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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第109話
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17年前に世界から一度魔法は失われた。
召喚魔法も例外ではなかった。
例外となったのはジパングのシャーマニズムと陰陽道だけだった。
ジパングの術者たちは、エーテルや精霊たちを必要とせず、島国の龍脈の力によって術を発動させるからだ。
しかし、数ヶ月前に魔法は突如復活し、召喚魔法も復活していた。
ギルガメッシュは大気中にエーテルが確かに存在していることを感じた。
エンキドゥは精霊たちの存在を感じていた。
だから、ふたりとも通常の魔法は普通に使えた。
だが、召喚魔法は精霊の力ではなく、召喚対象となる伝説上の存在や、それ以上の存在から力を借りる。
ギルガメッシュもエンキドゥも、それらの存在が感じられなかった。
ふたりは、ヘブリカの宮殿の最上階、ワイナミョイネンらがいるカレワラの間へと向かった。
かつて魔法が失われた際には、大気中からエーテルが失われただけでなく、精霊たちの存在も失われた。
あのときの精霊たちのように、召喚対象となる存在自体が失われたから、召喚魔法が使えないのではないか。
ふたりはそう考えたのだ。
だとすれば、1000年前にヘブリカの歴史上でただひとり究極召喚を行った者によって、その存在が今もあるワイナミョイネンという召喚大国の独裁者が消えている可能性があった。
魔法が失われていた17年間、エーテルが失われていたために、召喚魔法使いたちは通常召喚も機動召喚も究極召喚も行えなかった。
だが、一度現世に顕現したワイナミョイネンと、彼の力によって継続召喚されたカレワラたちは、その存在があり続けた。
ヘブリカはワイナミョイネンの独裁国家であったが、民はこの17年、魔法大国エウロペのように、魔法や召喚魔法などがなくても豊かな暮らしを送れるようにまでなっていた。
ヘブリカにとって、ワイナミョイネンという独裁者は世界を創造するだけの力を持っていたために、必要悪という一面があった。
だが、もはや無用の悪でしかなかった。
「ワイナミョイネン!!」
カレワラの間に入ったギルガメッシュとエンキドゥの目に飛び込んできたのは、ワイナミョイネンの右腕イルマリネンと左腕レンミンカイネンのふたりにかけられていた継続召喚魔法が切れ、ふたりが今まさに消滅する瞬間であった。
続いてクッレルヴォ、ヨウカハイネン、アイノ、ロウヒ、キュッリッキ、継続召喚されていた者たちが目の前で消えていった。
「アカシックレコードは、私たちの存在を利用するつもりか……」
そして、ワイナミョイネンもまた、かつて彼に肉体と魂を差し出した術者の究極召喚が解け、その体は塵芥となり、崩れ落ちた。
召喚魔法大国ヘブリカの独裁政治は、こうして終わりを告げた。
「ギルガメッシュ、俺は大臣たちを呼んでくる」
「あの男たちはだめだ」
ギルガメッシュは、エンキドゥを制した。
「あいつらは、長年ワイナミョイネンの言いなりだったが、だからこそワイナミョイネンにとって変わろうとするかもしれない。それでは、新たな独裁者を生むだけだ」
「じゃあ、どうするつもりだ?」
「しばらく、このことは伏せる。
カレワラの間は、俺が魔法で完全に人払いする。
お前は俺より国政の知識がある。数ヶ月か一年か、あるいはそれ以上かかるかもしれないが、ワイナミョイネンのふりをしてくれ。
俺はその間に、この国に、リバーステラにおけるヘブリカ、合衆国といったか、その国と同じ、大統領制の準備をする」
「大統領制? テンス・テラに来た異世界人が言っていたやつか?
民の中から、国政を行うにふさわしいものたちを選挙で決め、議会を作る……
最低ふたつは考え方が違う党を作らせ、民に大統領を選ばせる……」
エンキドゥの言葉に、ギルガメッシュは頷いた。
だが、カレワラの間はドーム状をしたマジックミラー号、ではなく! 外部から中は覗くことはできないが、内部から外部は360度見渡すことができるように作られていた。
テラを貫いたアカシックレコードから、翡翠色の巨大なマキナが無数に射出されているのが、ふたりには見えた。
その姿は、色こそ違うが、召喚魔法使いたちが召喚する、伝説やそれ以上の存在と同じ形をしたマキナであった。
「存在が消えたわけではない、というわけか……」
究極召喚は、術者がその肉体や魂を差し出すことによって、召喚対象を現世に顕現させる。
アカシックレコードは、結晶化したエーテルを使い、究極召喚以上の力を得ることができる依り代としてのマキナを作り出していたのだ。
「さしずめ、デウスエクスマキナといったところか……」
デウスエクスマキナの群れは、アトランダム帝国をわずか数分で墜とした九頭龍 天禍天詠と十二神将とその84000の眷族「夜叉」を、さらに短時間で墜とした。
「とりあえず、エンキドゥ、ここはお前に任せる。
大統領制度の準備は、アカシックレコードをどうにかしてからだ」
「お前はどうする気だ?」
「とりあえず、あの9つの首を持つ要塞に向かう。
あれはおそらく第二次魔導大戦を終結させたジパングの最終兵器、竜の形をしたあの島国そのものだ。
中にはきっと、あれだけの巨大な要塞を動かすことができる優秀なシャーマンか陰陽師がいるはず……。俺は俺ができることをす」
その瞬間、太平洋の南中央付近、海しかない場所から、九頭龍 天禍天詠を何かが迎撃した。
九頭龍はアトランダムのように消滅し、空にはキノコの形をした巨大な雲が浮かんだ。
敵はまだ他にいた。
召喚魔法も例外ではなかった。
例外となったのはジパングのシャーマニズムと陰陽道だけだった。
ジパングの術者たちは、エーテルや精霊たちを必要とせず、島国の龍脈の力によって術を発動させるからだ。
しかし、数ヶ月前に魔法は突如復活し、召喚魔法も復活していた。
ギルガメッシュは大気中にエーテルが確かに存在していることを感じた。
エンキドゥは精霊たちの存在を感じていた。
だから、ふたりとも通常の魔法は普通に使えた。
だが、召喚魔法は精霊の力ではなく、召喚対象となる伝説上の存在や、それ以上の存在から力を借りる。
ギルガメッシュもエンキドゥも、それらの存在が感じられなかった。
ふたりは、ヘブリカの宮殿の最上階、ワイナミョイネンらがいるカレワラの間へと向かった。
かつて魔法が失われた際には、大気中からエーテルが失われただけでなく、精霊たちの存在も失われた。
あのときの精霊たちのように、召喚対象となる存在自体が失われたから、召喚魔法が使えないのではないか。
ふたりはそう考えたのだ。
だとすれば、1000年前にヘブリカの歴史上でただひとり究極召喚を行った者によって、その存在が今もあるワイナミョイネンという召喚大国の独裁者が消えている可能性があった。
魔法が失われていた17年間、エーテルが失われていたために、召喚魔法使いたちは通常召喚も機動召喚も究極召喚も行えなかった。
だが、一度現世に顕現したワイナミョイネンと、彼の力によって継続召喚されたカレワラたちは、その存在があり続けた。
ヘブリカはワイナミョイネンの独裁国家であったが、民はこの17年、魔法大国エウロペのように、魔法や召喚魔法などがなくても豊かな暮らしを送れるようにまでなっていた。
ヘブリカにとって、ワイナミョイネンという独裁者は世界を創造するだけの力を持っていたために、必要悪という一面があった。
だが、もはや無用の悪でしかなかった。
「ワイナミョイネン!!」
カレワラの間に入ったギルガメッシュとエンキドゥの目に飛び込んできたのは、ワイナミョイネンの右腕イルマリネンと左腕レンミンカイネンのふたりにかけられていた継続召喚魔法が切れ、ふたりが今まさに消滅する瞬間であった。
続いてクッレルヴォ、ヨウカハイネン、アイノ、ロウヒ、キュッリッキ、継続召喚されていた者たちが目の前で消えていった。
「アカシックレコードは、私たちの存在を利用するつもりか……」
そして、ワイナミョイネンもまた、かつて彼に肉体と魂を差し出した術者の究極召喚が解け、その体は塵芥となり、崩れ落ちた。
召喚魔法大国ヘブリカの独裁政治は、こうして終わりを告げた。
「ギルガメッシュ、俺は大臣たちを呼んでくる」
「あの男たちはだめだ」
ギルガメッシュは、エンキドゥを制した。
「あいつらは、長年ワイナミョイネンの言いなりだったが、だからこそワイナミョイネンにとって変わろうとするかもしれない。それでは、新たな独裁者を生むだけだ」
「じゃあ、どうするつもりだ?」
「しばらく、このことは伏せる。
カレワラの間は、俺が魔法で完全に人払いする。
お前は俺より国政の知識がある。数ヶ月か一年か、あるいはそれ以上かかるかもしれないが、ワイナミョイネンのふりをしてくれ。
俺はその間に、この国に、リバーステラにおけるヘブリカ、合衆国といったか、その国と同じ、大統領制の準備をする」
「大統領制? テンス・テラに来た異世界人が言っていたやつか?
民の中から、国政を行うにふさわしいものたちを選挙で決め、議会を作る……
最低ふたつは考え方が違う党を作らせ、民に大統領を選ばせる……」
エンキドゥの言葉に、ギルガメッシュは頷いた。
だが、カレワラの間はドーム状をしたマジックミラー号、ではなく! 外部から中は覗くことはできないが、内部から外部は360度見渡すことができるように作られていた。
テラを貫いたアカシックレコードから、翡翠色の巨大なマキナが無数に射出されているのが、ふたりには見えた。
その姿は、色こそ違うが、召喚魔法使いたちが召喚する、伝説やそれ以上の存在と同じ形をしたマキナであった。
「存在が消えたわけではない、というわけか……」
究極召喚は、術者がその肉体や魂を差し出すことによって、召喚対象を現世に顕現させる。
アカシックレコードは、結晶化したエーテルを使い、究極召喚以上の力を得ることができる依り代としてのマキナを作り出していたのだ。
「さしずめ、デウスエクスマキナといったところか……」
デウスエクスマキナの群れは、アトランダム帝国をわずか数分で墜とした九頭龍 天禍天詠と十二神将とその84000の眷族「夜叉」を、さらに短時間で墜とした。
「とりあえず、エンキドゥ、ここはお前に任せる。
大統領制度の準備は、アカシックレコードをどうにかしてからだ」
「お前はどうする気だ?」
「とりあえず、あの9つの首を持つ要塞に向かう。
あれはおそらく第二次魔導大戦を終結させたジパングの最終兵器、竜の形をしたあの島国そのものだ。
中にはきっと、あれだけの巨大な要塞を動かすことができる優秀なシャーマンか陰陽師がいるはず……。俺は俺ができることをす」
その瞬間、太平洋の南中央付近、海しかない場所から、九頭龍 天禍天詠を何かが迎撃した。
九頭龍はアトランダムのように消滅し、空にはキノコの形をした巨大な雲が浮かんだ。
敵はまだ他にいた。
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