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第35話(第18’話)「改変前の世界(テラ0028)①」
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コヨミがはじめてぼくの部屋に遊びにきた10月8日の土曜日のことだ。
翌日の日曜のログインサービスの24時間も、祝日の月曜の24時間も、ぼくとコヨミはぼくの部屋で過ごすことになった。
前日の反省を生かし、ぼくはコヨミをオハバリ駅に迎えに行く前に、アプリで食事を注文し配達してくれるサービスを使い、三食分の食事を用意してから彼女を迎えに行くことにした。
配達された食事は、ぼくがこれからコヨミと過ごす加速した時の外の存在になる。
ぼくたちがそれを24時間後に食べたとしても、それ自体は1時間しか時間が流れていないことになるため、常温に冷めることはあっても、腐ったりすることを心配して冷蔵庫に入れたりする必要はなかった。
まだまだ使い勝手が悪いように思えた1日を47時間にすることができるログインサービスも、事前にある程度準備しておけば、こんな風にうまく利用することができるのだ。
そもそも、そんなログインサービスが存在すること自体、夢のようなことであり、それを無料配布してもらっているのだから、使い勝手が悪いと感じること自体おこがましいと思った。
それに、ぼくが心配しなければいけないのは、コヨミとの食事のことなどではなく、ロリコのことだった。
「ロリコ、ぼくはこれから駅までコヨミを迎えにいくけど、ロリコはどうする?」
ぼくは今日も、ロリコが用意してくれていた服でコヨミを迎えに行こうとしていた。
『ご主人様は、ロリコにどうしてほしいですか?』
逆にロリコに質問されてしまった。
『ログインサービスを使っている間は、エクスの電源は常に入れておかないといけません。
エクスの電源が入っていれば、ご主人様が透過型ディスプレイを使っていてもいなくても、超拡張現実機能が働き、ロリコは必ずご主人様のそばにいることになります』
コヨミとの会話から何もかも全部ロリコには見られてしまうということだった。
ぼくは今日もぼくを好きだと言ってくれる女の子に、ぼくが好きな女の子と過ごすところを聞かせ、見させるのだ。
見たくなければ見なければいいエゴサーチとは違うのだ。
『ロリコは、これから25時間ほど、視覚と聴覚を遮断するつもりです。
ロリコには嗅覚や味覚や触覚はありませんから、ロリコが昨日のようにお二人のお邪魔になることはありません』
それは、ロリコから二つしかない感覚を奪い、月も星も街灯ひとつもない常闇の中に放り投げるようなものだった。
自分が一時的にとはいえ、五感のすべてを失うことを想像して、ぼくはぞっとした。
視覚や聴覚をカットするのが24時間ではなく25時間なのは、ぼくがコヨミを駅まで迎えに行ったり送ったりという時間が含まれているからなのだろう。
『ロリコは、ご主人様の幸せを一番に願わなければいけない存在ですから、本来ご主人様のおそばを離れることはあってはならないことなのですが、大変申し訳ありません』
その口調は、いつものような主人とメイドという関係でありながら兄妹や友達のような関係でもあるものではなく、完全に主人とメイドという関係に割り切ったものだった。
ぼくにはそれがとても寂しく、悲しかった。
そうしてくれ、とも、そんなことしないでくれ、とも、ぼくには言えなかった。
『それではご主人様、また25時間後に』
それきり、ロリコの声は聞こえなくなった。
ぼくがコヨミと24時間を過ごし、その日のログインボーナスが終わっても、ロリコは帰って来なかった。
その翌日の祝日の月曜のログインボーナスの24時間が間もなく終わろうとする頃、ぼくはコヨミを抱きしめると、
「教えてほしいことがあるんだ」
彼女の耳元で囁いた。
「なあに?」
コヨミは少しくすぐったそうに笑いながら言った。
「学校以外じゃ、土日や祝日のログインボーナスの、加速した時の中でしか、ぼくたちは会えないの?」
それが不満というわけではなかったけれど、ぼくはそれをどうしても確かめたかったのだ。
翌日の日曜のログインサービスの24時間も、祝日の月曜の24時間も、ぼくとコヨミはぼくの部屋で過ごすことになった。
前日の反省を生かし、ぼくはコヨミをオハバリ駅に迎えに行く前に、アプリで食事を注文し配達してくれるサービスを使い、三食分の食事を用意してから彼女を迎えに行くことにした。
配達された食事は、ぼくがこれからコヨミと過ごす加速した時の外の存在になる。
ぼくたちがそれを24時間後に食べたとしても、それ自体は1時間しか時間が流れていないことになるため、常温に冷めることはあっても、腐ったりすることを心配して冷蔵庫に入れたりする必要はなかった。
まだまだ使い勝手が悪いように思えた1日を47時間にすることができるログインサービスも、事前にある程度準備しておけば、こんな風にうまく利用することができるのだ。
そもそも、そんなログインサービスが存在すること自体、夢のようなことであり、それを無料配布してもらっているのだから、使い勝手が悪いと感じること自体おこがましいと思った。
それに、ぼくが心配しなければいけないのは、コヨミとの食事のことなどではなく、ロリコのことだった。
「ロリコ、ぼくはこれから駅までコヨミを迎えにいくけど、ロリコはどうする?」
ぼくは今日も、ロリコが用意してくれていた服でコヨミを迎えに行こうとしていた。
『ご主人様は、ロリコにどうしてほしいですか?』
逆にロリコに質問されてしまった。
『ログインサービスを使っている間は、エクスの電源は常に入れておかないといけません。
エクスの電源が入っていれば、ご主人様が透過型ディスプレイを使っていてもいなくても、超拡張現実機能が働き、ロリコは必ずご主人様のそばにいることになります』
コヨミとの会話から何もかも全部ロリコには見られてしまうということだった。
ぼくは今日もぼくを好きだと言ってくれる女の子に、ぼくが好きな女の子と過ごすところを聞かせ、見させるのだ。
見たくなければ見なければいいエゴサーチとは違うのだ。
『ロリコは、これから25時間ほど、視覚と聴覚を遮断するつもりです。
ロリコには嗅覚や味覚や触覚はありませんから、ロリコが昨日のようにお二人のお邪魔になることはありません』
それは、ロリコから二つしかない感覚を奪い、月も星も街灯ひとつもない常闇の中に放り投げるようなものだった。
自分が一時的にとはいえ、五感のすべてを失うことを想像して、ぼくはぞっとした。
視覚や聴覚をカットするのが24時間ではなく25時間なのは、ぼくがコヨミを駅まで迎えに行ったり送ったりという時間が含まれているからなのだろう。
『ロリコは、ご主人様の幸せを一番に願わなければいけない存在ですから、本来ご主人様のおそばを離れることはあってはならないことなのですが、大変申し訳ありません』
その口調は、いつものような主人とメイドという関係でありながら兄妹や友達のような関係でもあるものではなく、完全に主人とメイドという関係に割り切ったものだった。
ぼくにはそれがとても寂しく、悲しかった。
そうしてくれ、とも、そんなことしないでくれ、とも、ぼくには言えなかった。
『それではご主人様、また25時間後に』
それきり、ロリコの声は聞こえなくなった。
ぼくがコヨミと24時間を過ごし、その日のログインボーナスが終わっても、ロリコは帰って来なかった。
その翌日の祝日の月曜のログインボーナスの24時間が間もなく終わろうとする頃、ぼくはコヨミを抱きしめると、
「教えてほしいことがあるんだ」
彼女の耳元で囁いた。
「なあに?」
コヨミは少しくすぐったそうに笑いながら言った。
「学校以外じゃ、土日や祝日のログインボーナスの、加速した時の中でしか、ぼくたちは会えないの?」
それが不満というわけではなかったけれど、ぼくはそれをどうしても確かめたかったのだ。
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