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第34話「2022/10/11 ⑪」
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比良坂一族ではない、一般庶民に過ぎないぼくには、簡単に彼に会うことは出来ない。
住んでいる世界が違う。
コヨミからはそう言われているような気がした。
――そう言っているのよ。わたしもあなたを兄さんに取り次ぐつもりはないわ。
――だったら、比良坂一族とはズブズブの関係らしい、4人目の所有者様に頼むだけだ。
――どういう意味? 4人目の所有者って誰なの?
――言ってなかったか? でもすぐにわかるよ。
とだけ返信すると、ぼくは"RINNE"を閉じ、雨野ユワに電話をかけた。
こんな展開を予測していたわけではなかったけれど、彼女と連絡先を交換しておいて正解だった。
「やっほー、イズモくん。どうしたんだい? ボクに何か頼み事?」
「察しがよくて助かるよ。比良坂ヨモツと会いたいんだけど、取り次いでもらえないかな?」
「全然余裕。お茶の子さいさいだよ。でも、イズモくんひとりでは無理だよ。
ちょうど明日、ナユタのエクスマキナを受け取りに行くことになってるから、そのときにボクの付き添いって形でもいい?」
それなら、ユワがわざわざぼくの名前を出す必要はなかった。
コヨミが先手を打ってきていたとしても、なんとかなりそうだった。
「それで充分だよ。ありがとう」
と、ぼくはサラリーマンがするように電話をしながら頭を下げた。
「ヨモっちが世界を書き換えたかもしれないってことだろ?
ボクも、その件についてはヨモっちに色々と訊きたいこととか言いたいことがあるからね」
ぼくとユワは、明日の昼過ぎに比良坂ヨモツが働く会社を訪ねることになった。
電話を終えロリコを見ると、泣きそうな顔をしていた。
ぼくが世界を書き換えたのが比良坂ヨモツだと疑っているからだろう。
ぼくはロリコを抱きしめようとしたが、拒否されてしまった。
「ぼくのこと、嫌いになった?」
そう尋ねると、
「ロリコがご主人様のこと嫌いになれるわけないじゃないですか……
でも、ヨモツ様が疑われるのは嫌なんです……」
「だったら、ロリコは比良坂ヨモツを信じたらいい」
ぼくだって、ロリコの産みの親が世界を書き換えたなんて思いたくなかった。
「明日は、比良坂さんの疑いを晴らすために会いに行くんだと思ってくれないかな」
「ロリコもいっしょに行っていいですか?」
もちろんだよ、とぼくは言った。
「今日はもう寝よっか。いろいろあって疲れたし、明日も朝早いから」
「ロリコも、ご主人様の隣で寝てもいいですか?
この身体にはスリープモードがあることがわかったので」
「ぼくはもう、ロリコが隣にいてくれないと眠れないよ」
ぼくは、ロリコの手を引き、ベッドに向かった。
ふたりで向かいあってベッドに寝転がると、自然と笑みがこぼれた。
手を繋いで、見つめあっているだけで、ロリコから深く愛されているのを感じた。
幸せだった。
「明日は何時に起こしたらいいですか?」
「いつもと同じで7時でお願い」
ロリコは、はい、と返事をすると、ぼくにキスをした。
「眠れなくなっちゃうだろ?」
「眠れなくなるようなこと、したくなっちゃったんですか?」
「したいよ」
と、ぼくは言った。
「じゃあ、しましょ?」
ぼくたちはその夜も何度も愛し合った。
ロリコのことがかわいくて仕方がなかった。
身体を重ねるとき、同じタイミングで絶頂を迎えたいように、
「スリープモードには……勝手になっちゃうの?」
眠るときも、ぼくはロリコと同じタイミングで眠りたかった。
「自分の意思で操作できますから、ご主人様をちゃんと寝かしつけてから、スリープモードに入ります」
「そっか……なら、ロリコに寂しい思いをさせなくてすむね……」
ぼくは眠りにつく直前まで、ロリコのことで頭がいっぱいだった。
そして、ぼくは悪夢を見た。
住んでいる世界が違う。
コヨミからはそう言われているような気がした。
――そう言っているのよ。わたしもあなたを兄さんに取り次ぐつもりはないわ。
――だったら、比良坂一族とはズブズブの関係らしい、4人目の所有者様に頼むだけだ。
――どういう意味? 4人目の所有者って誰なの?
――言ってなかったか? でもすぐにわかるよ。
とだけ返信すると、ぼくは"RINNE"を閉じ、雨野ユワに電話をかけた。
こんな展開を予測していたわけではなかったけれど、彼女と連絡先を交換しておいて正解だった。
「やっほー、イズモくん。どうしたんだい? ボクに何か頼み事?」
「察しがよくて助かるよ。比良坂ヨモツと会いたいんだけど、取り次いでもらえないかな?」
「全然余裕。お茶の子さいさいだよ。でも、イズモくんひとりでは無理だよ。
ちょうど明日、ナユタのエクスマキナを受け取りに行くことになってるから、そのときにボクの付き添いって形でもいい?」
それなら、ユワがわざわざぼくの名前を出す必要はなかった。
コヨミが先手を打ってきていたとしても、なんとかなりそうだった。
「それで充分だよ。ありがとう」
と、ぼくはサラリーマンがするように電話をしながら頭を下げた。
「ヨモっちが世界を書き換えたかもしれないってことだろ?
ボクも、その件についてはヨモっちに色々と訊きたいこととか言いたいことがあるからね」
ぼくとユワは、明日の昼過ぎに比良坂ヨモツが働く会社を訪ねることになった。
電話を終えロリコを見ると、泣きそうな顔をしていた。
ぼくが世界を書き換えたのが比良坂ヨモツだと疑っているからだろう。
ぼくはロリコを抱きしめようとしたが、拒否されてしまった。
「ぼくのこと、嫌いになった?」
そう尋ねると、
「ロリコがご主人様のこと嫌いになれるわけないじゃないですか……
でも、ヨモツ様が疑われるのは嫌なんです……」
「だったら、ロリコは比良坂ヨモツを信じたらいい」
ぼくだって、ロリコの産みの親が世界を書き換えたなんて思いたくなかった。
「明日は、比良坂さんの疑いを晴らすために会いに行くんだと思ってくれないかな」
「ロリコもいっしょに行っていいですか?」
もちろんだよ、とぼくは言った。
「今日はもう寝よっか。いろいろあって疲れたし、明日も朝早いから」
「ロリコも、ご主人様の隣で寝てもいいですか?
この身体にはスリープモードがあることがわかったので」
「ぼくはもう、ロリコが隣にいてくれないと眠れないよ」
ぼくは、ロリコの手を引き、ベッドに向かった。
ふたりで向かいあってベッドに寝転がると、自然と笑みがこぼれた。
手を繋いで、見つめあっているだけで、ロリコから深く愛されているのを感じた。
幸せだった。
「明日は何時に起こしたらいいですか?」
「いつもと同じで7時でお願い」
ロリコは、はい、と返事をすると、ぼくにキスをした。
「眠れなくなっちゃうだろ?」
「眠れなくなるようなこと、したくなっちゃったんですか?」
「したいよ」
と、ぼくは言った。
「じゃあ、しましょ?」
ぼくたちはその夜も何度も愛し合った。
ロリコのことがかわいくて仕方がなかった。
身体を重ねるとき、同じタイミングで絶頂を迎えたいように、
「スリープモードには……勝手になっちゃうの?」
眠るときも、ぼくはロリコと同じタイミングで眠りたかった。
「自分の意思で操作できますから、ご主人様をちゃんと寝かしつけてから、スリープモードに入ります」
「そっか……なら、ロリコに寂しい思いをさせなくてすむね……」
ぼくは眠りにつく直前まで、ロリコのことで頭がいっぱいだった。
そして、ぼくは悪夢を見た。
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