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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第122話 秋月文書外典 ① -1
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平成3X年(西暦202X年)、夏。
M市、山手町。
山手町に住む無線マニアの男が、その音声通信を傍受したのは、全くの偶然だった。
その男は、これからこの世界について、ある真実を知ることになるのだが、彼がその真実から、自分の人生と同じように目を背けたことも、また偶然である。
それが彼にとって、最良の結果に終わることであったのか、最悪の結末を迎えることになるのかは、神のみぞ知るといったところではあるのだが。
本当に神のみぞ。
もっとも彼は、世界に、人生に、自分自身に、目を背け続けることでしか、もはや生きることが不可能なほど絶望していたから、どちらの結末を迎えるにせよ、彼以外の者にとっては、あるいは彼自身にとってですら、どうでもいい話だ。
「こちら比良坂ヨモツ。秋月レンジ、聞こえるか?」
「こちら、秋月レンジ。聞こえてるよ。
コンタクトレンズ型の通信機って最初に聞いたときは全然意味わかんなかったけど、試してみると案外すごいもんだな」
「三大キャリアがこぞって開発中のものの試作品だ。
スマートフォンの黎明期から計画されていたらしい。
現在ぼくたちは、骨伝導による音声通信のみを利用しているが、君の目の前にぼくのホログラムを投影してのビデオ通話も可能だ」
「ホログラム? 助けて、オビワン・ケノービ、みたいな?」
「あれもホログラムだが、確かあれは記録映像だったろう?
こちらはリアルタイム・ホログラムさ」
「ホログラムだろうが、そうじゃなかろうが、あんたとビデオ通話はあんまりしたくないな。かわいい女の子がいい」
「ぼくもだ。だから、仕事の話をしようか。
まずは君の現在位置についてだが、、、」
「M市内中心部、スクランブル交差点、だけど?」
「おいおい、、、3D-GPS機能の故障かと思っていたら、まさか故障じゃないとは、、、死ぬ気か?」
「何のための3D-GPSだよ。
スクランブル交差点を見下ろせる雑居ビルの屋上だよ」
「どうやら、確かに交差点の上空20メートルにいるようだな。死ぬ気じゃなくて安心したよ」
「せっかくこんな楽しいおもちゃをもらったのに、簡単に死ねるかよ。
それにしても、まったくすごいというか、ひどい炎天下だな」
「お隣のT市は、連日国内最高気温を記録更新中だからね。この国はもう亜熱帯さ」
「とりあえず、324秒前から発生中のカマイタチ現象を目視確認中だよ」
「死傷者は?」
「多数としか言えないな。
通り魔の見えない無差別殺人、、、無差別バラバラ殺人だ。
こういうの、阿鼻叫喚(あびきょうかん)ていうのか?
とにかく地獄絵図だよ。おまけにこの暑さ、ありゃ、すぐ腐るな。
今、救急車が到着したけど、、、
救急隊員が降りた途端に細切れにされた」
「上位レイヤード世界の存在は、この国の最高機密とはいえ、その救急隊員にはかわいそうなことをしたな」
「一般市民の皆さんもな。
かわいい子が犠牲になったりしてないといいけど」
「まぁ、確かにハゲ散らかしたおっさんと美少女じゃ、勿体無さが違うな」
「命は平等じゃないってことだ」
「りさちゃんが聞いたら怒るぞ」
「コヨミちゃんもな」
「、、、コヨミには絶対に言わないでくれ」
「、、、りさに黙っててくれるなら」
「お互い、妹思いのいいお兄ちゃんだ」
「比良坂さん、俺の目がこのコンタクトレンズ越しに見ているものは、そっちでも見えるのか?」
「可能だ。だが、なんだ?」
「ちょっと見てみたいものがあってね、、、
えーっと確かこれで、視界に映るものを拡大、、、
ピントを合わせるには、こうかな、、、」
「これは、遺体の切断面か?」
「どれも、とてもきれい、とでもいえばいいのかな、、、
すぐに元通りにくっつきそうな、、、
漫画なんかでよくある、斬られたことに気づかいてないみたいな、それくらいきれいだよ」
「カマイタチだからな、、、
日本刀よりも切れ味は鋭いんだろう」
「なるほどなー」
「秋月レンジ、現象の発生源を、レイヤードレベル5から確認した」
「レベル5か、、、かなりの強敵だな」
「冗談だろ。
108層まで確認されている上位レイヤード世界のたった5層目だぞ」
「冗談だよ」
「評議会から、八十三式強化外骨格 全一(ぜんいつ)の使用許可が下りた。
いつでも装着可能だ」
「もうとっくに装着してる。
すぐにレベル5へ転送してくれ」
「まったく、相変わらずだな、、、君は。
また親指を噛んだのか?
そんなことをしなくても、使用許可が降りるのを待てばいいのに。
始末書を書く方の身になってくれ」
「始末書を書くのがあんたの仕事だろ」
「ぼくに始末書を書かせないようにするのも君の仕事のひとつのはずなんだが、、、まあ、いい。
レイヤードレベル5へ転送を開始する。
始末書じゃなくて、索敵と転送、戦闘補助がぼくの仕事なんでね」
M市、山手町。
山手町に住む無線マニアの男が、その音声通信を傍受したのは、全くの偶然だった。
その男は、これからこの世界について、ある真実を知ることになるのだが、彼がその真実から、自分の人生と同じように目を背けたことも、また偶然である。
それが彼にとって、最良の結果に終わることであったのか、最悪の結末を迎えることになるのかは、神のみぞ知るといったところではあるのだが。
本当に神のみぞ。
もっとも彼は、世界に、人生に、自分自身に、目を背け続けることでしか、もはや生きることが不可能なほど絶望していたから、どちらの結末を迎えるにせよ、彼以外の者にとっては、あるいは彼自身にとってですら、どうでもいい話だ。
「こちら比良坂ヨモツ。秋月レンジ、聞こえるか?」
「こちら、秋月レンジ。聞こえてるよ。
コンタクトレンズ型の通信機って最初に聞いたときは全然意味わかんなかったけど、試してみると案外すごいもんだな」
「三大キャリアがこぞって開発中のものの試作品だ。
スマートフォンの黎明期から計画されていたらしい。
現在ぼくたちは、骨伝導による音声通信のみを利用しているが、君の目の前にぼくのホログラムを投影してのビデオ通話も可能だ」
「ホログラム? 助けて、オビワン・ケノービ、みたいな?」
「あれもホログラムだが、確かあれは記録映像だったろう?
こちらはリアルタイム・ホログラムさ」
「ホログラムだろうが、そうじゃなかろうが、あんたとビデオ通話はあんまりしたくないな。かわいい女の子がいい」
「ぼくもだ。だから、仕事の話をしようか。
まずは君の現在位置についてだが、、、」
「M市内中心部、スクランブル交差点、だけど?」
「おいおい、、、3D-GPS機能の故障かと思っていたら、まさか故障じゃないとは、、、死ぬ気か?」
「何のための3D-GPSだよ。
スクランブル交差点を見下ろせる雑居ビルの屋上だよ」
「どうやら、確かに交差点の上空20メートルにいるようだな。死ぬ気じゃなくて安心したよ」
「せっかくこんな楽しいおもちゃをもらったのに、簡単に死ねるかよ。
それにしても、まったくすごいというか、ひどい炎天下だな」
「お隣のT市は、連日国内最高気温を記録更新中だからね。この国はもう亜熱帯さ」
「とりあえず、324秒前から発生中のカマイタチ現象を目視確認中だよ」
「死傷者は?」
「多数としか言えないな。
通り魔の見えない無差別殺人、、、無差別バラバラ殺人だ。
こういうの、阿鼻叫喚(あびきょうかん)ていうのか?
とにかく地獄絵図だよ。おまけにこの暑さ、ありゃ、すぐ腐るな。
今、救急車が到着したけど、、、
救急隊員が降りた途端に細切れにされた」
「上位レイヤード世界の存在は、この国の最高機密とはいえ、その救急隊員にはかわいそうなことをしたな」
「一般市民の皆さんもな。
かわいい子が犠牲になったりしてないといいけど」
「まぁ、確かにハゲ散らかしたおっさんと美少女じゃ、勿体無さが違うな」
「命は平等じゃないってことだ」
「りさちゃんが聞いたら怒るぞ」
「コヨミちゃんもな」
「、、、コヨミには絶対に言わないでくれ」
「、、、りさに黙っててくれるなら」
「お互い、妹思いのいいお兄ちゃんだ」
「比良坂さん、俺の目がこのコンタクトレンズ越しに見ているものは、そっちでも見えるのか?」
「可能だ。だが、なんだ?」
「ちょっと見てみたいものがあってね、、、
えーっと確かこれで、視界に映るものを拡大、、、
ピントを合わせるには、こうかな、、、」
「これは、遺体の切断面か?」
「どれも、とてもきれい、とでもいえばいいのかな、、、
すぐに元通りにくっつきそうな、、、
漫画なんかでよくある、斬られたことに気づかいてないみたいな、それくらいきれいだよ」
「カマイタチだからな、、、
日本刀よりも切れ味は鋭いんだろう」
「なるほどなー」
「秋月レンジ、現象の発生源を、レイヤードレベル5から確認した」
「レベル5か、、、かなりの強敵だな」
「冗談だろ。
108層まで確認されている上位レイヤード世界のたった5層目だぞ」
「冗談だよ」
「評議会から、八十三式強化外骨格 全一(ぜんいつ)の使用許可が下りた。
いつでも装着可能だ」
「もうとっくに装着してる。
すぐにレベル5へ転送してくれ」
「まったく、相変わらずだな、、、君は。
また親指を噛んだのか?
そんなことをしなくても、使用許可が降りるのを待てばいいのに。
始末書を書く方の身になってくれ」
「始末書を書くのがあんたの仕事だろ」
「ぼくに始末書を書かせないようにするのも君の仕事のひとつのはずなんだが、、、まあ、いい。
レイヤードレベル5へ転送を開始する。
始末書じゃなくて、索敵と転送、戦闘補助がぼくの仕事なんでね」
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