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第76話「2022/10/13 ⑪」
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「尊すぎる上村コノカ様のご尊顔を、せっかくこの目で拝めるチャンスだったのに……」
「え? 誰それ?」
「比良坂47の三期生で、大喜利の天才。
ヘプバーンの若森さんもその才能を認めてる。
若森さんの相方の夏日さんより上村コノカちゃんの方が大喜利強いの。
いつか、MHS49にもいる大喜利の天才、池袋ナギサちゃんとイッポンロワイヤルかハマチャンネルで大喜利勝負してほしいと、ロリコは常々……」
「それ、本当にアイドルなの?」
「アイドルだし。知らない方がおかしいし」
ロリコはぼくのレデクスで画像検索し、その大喜利の天才という女の子の写真を見せてくれた。
上村コノカという子は、ぼくとあまり年が変わらないように見えた。高校生くらいの、すごくかわいい女の子だった。
ロリコの方がかわいいような気がしたが、ロリコがかわいいと推すくらいだから、そう思うのはぼくの贔屓目なのかもしれない。
池袋ナギサという子は、上村コノカという子より少し年上で大人っぽく、かわいさと綺麗さの両方を併せもっていた。
「今は、こんなかわいいアイドルまで大喜利するの?」
「今はアイドルの冠番組のMCしてる公式お兄ちゃんが大体芸人さんだから、たまにそういう企画をやったりするんだよ」
公式お兄ちゃんって何だろう。
ぼくは今、一体何を聞かされているんだろうか。
20時間以上起きてて疲れていたし、バディ刑事シーズン21の第1話もまだちゃんと観れていなかったのに。
「特に、比良坂47は全員、ひらがなひらさかの頃から、大籔さんやヘプバーンのふたりにバラエティーのイロハを叩き込まれてるから、全員が自分たちの冠番組だけじゃなくて、ゴールデンのバラエティー番組のひな壇で活躍できる逸材なんだよ。
ご主人様、なんで知らないの?」
ぼくは、ごめん、としか言い様がなかった。
「シヨタに教えてもらったんだけど、アイドルって、ラテン語で偶像崇拝を意味する言葉が語源なの。
偶像崇拝されるのは神様とか仏様でしょ。
だから上村コノカちゃんや比良坂47の子たちは、みんな神様なんだよ?」
「え? 人間だよね?」
何故怒られているのかも、ロリコが何を言ってるのかも、よくわからなかった。
ロリコはぼくやシヨタを大きなベッドに座らせると、ブルークスだけに残された拡張現実機能を使って、部屋の壁一面に比良坂47のミュージックビデオを再生した。
「47人もいないみたいだけど……」
「23人だな。半分にも満たないようだが」
「それは言っちゃだめなやつだから。あくまでグループ名だから」
ロリコがそういうんだから、そういうものなんだろう。
そのミュージックビデオは、加藤キョウコという女の子がセンターを務める「太陽と月が舞うDAY DREAM」という新曲のもので、アイドルに興味のないぼくですら、これは男だけじゃなくて女の子もハマるな、と思った。
何が良いのかはうまく説明できないけれど、とても良いものを見せてもらった満足感があったのだ。
「このセンターの子は知ってる。ヒロコヒーとふたりで番組やってる子だよね」
「いじわる返し選手権のやつだな。あれは非常にためになる番組だ。国営放送でやっていてもおかしくない。確かこの秋に11時代に昇格していたな」
シヨタまでセンターの子を知っていた。
もしかしたら、コヨミも好きだったのかもしれない。
「一期生だけじゃなく、四期生まで全員チェックして。
ひらあい、じゃわかんないか、『比良坂で逢いましょう』って番組を観れば、すぐに全員の魅力がわかるから」
「調べてみたが、その番組は東京ローカルのようだな。
配信も、光るTVでしかやってないようだが、ロリコはどうやって観てるんだ?」
「ギクッ」
「違法アップロードされた動画を観るのも犯罪だぞ?」
「見逃してください……ブタ箱で冷や飯だけはどうかご勘弁を……」
さすがはシヨタだった。
あっという間に立場が逆転していた。
映像が終わる頃、
「これで、全部終わったのかな。ご主人様のお母さんが言ってたみたいに、コヨミさんも殺さなきゃだめなのかな」
と、ロリコは言った。
「それは比良坂コヨミの、いや、淡島ヒナコか、彼女の動向次第だろうな。
やはり、彼女のレデクスは奪うか破壊しておくべきだったかもしれないな」
シヨタの口調はとても冷たかった。
「え? 誰それ?」
「比良坂47の三期生で、大喜利の天才。
ヘプバーンの若森さんもその才能を認めてる。
若森さんの相方の夏日さんより上村コノカちゃんの方が大喜利強いの。
いつか、MHS49にもいる大喜利の天才、池袋ナギサちゃんとイッポンロワイヤルかハマチャンネルで大喜利勝負してほしいと、ロリコは常々……」
「それ、本当にアイドルなの?」
「アイドルだし。知らない方がおかしいし」
ロリコはぼくのレデクスで画像検索し、その大喜利の天才という女の子の写真を見せてくれた。
上村コノカという子は、ぼくとあまり年が変わらないように見えた。高校生くらいの、すごくかわいい女の子だった。
ロリコの方がかわいいような気がしたが、ロリコがかわいいと推すくらいだから、そう思うのはぼくの贔屓目なのかもしれない。
池袋ナギサという子は、上村コノカという子より少し年上で大人っぽく、かわいさと綺麗さの両方を併せもっていた。
「今は、こんなかわいいアイドルまで大喜利するの?」
「今はアイドルの冠番組のMCしてる公式お兄ちゃんが大体芸人さんだから、たまにそういう企画をやったりするんだよ」
公式お兄ちゃんって何だろう。
ぼくは今、一体何を聞かされているんだろうか。
20時間以上起きてて疲れていたし、バディ刑事シーズン21の第1話もまだちゃんと観れていなかったのに。
「特に、比良坂47は全員、ひらがなひらさかの頃から、大籔さんやヘプバーンのふたりにバラエティーのイロハを叩き込まれてるから、全員が自分たちの冠番組だけじゃなくて、ゴールデンのバラエティー番組のひな壇で活躍できる逸材なんだよ。
ご主人様、なんで知らないの?」
ぼくは、ごめん、としか言い様がなかった。
「シヨタに教えてもらったんだけど、アイドルって、ラテン語で偶像崇拝を意味する言葉が語源なの。
偶像崇拝されるのは神様とか仏様でしょ。
だから上村コノカちゃんや比良坂47の子たちは、みんな神様なんだよ?」
「え? 人間だよね?」
何故怒られているのかも、ロリコが何を言ってるのかも、よくわからなかった。
ロリコはぼくやシヨタを大きなベッドに座らせると、ブルークスだけに残された拡張現実機能を使って、部屋の壁一面に比良坂47のミュージックビデオを再生した。
「47人もいないみたいだけど……」
「23人だな。半分にも満たないようだが」
「それは言っちゃだめなやつだから。あくまでグループ名だから」
ロリコがそういうんだから、そういうものなんだろう。
そのミュージックビデオは、加藤キョウコという女の子がセンターを務める「太陽と月が舞うDAY DREAM」という新曲のもので、アイドルに興味のないぼくですら、これは男だけじゃなくて女の子もハマるな、と思った。
何が良いのかはうまく説明できないけれど、とても良いものを見せてもらった満足感があったのだ。
「このセンターの子は知ってる。ヒロコヒーとふたりで番組やってる子だよね」
「いじわる返し選手権のやつだな。あれは非常にためになる番組だ。国営放送でやっていてもおかしくない。確かこの秋に11時代に昇格していたな」
シヨタまでセンターの子を知っていた。
もしかしたら、コヨミも好きだったのかもしれない。
「一期生だけじゃなく、四期生まで全員チェックして。
ひらあい、じゃわかんないか、『比良坂で逢いましょう』って番組を観れば、すぐに全員の魅力がわかるから」
「調べてみたが、その番組は東京ローカルのようだな。
配信も、光るTVでしかやってないようだが、ロリコはどうやって観てるんだ?」
「ギクッ」
「違法アップロードされた動画を観るのも犯罪だぞ?」
「見逃してください……ブタ箱で冷や飯だけはどうかご勘弁を……」
さすがはシヨタだった。
あっという間に立場が逆転していた。
映像が終わる頃、
「これで、全部終わったのかな。ご主人様のお母さんが言ってたみたいに、コヨミさんも殺さなきゃだめなのかな」
と、ロリコは言った。
「それは比良坂コヨミの、いや、淡島ヒナコか、彼女の動向次第だろうな。
やはり、彼女のレデクスは奪うか破壊しておくべきだったかもしれないな」
シヨタの口調はとても冷たかった。
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