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第25話 よくできました
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「ぼくはたぶん、もう少しすればこの力をうまく使いこなせるようになる。
そうすれば、月の審神者に何かされても、力を相殺できる。
相殺するまでもなく、力の影響を受けないようにもできるかもしれない。
今、試してみた。
自分の体を不老不死にしてみたよ。バラバラの肉片にされても、木っ端微塵にされてもすぐに身体を再生できるようにした。
だから、ぼくひとりでいい。
ピノアちゃんたちを、これからあっちの世界に送るよ」
ナユタは、すぐにピノアたちを転移させた。
異世界に転移しただけだ。
目の前からいなくなってしまったけれど、存在が消えてしまったわけではない。
でも悲しかった。
涙が出てきた。
虚しかった。
ずっとピノアといっしょにいたかった。
大好きだった。
いつから好きだったのかな。
父や母や叔母と同じように当たり前にそばにいてくれて、ずっと好きだった。
家族だった。
恋愛感情に変わったのはいつだったのかな。
小学校の高学年になる頃や中学生になる頃には、まわりの皆が恋をしていた。
でも、学校にいる女の子たちをかわいいと思ったことがなかった。
きっと家に帰ったらピノアがいたからだ。
いっしょに暮らしていたわけじゃないから、毎日いるわけじゃなかった。
いないとさびしかった。
いない日は必ず、LINE(2030年代版)をしていた。
「ナユタはわたしのこと大好きだね。
わたしがいないとさびしくてしかたがないんだね」
必ずそんな返事が来た。
「そうだよ、大好きだよ。ずっと大好きだった。
でも、これでお別れだ。きっとその方がいい」
でも、ピノアのいない世界や人生は、ナユタにはもう考えられなかった。
「わたしは、やだなー。
ちゃんとわたしのことだけ見ててねって言ったけど、でも、じゃないと地獄のアトラクションがもう一個増えちゃうよって言っただけだし」
どうして、ピノアの声が聞こえるんだろう。
願望だろうか。
そう言って許してくれたらいいな、なんて自分勝手なことを、心のどこかで思ってるんだろうか。
「わたしがサクラに三人でしよって言ったり、魔法でこんどーむ作ったり、サクラにおちんちんのこといろいろ教えたりしたのがいけなかっただけだし。
わたしもう、ナユタのいない世界とか人生とか考えられないくらい、ナユタが好きなんだよね」
確かにピノアの声が聞こえていた。
「……ピノアちゃん?」
ピノアはナユタを抱きしめていた。抱きしめてくれていた。
「ごめんね。ナユタもつらかったよね。
めっちゃ気持ち良さそうだったし、わたしとするときよりイクの早かったような気もしないでもないけど」
「それはたぶん気のせいだから。
ぼくはピノアちゃんがいい……ピノアちゃんじゃなきゃやだ……」
「じゃ、仲直りしよ? 別に喧嘩とかしてないけど。わたしが勝手にやきもちやいてただけ」
ピノアはキスをしてくれた。
「わたし、世界の理を変える力の干渉を受けないみたいなんだよね。
中二病っぽいけど、特異点ってやつ?
だから、イルルもサタナハマアカもサクラも異世界に転移したけど、わたしは転移せずにすんだ。
おかげでナユタとふたりきりになれたし。よくできました」
ピノアはたくさんキスをしてくれた。
「私達がしたことは許されないことだ」
突然、そんな声がした。
ふたりは、ヒィッと声をあげた。
「サクラにいたずらしてごめんなさい!!」
「ピノアちゃんは悪くないです! いっぱいえっちなことしたのはぼくです!!」
ふたりはてっきり、ステラの生き霊のようなものが現れたのだと思ったのだが、円卓にひとり、いるはずがない者がいた。
「何の話かわからないが……
私は、月の審神者のひとり、月読千古。
ランスの国王に取り憑き、精神を破綻させ、死に追いやった者だ」
十二単を身にまとった美しい少女だった。
ステラに取り憑いていた月読馬岐耳に、その顔や声は良く似ていた。
「私はお前たちに危害を加える気はない。
ただ私が知るすべてをお前たちに話に来ただけだ。
もしかしたら、私がただ話を聞いてもらいたいだけなのかもしれない。
私がすべて話し終えたら、私の存在を消してくれても構わない」
千古はそう言うと、
「私達は自ら、あの月の牢獄から抜け出したわけではない。
かつてお前たちが壊滅させた『我々』という組織が所有し、お前たちがすべて破壊した『72個の匣』。
あれをもたらした存在が、私達を牢獄から解放した」
ゆっくりと語りはじめた。
そうすれば、月の審神者に何かされても、力を相殺できる。
相殺するまでもなく、力の影響を受けないようにもできるかもしれない。
今、試してみた。
自分の体を不老不死にしてみたよ。バラバラの肉片にされても、木っ端微塵にされてもすぐに身体を再生できるようにした。
だから、ぼくひとりでいい。
ピノアちゃんたちを、これからあっちの世界に送るよ」
ナユタは、すぐにピノアたちを転移させた。
異世界に転移しただけだ。
目の前からいなくなってしまったけれど、存在が消えてしまったわけではない。
でも悲しかった。
涙が出てきた。
虚しかった。
ずっとピノアといっしょにいたかった。
大好きだった。
いつから好きだったのかな。
父や母や叔母と同じように当たり前にそばにいてくれて、ずっと好きだった。
家族だった。
恋愛感情に変わったのはいつだったのかな。
小学校の高学年になる頃や中学生になる頃には、まわりの皆が恋をしていた。
でも、学校にいる女の子たちをかわいいと思ったことがなかった。
きっと家に帰ったらピノアがいたからだ。
いっしょに暮らしていたわけじゃないから、毎日いるわけじゃなかった。
いないとさびしかった。
いない日は必ず、LINE(2030年代版)をしていた。
「ナユタはわたしのこと大好きだね。
わたしがいないとさびしくてしかたがないんだね」
必ずそんな返事が来た。
「そうだよ、大好きだよ。ずっと大好きだった。
でも、これでお別れだ。きっとその方がいい」
でも、ピノアのいない世界や人生は、ナユタにはもう考えられなかった。
「わたしは、やだなー。
ちゃんとわたしのことだけ見ててねって言ったけど、でも、じゃないと地獄のアトラクションがもう一個増えちゃうよって言っただけだし」
どうして、ピノアの声が聞こえるんだろう。
願望だろうか。
そう言って許してくれたらいいな、なんて自分勝手なことを、心のどこかで思ってるんだろうか。
「わたしがサクラに三人でしよって言ったり、魔法でこんどーむ作ったり、サクラにおちんちんのこといろいろ教えたりしたのがいけなかっただけだし。
わたしもう、ナユタのいない世界とか人生とか考えられないくらい、ナユタが好きなんだよね」
確かにピノアの声が聞こえていた。
「……ピノアちゃん?」
ピノアはナユタを抱きしめていた。抱きしめてくれていた。
「ごめんね。ナユタもつらかったよね。
めっちゃ気持ち良さそうだったし、わたしとするときよりイクの早かったような気もしないでもないけど」
「それはたぶん気のせいだから。
ぼくはピノアちゃんがいい……ピノアちゃんじゃなきゃやだ……」
「じゃ、仲直りしよ? 別に喧嘩とかしてないけど。わたしが勝手にやきもちやいてただけ」
ピノアはキスをしてくれた。
「わたし、世界の理を変える力の干渉を受けないみたいなんだよね。
中二病っぽいけど、特異点ってやつ?
だから、イルルもサタナハマアカもサクラも異世界に転移したけど、わたしは転移せずにすんだ。
おかげでナユタとふたりきりになれたし。よくできました」
ピノアはたくさんキスをしてくれた。
「私達がしたことは許されないことだ」
突然、そんな声がした。
ふたりは、ヒィッと声をあげた。
「サクラにいたずらしてごめんなさい!!」
「ピノアちゃんは悪くないです! いっぱいえっちなことしたのはぼくです!!」
ふたりはてっきり、ステラの生き霊のようなものが現れたのだと思ったのだが、円卓にひとり、いるはずがない者がいた。
「何の話かわからないが……
私は、月の審神者のひとり、月読千古。
ランスの国王に取り憑き、精神を破綻させ、死に追いやった者だ」
十二単を身にまとった美しい少女だった。
ステラに取り憑いていた月読馬岐耳に、その顔や声は良く似ていた。
「私はお前たちに危害を加える気はない。
ただ私が知るすべてをお前たちに話に来ただけだ。
もしかしたら、私がただ話を聞いてもらいたいだけなのかもしれない。
私がすべて話し終えたら、私の存在を消してくれても構わない」
千古はそう言うと、
「私達は自ら、あの月の牢獄から抜け出したわけではない。
かつてお前たちが壊滅させた『我々』という組織が所有し、お前たちがすべて破壊した『72個の匣』。
あれをもたらした存在が、私達を牢獄から解放した」
ゆっくりと語りはじめた。
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