ぼくの人生には、ログインボーナスはもういらない。

雨野 美哉(あめの みかな)

文字の大きさ
上 下
76 / 104

第76話「2022/10/13 ⑪」

しおりを挟む
「尊すぎる上村コノカ様のご尊顔を、せっかくこの目で拝めるチャンスだったのに……」

「え? 誰それ?」

「比良坂47の三期生で、大喜利の天才。
 ヘプバーンの若森さんもその才能を認めてる。
 若森さんの相方の夏日さんより上村コノカちゃんの方が大喜利強いの。
 いつか、MHS49にもいる大喜利の天才、池袋ナギサちゃんとイッポンロワイヤルかハマチャンネルで大喜利勝負してほしいと、ロリコは常々……」

「それ、本当にアイドルなの?」

「アイドルだし。知らない方がおかしいし」

 ロリコはぼくのレデクスで画像検索し、その大喜利の天才という女の子の写真を見せてくれた。
 上村コノカという子は、ぼくとあまり年が変わらないように見えた。高校生くらいの、すごくかわいい女の子だった。
 ロリコの方がかわいいような気がしたが、ロリコがかわいいと推すくらいだから、そう思うのはぼくの贔屓目なのかもしれない。
 池袋ナギサという子は、上村コノカという子より少し年上で大人っぽく、かわいさと綺麗さの両方を併せもっていた。

「今は、こんなかわいいアイドルまで大喜利するの?」

「今はアイドルの冠番組のMCしてる公式お兄ちゃんが大体芸人さんだから、たまにそういう企画をやったりするんだよ」

 公式お兄ちゃんって何だろう。
 ぼくは今、一体何を聞かされているんだろうか。
 20時間以上起きてて疲れていたし、バディ刑事シーズン21の第1話もまだちゃんと観れていなかったのに。

「特に、比良坂47は全員、ひらがなひらさかの頃から、大籔さんやヘプバーンのふたりにバラエティーのイロハを叩き込まれてるから、全員が自分たちの冠番組だけじゃなくて、ゴールデンのバラエティー番組のひな壇で活躍できる逸材なんだよ。
 ご主人様、なんで知らないの?」

 ぼくは、ごめん、としか言い様がなかった。

「シヨタに教えてもらったんだけど、アイドルって、ラテン語で偶像崇拝を意味する言葉が語源なの。
 偶像崇拝されるのは神様とか仏様でしょ。
 だから上村コノカちゃんや比良坂47の子たちは、みんな神様なんだよ?」

「え? 人間だよね?」

 何故怒られているのかも、ロリコが何を言ってるのかも、よくわからなかった。

 ロリコはぼくやシヨタを大きなベッドに座らせると、ブルークスだけに残された拡張現実機能を使って、部屋の壁一面に比良坂47のミュージックビデオを再生した。

「47人もいないみたいだけど……」

「23人だな。半分にも満たないようだが」

「それは言っちゃだめなやつだから。あくまでグループ名だから」

 ロリコがそういうんだから、そういうものなんだろう。

 そのミュージックビデオは、加藤キョウコという女の子がセンターを務める「太陽と月が舞うDAY DREAM」という新曲のもので、アイドルに興味のないぼくですら、これは男だけじゃなくて女の子もハマるな、と思った。
 何が良いのかはうまく説明できないけれど、とても良いものを見せてもらった満足感があったのだ。

「このセンターの子は知ってる。ヒロコヒーとふたりで番組やってる子だよね」

「いじわる返し選手権のやつだな。あれは非常にためになる番組だ。国営放送でやっていてもおかしくない。確かこの秋に11時代に昇格していたな」

 シヨタまでセンターの子を知っていた。
 もしかしたら、コヨミも好きだったのかもしれない。

「一期生だけじゃなく、四期生まで全員チェックして。
 ひらあい、じゃわかんないか、『比良坂で逢いましょう』って番組を観れば、すぐに全員の魅力がわかるから」

「調べてみたが、その番組は東京ローカルのようだな。
 配信も、光るTVでしかやってないようだが、ロリコはどうやって観てるんだ?」

「ギクッ」

「違法アップロードされた動画を観るのも犯罪だぞ?」

「見逃してください……ブタ箱で冷や飯だけはどうかご勘弁を……」

 さすがはシヨタだった。
 あっという間に立場が逆転していた。

 映像が終わる頃、

「これで、全部終わったのかな。ご主人様のお母さんが言ってたみたいに、コヨミさんも殺さなきゃだめなのかな」

 と、ロリコは言った。

「それは比良坂コヨミの、いや、淡島ヒナコか、彼女の動向次第だろうな。
 やはり、彼女のレデクスは奪うか破壊しておくべきだったかもしれないな」

 シヨタの口調はとても冷たかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『霧原村』~少女達の遊戯が幽から土地に纏わる怪異を呼び起こす~転校生渉の怪異事変~

潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。 渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。 《主人公は和也(語り部)となります。ライトノベルズ風のホラー物語です》

アポリアの林

千年砂漠
ホラー
 中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。  しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。  晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。  羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。

限界集落

宮田 歩
ホラー
下山中、標識を見誤り遭難しかけた芳雄は小さな集落へたどり着く。そこは平家落人の末裔が暮らす隠れ里だと知る。その後芳雄に待ち受ける壮絶な運命とは——。

【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール
ホラー
愛しています愛しています 私はあなたを愛しています 恨みます呪います憎みます 私は あなたを 許さない

すべて実話

さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。 友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。 長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*

岡●県にある●●村の●●に関する話

ちょこち。
ホラー
岡●県の、とある村について少しでも情報や、知ってる事がある方が居れば、何卒、教えて頂けると幸いです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...