120 / 123
【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第120話
しおりを挟む
秋月リサがラ・ムー大陸に作り出した城と大量破壊兵器による自動迎撃システムは、大陸を構成する結晶化したエーテルに魔人となった自らの血を混ぜることにより液体金属とした、ヒヒイロカネを超える新たな物質によって産み出したものだった。
大陸そのものが、彼女の血のように脳が発する微弱な電気信号によって自由に形状を変えるだけでなく、あらゆる元素へと変化する。
大量破壊兵器すら、その設計図さえ頭の中に入っていれば、産み出せてしまうのだ。
その設計図は、いずれ役に立つ日が来るかもしれないと、高校生時代にリサがナユタの父であるタカミのパソコンから、盗み見ていたものだった。
タカミのパソコンになぜそのようなものがあったのかといえば、彼がゲーム会社を企業するよりもはるか昔、90年代後半に、シノバズというハッカーネームを名乗り、警察に捜査協力をするきっかけとなった事件が関係していた。
タカミは当時14歳で、警察の公安部よりも先に、国家転覆を目論むテロ組織の存在に気づき壊滅させていた。
そういえば、その組織の名も確か「天禍天詠」だったな、とリサは思った。
リーダーは確か、小久保晴美という女だった。
天禍天詠の小久保晴美は、戦後唯一、非核三原則を破り、大量破壊兵器を日本に持ち込んだ者だった。
そして、タカミのハッカーとしての師匠のような存在であり、片思いの初恋の相手だった。
当時はインターネットの黎明期で、携帯電話は普及しておらず、PHSどころかポケベルの時代だった。
ウィンドウズ95の発売日に行列が出来ていたような時代だった。
新世紀エヴァンゲリオンがテレビで放映され、女子高生らの援助交際という名の売春が問題視されはじめていた。
小説家の村上龍が援助交際を題材にして書いた小説は、エヴァの庵野秀明監督によって実写映画化された。
当時援助交際をしていた少女たちが、当たり前のように親になり、2010年代後半にはその子どもたちの世代がパパ活をしていた。
2020年に起きたカーズウィルスによるパンデミックにより、遺伝子に犯罪因子を持つ者はすべてリバーステラから淘汰された。その中には当然パパ活少女達もいただろう。
だが、犯罪因子はただ遺伝するだけでなく、隔世遺伝もするのか、2038年の今ではさらにその子どもたちの世代が別の言葉をわざわざ産み出してまで売春をしていた。
だが、買う者がいるから売る者が現れるのだ。需要がなければ供給は成り立たないからだ。
人は本当に愚かだなと思う。
犯罪因子だけでなく、人の遺伝子そのもののせいだとしかリサには思えなかった。
タカミと小久保晴美という女は、メル友という関係だったらしい。
2010年代には、無料通話アプリが当たり前の時代になり、メル友などということばはすでに死語となってしまっていたから、2021年に生まれたナユタはきっと知らないだろう。リサも使ったことがなかった。
チャットサイトで知り合ったふたりは、お互いに顔も声も、本当の名前も知らないまま、メールのやり取りを続けた。
その一方で、タカミは初恋が故の過ちを犯した。
彼女から教わったハッキング技術を使い、彼女の住所や氏名、電話番号を特定したのだ。
そして、彼女が世紀末に終末の予言を実行しようとするテロ組織のリーダーであることを知ってしまった。
預言の実行とは、首都東京をはじめ日本の六大都市に大量破壊兵器を落とした後、警察や自衛隊を制圧し新たな国家を作るという荒唐無稽な計画であった。
だが、実際に大量破壊兵器が持ち込まれたことにより、荒唐無稽な計画は現実味を帯びてしまった。
実際に起きてしまったら、同じテロでもその数年前に起きた地下鉄サリン事件やさらにその数年後の9.11とは比べ物にならないものだ。
タカミはテロを未然に阻止するために、小久保晴美のパソコンからテロ組織へのパソコンへと、さらにはそれに繋げられていた大量破壊兵器をハッキングし、不発の核弾頭とした。
さすがのリサも、不発の核弾頭という言葉がボキャブラ時代の爆笑問題のキャッチコピーだということは知らなかったが、彼女が目にしたのはそのときの大量破壊兵器の設計図だった。
常人ならその構造や核融合の仕組みを理解することもできなければ、一目見ただけでは記憶することもできないその設計図を、リサは一瞬で写真をとるように目に焼き付け記憶した。
彼女は、将棋や囲碁のプロが棋譜をすべて記憶することができるように、直感像素質という才能を持っていたからだった。
タカミのパソコンにその設計図が2020年代後半になっても残っていたのは偶然であったが、その設計図に彼女がたどり着くことができたのは、その才能故に彼の見よう見まねで手に入れたハッキング技術だった。
設計図を手に入れることができても、無論理解は出来なかった。
だが、いずれ自分が異世界に行き、自ら魔人となる日が来れば、記憶した設計図を脳内で画像表示させることによって、理解できるようになるだろうということはわかっていた。
理解さえできれば、あとは脳の電気信号が勝手にエーテルを必要な物質に変換し、設計図通りに大量破壊兵器を作ってくれる。
ピノアがふざけたことを書いてくれたりもしたが、腕や胸元や首筋にピノアに書かせたタトゥーのようなものにもちゃんと意味があった。包帯で隠していたことにも。
それは無意味な絵や記号ではなく、リサが作った古代文字ならぬ秋月文字だった。
胸には彼女が愛する兄の名前を。
右腕には彼女から兄を奪った女と兄の代わりに兄の部屋を当たり前のように使っていた女の名前を。いつか必ず殺すと決めていた者の名前を自ら書かせた。
左脚には彼女がこの世界で成すことを、すべて書かせた。どんなに年を重ねても必ず若返り魔人となり、兄もまた若返らせ魔人とする。障害となるものはすべて壊し、すべて殺す。
世界を滅ぼすことになっても、兄と自分さえ生き残ればそれでいい。むしろそれが彼女の望みだった。
たとえ第三次魔導大戦が起きたとしても兄と自分だけは生き残れるよう、核シェルターを兼ねた城と百を超える核による自動防衛迎撃システムを作った。
アカシックレコードやアトランダムらの存在は想定外だったが、第二次魔導大戦を終結に導いた九頭龍 天禍天詠は真っ先に排除すべきだと考えていた。
兄の体はまだ魔人になってはいなかったが、若返らせることはできた。
計画は順調だった。
大陸そのものが、彼女の血のように脳が発する微弱な電気信号によって自由に形状を変えるだけでなく、あらゆる元素へと変化する。
大量破壊兵器すら、その設計図さえ頭の中に入っていれば、産み出せてしまうのだ。
その設計図は、いずれ役に立つ日が来るかもしれないと、高校生時代にリサがナユタの父であるタカミのパソコンから、盗み見ていたものだった。
タカミのパソコンになぜそのようなものがあったのかといえば、彼がゲーム会社を企業するよりもはるか昔、90年代後半に、シノバズというハッカーネームを名乗り、警察に捜査協力をするきっかけとなった事件が関係していた。
タカミは当時14歳で、警察の公安部よりも先に、国家転覆を目論むテロ組織の存在に気づき壊滅させていた。
そういえば、その組織の名も確か「天禍天詠」だったな、とリサは思った。
リーダーは確か、小久保晴美という女だった。
天禍天詠の小久保晴美は、戦後唯一、非核三原則を破り、大量破壊兵器を日本に持ち込んだ者だった。
そして、タカミのハッカーとしての師匠のような存在であり、片思いの初恋の相手だった。
当時はインターネットの黎明期で、携帯電話は普及しておらず、PHSどころかポケベルの時代だった。
ウィンドウズ95の発売日に行列が出来ていたような時代だった。
新世紀エヴァンゲリオンがテレビで放映され、女子高生らの援助交際という名の売春が問題視されはじめていた。
小説家の村上龍が援助交際を題材にして書いた小説は、エヴァの庵野秀明監督によって実写映画化された。
当時援助交際をしていた少女たちが、当たり前のように親になり、2010年代後半にはその子どもたちの世代がパパ活をしていた。
2020年に起きたカーズウィルスによるパンデミックにより、遺伝子に犯罪因子を持つ者はすべてリバーステラから淘汰された。その中には当然パパ活少女達もいただろう。
だが、犯罪因子はただ遺伝するだけでなく、隔世遺伝もするのか、2038年の今ではさらにその子どもたちの世代が別の言葉をわざわざ産み出してまで売春をしていた。
だが、買う者がいるから売る者が現れるのだ。需要がなければ供給は成り立たないからだ。
人は本当に愚かだなと思う。
犯罪因子だけでなく、人の遺伝子そのもののせいだとしかリサには思えなかった。
タカミと小久保晴美という女は、メル友という関係だったらしい。
2010年代には、無料通話アプリが当たり前の時代になり、メル友などということばはすでに死語となってしまっていたから、2021年に生まれたナユタはきっと知らないだろう。リサも使ったことがなかった。
チャットサイトで知り合ったふたりは、お互いに顔も声も、本当の名前も知らないまま、メールのやり取りを続けた。
その一方で、タカミは初恋が故の過ちを犯した。
彼女から教わったハッキング技術を使い、彼女の住所や氏名、電話番号を特定したのだ。
そして、彼女が世紀末に終末の予言を実行しようとするテロ組織のリーダーであることを知ってしまった。
預言の実行とは、首都東京をはじめ日本の六大都市に大量破壊兵器を落とした後、警察や自衛隊を制圧し新たな国家を作るという荒唐無稽な計画であった。
だが、実際に大量破壊兵器が持ち込まれたことにより、荒唐無稽な計画は現実味を帯びてしまった。
実際に起きてしまったら、同じテロでもその数年前に起きた地下鉄サリン事件やさらにその数年後の9.11とは比べ物にならないものだ。
タカミはテロを未然に阻止するために、小久保晴美のパソコンからテロ組織へのパソコンへと、さらにはそれに繋げられていた大量破壊兵器をハッキングし、不発の核弾頭とした。
さすがのリサも、不発の核弾頭という言葉がボキャブラ時代の爆笑問題のキャッチコピーだということは知らなかったが、彼女が目にしたのはそのときの大量破壊兵器の設計図だった。
常人ならその構造や核融合の仕組みを理解することもできなければ、一目見ただけでは記憶することもできないその設計図を、リサは一瞬で写真をとるように目に焼き付け記憶した。
彼女は、将棋や囲碁のプロが棋譜をすべて記憶することができるように、直感像素質という才能を持っていたからだった。
タカミのパソコンにその設計図が2020年代後半になっても残っていたのは偶然であったが、その設計図に彼女がたどり着くことができたのは、その才能故に彼の見よう見まねで手に入れたハッキング技術だった。
設計図を手に入れることができても、無論理解は出来なかった。
だが、いずれ自分が異世界に行き、自ら魔人となる日が来れば、記憶した設計図を脳内で画像表示させることによって、理解できるようになるだろうということはわかっていた。
理解さえできれば、あとは脳の電気信号が勝手にエーテルを必要な物質に変換し、設計図通りに大量破壊兵器を作ってくれる。
ピノアがふざけたことを書いてくれたりもしたが、腕や胸元や首筋にピノアに書かせたタトゥーのようなものにもちゃんと意味があった。包帯で隠していたことにも。
それは無意味な絵や記号ではなく、リサが作った古代文字ならぬ秋月文字だった。
胸には彼女が愛する兄の名前を。
右腕には彼女から兄を奪った女と兄の代わりに兄の部屋を当たり前のように使っていた女の名前を。いつか必ず殺すと決めていた者の名前を自ら書かせた。
左脚には彼女がこの世界で成すことを、すべて書かせた。どんなに年を重ねても必ず若返り魔人となり、兄もまた若返らせ魔人とする。障害となるものはすべて壊し、すべて殺す。
世界を滅ぼすことになっても、兄と自分さえ生き残ればそれでいい。むしろそれが彼女の望みだった。
たとえ第三次魔導大戦が起きたとしても兄と自分だけは生き残れるよう、核シェルターを兼ねた城と百を超える核による自動防衛迎撃システムを作った。
アカシックレコードやアトランダムらの存在は想定外だったが、第二次魔導大戦を終結に導いた九頭龍 天禍天詠は真っ先に排除すべきだと考えていた。
兄の体はまだ魔人になってはいなかったが、若返らせることはできた。
計画は順調だった。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが
おっぱいもみもみ怪人
ファンタジー
敵の攻撃によって拾った戦車ごと異世界へと飛ばされた自衛隊員の二人。
そこでは、不老の肉体と特殊な能力を得て、魔獣と呼ばれる怪物退治をするハメに。
更には奴隷を買って、遠い宇宙で戦車を強化して、どうにか帰ろうと悪戦苦闘するのであった。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
異世界ハーレム漫遊記
けんもも
ファンタジー
ある日、突然異世界に紛れ込んだ主人公。
異世界の知識が何もないまま、最初に出会った、兎族の美少女と旅をし、成長しながら、異世界転移物のお約束、主人公のチート能力によって、これまたお約束の、ハーレム状態になりながら、転生した異世界の謎を解明していきます。
2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件
後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。
転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。
それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。
これから零はどうなってしまうのか........。
お気に入り・感想等よろしくお願いします!!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる