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第19話 数万対5人の戦争
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エウロペの民がすべてあちら側の世界に転移した今、ランスやゲルマーニ、アストリアと戦う意味はなかった。
倒すべき相手は月の審神者だからだ。
月の審神者は、秩序ある世界ではなく、混沌の世界を望んでいるからだ。
だが、それは3ヶ国の軍隊が人であった時の話だった。
異形の存在へと変えられてしまった軍隊を野放しにしてしまえば、殺戮は世界に広がってしまう。
ピノアやイルルは、時の精霊の魔法を使うことによって、彼らの身体の時だけを巻き戻そうとした。
だが、人の姿に戻すことは不可能だった。
彼らの存在自体が、産まれながらに異形の者であった、と世界の理を変える力によって変えられてしまっていた。
戦うしかなかった。
殺すしかなかった。
「業火 八百万(ごうか やおよろず)」
ピノアは火の精霊の最上級火炎魔法である「インフェルノ」を片手から連射しながら、
「麒麟 氷結零式(きりん ひょうけつ ぜろしき)」
水の精霊の最上級氷結魔法「アブソ・リュゼロ」をもう片方の手から連射した。
「テンペスト! テラクエイク!!」
イルルは風の精霊の最上級竜巻魔法と、土の精霊の最上級地震魔法を放った。
竜巻は真空状態を発生させ、かつて世界中を旅し、ありとあらゆる魔法を習得した彼女は、
「カマイタチの夜想曲」
海の向こうのヘブリカの召喚士たちが使う召喚魔法によって、無数の鎌を持つイタチを召喚し追撃を行った。
カマイタチは踊るように、竜巻の流れの中で踊るように鎌を振り回し、異形の兵たちを細切れの肉片にした。
マグニチュード13の大地震によって出来た地割れに飲み込まれた異形の兵たちに対しても、「大地を支える死の国の老人の手」がそのすべてを握りつぶし、地割れを閉じていた。
エウロペの領土は長靴の形をした半島であり、海に面していた。
そのため魔法で起こした大地震によって、通常の地震のように海から大津波が押し寄せてきたが、ピノアの「進撃のバームクーヘン」によって津波はすべて無効化されていた。
「災害系の魔法は心の準備がいるからやめろー!」
ピノアが怒っていた。
彼女は地震と雷と火事と、おふざけをしすぎて怒らせてしまったときの親父(サトシ)が大の苦手だった。
あと、お化け。
イルルが竜巻や大地震を起こすとわかった瞬間、ピノアが五人全員にバリアをはり、その背中に風の精霊の魔法で天使の羽根を生やしていたため、五人は被害を被ることはなかったわけだが、
「キミならとっさにこうしてくれるだろうとわかっていたからね。
ステラやレンジだけじゃなく、ボクともこうやってちゃんと連携がとれるようになってくれて嬉しいよ」
「なんか上から目線でむかつく」
ふたりは、なんだかんだ言いながらもうれしそうにしていた。
だが、イルル以上の人災を起こそうとしているものがいた。
サタナハマアカはその胸部を開き、かつてエウロペの飛空艇「エゥデュリケ」の主砲であったものを出現させたのだ。
「余剰次元エーテル超弦理放射砲『カラビ・ヤウ』、超拡散発射します」
翡翠色の無数の光の矢を発射した。
数万の異形の軍隊は、たったそれだけで、ほぼ壊滅した。
「イルル、ごめん……あいつのほうがやべーやつだった……」
「ボクは、キミも充分すぎるくらいやばいやつ、だという自覚をいい加減持ってほしいよ……」
三人の超弩級災害レベルの攻撃をなんとか避けた異形の兵がサクラに飛びかかってきたが、
「二刀流・二重魔法剣『雷火』」
サクラはそれを魔法剣で見事仕留めた。
それだけでなく、後方にいた異形の兵たちもまた雷と炎によって灰になっていた。
「レンジよりもすごい威力じゃん」
ピノアが驚くほどだった。
ナユタもまた、異形の兵たちと対峙していた。八匹に囲まれていた。
この世界に存在する母と同一人物の女王から与えられた力は、まだ完全には扱うことはできなかった。
世界の理を変える力を今の状態で使えば暴走させてしまいかねない。
だから、まだあの力は使えない。
不思議と恐怖は感じなかった。
負ける気もしなかった。
魔法は使えない。
武器の扱い方もよくわからない。
だが、はるか遠い地に龍脈の力を感じていた。
シャーマニズムや陰陽道が、彼には使えるようになっていた。
彼は襲いかかってきた異形の兵たちの攻撃をいなすようにかわし、
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在……」
両手の指の形を様々に変化させながら、九字護身法という陰陽道の技を浴びせていた。
指先で身体の一部を触れられただけの異形の者たちにはダメージはなかったが、
「前」
と彼が口にすると、八匹の異形の兵たちは爆散した。
「何だ? あの技……」
今度はイルルが驚いていた。
「セーメーが使ってた技だよ。セーメーよりすごいかも」
ピノアの言葉に、
「陰陽道というわけか」
イルルは感心していた。
数万の異形の兵たちは、たった五人を相手に、わずか数分で壊滅していた。
「ピノアちゃん無双BASARA、ステージクリア!」
ピノアはそう言ったが、その顔は悲しそうだった。
倒すべき相手は月の審神者だからだ。
月の審神者は、秩序ある世界ではなく、混沌の世界を望んでいるからだ。
だが、それは3ヶ国の軍隊が人であった時の話だった。
異形の存在へと変えられてしまった軍隊を野放しにしてしまえば、殺戮は世界に広がってしまう。
ピノアやイルルは、時の精霊の魔法を使うことによって、彼らの身体の時だけを巻き戻そうとした。
だが、人の姿に戻すことは不可能だった。
彼らの存在自体が、産まれながらに異形の者であった、と世界の理を変える力によって変えられてしまっていた。
戦うしかなかった。
殺すしかなかった。
「業火 八百万(ごうか やおよろず)」
ピノアは火の精霊の最上級火炎魔法である「インフェルノ」を片手から連射しながら、
「麒麟 氷結零式(きりん ひょうけつ ぜろしき)」
水の精霊の最上級氷結魔法「アブソ・リュゼロ」をもう片方の手から連射した。
「テンペスト! テラクエイク!!」
イルルは風の精霊の最上級竜巻魔法と、土の精霊の最上級地震魔法を放った。
竜巻は真空状態を発生させ、かつて世界中を旅し、ありとあらゆる魔法を習得した彼女は、
「カマイタチの夜想曲」
海の向こうのヘブリカの召喚士たちが使う召喚魔法によって、無数の鎌を持つイタチを召喚し追撃を行った。
カマイタチは踊るように、竜巻の流れの中で踊るように鎌を振り回し、異形の兵たちを細切れの肉片にした。
マグニチュード13の大地震によって出来た地割れに飲み込まれた異形の兵たちに対しても、「大地を支える死の国の老人の手」がそのすべてを握りつぶし、地割れを閉じていた。
エウロペの領土は長靴の形をした半島であり、海に面していた。
そのため魔法で起こした大地震によって、通常の地震のように海から大津波が押し寄せてきたが、ピノアの「進撃のバームクーヘン」によって津波はすべて無効化されていた。
「災害系の魔法は心の準備がいるからやめろー!」
ピノアが怒っていた。
彼女は地震と雷と火事と、おふざけをしすぎて怒らせてしまったときの親父(サトシ)が大の苦手だった。
あと、お化け。
イルルが竜巻や大地震を起こすとわかった瞬間、ピノアが五人全員にバリアをはり、その背中に風の精霊の魔法で天使の羽根を生やしていたため、五人は被害を被ることはなかったわけだが、
「キミならとっさにこうしてくれるだろうとわかっていたからね。
ステラやレンジだけじゃなく、ボクともこうやってちゃんと連携がとれるようになってくれて嬉しいよ」
「なんか上から目線でむかつく」
ふたりは、なんだかんだ言いながらもうれしそうにしていた。
だが、イルル以上の人災を起こそうとしているものがいた。
サタナハマアカはその胸部を開き、かつてエウロペの飛空艇「エゥデュリケ」の主砲であったものを出現させたのだ。
「余剰次元エーテル超弦理放射砲『カラビ・ヤウ』、超拡散発射します」
翡翠色の無数の光の矢を発射した。
数万の異形の軍隊は、たったそれだけで、ほぼ壊滅した。
「イルル、ごめん……あいつのほうがやべーやつだった……」
「ボクは、キミも充分すぎるくらいやばいやつ、だという自覚をいい加減持ってほしいよ……」
三人の超弩級災害レベルの攻撃をなんとか避けた異形の兵がサクラに飛びかかってきたが、
「二刀流・二重魔法剣『雷火』」
サクラはそれを魔法剣で見事仕留めた。
それだけでなく、後方にいた異形の兵たちもまた雷と炎によって灰になっていた。
「レンジよりもすごい威力じゃん」
ピノアが驚くほどだった。
ナユタもまた、異形の兵たちと対峙していた。八匹に囲まれていた。
この世界に存在する母と同一人物の女王から与えられた力は、まだ完全には扱うことはできなかった。
世界の理を変える力を今の状態で使えば暴走させてしまいかねない。
だから、まだあの力は使えない。
不思議と恐怖は感じなかった。
負ける気もしなかった。
魔法は使えない。
武器の扱い方もよくわからない。
だが、はるか遠い地に龍脈の力を感じていた。
シャーマニズムや陰陽道が、彼には使えるようになっていた。
彼は襲いかかってきた異形の兵たちの攻撃をいなすようにかわし、
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在……」
両手の指の形を様々に変化させながら、九字護身法という陰陽道の技を浴びせていた。
指先で身体の一部を触れられただけの異形の者たちにはダメージはなかったが、
「前」
と彼が口にすると、八匹の異形の兵たちは爆散した。
「何だ? あの技……」
今度はイルルが驚いていた。
「セーメーが使ってた技だよ。セーメーよりすごいかも」
ピノアの言葉に、
「陰陽道というわけか」
イルルは感心していた。
数万の異形の兵たちは、たった五人を相手に、わずか数分で壊滅していた。
「ピノアちゃん無双BASARA、ステージクリア!」
ピノアはそう言ったが、その顔は悲しそうだった。
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