上 下
10 / 123

第10話 もしもえっちなことをしてる最中に異世界転移しちゃったら ⑤

しおりを挟む
 エウロペの王女、サクラ・アキツキ・ダハーカは、一週間ほど前に行方不明になった大好きな叔母のピノアが無事帰ってきてくれて本当に嬉しかった。

 けれど、女王である母のステラからしばらく部屋にいるように言われてしまい、早一時間が経過していた。

 あの時見た光景はなんだったのだろう。

 ピノアは、サクラと同い年くらいの知らない男の子と裸でいっしょにいて、その男の子の上に、まるで馬にまたがるような体勢をしていた。

 なんだかとても気持ち良さそうな顔をしていたし、かわいい声を出していた。

 あんなピノアを見たのははじめてだった。

 そして、

「はぇ? ……え、えっ、ええー、サクラ!?」

「……うん、サクラだけど。
 ピノアちゃん、何してるの?」

「あ、えーっと……せ、せっくす?
 こ、こうすると赤ちゃんできるんだよ!!」

 確か、そう言っていた。

 赤ちゃんができるということは、新しい命を授かるということだった。
 とても素敵で素晴らしいことのはずなのに、ピノアはなんだかとても焦っているように見えた。

 まるで、見られてはいけないものを見られてしまったような。


 ピノアは、世界中のいろんな国からえっちな服を取り寄せては(国のお金で)、それを幼い頃からサクラによく着せて写真を撮るのが趣味だった。

 主に極西の竜の形をした島国、ジパングから取り寄せたものが多かった。
ジパングでは2~30年ほど前に服飾革命というものが起きており、世界で最も衣類が発達した国だった。
 かつて父が異世界からこの国にやってきたように、異世界からジパングにやってきた女の子が服飾革命を起こしたという。

 その女の子は、この世界にはなかったブラジャーやパンティーと言った下着や、冬になると本当に助かるヒートテックなどを発明した。
 ブラジャーはさらに、脇のお肉を胸に寄せて上げるブラや、フロントホックのものができたりした。
 キャミソールやベビードール、ブラパッド、矯正下着、ニーハイやルーズソックス、さらにはシューズや、ローファー、ハイヒール、ローラー付きシューズといったものも生まれた。

 それから、ジパングではそれらが普段着なのかそれとも正装なのかはわからなかったが、セーラー服やブレザー、体操服にブルマ、スクール水着(旧式。新はない)、メイド服、ゴスロリ、甘ロリ、アキバ風アイドル衣装、ビキニにマイクロビキニ、それをはるかに超えるナノビキニ等といったものを次々と生み出し、さらにそれらを着物とかけあわせたりなどさまざまな衣服を生み出した。

 基本的に肌の露出が多い服が多く、中には大事なところが隠れてるだけというものもあった。

 それらを着させられ恥ずかしがるサクラに、ピノアは「いいよ、いい表情だよ!」とよだれをたらしながら言い、スマホというマキナでバシャバシャ写真を撮った。
 そして、「お父さんとお母さんには内緒だよ。げへへ」といって、たくさんおこづかい(国のお金)をくれるのが趣味なおかしな人だった。

 でも、いつもサクラをかわいく撮ってくれた。

 そのことが母にバレたときよりも、さきほどのピノアは気まずそうな顔をしていた。

 ピノアには子どもはいないが、父と母には自分がいる。
 サクラは17歳になったばかりだが、母が彼女を産んでくれたのは、今のサクラと同じ年だった。

 赤ちゃんを作ることは、命を授かるということは、ピノアが見られては困るものを見られてしまったという顔で焦っていたように、恥ずかしいことなのだろうか?
 とても素敵で素晴らしいことではないのだろうか?

 母は父と、ピノアと同じようなことをして、自分を産んでくれたはずだが、そのときも、そういう気持ちだったのだろうか?


 それに、せっくす、とはいったい何なのだろう。
 赤ちゃんができる行為だとピノアは言っていたが、何度あのときのことを思い出しても、ピノアの身体の赤ちゃんが産まれてくるところに、男の子のおちんちんが入っていた。

 あれは入っていたのだろうか。
 それとも刺さっていたのだろうか。

 そもそもおちんちんは、おしっこがでるものではなかったろうか。
 あれは、おちんちんだったのだろうか。


 思春期の女の子というものは、父親を嫌うものだと聞いたことがあったが、サクラはいわゆるお父さん子であり、父のことが大好きだった。

 今でも隙あればお風呂にいっしょに入っていた。

 父のおちんちんを見たことは何度もある。

 しかし、父のそれは、あの男の子のように、大きくもなければ太くもなかった。

 やはりあれは、おちんちんではない。

 では、あれは一体……


 そんなことを一時間あまり延々と考えていると、部屋のドアがノックされた。

「サクラ、待たせてごめんね」

 ピノアの声だった。

 サクラは慌ててドアを開けた。

「ステラおばさんのお説教が長くてさぁ。やっと解放されたよ」

 ぶっ、とピノアの後ろにいた男の子が吹き出した。
 何が面白かったのだろうか。
 ステラおばさん、だろうか。

「おかえり、ピノアちゃん」

 サクラはふたりを部屋に招き入れようとすると、

「紹介するね、わたしの彼氏。
 雨野ナユタっていうの。
 わたしね、サクラのお父さんのレンジが生まれた世界にしばらく行ってたんだ。
 ナユタはレンジとおんなじで、あっちの世界の子」

「はじめまして。ナユタです。
 ピノアちゃんから写真を見せてもらったことがあるけど、実物の方がずっとかわいいね」


 はじめて両親や叔母や城の人たち以外の男の子からかわいいって言われた。
 すごく嬉しかった。
 けれどサクラは人見知りをする女の子だったから、ありがとう、と言いたくても言えなかった。

 ナユタという名前の男の子の顔を、サクラはそのとき、はじめてしっかりと、でも目を合わせることはできなかったから、少しだけ見た。

 かっこよかった。
 それに、優しそうで、頭がよさそうだった。

 ピノアのことを好きになった男の人はたくさんいたと聞いたことがあった。
 彼女はいろいろあって4000年くらい生きていて、人だけではなくかつては精霊たちかも溺愛され、甘やかされていたという。

 サクラから見ても、ピノアはかわいい。
 母のことも憧れていたが、どちらかというとピノアへの憧れが強かった。

 歴史上の偉人にもピノアを愛した人がいた。
 2000年前にいた神の子、アンフィス・バエナ・イポトリルや、それから1000年前のジパングにいた陰陽師アベノ・セーメーが有名だった。

 けれど、ピノアが好きになったのは、父だけだった。
 母と結婚し、サクラが産まれても、彼女はずっと父だけを見ていた。

 そんな彼女が、父ではない人を好きになり、その人も彼女を選んだ。

 ナユタという男の子は、きっと父よりも素敵な人で、父よりもサクラの大好きなピノアの良いところをいっぱい知っていたから、ピノアを好きになったのだろうな、と思った。

 良かったね、ピノアちゃん。
 おめでとう。

 そう言いたかったが、もう一度ナユタの顔を見たら、何故か胸が苦しくなった。

 サクラは、そのときナユタに対して芽生えた感情が何なのか、まだ知らなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。 戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。 で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...