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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第97話
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17年前、「我々」という組織との最終決戦を前に、時を司る精霊オロバスは、イレブンス・テラだけでなくすべてのテラから勇者たちを集めるべきだと言った。
そのオロバスや他の精霊たちは、「我々」が作り出したイミテーションに過ぎず、彼らにとってはすべてのテラに存在する危険分子の一斉排除が目的であったのだが、それは自滅に等しい行為であり、彼らはそれによって壊滅することになった。
別の世界、別の時代から召喚されたのは、テンス・テラに存在するダークマターが持つ力に魅了される前のブライ・アジ・ダハーカや、神の子アンフィス・バエナ・イポトリルをはじめとする救厄の聖者たちだけでなく、イレブンス・テラの1000年前から召喚されたアルビノの魔人がいた。
その男は、「我々」との最終決戦のため、本拠地が存在するアカシックレコードへ向かおうとしていたレンジやステラ、ピノアたちから、万が一の際にテラを守るよう、最終防衛の役割を託された。
彼が生まれた、ライシア大陸の西側、エイシア地方のさらに極西に位置する竜の形をした島国が持つ力を解き放ち、島国自体を浮上させ、「九頭龍 天禍天詠(くずりゅう てんかてんえい)」という超時元要塞を起動させる役割を担うこととなった。
だが、レンジたちはアカシックレコードに向かうことはなく、「我々」は本拠地ごとテラへと転移してきた。
そのため最終決戦は、彼が九頭龍 天禍天詠の起動準備をしている最中に終わってしまった。
別の世界から召喚された者たちは、皆本来いるべき場所へと帰還したが、レンジやステラ、ピノアらは皆が皆、彼の存在を忘れていた。
忘れられたまま17年が過ぎていた。
困ったものだ、マイスイートハニーも。
私の力が必要だと召喚しておきながら、最前線で戦わせてくれないどころか、気づいたら戦いがすでに終わっているとは。
しかも、私自身も出るタイミングを完全に逃してしまった。
と、その男は、ずっと悩んでいた。
数ヵ月前に、いつ出るの? 今でしょ! というタイミングがあった。
月の審神者がジパングに襲来し、ふたりの女王を暗殺しようとしたときだ。
しかし、彼は見事に出損ねた。
彼がしたのは、ジパングの城の多数の死者の検死、ただそれだけであった。
だが必ず出番は来ると考えていた。
今度こそマイスイートハニーの前で大活躍するぞ、とそのときを今か今かと待っていた。
だが、ジパングの女王が持つ力をめぐるその戦いは、ジパング以外の別の場所で行われてしまい、結局彼の出番はなかった。
わかったことは、マイスイートハニーには、いつの間にかグッドルッキングガイがいた、ということだけであった。
彼はひどく落ち込んだ。
それは、彼にとって、はじめての失恋であった。
男の名は、陰陽師アベノ・セーメー。
彼は、その日、テラを貫いた巨大な筒状の物体や、世界各地に突如現れたアトランダム島、レムレス大陸、ギガラニカ大陸を目の当たりにし、ようやく自分の出番が来たと確信した。
長かった。本当に。
ジパングの女王ですら、彼のことを忘れていたのだ。
不死山の山頂の火口付近、その島国の龍脈が最も集まる場所で、ただただ待機していた17年は、あまりに長かった。
寂しがり屋の彼は、式神たちが話し相手になってくれなければ、孤独死していたところだった。
そんなセーメーのすぐそばに「ゆらぎ」が現れた。
ゲートだということはすぐにわかった。
かつて彼もまたそのゆらぎをくぐり、マイスイートハニー・ピノアがいるこの時代へやってきたからだ。
だが、ゆらぎは時を超えるだけではなく、異世界とも繋がるものだ。
その先が別の時代なのか、イレブンス・テラ以前の別の世界なのか、それともリバーステラなのかはわからなかった。
セーメーがこの不死山にいることは誰も知らないはずだ。
だが、ゆらぎから現れる者がそれを知る敵である可能性が高い、と彼は踏み臨戦態勢を取った。
九頭龍 天禍天詠を起動させれば、テラを貫いた巨大な筒状の物体はともかく、アトランダムやレムレス、ギガラニカ程度ならば大陸ごと破壊することが可能だからだ。
そのオロバスや他の精霊たちは、「我々」が作り出したイミテーションに過ぎず、彼らにとってはすべてのテラに存在する危険分子の一斉排除が目的であったのだが、それは自滅に等しい行為であり、彼らはそれによって壊滅することになった。
別の世界、別の時代から召喚されたのは、テンス・テラに存在するダークマターが持つ力に魅了される前のブライ・アジ・ダハーカや、神の子アンフィス・バエナ・イポトリルをはじめとする救厄の聖者たちだけでなく、イレブンス・テラの1000年前から召喚されたアルビノの魔人がいた。
その男は、「我々」との最終決戦のため、本拠地が存在するアカシックレコードへ向かおうとしていたレンジやステラ、ピノアたちから、万が一の際にテラを守るよう、最終防衛の役割を託された。
彼が生まれた、ライシア大陸の西側、エイシア地方のさらに極西に位置する竜の形をした島国が持つ力を解き放ち、島国自体を浮上させ、「九頭龍 天禍天詠(くずりゅう てんかてんえい)」という超時元要塞を起動させる役割を担うこととなった。
だが、レンジたちはアカシックレコードに向かうことはなく、「我々」は本拠地ごとテラへと転移してきた。
そのため最終決戦は、彼が九頭龍 天禍天詠の起動準備をしている最中に終わってしまった。
別の世界から召喚された者たちは、皆本来いるべき場所へと帰還したが、レンジやステラ、ピノアらは皆が皆、彼の存在を忘れていた。
忘れられたまま17年が過ぎていた。
困ったものだ、マイスイートハニーも。
私の力が必要だと召喚しておきながら、最前線で戦わせてくれないどころか、気づいたら戦いがすでに終わっているとは。
しかも、私自身も出るタイミングを完全に逃してしまった。
と、その男は、ずっと悩んでいた。
数ヵ月前に、いつ出るの? 今でしょ! というタイミングがあった。
月の審神者がジパングに襲来し、ふたりの女王を暗殺しようとしたときだ。
しかし、彼は見事に出損ねた。
彼がしたのは、ジパングの城の多数の死者の検死、ただそれだけであった。
だが必ず出番は来ると考えていた。
今度こそマイスイートハニーの前で大活躍するぞ、とそのときを今か今かと待っていた。
だが、ジパングの女王が持つ力をめぐるその戦いは、ジパング以外の別の場所で行われてしまい、結局彼の出番はなかった。
わかったことは、マイスイートハニーには、いつの間にかグッドルッキングガイがいた、ということだけであった。
彼はひどく落ち込んだ。
それは、彼にとって、はじめての失恋であった。
男の名は、陰陽師アベノ・セーメー。
彼は、その日、テラを貫いた巨大な筒状の物体や、世界各地に突如現れたアトランダム島、レムレス大陸、ギガラニカ大陸を目の当たりにし、ようやく自分の出番が来たと確信した。
長かった。本当に。
ジパングの女王ですら、彼のことを忘れていたのだ。
不死山の山頂の火口付近、その島国の龍脈が最も集まる場所で、ただただ待機していた17年は、あまりに長かった。
寂しがり屋の彼は、式神たちが話し相手になってくれなければ、孤独死していたところだった。
そんなセーメーのすぐそばに「ゆらぎ」が現れた。
ゲートだということはすぐにわかった。
かつて彼もまたそのゆらぎをくぐり、マイスイートハニー・ピノアがいるこの時代へやってきたからだ。
だが、ゆらぎは時を超えるだけではなく、異世界とも繋がるものだ。
その先が別の時代なのか、イレブンス・テラ以前の別の世界なのか、それともリバーステラなのかはわからなかった。
セーメーがこの不死山にいることは誰も知らないはずだ。
だが、ゆらぎから現れる者がそれを知る敵である可能性が高い、と彼は踏み臨戦態勢を取った。
九頭龍 天禍天詠を起動させれば、テラを貫いた巨大な筒状の物体はともかく、アトランダムやレムレス、ギガラニカ程度ならば大陸ごと破壊することが可能だからだ。
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