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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第102話
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触手の魔法と媚薬の魔法のかさねがけにより、サクラは数時間イカされ続けることになった。
サクラは255回目にイカされた瞬間、頭が真っ白になり意識を失った。
白目を向いてよだれをたらしている彼女を見て、
「ちょっとやりすぎちゃったかな……」
さすがのピノアも反省し、魔法を解いた。
「やりすぎだ、ピノア」
「いえ、イルル様、ピノアお姉さまは、サクラ様の貴重な映像データと音声データを私に提供してくださいました。
私はこれでライスが三杯はいけます」
「キミは思春期の男子か」
イルルとサタナハマアカがそんなやりとりをしていると、ステラが倒れた。
「……ステラ?」
彼女は城中に響きわたるほどの、絶叫にも近い愛娘のあえぎ声の中、それが聞こえないほどにまで意識を研ぎ澄まし、行方不明になったレンジを探し続けていた。
レンジがテンス・テラに転移してきた日、ステラとピノアにはじめて出会った日に、彼女が彼の財布にかけた魔法は、今では財布ではなく、彼が胸につけている逆三角形のエムブレムにかけられていた。
発信器のような魔法だ。
レンジと、彼を連れ去ったであろう秋月リサの現在地を特定しようと、肉体をエウロペに残したまま意識だけの存在となって追跡し続けていたのだ。
だが、レンジの現在地を示す場所は、テラの中に一万ヶ所も存在していた。
おそらく魔法に気づいた秋月リサが、ステラがかけた魔法を再現し、世界中にダミーをばらまいたのだ。
ステラは、サクラが媚薬と触手の魔法をかけられる直前から数時間、一万ヶ所あるレンジの現在地をひとつひとつ確かめ、そしてその意識を一度肉体にまで戻したが倒れるほどにまで衰弱してしまっていた。
「セーメーのときとおんなじ……
魔人専用の治癒魔法が効かなくなってる……」
ピノアの顔が青ざめていた。
「あれ以上の医療魔法は存在しない……」
イルルもまた。
それはつまり、このままではステラは衰弱死するということだった。
そのとき、ゆらぎが突如として現れた。
「ピノアさんなら、今のセーメーさんにあのような力がないことはわかるはずですよね?」
ゆらぎの中から声が聞こえた。棗弘幸の声だった。
「彼はリバーステラのもうひとりの自分、安倍晴明の魂と力と一体化したのです。だから肉体は治癒し、力は潜在能力以上に覚醒した」
ゆらぎから現れた棗は、
「あなたも同じことをすればいい。
そうすればステラさんは助かります」
そう告げた。
「もっとも、たとえあなたの肉体にステラさんの魂と力を移したとしても、ステラさんが持つ力を二つに分けたことによって、力が自我と肉体を産み出しただけのあなたは消失し、ステラさんが肉体と力を手にすることになりますが」
ナユタには、他に手がないというなら、ピノアがそうするだろうとわかってしまった。
「そんなことピノアちゃんにさせない」
だから、ピノアの代わりに応えた。
彼女のいない人生などもはや考えられなかったからだ。
「ナユタくんはステラさんがどうなってもいいというわけですか?」
「そうは言ってない。だけど」
「それしか方法がないんですよ」
だが、ナユタは気付いてしまった。
ピノアはもう決めてしまっていることを。
「……わたし、やるよ。
ごめんね、ナユタ。大好きだけど、ここでお別れ。
タカミやミカナや真依、サトシたちによろしく言っておいて」
ピノアはナユタの顔を見て言った。
「わたしのこと、好きになってくれてありがとう」
なんて悲しそうに笑うんだろう。
大好きな女の子に、こんな顔を最後にさせるなんて。
自分はなんて情けない男だと思った。
ナユタの背にゆらぎが現れた。
「ピノアちゃん、だめだ!」
「わたしがいなくなるとこ、ナユタには見せたくないから。だから、ごめんね」
ゆらぎは、ナユタを飲み込んだ。
サクラは255回目にイカされた瞬間、頭が真っ白になり意識を失った。
白目を向いてよだれをたらしている彼女を見て、
「ちょっとやりすぎちゃったかな……」
さすがのピノアも反省し、魔法を解いた。
「やりすぎだ、ピノア」
「いえ、イルル様、ピノアお姉さまは、サクラ様の貴重な映像データと音声データを私に提供してくださいました。
私はこれでライスが三杯はいけます」
「キミは思春期の男子か」
イルルとサタナハマアカがそんなやりとりをしていると、ステラが倒れた。
「……ステラ?」
彼女は城中に響きわたるほどの、絶叫にも近い愛娘のあえぎ声の中、それが聞こえないほどにまで意識を研ぎ澄まし、行方不明になったレンジを探し続けていた。
レンジがテンス・テラに転移してきた日、ステラとピノアにはじめて出会った日に、彼女が彼の財布にかけた魔法は、今では財布ではなく、彼が胸につけている逆三角形のエムブレムにかけられていた。
発信器のような魔法だ。
レンジと、彼を連れ去ったであろう秋月リサの現在地を特定しようと、肉体をエウロペに残したまま意識だけの存在となって追跡し続けていたのだ。
だが、レンジの現在地を示す場所は、テラの中に一万ヶ所も存在していた。
おそらく魔法に気づいた秋月リサが、ステラがかけた魔法を再現し、世界中にダミーをばらまいたのだ。
ステラは、サクラが媚薬と触手の魔法をかけられる直前から数時間、一万ヶ所あるレンジの現在地をひとつひとつ確かめ、そしてその意識を一度肉体にまで戻したが倒れるほどにまで衰弱してしまっていた。
「セーメーのときとおんなじ……
魔人専用の治癒魔法が効かなくなってる……」
ピノアの顔が青ざめていた。
「あれ以上の医療魔法は存在しない……」
イルルもまた。
それはつまり、このままではステラは衰弱死するということだった。
そのとき、ゆらぎが突如として現れた。
「ピノアさんなら、今のセーメーさんにあのような力がないことはわかるはずですよね?」
ゆらぎの中から声が聞こえた。棗弘幸の声だった。
「彼はリバーステラのもうひとりの自分、安倍晴明の魂と力と一体化したのです。だから肉体は治癒し、力は潜在能力以上に覚醒した」
ゆらぎから現れた棗は、
「あなたも同じことをすればいい。
そうすればステラさんは助かります」
そう告げた。
「もっとも、たとえあなたの肉体にステラさんの魂と力を移したとしても、ステラさんが持つ力を二つに分けたことによって、力が自我と肉体を産み出しただけのあなたは消失し、ステラさんが肉体と力を手にすることになりますが」
ナユタには、他に手がないというなら、ピノアがそうするだろうとわかってしまった。
「そんなことピノアちゃんにさせない」
だから、ピノアの代わりに応えた。
彼女のいない人生などもはや考えられなかったからだ。
「ナユタくんはステラさんがどうなってもいいというわけですか?」
「そうは言ってない。だけど」
「それしか方法がないんですよ」
だが、ナユタは気付いてしまった。
ピノアはもう決めてしまっていることを。
「……わたし、やるよ。
ごめんね、ナユタ。大好きだけど、ここでお別れ。
タカミやミカナや真依、サトシたちによろしく言っておいて」
ピノアはナユタの顔を見て言った。
「わたしのこと、好きになってくれてありがとう」
なんて悲しそうに笑うんだろう。
大好きな女の子に、こんな顔を最後にさせるなんて。
自分はなんて情けない男だと思った。
ナユタの背にゆらぎが現れた。
「ピノアちゃん、だめだ!」
「わたしがいなくなるとこ、ナユタには見せたくないから。だから、ごめんね」
ゆらぎは、ナユタを飲み込んだ。
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