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第34話 不可思議
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「不思議」という言葉がある。
思いはかることも、言葉で議することもできないことを広く指している言葉である。
英語では「wonder」などと訳されるこの言葉は、実は「不可思議(ふかしぎ)」の略である。
不可思議は、同時に、漢字文化圏における数の単位のひとつでもある。
語源は名のとおり、思ったり、議論したりすることが不可なほど大きい数字、ということから名づけられた。
不可思議が具体的にいくつを示すのかは、時代や地域により異なっており、現在でも人により解釈が分かれる。一般的には 10の64乗を指すと考えられている。
太陽質量程度のブラックホールが蒸発するまでの時間がおよそ1000不可思議年であるとされているが、もはや人には想像もつかないほどの時間であり、永遠と同義だ。
雨野ナユタは「世界の理を変える『那由他』の力」を、ジパングのふたりの女王のひとり返璧マヨリから譲り受けた。
そして、その兄である雨野ムスブは「世界の理を変える『不可思議』の力」を生まれもっていた。
那由他の先に不可思議があり、その先は無量大数(むりょうたいすう)だ。
無量大数は、漢字文化圏において名前がついている最大のものである。
つまり無限だ。
「世界の理を変える『無量大数』の力」がもしあるとするならば、その力こそが宇宙を作ったのであろう。
世界の理を変えるということは、無にビッグバンを起こせるからだ。
そして、無は無でしかなく、その力はない。
力を持つ者が無から宇宙を作った。
20世紀初頭では天文学者も含めてほとんどの人々は宇宙は定常的なものだと考えていた。
「宇宙には始まりがなければならない」という考えを口にする天文学者は皆無だった。
あのアインシュタインですらも「宇宙に始まりがあった」という考えには否定的であったという。
1927年に「宇宙は原始的原子の『爆発』から始まった」という考えが発表された。
これがビッグバン理論のはじまりであり、まだ100年前のことである。
1929年、銀河が地球に対してあらゆる方向に遠ざかっており、その速度は地球から各銀河までの距離に比例していることが発見された。
その後、初期の宇宙は全てが圧縮され高密度だったうえに、超高温度だったとし、宇宙の膨張の始まりを、熱核爆弾の火の玉と捉え、創造の材料が爆発の場で連鎖的に起きる核反応によって、現在の宇宙に見られる様々な元素に転移したのだ、という説が発表された。
創造の材料とは、陽子、中性子、電子、ガンマ線の高密度ガスであるとされ、
これらの材料は「イーレム」と呼ばれた。
しかし、原子核のなかには非常に不安定なものがあり、再融合する前にバラバラになり、元素へと組成する連鎖が途中で途切れてしまうことが判明した。
その後も様々な研究が行われ、論文が発表されているが、現在に至るまでビッグバンを理論上可能とする説はまだ発表されていない。
だが、乱暴な言い方をすれば、無に核兵器をぶちこみ、不安定な原子核がバラバラにならないようにコントロールすることが可能であれば宇宙は作れるということだ。
それは、原子力や核兵器がすでに存在する宇宙に生まれた、世界の理を変える力を持つ者にしかできない。
そして、無などというものもまた、世界の理を変える力によってしか作れない。
無は産み出してしまえば無でなくなるが、世界の理を変える力ならば無で無であり続けるようにその理を変えることができるからだ。
かつて「我々」という組織が、「匣」やアカシックレコードの力によって、リバーステラを元にしてテラを作った。
この宇宙もまた、何者かが世界の理を変える力によって、その者が存在する宇宙を元に作られたに過ぎないということだった。
それは神ではない。
ナユタやムスブのような力を持つ者でしかない。
アンサーという存在がこの力を求めているのは、彼らがこの宇宙を捨て、新たな宇宙を創造するためだ。
アンサーは、すでに肉体を持ってはおらず、月の審神者のように目に見えるが実体のない存在であった。
リバーステラで、雨野タカミが運転する車の中にいた雨野ムスブが、魂や力だけの存在であった彼が自ら肉体を作り、テラへと転移する直前、雨野ミカナはムスブの身体に目に見えるが実体のない存在を見た。
それが、何であったのかは彼女にはわからなかったが、ムスブにはわかっていた。
アンサーは、テラとリバーステラ、その両方に存在する、世界の理を変える力を持つ者すべてを監視していたのだ。
うっとうしい。
ハエのような存在だった。
だからムスブは、ナユタがピノアが持つ特異点の力を拡大させ星を包み、アンサーや銀河間戦争の存在を消す前に、アンサーの存在すべてを消していた。
それによって、迦具夜がアンサーの洗脳から逃れてしまっていたことに、彼は気づいていなかった。
思いはかることも、言葉で議することもできないことを広く指している言葉である。
英語では「wonder」などと訳されるこの言葉は、実は「不可思議(ふかしぎ)」の略である。
不可思議は、同時に、漢字文化圏における数の単位のひとつでもある。
語源は名のとおり、思ったり、議論したりすることが不可なほど大きい数字、ということから名づけられた。
不可思議が具体的にいくつを示すのかは、時代や地域により異なっており、現在でも人により解釈が分かれる。一般的には 10の64乗を指すと考えられている。
太陽質量程度のブラックホールが蒸発するまでの時間がおよそ1000不可思議年であるとされているが、もはや人には想像もつかないほどの時間であり、永遠と同義だ。
雨野ナユタは「世界の理を変える『那由他』の力」を、ジパングのふたりの女王のひとり返璧マヨリから譲り受けた。
そして、その兄である雨野ムスブは「世界の理を変える『不可思議』の力」を生まれもっていた。
那由他の先に不可思議があり、その先は無量大数(むりょうたいすう)だ。
無量大数は、漢字文化圏において名前がついている最大のものである。
つまり無限だ。
「世界の理を変える『無量大数』の力」がもしあるとするならば、その力こそが宇宙を作ったのであろう。
世界の理を変えるということは、無にビッグバンを起こせるからだ。
そして、無は無でしかなく、その力はない。
力を持つ者が無から宇宙を作った。
20世紀初頭では天文学者も含めてほとんどの人々は宇宙は定常的なものだと考えていた。
「宇宙には始まりがなければならない」という考えを口にする天文学者は皆無だった。
あのアインシュタインですらも「宇宙に始まりがあった」という考えには否定的であったという。
1927年に「宇宙は原始的原子の『爆発』から始まった」という考えが発表された。
これがビッグバン理論のはじまりであり、まだ100年前のことである。
1929年、銀河が地球に対してあらゆる方向に遠ざかっており、その速度は地球から各銀河までの距離に比例していることが発見された。
その後、初期の宇宙は全てが圧縮され高密度だったうえに、超高温度だったとし、宇宙の膨張の始まりを、熱核爆弾の火の玉と捉え、創造の材料が爆発の場で連鎖的に起きる核反応によって、現在の宇宙に見られる様々な元素に転移したのだ、という説が発表された。
創造の材料とは、陽子、中性子、電子、ガンマ線の高密度ガスであるとされ、
これらの材料は「イーレム」と呼ばれた。
しかし、原子核のなかには非常に不安定なものがあり、再融合する前にバラバラになり、元素へと組成する連鎖が途中で途切れてしまうことが判明した。
その後も様々な研究が行われ、論文が発表されているが、現在に至るまでビッグバンを理論上可能とする説はまだ発表されていない。
だが、乱暴な言い方をすれば、無に核兵器をぶちこみ、不安定な原子核がバラバラにならないようにコントロールすることが可能であれば宇宙は作れるということだ。
それは、原子力や核兵器がすでに存在する宇宙に生まれた、世界の理を変える力を持つ者にしかできない。
そして、無などというものもまた、世界の理を変える力によってしか作れない。
無は産み出してしまえば無でなくなるが、世界の理を変える力ならば無で無であり続けるようにその理を変えることができるからだ。
かつて「我々」という組織が、「匣」やアカシックレコードの力によって、リバーステラを元にしてテラを作った。
この宇宙もまた、何者かが世界の理を変える力によって、その者が存在する宇宙を元に作られたに過ぎないということだった。
それは神ではない。
ナユタやムスブのような力を持つ者でしかない。
アンサーという存在がこの力を求めているのは、彼らがこの宇宙を捨て、新たな宇宙を創造するためだ。
アンサーは、すでに肉体を持ってはおらず、月の審神者のように目に見えるが実体のない存在であった。
リバーステラで、雨野タカミが運転する車の中にいた雨野ムスブが、魂や力だけの存在であった彼が自ら肉体を作り、テラへと転移する直前、雨野ミカナはムスブの身体に目に見えるが実体のない存在を見た。
それが、何であったのかは彼女にはわからなかったが、ムスブにはわかっていた。
アンサーは、テラとリバーステラ、その両方に存在する、世界の理を変える力を持つ者すべてを監視していたのだ。
うっとうしい。
ハエのような存在だった。
だからムスブは、ナユタがピノアが持つ特異点の力を拡大させ星を包み、アンサーや銀河間戦争の存在を消す前に、アンサーの存在すべてを消していた。
それによって、迦具夜がアンサーの洗脳から逃れてしまっていたことに、彼は気づいていなかった。
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