルのこの部屋にすればいい」
なるほど、そういうこともできるのか。
「ネットはいいぞ。店だと、今日のような日曜は、契約や機種変以外の客が山ほどいて、何時間も待たされるからな。
スマホもろくに使えないような頭の悪い連中が、着信拒否やら迷惑メールや迷惑ショートメールの受信拒否を自分ができないことをスマホのせいだと思い込んで列を作ったりしてるからな。
いちいち店まで行くより、説明書を読む方が早いだろうに、店員に怒鳴ってストレス発散するのが目的なんじゃないかと思うくらいだ。
それに、店員からいらないサービスを押し付けられて登録させられたり、いらないタブレットを薦められたり、ネット回線の変更を薦められることもない」
この子、携帯ショップに何か恨みでもあるのかな。それとも働いてたのかな。
「スマホケース買ったから、ロリコもスマホがほしい」
そんな「卵が先か鶏が先か」という形而上学的問題のようなことをロリコに頼まれて、スマホを買いにでかけることになった。
スマホがほしいと言い出したときには、ロリコは出かける準備がばっちりできていた。
せっかくよく似合っていたセーラーパーカーやスカートなどを、雨野家のリムジンで生着替えした際に置きっぱなしにしてしまったせいで、ロリコはユワからもらった例の赤ずきんちゃんのような服しか持っていなかったのだが、その赤いAラインパーカーの下、白いキャミワンピースの上に、上村コノカちゃんのご尊顔の全面プリントTシャツを着て、ご尊顔のサコッシュを肩からかけ、首には比良坂47のロゴが入ったネックストラップをかけ、スマホケースをぶらさげていた。
これは……うまく着こなして……いるのか?
ぼくにはロリコが何を着ていてもかわいく見えてしまうため、よくわからなくなっていたが、彼女を見たシヨタが「ブフーッ」と吹き出しているのを見て、あ、駄目なんだ、と思った。
たぶん、ライブに行くときならアリだが、普段のおしゃれ着やデート着にはならないのだろう。
確かに、よくよく考えてみたら、アニメキャラの全面プリントTシャツを着ているのと大して変わらないもんな。ガールズプリントTシャツだと言い切ることもできそうだけど。
よし、スマホを買いに行くついでに、洋服を何着か買ってあげるとしよう。
ぼくも毎日同じデート着だったから、何着か欲しかったし。
ぼくにはレデクスがあり、一時的にロリコやシヨタに所有者権限を移すことができるブルークスもあったが、身体を持ったことでぼくやコヨミのレデクスから離れてしまったロリコやシヨタにもスマホがないのは確かに不便だった。
レデクスの超拡張現実機能が自由に使えたときは、ふたりは機械の身体からぼくの透過型ディスプレイに自由にアクセスできるようだったが、ロリコは人工知能のくせに機械音痴であり、シヨタしかその機能を使いこなせていなかった。
今はもうその超拡張現実機能もブルークスにしかなかった。
「シヨタも一緒に行くか? ふたりとも戸籍や住民票がないから、ひとりじゃスマホを買いに行けないだろ?」
「私は比良坂コヨミのレデクスを使うから大丈夫だ。SIMカードもまだ使えるようだしな」
と、シヨタは言った。
彼は元々コヨミのレデクスに住んでいた人工知能であったから、愛着があるのだろう。
「この県は、県民全員にエクスが配布されているから、市内にはあまり携帯ショップはないぞ」
とも言った。
「まじでか。おい、ショタ半ズボン、それ、まじで言ってんのか」
それは確かに盲点だった。
「マジだ、エロみっとも。
この街でエクス以外のスマホをどうしても買いたいなら、ネットで買った方が便利だ。
明日にはスマホ本体とSIMカードが届く」
「でも、今は届いても学生寮には戻れないぞ」
警察がまだ張り込みをしているかもしれない。
ぼくやロリコが帰宅するのを待ち構えているかもしれなかった。
「現住所を我が主の学生寮の部屋にしておき、届け先をホテルのこの部屋にすればいい」
なるほど、そういうこともできるのか。
「ネットはいいぞ。店だと、今日のような日曜は、契約や機種変以外の客が山ほどいて、何時間も待たされるからな。
スマホもろくに使えないような頭の悪い連中が、着信拒否やら迷惑メールや迷惑ショートメールの受信拒否を自分ができないことをスマホのせいだと思い込んで列を作ったりしてるからな。
いちいち店まで行くより、説明書を読む方が早いだろうに、店員に怒鳴ってストレス発散するのが目的なんじゃないかと思うくらいだ。
それに、店員からいらないサービスを押し付けられて登録させられたり、いらないタブレットを薦められたり、ネット回線の変更を薦められることもない」
この子、携帯ショップに何か恨みでもあるのかな。それとも働いてたのかな。
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