もしも、えっちなことをしてる途中で異世界転移しちゃったら。【異世界転移奇譚 NAYUTA 1~】

雨野 美哉(あめの みかな)

文字の大きさ
上 下
13 / 123

第13話 見えている世界と住んでいる世界

しおりを挟む
 同じ世界を見ていても、見えている情報が違う、か。
 ピノアは思った。
 それは目だけじゃないんだよ。耳もなんだよ、と。
 言う方も寂しいだろうけど、言われる方も寂しいんだよ。
 それを好きな人に言われるたびに、見ている世界だけじゃなくて、住んでる世界まで違うって言われるような気持ちになるんだよ。

 レンジにはステラがいて、サクラがいる。
 ステラにはレンジがいて、サクラがいる。
 自分にはナユタがいて、サクラがいる。

 ピノアには、イルルが何をするかくらい、わかっていた。

 ランスやゲルマーニやアストリアが欲しがっているのは、レンジの首じゃない。

 だから、イルルはステラになりすまし、自分以外のエウロペの人々をレンジやナユタの世界に飛ばすつもりなのだ。

 でも、本当に欲しがってるのはステラの首じゃない。
 エウロペの女王がジパングのふたりの女王から奪ったと思い込んでいる、世界の理を変える力だ。

 イルルにそんなことをさせたくなかった。
 彼女は、ピノアに憧れて、ピノアを超えようと、ずっと努力してきた子だった。
 魔法が失われることさえなかったら、きっと彼女はピノアを超えていた。

 サクラやナユタと笑って会話をしながら、国の危機について考えられてしまう自分が嫌だった。


「ピノアちゃん、どうしたの? さっきから変だよ?」

 うまくふるまっていたつもりだったけど、ナユタには見破られてしまっていた。
 この子は本当にすごい。
 サクラは何も気づいていなかったのに。

「サクラちゃん、ごめんね。
 ぼくらさっき、ステラさんに全裸で正座させられてたから、ピノアちゃん、ちょっと具合悪いみたい」

 ナユタはそう言うと、ピノアを抱き上げた。
 お姫様だっこされてしまった。

「ピノアちゃんの部屋ってどこ?」

 ふたりは、サクラの部屋を後にした。


「ぼくたちがサクラちゃんの部屋にいる間に何かあったみたいだね。
 ぼくやサクラちゃんには聞こえなかったけど、ピノアちゃんにはそれが聞こえてた。
 だから、様子がおかしかったんだよね。
 なんとなく、わかるんだ。ピノアちゃんのことなら。
 あっちの世界にいたときより、こっちの世界に来てからの方がわかるようになった」

 昔はだっこしてあげて、おっぱいまであげてたのに(出なかったけど)、今はナユタにだっこされている。
 不思議な感覚だった。

「この世界の魔法を消したのは、ピノアちゃんだよね?」

 そんなことまでわかるんだなと思った。

「ピノアちゃんやステラさんやレンジさん、サトシさん、ショウゴさん、イルルさん……
 それに父さんとミカナちゃんもかな……
 17年前にこの世界を滅亡の危機から救った後、ピノアちゃんはサトシさんや父さんたちをあっちの世界に帰した。
 魔法やエーテルや精霊の存在は、争いの火種にしかならないとピノアちゃんは考えた。
 だから精霊たちと話をして、世界から魔法を消失させた。
 でも、魔法よりも強い力が世界には残ってしまった。
 それが『世界の理を変える力』。
 ステラさんが、さっき『あっちの世界のマヨリ』って言ってた。
 この世界には、日本みたいな国があって、ぼくの母さんと同じ名前と顔を持つ人がその国を治めてるんだよね。
 その人がその力を持っていた。
 だから命を狙われた。
 ぼくとピノアちゃんは、この世界の新たな危機に対抗するために、その人に呼ばれたんだろうね」

 ナユタは、ピノアのことがわかるだけじゃなく、ピノアの知らないことまでを知っていた。

「ナユタ、今、どこかにアクセスしてる感じある?
 すごくたくさんの情報があるような場所……」

「うん……なんとなく。
 まだうまく使えないみたいだけど。
 たぶん、こっちの世界の母さんが、自分が持ってた力をぼくにくれたんだね」


 ピノアは、大気中にエーテルの存在を感じた。
 星と一体化した精霊たちが、再び世界に現れたのを感じた。

「ピノアちゃんが魔法が使えるようにさえなれば、レンジさんやイルルさんが考えてるような、大切な人たちのために自分の命を犠牲にすること、止められるよね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。 戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。 で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

母娘丼W

Zu-Y
恋愛
 外資系木工メーカー、ドライアド・ジャパンに新入社員として入社した新卒の俺、ジョージは、入居した社宅の両隣に挨拶に行き、運命的な出会いを果たす。  左隣りには、金髪碧眼のジェニファーさんとアリスちゃん母娘、右隣には銀髪紅眼のニコルさんとプリシラちゃん母娘が住んでいた。  社宅ではぼさぼさ頭にすっぴんのスウェット姿で、休日は寝だめの日と豪語する残念ママのジェニファーさんとニコルさんは、会社ではスタイリッシュにびしっと決めてきびきび仕事をこなす会社の二枚看板エースだったのだ。  残業続きのママを支える健気で素直な天使のアリスちゃんとプリシラちゃんとの、ほのぼのとした交流から始まって、両母娘との親密度は鰻登りにどんどんと増して行く。  休日は残念ママ、平日は会社の二枚看板エースのジェニファーさんとニコルさんを秘かに狙いつつも、しっかり者の娘たちアリスちゃんとプリシラちゃんに懐かれ、慕われて、ついにはフィアンセ認定されてしまう。こんな楽しく充実した日々を過していた。  しかし子供はあっという間に育つもの。ママたちを狙っていたはずなのに、JS、JC、JKと、日々成長しながら、急激に子供から女性へと変貌して行く天使たちにも、いつしか心は奪われていた。  両母娘といい関係を築いていた日常を乱す奴らも現れる。  大学卒業直前に、俺よりハイスペックな男を見付けたと言って、あっさりと俺を振って去って行った元カノや、ママたちとの復縁を狙っている天使たちの父親が、ウザ絡みをして来て、日々の平穏な生活をかき乱す始末。  ママたちのどちらかを口説き落とすのか?天使たちのどちらかとくっつくのか?まさか、まさかの元カノと元サヤ…いやいや、それだけは絶対にないな。

処理中です...