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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第108話
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ヘブリカには、魔人騎士・ギルガメッシュという者がいた。
本名はギルガメッシュ・クラバノエンという。
彼は、魔人であり騎士であり、そして、機動召喚魔法を得意とする最強の召喚機士であった。
機動召喚を得意とする騎士は召喚機士と呼ばれ、彼を部隊長とする召喚機士隊は「機戦(きせん)」と呼ばれていた。
彼は、イレブンス・テラに生まれながら、百年ほど前にテンス・テラに生まれた自分の記憶を取り戻した「神に仇なす者」のひとりであり、かつてはクライにあるバベルの塔「エテメンアンキ」を改築した収容所に捕らえられていたこともあった。
テンス・テラに生まれた彼は、エウロペの大賢者と共に世界中に蔓延するダークマターを浄化する旅をする異世界人から、
「ギルガメッシュ、魔人騎士もかっこいいけど、魔人をとってみないか?
で、騎士を爵位のように名前の後ろにもってきて、ナイトと読もう」
と言われて以来、ギルガメッシュ・ナイトと名乗っていた。
フンババというカオス(ダークマターにより混沌化した魔物)を、相棒の魔人騎士エンキドゥ・サイドキックや彼らと共に倒した後のことだった。
いまだにギルガメッシュは魔人騎士ギルガメッシュの方がかっこいいと思うのだが、ヘブリカには神に仇なす者が多数おり、イレブンス・テラでもギルガメッシュ・ナイトの名がすっかり定着していた。
17年前、エテメンアンキから解放されたギルガメッシュとエンキドゥがヘブリカに戻ると、イレブンス・テラのヘブリカにもフンババが現れていた。
世界にはダークマターはもうない。
混沌化とは別の形で魔物が進化したとしか思えなかった。
テンス・テラのフンババの何倍も強く、苦戦を強いられていると、アルビノの魔人の魔法少女と共にヘブリカに訪れていた異世界人が、魔法剣という見たことも聞いたこともない技でフンババを倒した。
フンババは、魔物が匣と呼ばれるものに触れたことで進化したのではないか、とその異世界人は言った。
ギルガメッシュたちは匣というものを知らなかったが、その異世界人とアルビノの魔法少女は匣を探していた。
ギルガメッシュが名乗ると、異世界人は何故かニヤニヤした。
何がおかしい? これは昔、お前のようにエウロペの大賢者と旅をしていた異世界からやってきた者から、そう名乗る方が良いと言われたのだが、と話すと、
「父がとんでもないことをしでかしてしまい、すみませんでしたー!!」
と、土下座をされてしまった。
どうやらその異世界人は、かつての異世界人の息子であり、ギルガメッシュ・ナイトというのは、リバーステラにあるテレビというものでやっていた伝説の深夜番組だという。
何故彼が土下座までしたのかわからないし、伝説の深夜番組というものもよくわからないが、伝説、と呼ばれるような名前であるのなら、まあ良いだろうと思った。
それが伝説のエロい深夜番組のタイトルだったと知ったのは、その数年後のことだった。
その異世界人曰く、親子揃って真似してみたくてもどうしても体得出来なかった、高速ベロ動かしという技を持つ、実は下ネタが嫌いな芸人が、その番組で大ブレイクしたことを聞いたのもそのときだった。
この異世界人は、親子揃ってバカなのか、と思った。
ヘブリカの王を気取るワイナミョイネンをはじめとするカレワラたちが、世界各国の王や女王を招いた際に、エウロペの女王ステラ・コスモス・ダハーカの王配となったその異世界人と再会したときのことであった。
「まさか、あのときのお前たちが、救厄の聖者でエウロペの女王と王配だったとはなー」
と言ったギルガメッシュに、女王ステラは、
「あなたとわたしは初対面ですよ。ギルガメッシュ・ナイト。
あなたがお会いしたのは、わたしの双子の妹のピノアです」
と言った。
自分の名前をエロい深夜番組名にされたことよりも、
「え? あのときいっしょにいた子じゃないの?
女王の双子の妹? あの頃から女王が本命?
え? え!? おまえら、俺とエンキドゥの前でめちゃくちゃイチャイチャしてたよな? な?」
という驚きの方が大きかった。
「レンジ……会食のあとで話があるわ……」
「時効ってこの世界にはないんだっけ……?」
懐かしい思い出だ。
なぜ、今、そんなことを思い出すのだろう。
間もなく自分は死ぬというのに。
ギルガメッシュは苦笑した。
ヘブリカの王、ワイナミョイネンは、召喚魔法使いすべてに究極召喚を命じたからだった。
「機戦」に属する召喚機士たちも、その部隊長である彼もまた例外ではなかった。
ワイナミョイネンの言葉は絶対であり、ギルガメッシュもまた究極召喚の準備をしていた。
相棒であり、「機戦」の副隊長を務めるエンキドゥもまた。
ギルガメッシュはエンリルという存在に、エンキドゥはネルガルという存在に、その身と魂を捧げようとしていた。
「そろそろお別れだな、エンキドゥ。
恥ずかしくて、こんなときじゃなきゃ言えないから言わせてくれ。
テンス・テラだけでなく、イレブンス・テラでも、俺はお前と共にいられた。
どれだけ勲章をもらうことよりも、俺にとってはそれが誇りだった。幸せだった」
テンス・テラでは大厄災が起きたからイレブンス・テラが生まれた。
だが、この世界はもう大厄災が起きることはない。
人の歴史はリセットされない。
次の世界はない。
死ねば魂はアカシックレコードの一部となる。
特別な定めがない限り、未来の時代に生まれ変わることはない。
「俺もだ、ギルガメッシュ。
幸いなことに、ふたつの世界で俺たちはお互いに魔人に生まれることができた。
合計500年は共にあった。
お前と過ごした時間は、俺にとって、まさしくステイゴールドだった」
ステイゴールド。
異世界人の親子が教えてくれた、リバーステラの言葉だ。
「ずっと輝き続けてたな」
「魔人だからではなく、お前とだから若いままでいられた。お前と過ごした時間は青春だった」
「そうだな……まさにアオハルだった……」
本人たちは真剣そのものであったが、エウロペの王配と、その父親が余計なことを教えていたために、感動の場面が台無しになっていた。
「派手におっぱじめようぜ。
ワイナミョイネンのためじゃねぇ。
テラを貫いてくれやがったアカシックレコードや、沸いて出てきた大陸だとか、帝国だとかをぶっ潰して、俺たちの世界を守るためだ」
「究極召喚しても、お前の背中は俺が守ってやる。
それが俺のアオハルだ」
ふたりは、超絶にダサい台詞を口にしているとは思いもよらず、究極召喚の詠唱を始めた。
そして、詠唱を終えたふたりは、究極召喚できなかった。
他の召喚魔法使いたちから、通常召喚も機動召喚も究極召喚も使えなくなっていることを聞いた。
ふたりは互いに顔を見合せ、顔を真っ赤にし、お互いについ先ほどまでのやりとりをなかったことにすることにした。
本名はギルガメッシュ・クラバノエンという。
彼は、魔人であり騎士であり、そして、機動召喚魔法を得意とする最強の召喚機士であった。
機動召喚を得意とする騎士は召喚機士と呼ばれ、彼を部隊長とする召喚機士隊は「機戦(きせん)」と呼ばれていた。
彼は、イレブンス・テラに生まれながら、百年ほど前にテンス・テラに生まれた自分の記憶を取り戻した「神に仇なす者」のひとりであり、かつてはクライにあるバベルの塔「エテメンアンキ」を改築した収容所に捕らえられていたこともあった。
テンス・テラに生まれた彼は、エウロペの大賢者と共に世界中に蔓延するダークマターを浄化する旅をする異世界人から、
「ギルガメッシュ、魔人騎士もかっこいいけど、魔人をとってみないか?
で、騎士を爵位のように名前の後ろにもってきて、ナイトと読もう」
と言われて以来、ギルガメッシュ・ナイトと名乗っていた。
フンババというカオス(ダークマターにより混沌化した魔物)を、相棒の魔人騎士エンキドゥ・サイドキックや彼らと共に倒した後のことだった。
いまだにギルガメッシュは魔人騎士ギルガメッシュの方がかっこいいと思うのだが、ヘブリカには神に仇なす者が多数おり、イレブンス・テラでもギルガメッシュ・ナイトの名がすっかり定着していた。
17年前、エテメンアンキから解放されたギルガメッシュとエンキドゥがヘブリカに戻ると、イレブンス・テラのヘブリカにもフンババが現れていた。
世界にはダークマターはもうない。
混沌化とは別の形で魔物が進化したとしか思えなかった。
テンス・テラのフンババの何倍も強く、苦戦を強いられていると、アルビノの魔人の魔法少女と共にヘブリカに訪れていた異世界人が、魔法剣という見たことも聞いたこともない技でフンババを倒した。
フンババは、魔物が匣と呼ばれるものに触れたことで進化したのではないか、とその異世界人は言った。
ギルガメッシュたちは匣というものを知らなかったが、その異世界人とアルビノの魔法少女は匣を探していた。
ギルガメッシュが名乗ると、異世界人は何故かニヤニヤした。
何がおかしい? これは昔、お前のようにエウロペの大賢者と旅をしていた異世界からやってきた者から、そう名乗る方が良いと言われたのだが、と話すと、
「父がとんでもないことをしでかしてしまい、すみませんでしたー!!」
と、土下座をされてしまった。
どうやらその異世界人は、かつての異世界人の息子であり、ギルガメッシュ・ナイトというのは、リバーステラにあるテレビというものでやっていた伝説の深夜番組だという。
何故彼が土下座までしたのかわからないし、伝説の深夜番組というものもよくわからないが、伝説、と呼ばれるような名前であるのなら、まあ良いだろうと思った。
それが伝説のエロい深夜番組のタイトルだったと知ったのは、その数年後のことだった。
その異世界人曰く、親子揃って真似してみたくてもどうしても体得出来なかった、高速ベロ動かしという技を持つ、実は下ネタが嫌いな芸人が、その番組で大ブレイクしたことを聞いたのもそのときだった。
この異世界人は、親子揃ってバカなのか、と思った。
ヘブリカの王を気取るワイナミョイネンをはじめとするカレワラたちが、世界各国の王や女王を招いた際に、エウロペの女王ステラ・コスモス・ダハーカの王配となったその異世界人と再会したときのことであった。
「まさか、あのときのお前たちが、救厄の聖者でエウロペの女王と王配だったとはなー」
と言ったギルガメッシュに、女王ステラは、
「あなたとわたしは初対面ですよ。ギルガメッシュ・ナイト。
あなたがお会いしたのは、わたしの双子の妹のピノアです」
と言った。
自分の名前をエロい深夜番組名にされたことよりも、
「え? あのときいっしょにいた子じゃないの?
女王の双子の妹? あの頃から女王が本命?
え? え!? おまえら、俺とエンキドゥの前でめちゃくちゃイチャイチャしてたよな? な?」
という驚きの方が大きかった。
「レンジ……会食のあとで話があるわ……」
「時効ってこの世界にはないんだっけ……?」
懐かしい思い出だ。
なぜ、今、そんなことを思い出すのだろう。
間もなく自分は死ぬというのに。
ギルガメッシュは苦笑した。
ヘブリカの王、ワイナミョイネンは、召喚魔法使いすべてに究極召喚を命じたからだった。
「機戦」に属する召喚機士たちも、その部隊長である彼もまた例外ではなかった。
ワイナミョイネンの言葉は絶対であり、ギルガメッシュもまた究極召喚の準備をしていた。
相棒であり、「機戦」の副隊長を務めるエンキドゥもまた。
ギルガメッシュはエンリルという存在に、エンキドゥはネルガルという存在に、その身と魂を捧げようとしていた。
「そろそろお別れだな、エンキドゥ。
恥ずかしくて、こんなときじゃなきゃ言えないから言わせてくれ。
テンス・テラだけでなく、イレブンス・テラでも、俺はお前と共にいられた。
どれだけ勲章をもらうことよりも、俺にとってはそれが誇りだった。幸せだった」
テンス・テラでは大厄災が起きたからイレブンス・テラが生まれた。
だが、この世界はもう大厄災が起きることはない。
人の歴史はリセットされない。
次の世界はない。
死ねば魂はアカシックレコードの一部となる。
特別な定めがない限り、未来の時代に生まれ変わることはない。
「俺もだ、ギルガメッシュ。
幸いなことに、ふたつの世界で俺たちはお互いに魔人に生まれることができた。
合計500年は共にあった。
お前と過ごした時間は、俺にとって、まさしくステイゴールドだった」
ステイゴールド。
異世界人の親子が教えてくれた、リバーステラの言葉だ。
「ずっと輝き続けてたな」
「魔人だからではなく、お前とだから若いままでいられた。お前と過ごした時間は青春だった」
「そうだな……まさにアオハルだった……」
本人たちは真剣そのものであったが、エウロペの王配と、その父親が余計なことを教えていたために、感動の場面が台無しになっていた。
「派手におっぱじめようぜ。
ワイナミョイネンのためじゃねぇ。
テラを貫いてくれやがったアカシックレコードや、沸いて出てきた大陸だとか、帝国だとかをぶっ潰して、俺たちの世界を守るためだ」
「究極召喚しても、お前の背中は俺が守ってやる。
それが俺のアオハルだ」
ふたりは、超絶にダサい台詞を口にしているとは思いもよらず、究極召喚の詠唱を始めた。
そして、詠唱を終えたふたりは、究極召喚できなかった。
他の召喚魔法使いたちから、通常召喚も機動召喚も究極召喚も使えなくなっていることを聞いた。
ふたりは互いに顔を見合せ、顔を真っ赤にし、お互いについ先ほどまでのやりとりをなかったことにすることにした。
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