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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。

第112話

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 ピノアがセーメーのそばに現れる数分前のことだ。

 エウロペ城のバルコニーから見える光景を、映像として記録したサタナハマアカは、円卓の上にホログラムを写し出していた。

「あの白いマキナは、全長15~20メートル程です。
 私の身体、つまりは魔痩躯に非常に良く似た構造をしていますが、より複雑です」

「それってさ、サタナハマアカがHGだとしたら、あいつはRGってこと?」

 ピノアはガンプラを喩えに出したのだが、レンジやリサがいない今、わかるのはナユタだけだった。

 ナユタは、その喩えに本来出てくるはずの全長が全く違うMGやPGが出てこなかったために、

「いやいや、なんでレイザーラモン!?」

 と、盛大にツッコミ間違えてしまった。
 そして、ドスベりした。

 場は一瞬しんとして、

「その後、これらはすべて別の形状に変化し、その全長も変化しています」

 笑いにはすべり笑いというものがあるが、スルーに終わると地獄だった。

「サトシが集めてた漫画で見たことあるやつがいる……見た目かなり違うけど、なんとなくわかる……あれ、たぶん、サンジヤンなんたら」

 シヴァにパールヴァティーだろう、とナユタは思った。


「この姿は、召喚魔法使いたちが召喚する伝説上の存在やそれ以上の存在だ」

「やはり、そうですか……
 おそらくは、レオナルド様の魔法人工頭脳や魔痩躯の技術を、アカシックレコードがアップグレードし、究極召喚の代わりとなる器として産み出したもの……
 イルル様、もしかしたら召喚魔法がすべて使えなくなっているのではありませんか?」

 サタナハマアカの言葉に、イルルは召喚魔法を試したが、

「どうやら、そのようだね……いざというときにはボクが究極召喚するしかないと思っていたのだけれど……」

 結果は案の定であった。

「イルル、絶対ダメだから、そんなの」

「キミと世界を守るためなら、この命くらい、と思っていたんだけどね……
 でも、もうできなくなってしまったよ……」

 あぁ、この人もピノアのことが命を捨てられるくらいに好きなのだな。
 ナユタは思った。
 アンフィス・バエナ・イポトリルや、アベノ・セーメーのように。

「究極召喚だけじゃないよ。命を簡単に捨てようとしないで。
 わたしはこの34年、魔法の勉強をほとんどしてない。
 腕はもう、なまりになまりまくって、なまりちらしてるくらい」

 ピノアはテラから魔法が失われた17年後に、リバーステラに転移した。
 そして、リバーステラでさらに17年を過ごした。
 そのリバーステラでの17年は、テラでは一週間程度のことだった。
 リバーステラには2021年から2年間ほどエーテルが存在していたが、イルルたちのほぼ倍の時間を魔法がない世界で生きてきたのだ。

「ステラもそう。女王になってすぐに世界から魔法が消えたし、まぁ、ぶっちゃけ、わたしが精霊たちと話し合って、魔法やエーテルを使えなくしたんだけどさ」

 気づいていたよ、とイルルは言った。アンフィスやセーメーと二度も魔導大戦を経験し、一度は命を司る精霊としてすべての精霊と一体化したキミなら、そうすべきだと考えるはずだし、そうするだけの力があった、と。
 きっとステラやレンジも気づいていた、と。

 ピノアがそこまでの決意と覚悟をもってテラから失わせた魔法を、ナユタは数ヵ月前に、世界の理を変える力で復活させてしまったのだ。

「魔法が復活してからも、ステラは女王の仕事でそれどころじゃなかったはずだよ。おまけに、まだしばらくは動けない。
 レンジはどこにいるかわからない。
 サクラはまだ経験が足りない。
 アンフィスはもういない。
 前みたいに前の世界のアンフィスには頼れない。あいつは大厄災自体がなくなった前の世界で、前の世界のわたしと幸せに暮らしてると思うから。
 セーメーは絶体絶命」

 一度しか言わないからね、とピノアは言った。

「この世界のナンバーワンは、間違いなく、イルル、あんただから」

 だからあんたがテラにとって最後の砦、とピノアは言った。


「ようやく……キミに認められた……」

 イルルは、涙を流していた。

「とっくに認めてたよ。
 前の世界の双子のあんた、ライトとリードは、大厄災さえ起きなければわたしをきっと超えてただろうからね。きっと今ごろ、あのふたりはわたしを超えてる。
 ただの人だったライトとリードは、わたしやステラやアンフィスみたいなアルビノの魔人を超えるくらい才能があった。努力してた。
 そんなあんたがこの世界ではアルビノの魔人として生まれた。前の世界の記憶を取り戻した。魔法が消えてからもずっと勉強してた。
 そんなあんたに、わたしがかなうわけないじゃん」

 イルルは、ピノアの言葉に、その場にいた誰もが見たこともないほど泣きじゃくった。
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