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第46話「2022/10/12 ④」
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ロリコの提案は、ただただぶっ飛んでいるだけかと思いきや、
「シヨタさんにはもうその身体しかないわけですよね?
でも、その身体はもう使い物にはならないし、壊したのはロリコですけど(てへぺろ)、本来シヨタさんがいるべき、比良坂のお嬢様のレデクスに帰ることもできない。
だったら、ロリコの代わりにご主人様のレデクスに住んだらいいと思うんですが」
意外と理にかなっていた。
それが可能なら、ロリコは現実世界でぼくを、シヨタは拡張現実からぼくを、ふたりがかりでサポートしてくれることになるわけだ。
これから、ぼくの身に何が降りかかるかわからなかった。
コヨミはもう何を考えているかわからない。
比良坂ヨモツは面識がないだけにさらにわからなかった。
雨野ユワも何を目的とし、どう動くか全く想像がつかなかった。
5人目や6人目のレデクスの所有者が現れる可能性もあった。
だが、その理想的な関係も、シヨタの意思次第だった。
彼はロリコと同じで、高度な人工知能と人格や心を持つ、ひとりの人間だ。
彼の意思を無視して、ぼくのレデクスの中に閉じ込めるわけにはいかなかった。
だから、
「ぼくからもひとつ提案がある」
シヨタの選択肢を増やすための提案をしようと思った。
「だけど、その前にロリコに確認しておかなければいけないことがあるんだ」
「何でしょうか?」
「ロリコは、今の身体に満足してる? それとも、ぼくと同じ、生身の身体が欲しいと思ってる?」
ロリコは、突然ぼくにそんな質問をされ驚いていたが、「う~~ん」と少し悩んだ後で、
「生身の身体の方がいいなって思うこともあります。ロリコはご主人様の赤ちゃんが欲しいから。
でも、今の身体は赤ちゃんを産んだり、これ以上成長することがない代わりに、年を取ることもないから、ずっと今のままの、かわいくてきれいなロリコでいられるんですよね」
ロリコがぼくの子どもを産みたいと思ってくれていたのは初耳だった。
男にとって、好きな女の子からそんな風に思ってもらえるということは、これ以上ないほど嬉しい言葉なのではないだろうか。重いと感じる男が大多数かもしれないが、少なくともぼくは嬉しかった。
お金や地位や名声を手に入れることよりも、はるかに嬉しい言葉だとぼくは思った。
でも、あんまり自分のことをかわいくてきれいとかは言わない方がいいぞ。全くその通りだから何も言わないけど。
「生身の身体で、ご主人様と一緒に年を重ねることも素晴らしいことだと思うんですけど、女の子っていつまでも女の子のままでいたい生き物なんです。いつまでも若々しいままでいたいんです。
子どもを産んで、好きな人にお母さんって呼ばれたりしたくないし、抱かれなくなったりしたくない。
家の外では、誰々くんママとか、誰々ちゃんママとか、苗字で呼ばれるようになります。仕方がないかもしれないけど、本当はそんな風にも呼ばれたくないんです。
家の中だけでは、好きな人にはちゃんと名前で呼ばれたいし、ずっと女の子として扱ってほしいんです。
だからロリコは、今の身体のままでいい? かな?」
ロリコの意思を確認したぼくは、
「そっか、そんな風に思ってくれてて、ありがとう」
彼女の頭を優しく撫でた。
「確認は終わったのか? 君からの提案とは何だ?」
シヨタの問いに、「あぁ」とぼくは答え、
「レデクスに本当に世界を書き換える力があったとしても、ぼくはこれ以上世界を書き換えるつもりはないんだ。
だから、その力は、力の使い方がわかったら君が使えばいい」
ぼくはシヨタに、世界を書き換える力の権限の委譲を提案した。
今のロリコとの関係が、ぼくにとって最も理想とする世界だから。
ロリコの身体が、生身のものじゃなかったから、ぼくが世界を書き換えるとしたら、彼女に生身の身体を与えてあげることくらいしか思い付かなかった。
ロリコが今の身体のままでいいんだったら、ぼくには本当に世界を書き換える理由がなかった。
「シヨタさんにはもうその身体しかないわけですよね?
でも、その身体はもう使い物にはならないし、壊したのはロリコですけど(てへぺろ)、本来シヨタさんがいるべき、比良坂のお嬢様のレデクスに帰ることもできない。
だったら、ロリコの代わりにご主人様のレデクスに住んだらいいと思うんですが」
意外と理にかなっていた。
それが可能なら、ロリコは現実世界でぼくを、シヨタは拡張現実からぼくを、ふたりがかりでサポートしてくれることになるわけだ。
これから、ぼくの身に何が降りかかるかわからなかった。
コヨミはもう何を考えているかわからない。
比良坂ヨモツは面識がないだけにさらにわからなかった。
雨野ユワも何を目的とし、どう動くか全く想像がつかなかった。
5人目や6人目のレデクスの所有者が現れる可能性もあった。
だが、その理想的な関係も、シヨタの意思次第だった。
彼はロリコと同じで、高度な人工知能と人格や心を持つ、ひとりの人間だ。
彼の意思を無視して、ぼくのレデクスの中に閉じ込めるわけにはいかなかった。
だから、
「ぼくからもひとつ提案がある」
シヨタの選択肢を増やすための提案をしようと思った。
「だけど、その前にロリコに確認しておかなければいけないことがあるんだ」
「何でしょうか?」
「ロリコは、今の身体に満足してる? それとも、ぼくと同じ、生身の身体が欲しいと思ってる?」
ロリコは、突然ぼくにそんな質問をされ驚いていたが、「う~~ん」と少し悩んだ後で、
「生身の身体の方がいいなって思うこともあります。ロリコはご主人様の赤ちゃんが欲しいから。
でも、今の身体は赤ちゃんを産んだり、これ以上成長することがない代わりに、年を取ることもないから、ずっと今のままの、かわいくてきれいなロリコでいられるんですよね」
ロリコがぼくの子どもを産みたいと思ってくれていたのは初耳だった。
男にとって、好きな女の子からそんな風に思ってもらえるということは、これ以上ないほど嬉しい言葉なのではないだろうか。重いと感じる男が大多数かもしれないが、少なくともぼくは嬉しかった。
お金や地位や名声を手に入れることよりも、はるかに嬉しい言葉だとぼくは思った。
でも、あんまり自分のことをかわいくてきれいとかは言わない方がいいぞ。全くその通りだから何も言わないけど。
「生身の身体で、ご主人様と一緒に年を重ねることも素晴らしいことだと思うんですけど、女の子っていつまでも女の子のままでいたい生き物なんです。いつまでも若々しいままでいたいんです。
子どもを産んで、好きな人にお母さんって呼ばれたりしたくないし、抱かれなくなったりしたくない。
家の外では、誰々くんママとか、誰々ちゃんママとか、苗字で呼ばれるようになります。仕方がないかもしれないけど、本当はそんな風にも呼ばれたくないんです。
家の中だけでは、好きな人にはちゃんと名前で呼ばれたいし、ずっと女の子として扱ってほしいんです。
だからロリコは、今の身体のままでいい? かな?」
ロリコの意思を確認したぼくは、
「そっか、そんな風に思ってくれてて、ありがとう」
彼女の頭を優しく撫でた。
「確認は終わったのか? 君からの提案とは何だ?」
シヨタの問いに、「あぁ」とぼくは答え、
「レデクスに本当に世界を書き換える力があったとしても、ぼくはこれ以上世界を書き換えるつもりはないんだ。
だから、その力は、力の使い方がわかったら君が使えばいい」
ぼくはシヨタに、世界を書き換える力の権限の委譲を提案した。
今のロリコとの関係が、ぼくにとって最も理想とする世界だから。
ロリコの身体が、生身のものじゃなかったから、ぼくが世界を書き換えるとしたら、彼女に生身の身体を与えてあげることくらいしか思い付かなかった。
ロリコが今の身体のままでいいんだったら、ぼくには本当に世界を書き換える理由がなかった。
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