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第13話 見えている世界と住んでいる世界
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同じ世界を見ていても、見えている情報が違う、か。
ピノアは思った。
それは目だけじゃないんだよ。耳もなんだよ、と。
言う方も寂しいだろうけど、言われる方も寂しいんだよ。
それを好きな人に言われるたびに、見ている世界だけじゃなくて、住んでる世界まで違うって言われるような気持ちになるんだよ。
レンジにはステラがいて、サクラがいる。
ステラにはレンジがいて、サクラがいる。
自分にはナユタがいて、サクラがいる。
ピノアには、イルルが何をするかくらい、わかっていた。
ランスやゲルマーニやアストリアが欲しがっているのは、レンジの首じゃない。
だから、イルルはステラになりすまし、自分以外のエウロペの人々をレンジやナユタの世界に飛ばすつもりなのだ。
でも、本当に欲しがってるのはステラの首じゃない。
エウロペの女王がジパングのふたりの女王から奪ったと思い込んでいる、世界の理を変える力だ。
イルルにそんなことをさせたくなかった。
彼女は、ピノアに憧れて、ピノアを超えようと、ずっと努力してきた子だった。
魔法が失われることさえなかったら、きっと彼女はピノアを超えていた。
サクラやナユタと笑って会話をしながら、国の危機について考えられてしまう自分が嫌だった。
「ピノアちゃん、どうしたの? さっきから変だよ?」
うまくふるまっていたつもりだったけど、ナユタには見破られてしまっていた。
この子は本当にすごい。
サクラは何も気づいていなかったのに。
「サクラちゃん、ごめんね。
ぼくらさっき、ステラさんに全裸で正座させられてたから、ピノアちゃん、ちょっと具合悪いみたい」
ナユタはそう言うと、ピノアを抱き上げた。
お姫様だっこされてしまった。
「ピノアちゃんの部屋ってどこ?」
ふたりは、サクラの部屋を後にした。
「ぼくたちがサクラちゃんの部屋にいる間に何かあったみたいだね。
ぼくやサクラちゃんには聞こえなかったけど、ピノアちゃんにはそれが聞こえてた。
だから、様子がおかしかったんだよね。
なんとなく、わかるんだ。ピノアちゃんのことなら。
あっちの世界にいたときより、こっちの世界に来てからの方がわかるようになった」
昔はだっこしてあげて、おっぱいまであげてたのに(出なかったけど)、今はナユタにだっこされている。
不思議な感覚だった。
「この世界の魔法を消したのは、ピノアちゃんだよね?」
そんなことまでわかるんだなと思った。
「ピノアちゃんやステラさんやレンジさん、サトシさん、ショウゴさん、イルルさん……
それに父さんとミカナちゃんもかな……
17年前にこの世界を滅亡の危機から救った後、ピノアちゃんはサトシさんや父さんたちをあっちの世界に帰した。
魔法やエーテルや精霊の存在は、争いの火種にしかならないとピノアちゃんは考えた。
だから精霊たちと話をして、世界から魔法を消失させた。
でも、魔法よりも強い力が世界には残ってしまった。
それが『世界の理を変える力』。
ステラさんが、さっき『あっちの世界のマヨリ』って言ってた。
この世界には、日本みたいな国があって、ぼくの母さんと同じ名前と顔を持つ人がその国を治めてるんだよね。
その人がその力を持っていた。
だから命を狙われた。
ぼくとピノアちゃんは、この世界の新たな危機に対抗するために、その人に呼ばれたんだろうね」
ナユタは、ピノアのことがわかるだけじゃなく、ピノアの知らないことまでを知っていた。
「ナユタ、今、どこかにアクセスしてる感じある?
すごくたくさんの情報があるような場所……」
「うん……なんとなく。
まだうまく使えないみたいだけど。
たぶん、こっちの世界の母さんが、自分が持ってた力をぼくにくれたんだね」
ピノアは、大気中にエーテルの存在を感じた。
星と一体化した精霊たちが、再び世界に現れたのを感じた。
「ピノアちゃんが魔法が使えるようにさえなれば、レンジさんやイルルさんが考えてるような、大切な人たちのために自分の命を犠牲にすること、止められるよね」
ピノアは思った。
それは目だけじゃないんだよ。耳もなんだよ、と。
言う方も寂しいだろうけど、言われる方も寂しいんだよ。
それを好きな人に言われるたびに、見ている世界だけじゃなくて、住んでる世界まで違うって言われるような気持ちになるんだよ。
レンジにはステラがいて、サクラがいる。
ステラにはレンジがいて、サクラがいる。
自分にはナユタがいて、サクラがいる。
ピノアには、イルルが何をするかくらい、わかっていた。
ランスやゲルマーニやアストリアが欲しがっているのは、レンジの首じゃない。
だから、イルルはステラになりすまし、自分以外のエウロペの人々をレンジやナユタの世界に飛ばすつもりなのだ。
でも、本当に欲しがってるのはステラの首じゃない。
エウロペの女王がジパングのふたりの女王から奪ったと思い込んでいる、世界の理を変える力だ。
イルルにそんなことをさせたくなかった。
彼女は、ピノアに憧れて、ピノアを超えようと、ずっと努力してきた子だった。
魔法が失われることさえなかったら、きっと彼女はピノアを超えていた。
サクラやナユタと笑って会話をしながら、国の危機について考えられてしまう自分が嫌だった。
「ピノアちゃん、どうしたの? さっきから変だよ?」
うまくふるまっていたつもりだったけど、ナユタには見破られてしまっていた。
この子は本当にすごい。
サクラは何も気づいていなかったのに。
「サクラちゃん、ごめんね。
ぼくらさっき、ステラさんに全裸で正座させられてたから、ピノアちゃん、ちょっと具合悪いみたい」
ナユタはそう言うと、ピノアを抱き上げた。
お姫様だっこされてしまった。
「ピノアちゃんの部屋ってどこ?」
ふたりは、サクラの部屋を後にした。
「ぼくたちがサクラちゃんの部屋にいる間に何かあったみたいだね。
ぼくやサクラちゃんには聞こえなかったけど、ピノアちゃんにはそれが聞こえてた。
だから、様子がおかしかったんだよね。
なんとなく、わかるんだ。ピノアちゃんのことなら。
あっちの世界にいたときより、こっちの世界に来てからの方がわかるようになった」
昔はだっこしてあげて、おっぱいまであげてたのに(出なかったけど)、今はナユタにだっこされている。
不思議な感覚だった。
「この世界の魔法を消したのは、ピノアちゃんだよね?」
そんなことまでわかるんだなと思った。
「ピノアちゃんやステラさんやレンジさん、サトシさん、ショウゴさん、イルルさん……
それに父さんとミカナちゃんもかな……
17年前にこの世界を滅亡の危機から救った後、ピノアちゃんはサトシさんや父さんたちをあっちの世界に帰した。
魔法やエーテルや精霊の存在は、争いの火種にしかならないとピノアちゃんは考えた。
だから精霊たちと話をして、世界から魔法を消失させた。
でも、魔法よりも強い力が世界には残ってしまった。
それが『世界の理を変える力』。
ステラさんが、さっき『あっちの世界のマヨリ』って言ってた。
この世界には、日本みたいな国があって、ぼくの母さんと同じ名前と顔を持つ人がその国を治めてるんだよね。
その人がその力を持っていた。
だから命を狙われた。
ぼくとピノアちゃんは、この世界の新たな危機に対抗するために、その人に呼ばれたんだろうね」
ナユタは、ピノアのことがわかるだけじゃなく、ピノアの知らないことまでを知っていた。
「ナユタ、今、どこかにアクセスしてる感じある?
すごくたくさんの情報があるような場所……」
「うん……なんとなく。
まだうまく使えないみたいだけど。
たぶん、こっちの世界の母さんが、自分が持ってた力をぼくにくれたんだね」
ピノアは、大気中にエーテルの存在を感じた。
星と一体化した精霊たちが、再び世界に現れたのを感じた。
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