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第58話「2022/10/12 ⑯」
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1階の受付で、エクスマキナもどきのアンドロイドに、ユワは自分の名を名乗り、比良坂ヨモツと会う約束をしていることを伝えた。
受付用の女性型アンドロイドは、ヨモツのスケジュールを確認すると、ユワの身体を頭のてっぺんから爪先までスキャンし、様々な生体認証を行った。
彼女が雨野ユワ本人であることを確認すると、その手首にゲスト用のスマートウォッチのようなものをつけた。
ユワとナユタの元には、すぐに別の案内用のアンドロイドがやってきた。今度は男性型だった。
そのアンドロイドによれば、ナユタの身体となるエクスマキナの受け取りは最上階で行われ、その場所には彼女とナユタだけしか案内できないということだった。
ナユタにエクスマキナを与え、微調整を行うのには、2時間程時間がかかるという。
ぼくたちはユワから、それが終わるまで一階のロビーで待つように言われたが、受付用のアンドロイドはぼくたちにもゲスト用のスマートウォッチをつけてくれた。
おそらく、ユワのものより何ランクか下のものだったが、ぼくたちは研究所内にいくつかある見学可能な場所への出入りが許された。
エレベーターに向かうユワに、
「ぼくの母親もここにいるのか?」
ぼくは母親のことを訊ねた。
ロリコがまたぼくの手をぎゅっと握った。
ぼくは彼女の頭を撫で、大丈夫だよ、と言った。
『ロリコ先輩がいつもそばにいれば、彼はきっと大丈夫だろう』
と、シヨタも言ってくれた。
『いざというときは、私が透過型ディスプレイを使って特殊な映像を見せる。
彼の脳内物質の分泌をコントロールし、正常な脳の働きを取り戻させる』
それは少し怖いなと思ったが、狂ってしまうくらいなら、頭の中を多少いじくられた方がはるかにマシだった。
『ロリコ先輩は現実世界で彼を、私は拡張現実から彼をサポートする。私たちはそういう約束だったろう?』
「そうだね……うん、そうだったよね」
ロリコは少し安心したようだった。
「イズモくんのお母さんもここにいるよ」
エレベーターはすでに来ており、案内用アンドロイドが少し困ったような顔をしていたが、ユワはそんなことはお構い無しだった。
「たぶん、イクサの隊長をしてるお父さんより、研究所員のお母さんの方が会いやすいんじゃないかな」
ぼくは一年半以上もの間、両親と同じ街で暮らしていたのだ。
ぼくをこの街に呼び寄せたのは、前の世界のコヨミだった。
彼女は比良坂家の養女になる際に、里親となる理事長夫婦に対し、高校生になったらぼくと彼女が運命的な再会ができるように演出することを、条件として提示したと言っていた。
だが、比良坂家やその一族は、血の繋がりのない養女として引き取るだけの子どもが出したそんな条件を、簡単に呑むような人達ではないということを、ぼくは今日までの数日間で、世界を跨いで、学んだ。
コヨミ以外にも、ぼくをこの街に呼び寄せるよう働きかけた人物がいたのだ。
それはたぶんぼくの、顔も知らない両親だった。
「イズモくんのお母さんは、ヨモッちの右腕、って言うより、エクスやレデクス、超拡張現実機能の本当の開発者。
ヨモッちも相当頭がいいみたいだけど、イズモくんのお母さんには到底かなわない。ヨモッちはただの責任者に過ぎないからね」
ぼくの母親は、どうやらヒラサカグループにとって、なくてはならない存在のようだった。
コヨミよりも母の推薦があったから、ぼくはこの街に来ることができたのだろう。
特待生としてヒラサカ高校に入学できただけではなく、3台しか存在しないレデクスを手にすることができたに違いなかった。
「ロリコちゃんのその身体を、ロリコちゃんやイズモくんのために、人間よりも人間らしいように最終調整をした人。
オルフィレウスの匣を、その最後の項目まで解読することに成功した人で、20年くらい前に永久機関の開発を成功させた人。
アルベルト・アインシュタインやスティーヴン・ホーキングを超える、人類史上最高の頭脳を持つと言われてる人」
ユワはエレベーターに乗り込むと、
「イズモくんのお母さんの名前は、小久保ハルミ博士。
イズモくんは、本当は『小久保ソウジ』っていう名前だよ」
エレベーターのドアが閉まり、鉄の箱はユワとナユタを最上階に運んでいった。
受付用の女性型アンドロイドは、ヨモツのスケジュールを確認すると、ユワの身体を頭のてっぺんから爪先までスキャンし、様々な生体認証を行った。
彼女が雨野ユワ本人であることを確認すると、その手首にゲスト用のスマートウォッチのようなものをつけた。
ユワとナユタの元には、すぐに別の案内用のアンドロイドがやってきた。今度は男性型だった。
そのアンドロイドによれば、ナユタの身体となるエクスマキナの受け取りは最上階で行われ、その場所には彼女とナユタだけしか案内できないということだった。
ナユタにエクスマキナを与え、微調整を行うのには、2時間程時間がかかるという。
ぼくたちはユワから、それが終わるまで一階のロビーで待つように言われたが、受付用のアンドロイドはぼくたちにもゲスト用のスマートウォッチをつけてくれた。
おそらく、ユワのものより何ランクか下のものだったが、ぼくたちは研究所内にいくつかある見学可能な場所への出入りが許された。
エレベーターに向かうユワに、
「ぼくの母親もここにいるのか?」
ぼくは母親のことを訊ねた。
ロリコがまたぼくの手をぎゅっと握った。
ぼくは彼女の頭を撫で、大丈夫だよ、と言った。
『ロリコ先輩がいつもそばにいれば、彼はきっと大丈夫だろう』
と、シヨタも言ってくれた。
『いざというときは、私が透過型ディスプレイを使って特殊な映像を見せる。
彼の脳内物質の分泌をコントロールし、正常な脳の働きを取り戻させる』
それは少し怖いなと思ったが、狂ってしまうくらいなら、頭の中を多少いじくられた方がはるかにマシだった。
『ロリコ先輩は現実世界で彼を、私は拡張現実から彼をサポートする。私たちはそういう約束だったろう?』
「そうだね……うん、そうだったよね」
ロリコは少し安心したようだった。
「イズモくんのお母さんもここにいるよ」
エレベーターはすでに来ており、案内用アンドロイドが少し困ったような顔をしていたが、ユワはそんなことはお構い無しだった。
「たぶん、イクサの隊長をしてるお父さんより、研究所員のお母さんの方が会いやすいんじゃないかな」
ぼくは一年半以上もの間、両親と同じ街で暮らしていたのだ。
ぼくをこの街に呼び寄せたのは、前の世界のコヨミだった。
彼女は比良坂家の養女になる際に、里親となる理事長夫婦に対し、高校生になったらぼくと彼女が運命的な再会ができるように演出することを、条件として提示したと言っていた。
だが、比良坂家やその一族は、血の繋がりのない養女として引き取るだけの子どもが出したそんな条件を、簡単に呑むような人達ではないということを、ぼくは今日までの数日間で、世界を跨いで、学んだ。
コヨミ以外にも、ぼくをこの街に呼び寄せるよう働きかけた人物がいたのだ。
それはたぶんぼくの、顔も知らない両親だった。
「イズモくんのお母さんは、ヨモッちの右腕、って言うより、エクスやレデクス、超拡張現実機能の本当の開発者。
ヨモッちも相当頭がいいみたいだけど、イズモくんのお母さんには到底かなわない。ヨモッちはただの責任者に過ぎないからね」
ぼくの母親は、どうやらヒラサカグループにとって、なくてはならない存在のようだった。
コヨミよりも母の推薦があったから、ぼくはこの街に来ることができたのだろう。
特待生としてヒラサカ高校に入学できただけではなく、3台しか存在しないレデクスを手にすることができたに違いなかった。
「ロリコちゃんのその身体を、ロリコちゃんやイズモくんのために、人間よりも人間らしいように最終調整をした人。
オルフィレウスの匣を、その最後の項目まで解読することに成功した人で、20年くらい前に永久機関の開発を成功させた人。
アルベルト・アインシュタインやスティーヴン・ホーキングを超える、人類史上最高の頭脳を持つと言われてる人」
ユワはエレベーターに乗り込むと、
「イズモくんのお母さんの名前は、小久保ハルミ博士。
イズモくんは、本当は『小久保ソウジ』っていう名前だよ」
エレベーターのドアが閉まり、鉄の箱はユワとナユタを最上階に運んでいった。
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