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第47話「2022/10/12 ⑤」
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「世界をもう一度書き換えることができれば、コヨミを、前の世界でぼくと再会する前のコヨミに戻すことができるだろうし、ぼくと再会させないこともできると思う。
君が好きだったコヨミのままでいさせることができると思う」
「でも、それじゃあ、君たちは……」
「もちろん、ぼくたちのことは、今の理想的な関係が維持できるようにうまくやってもらうけどね」
レデクスとエクスマキナさえあれば、ぼくたちはもう大丈夫な気がした。
ロリコに身体さえあれば、レデクスすら必要ない気すらした。
「それから、明日の朝、じゃなくて、もう今日か。ぼくたちは数時間後には、比良坂ヨモツに会うことになってる。
彼に会えば、その身体を直してもらうこともできるかもしれないけど、どうする?」
「君たちがヨモツ様と? 一体どうやってアポを取ったんだ?」
シヨタがそんな風に驚くくらいなのだから、やはりコヨミが言っていた通り、比良坂一族の者たちはぼくたちとは住む世界が違うのだろう。
彼らは天上人のような存在か、あるいは比良坂家にあらずんば人にあらず、といったところなのだろう。
ぼくは、世界が書き換えられたことでクラスメイトが全員見知らぬ者たちに変わってしまったこと、その中に雨野元首相の孫娘がおり、前の世界には存在しなかった4台目のレデクスの所有者になっていたことをシヨタに話した。
4台目のレデクスについては、彼も知らなかった。
「雨野が今日、ナユタっていう執事ちゃんのためにエクスマキナをもらう約束になってる。ぼくはそれに付き添いでついていくことになってるんだ」
「なるほどな。雨野元首相の孫娘が相手じゃ、さすがのヨモツ様も相手をせざるを得ないか」
どうやら本当に比良坂家と雨野家はズブズブの関係のようだった。
ぼくのレデクスに入り世界を書き換えるチャンスを待つか。
あるいは、身体を修理してもらい、ぼくたちや比良坂家とは無縁の生活を送るか。
「ちなみに、頭だけ我が家のインテリアになるのはナシね」
ぼくは、彼に選んでもらうことにした。
シヨタは、いきなり襲いかかってすまなかった、朝まで考えさせてくれ、と言い、ぼくたちは朝までもう少しだけ眠ることにした。
水曜のログインボーナスは、流行の洋服やアクセサリーだった。
ユワから午前8時頃、「9時くらいに車で迎えに行く」と連絡があり、支度をして待っていると、ログインボーナスの方が先に届いた。
コートとパーカー、その下に着る長袖Tシャツ、パンツ、ブーツにベルトという、総額4万円近い冬用のメンズのコーディネート一式で、「女の子10人中、10人が認めたマネキン買い」という謳い文句が書かれていた。
オリーブ色のパーカーと白い長袖Tシャツ以外はすべて黒で、シンプルで大人っぽいコーディネートだった。
サイズは服だけでなく足の大きさまでぼくにぴったりの物が送られてきており、嬉しさよりもログインサービスを管理する会社の不気味さが勝つ代物だった。
ロリコが用意してくれていた、いざというときのデート服では少し肌寒かったので、コートだけ使わせてもらうことにした。コートはチェスターコートというものらしかった。
「ちなみに今日もいつもより豪華?」
ぼくがロリコに訊ねると、
「昨日のA5ランクの松阪牛と同じで、前の世界より4倍くらい値段が跳ね上がってますね」
と、彼女は言った。
ログインボーナスを毎日もらえる権利を持つエクスの所有者=トツカ県民が、前の世界の1/4くらいに減ってしまったということなのだろう。
「これってヒラサカグループが全部お金を出してるんだよな?」
「たぶん、そうだと思います」
この街にいる限り、働かなくても金曜のログインボーナスの県内通貨で毎週10万円が手に入り、月収にすると40万円にもなる。
その他の曜日も豪華なものが毎日手に入り、衣食住に困ることはない。
「君たちはヒラサカグループに生かされているんだよ」
シヨタが皮肉をぼくに言い、その通りだなとぼくは思った。
君が好きだったコヨミのままでいさせることができると思う」
「でも、それじゃあ、君たちは……」
「もちろん、ぼくたちのことは、今の理想的な関係が維持できるようにうまくやってもらうけどね」
レデクスとエクスマキナさえあれば、ぼくたちはもう大丈夫な気がした。
ロリコに身体さえあれば、レデクスすら必要ない気すらした。
「それから、明日の朝、じゃなくて、もう今日か。ぼくたちは数時間後には、比良坂ヨモツに会うことになってる。
彼に会えば、その身体を直してもらうこともできるかもしれないけど、どうする?」
「君たちがヨモツ様と? 一体どうやってアポを取ったんだ?」
シヨタがそんな風に驚くくらいなのだから、やはりコヨミが言っていた通り、比良坂一族の者たちはぼくたちとは住む世界が違うのだろう。
彼らは天上人のような存在か、あるいは比良坂家にあらずんば人にあらず、といったところなのだろう。
ぼくは、世界が書き換えられたことでクラスメイトが全員見知らぬ者たちに変わってしまったこと、その中に雨野元首相の孫娘がおり、前の世界には存在しなかった4台目のレデクスの所有者になっていたことをシヨタに話した。
4台目のレデクスについては、彼も知らなかった。
「雨野が今日、ナユタっていう執事ちゃんのためにエクスマキナをもらう約束になってる。ぼくはそれに付き添いでついていくことになってるんだ」
「なるほどな。雨野元首相の孫娘が相手じゃ、さすがのヨモツ様も相手をせざるを得ないか」
どうやら本当に比良坂家と雨野家はズブズブの関係のようだった。
ぼくのレデクスに入り世界を書き換えるチャンスを待つか。
あるいは、身体を修理してもらい、ぼくたちや比良坂家とは無縁の生活を送るか。
「ちなみに、頭だけ我が家のインテリアになるのはナシね」
ぼくは、彼に選んでもらうことにした。
シヨタは、いきなり襲いかかってすまなかった、朝まで考えさせてくれ、と言い、ぼくたちは朝までもう少しだけ眠ることにした。
水曜のログインボーナスは、流行の洋服やアクセサリーだった。
ユワから午前8時頃、「9時くらいに車で迎えに行く」と連絡があり、支度をして待っていると、ログインボーナスの方が先に届いた。
コートとパーカー、その下に着る長袖Tシャツ、パンツ、ブーツにベルトという、総額4万円近い冬用のメンズのコーディネート一式で、「女の子10人中、10人が認めたマネキン買い」という謳い文句が書かれていた。
オリーブ色のパーカーと白い長袖Tシャツ以外はすべて黒で、シンプルで大人っぽいコーディネートだった。
サイズは服だけでなく足の大きさまでぼくにぴったりの物が送られてきており、嬉しさよりもログインサービスを管理する会社の不気味さが勝つ代物だった。
ロリコが用意してくれていた、いざというときのデート服では少し肌寒かったので、コートだけ使わせてもらうことにした。コートはチェスターコートというものらしかった。
「ちなみに今日もいつもより豪華?」
ぼくがロリコに訊ねると、
「昨日のA5ランクの松阪牛と同じで、前の世界より4倍くらい値段が跳ね上がってますね」
と、彼女は言った。
ログインボーナスを毎日もらえる権利を持つエクスの所有者=トツカ県民が、前の世界の1/4くらいに減ってしまったということなのだろう。
「これってヒラサカグループが全部お金を出してるんだよな?」
「たぶん、そうだと思います」
この街にいる限り、働かなくても金曜のログインボーナスの県内通貨で毎週10万円が手に入り、月収にすると40万円にもなる。
その他の曜日も豪華なものが毎日手に入り、衣食住に困ることはない。
「君たちはヒラサカグループに生かされているんだよ」
シヨタが皮肉をぼくに言い、その通りだなとぼくは思った。
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