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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第99話
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式神 (しきがみ)とは、陰陽師が使役する鬼神のことだ。
人心から起こる悪行や善行を見定める役を務めるものである。
テラには、世界に存在して良いものと存在してはならぬものを仕分け、存在してはならぬものだけを喰らう「すべてを喰らう者」というものがいるが、見定める、仕分けるという意味では非常に近い存在だ。
しかし、すべてを喰らう者はバクテリアのような微生物がエーテルによって進化した存在であり、式神と違い常に世界の至るところに存在する。
誰かに使役されているわけでもない。
式神は、平時には式札(しきふだ)と呼ばれる紙の状態にあるものが、有事の際、陰陽師の術法によって使用されるときにだけ、使役意図に適った能力を具える鳥獣や異形の者へと自在に変身する。
九頭龍 天禍天詠の九つのカタパルトデッキから射出された巨大な式神は、十二神将と呼ばれる存在であった。
安倍晴明が使役したとされる十二天将(じゅうにてんしょう)は、十二神将と呼ばれる事もあるが、仏教の十二神将とは全くの別物であり、十二神将と呼称するのは本来なら誤りである。
だが、それはリバーステラにおける安倍晴明の話だ。
神話がひとつしかないテラにおけるアベノ・セーメーが使役するのは、十二天将の力をも持つ十二神将であり、各神将の全長は16メートルほどもあった。
リバーステラの奈良県奈良市にある新薬師寺に存在する、等身大とされている十二神将像と同じ姿をしているが、その全長は10倍であった。
クンビーラ、ヴァジュラ、ミヒラ、アンディーラ、アニラ、シャンディラ、インドラ、パジュラ、マホーラガの九神将がまず射出され、キンナラ、チャトゥラ、ヴィカラーラの残る三神将が後から射出された。
十二神将は、それぞれ7000の、総計84000の眷属「夜叉」を率いる。
夜叉たちは各神将がカタパルトデッキから射出された直後に、その周囲に姿を現した。
夜叉もまた鬼神であるが、その全長は2メートル弱で、人とその大きさはあまり大差はない。
そのような12体の巨大な式神と、84000の夜叉の軍勢の力があったからこそ、1000年前の第二次魔導大戦の際に、戦争が世界規模のものとなりジパングにまで戦火が及びそうになった際に、セーメーは九頭龍 天禍天詠を起動させてから、わずか数分で戦争を終結に導いたのである。
そして、十二神将はセーメーのさじ加減次第で160センチほどの全長で姿を現すことが可能であり、この17年間、不死山の火口付近で引きこもっていた彼を慰め続けてくれた存在でもあった。
顔は非常に怖いのだが、かいがいしくセーメーの世話を焼く、良い子たちであった。
「あれは? 父さんが集めてた仏像のリボルテックみたいだけど」
エウロペの城のバルコニーからその光景を眺めていたナユタは、そばにいたジパングのふたりの女王に尋ねた。
ジパングの女王やすべての民は、つい先程、戦艦形態になった城とともに転移してきたばかりであった。
「あれは、九頭龍 天禍天詠……ジパングの真の姿……
ナユタの言うブツゾーやリボルテック? というものが何なのか、わたしにはわからないけれど、十二神将と呼ばれる式神とその眷族の夜叉と呼ばれるもの……」
ナユタの母と同じ顔、同じ声、同じ名前をした返璧マヨリは答えた。
母ではないが、母と同じ優しさや温もりをそばにいるだけで感じるから不思議だった。
「でも、あれを起動させられる陰陽師なんて、アベノ・セーメーくらいしかいないよね?
十二神将もセーメーにしか使役できないんじゃなかった?」
もうひとりの女王である白璧リサが言った。
「そうよね……わたしたちも突然エウロペに飛ばされたり、わからないことだらけだわ……
17年前の戦いで、ピノアたちがアベノ・セーメーや前の世界の救厄の聖者たちを召喚したけど、皆元の時代や元の世界に帰ったはずよね?」
ピノアは、やっべーっと思った。
セーメーのこと思いっきり忘れてた、と。
「ピノアちゃん、なんで冷や汗かいてるの? 具合悪い?」
元々色白のピノアの顔は蒼白といっても過言ではないほどに青ざめていた。
そして、顔中にびしゃびしゃに汗をかいていた。
「ピノア、まさかあなた……彼を元の時代に帰すのを忘れていたんじゃ……」
「ち、ちがうよ!
あ、あの、い、いつか、こ、こういうことが、お、お、起きるんじゃないかって、お、お、思って……」
「忘れてたのね?」
「はい……忘れてました……
ごめんなさい……マヨリ……」
ナユタには、まるでピノアがおふざけをしすぎて母に叱られ謝っているようにしか見えず、少し可笑しかった。
母に怒られたあと、ピノアは必ずしょぼくれた顔をして、彼に慰めにもらいにやってくるのだが、その顔まで同じであった。
「噂には聞いてたけど、何あれ、やっべー。
アトランダムだっけ? なんか皇帝だとか言う奴が偉そうに演説してたけど、今にもやられちゃいそうじゃん。
セーメーの奴、相当うっぷんがたまってたんだろーねー」
白璧リサはピノアをからかうように言った。
そして、本当に、アトランダム島とその帝国は、フギの上空にとどまることすらできなくなり、落下しはじめた。
「やばいね……あのままだとフギに落下して、とんでもない数の死傷者が出るよ……」
しかし、アベノ・セーメーはどうやらそれも計算済みのようだった。
九頭龍 天禍天詠の九つの首から放たれた光線が、落下するアトランダム島を塵ひとつ残さず、消滅させていた。
人心から起こる悪行や善行を見定める役を務めるものである。
テラには、世界に存在して良いものと存在してはならぬものを仕分け、存在してはならぬものだけを喰らう「すべてを喰らう者」というものがいるが、見定める、仕分けるという意味では非常に近い存在だ。
しかし、すべてを喰らう者はバクテリアのような微生物がエーテルによって進化した存在であり、式神と違い常に世界の至るところに存在する。
誰かに使役されているわけでもない。
式神は、平時には式札(しきふだ)と呼ばれる紙の状態にあるものが、有事の際、陰陽師の術法によって使用されるときにだけ、使役意図に適った能力を具える鳥獣や異形の者へと自在に変身する。
九頭龍 天禍天詠の九つのカタパルトデッキから射出された巨大な式神は、十二神将と呼ばれる存在であった。
安倍晴明が使役したとされる十二天将(じゅうにてんしょう)は、十二神将と呼ばれる事もあるが、仏教の十二神将とは全くの別物であり、十二神将と呼称するのは本来なら誤りである。
だが、それはリバーステラにおける安倍晴明の話だ。
神話がひとつしかないテラにおけるアベノ・セーメーが使役するのは、十二天将の力をも持つ十二神将であり、各神将の全長は16メートルほどもあった。
リバーステラの奈良県奈良市にある新薬師寺に存在する、等身大とされている十二神将像と同じ姿をしているが、その全長は10倍であった。
クンビーラ、ヴァジュラ、ミヒラ、アンディーラ、アニラ、シャンディラ、インドラ、パジュラ、マホーラガの九神将がまず射出され、キンナラ、チャトゥラ、ヴィカラーラの残る三神将が後から射出された。
十二神将は、それぞれ7000の、総計84000の眷属「夜叉」を率いる。
夜叉たちは各神将がカタパルトデッキから射出された直後に、その周囲に姿を現した。
夜叉もまた鬼神であるが、その全長は2メートル弱で、人とその大きさはあまり大差はない。
そのような12体の巨大な式神と、84000の夜叉の軍勢の力があったからこそ、1000年前の第二次魔導大戦の際に、戦争が世界規模のものとなりジパングにまで戦火が及びそうになった際に、セーメーは九頭龍 天禍天詠を起動させてから、わずか数分で戦争を終結に導いたのである。
そして、十二神将はセーメーのさじ加減次第で160センチほどの全長で姿を現すことが可能であり、この17年間、不死山の火口付近で引きこもっていた彼を慰め続けてくれた存在でもあった。
顔は非常に怖いのだが、かいがいしくセーメーの世話を焼く、良い子たちであった。
「あれは? 父さんが集めてた仏像のリボルテックみたいだけど」
エウロペの城のバルコニーからその光景を眺めていたナユタは、そばにいたジパングのふたりの女王に尋ねた。
ジパングの女王やすべての民は、つい先程、戦艦形態になった城とともに転移してきたばかりであった。
「あれは、九頭龍 天禍天詠……ジパングの真の姿……
ナユタの言うブツゾーやリボルテック? というものが何なのか、わたしにはわからないけれど、十二神将と呼ばれる式神とその眷族の夜叉と呼ばれるもの……」
ナユタの母と同じ顔、同じ声、同じ名前をした返璧マヨリは答えた。
母ではないが、母と同じ優しさや温もりをそばにいるだけで感じるから不思議だった。
「でも、あれを起動させられる陰陽師なんて、アベノ・セーメーくらいしかいないよね?
十二神将もセーメーにしか使役できないんじゃなかった?」
もうひとりの女王である白璧リサが言った。
「そうよね……わたしたちも突然エウロペに飛ばされたり、わからないことだらけだわ……
17年前の戦いで、ピノアたちがアベノ・セーメーや前の世界の救厄の聖者たちを召喚したけど、皆元の時代や元の世界に帰ったはずよね?」
ピノアは、やっべーっと思った。
セーメーのこと思いっきり忘れてた、と。
「ピノアちゃん、なんで冷や汗かいてるの? 具合悪い?」
元々色白のピノアの顔は蒼白といっても過言ではないほどに青ざめていた。
そして、顔中にびしゃびしゃに汗をかいていた。
「ピノア、まさかあなた……彼を元の時代に帰すのを忘れていたんじゃ……」
「ち、ちがうよ!
あ、あの、い、いつか、こ、こういうことが、お、お、起きるんじゃないかって、お、お、思って……」
「忘れてたのね?」
「はい……忘れてました……
ごめんなさい……マヨリ……」
ナユタには、まるでピノアがおふざけをしすぎて母に叱られ謝っているようにしか見えず、少し可笑しかった。
母に怒られたあと、ピノアは必ずしょぼくれた顔をして、彼に慰めにもらいにやってくるのだが、その顔まで同じであった。
「噂には聞いてたけど、何あれ、やっべー。
アトランダムだっけ? なんか皇帝だとか言う奴が偉そうに演説してたけど、今にもやられちゃいそうじゃん。
セーメーの奴、相当うっぷんがたまってたんだろーねー」
白璧リサはピノアをからかうように言った。
そして、本当に、アトランダム島とその帝国は、フギの上空にとどまることすらできなくなり、落下しはじめた。
「やばいね……あのままだとフギに落下して、とんでもない数の死傷者が出るよ……」
しかし、アベノ・セーメーはどうやらそれも計算済みのようだった。
九頭龍 天禍天詠の九つの首から放たれた光線が、落下するアトランダム島を塵ひとつ残さず、消滅させていた。
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