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最終話 後編
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一連の様子をモニタリングしていた13評議会の面々の反応はさまざまだった。
「来るべき約束の時がついに訪れたようだ」
突如現れた超巨大宇宙戦艦に絶望する者。
「我々の二千年の悲願がここに」
マスカレイドアバターとして覚醒しつつある学の存在を喜ぶ者。
「結局、覚醒を遂げたのはあの忌々しい男の息子であったか……」
それを良くは思わない者。
「しかし、それでいい」
すべてを受け入れる者。
「我々の役目は終わった。あとはあの青年にまかせるとしよう」
しかし、彼らにも予想外の事象が起きていた。
「!? タイプゼロがまだ……!」
「なんだと!?」
息絶えていたはずの日向葵がゆっくりと起き上がった。
「いてて……。まったく、最期の最期まで君たちはおもしろい玩具だったね」
腹部に大きな穴があいていたが、日向葵はまるで、かすり傷程度を負ったかのように笑いながらそう言った。
腹部の穴の下のその腰には、さらなるベルトがあった。
「どうして……」
蓮治が言った。どうしてまだ生きているのか。どうしてまだベルトが存在するのか。蓮治には何もわからなかった。
「加藤学、一応の覚醒をとげた君ならもうわかっているだろう? タイプゼロの部位が四八個だけに分けられたわけじゃなかったということ」
学はうなづいた。
「本当は一〇八個に分けられていた」
日向葵は嬉しそうに微笑んだ。
「ご名答。そこの彼が一〇八の武器に分離するようにね。そしてぼくは、生まれながらに残りの六〇の部位を所持している」
それは彼がはじめて見せる、作り物の笑顔ではなく、本物の笑顔だった。その顔は不気味なほど美しかった。
「……そんな、まさか……」
絶望的だった。蓮治は震えた。四八の部位を手にしたミサですら、変身もしていないのにあの強さだったのだ。日向葵はさらに十二の部位を所持しているという。そして腰にはベルトがある。変身した彼が一体どれほどの力を持っているか想像すらできなかった。
日向葵は空を見上げた。そこには超巨大宇宙戦艦があった。
「どうやらマザーのお迎えが来たようだ。さっさと君を殺して、ぼくは一〇八のすべての部位を手に入れ、あの船と融合する。ぼくはこの星を旅立つ。イエスがかつて旅立ったようにね。タイプゼロの一〇八の部位は来るべき約束の時に、宇宙のすべてを手に入れるためのキーだったんだ。さぁ、正真正銘最後の戦いを始めようか」
そう言って、日向葵はベルトのバックルに手をかざした。
「システム起動、アルファ・オメガ!」
ベルトが、「全て」そして「永遠」という意味の言葉を発した。
「変……身!」
「マスカレイドアバター!!!!」
マスカレイドアバターアルファ・オメガの降臨だった。
アルファ・オメガは40メートルはある巨大なマスカレイドアバターだった。
それが超巨大宇宙宇宙戦艦マザーを背に立っていた。
「嘘だろ……こんなのに勝てるのかよ……」
「力を貸してくれ蓮治」
絶望する蓮治に、学は言った。
「力を貸せって言ったって……」
蓮治は不思議だった。圧倒的なアルファ・オメガの姿を目の当たりにしても、学の顔には勝機があるように見えたからだった。
「お前の全身の武器を貸してくれ」
学の考えていることが、彼にはなんとなくだがわかった。
「そうか……わかった……。あとはお前にまかせる」
だから彼にすべて任せることにした。
蓮治の体が、再び一〇八の武器に分かれ、空中に飛散した。
「はじめて俺の名前を呼んでくれたな。嬉しいぜ加藤学。なぁ、生き残ることができたら、友達になってくれるか? 俺の最初の友達に」
飛散した一〇八の武器がアルファ・オメガを包囲する。
「ああ……こちらこそよろしく頼むよ」
「……ありがとう」
学はベルトを腰に装着した。
「システム起動、アンサーソング!」
学はミサの死体を見た。家にいる麻衣のことを思った。負けられない。
「見ててくれ。これが俺の最後の変身だ! 変身!」
「マスカレイドアバター!!!!!!!!!」
ベルトから鳴り響く音声が鳴り止むのを待たず、新たなマスカレイドアバター、アンサーに変身しながら学は高く飛んだ。
そして空中に浮かんだ蓮治の一〇八の武器を次々に手に取り、シックスナインに一〇八回の連続攻撃を浴びせた。
それは一〇八回の核攻撃に等しい攻撃だった。
「馬鹿な……このぼくが……負ける……?」
悲痛な声を上げるアルファ・オメガに、学は最後の一撃を与えるべく、さらに高く飛んだ。
暴走したベルセルクと戦ったときに手にした日本刀、それが今、学の手にはあった。
「それは……天叢雲剣……」
シックスナインがその日本刀の名を呼んだ。
「お前ならこいつが本当は何と呼ばれていたかわかるだろう?」
学はそう言って、天叢雲剣を振りかざした。
──マスカレイドアバターが日本刀を持ってるなんて珍しいよな。
暴走したベルセルクとの戦いの途中、学はミサとそんな話をした。
──たぶんそれは天叢雲剣よ。別名草薙の剣。
──それってこの国の三種の神器のひとつだろ? それに確か、草薙の剣は壇ノ浦の戦いで水没したって……。
──この国の歴史では天叢雲剣は四本あるのよ。
平家滅亡の折に、平時子が腰に差して入水し、そのまま上がっていないものがまずひとつ。
安徳天皇の都落ち後に即位した後鳥羽天皇は、その後も捜索を命じたが結局発見されず、以前に伊勢神宮の神庫から後白河法皇に献上されていた剣を形代の剣としたとされているわ。
南北朝時代に後醍醐天皇が敵を欺くために偽造品を作らせたことがあったといわれていて、また室町時代には南朝の遺臣らによって勾玉とともに強奪されたことがあったのだけれど、なぜか剣だけが翌日に清水寺で発見され回収された。これが現在の皇居の吹上御所の「剣璽の間」に安置されている剣。
さらに神話の記述の通りであれば熱田神宮の奥深くに神体として安置されているものが存在するの。
──それって五本ない?
──四本よ。おそらく壇ノ浦で水没したものはダミーだったの。二つ目が本物だったんじゃないかしら。
皇居に安置されているものもレプリカ。
一本しかないはずの天叢雲剣が、現在熱田神宮と皇居に、二本ある。でも、どちらもダミー。
その刀がおそらく本物の天叢雲剣よ。
──証拠はあるのか?
──あなたはイエス・キリストが処刑された後、三日後に復活を遂げて、この日本に渡ったという説を知っている?
──知らないな。ありえないだろ。
──この説を、日本人ユダヤ人始祖説っていうのだけれど、そのときにイエスと共に日本にもたらされたもののひとつに、ロンギヌスの槍があったと言われているの。
──新世紀なんちゃらゲリオンのか?
──イエスの処刑に使われたという槍よ。
──それが一体何の関係があるんだ?
──ロンギヌスの槍は日本にもたらされ、この国の三種の神器のひとつである天叢雲剣になったと、その説にはあるのよ。
おそらくそれがロンギヌスの槍で、天叢雲剣だと思うわ。
ロンギヌスの槍には手にした者が世界をその手にできるという伝説があるの。太平洋戦争のときに、オカルト好きのアドルフ・ヒトラーが血眼になって探したっていう話だけれど、まさか同盟国の日本にあったとは彼は思いもよらなかったでしょうね。
「形状変化!」
学は叫んだ。
振りかざしていた天叢雲剣は一瞬で槍の姿になり、シックスナインの額を貫いた。
「ロンギヌスの槍……まさか君が持っていたなんて……うがあああああああ!!」
槍を持った学はアルファ・オメガの体を貫通し、地面に着地した。
元の姿に戻った蓮治が、学に駆け寄る。
「勝ったのか?」
「多分な……」
そう言って、学は変身を解除した。
「なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ! なぜぼくが貴様らのような虫けらに、人間ごときに……!」
しかしアルファ・オメガは変身こそ解けてしまっていたが、まだ日向葵、タイプゼロのクローンとして、生きていた。
「お前は一度でも自分の意志で生きたいと思ったことが、現状を変えたいと本気であがいたことがあるか?」
学は彼に問う。
「何を言っている、ぼくはすべてを持って生まれた神の子だぞ。そんな感情、持ち合わせているはずがないだろう」
「だからお前は俺たちに負けたんだ」
学は言った。
「……?」
理解できない、日向葵の顔はそう言っていた。
「ひきこもっていた間、俺はずっと変わりたいと思っていた。けれど、変わろうと本気であがいたことがなかった。だから十六年もの間何も変われなかった」
けれど今、学はやっと変われた気がしていた。
「何を言っているんだ?」
日向葵は言った。
世界を、妹を守りたい。だから学は変わることができた。
「まだわからないのか?」
蓮治が問う。
「わかりたくもない。ぼくは認めない、決して認めないぞ、ぼくが貴様らに敗北するなんて」
日向葵の体が崩れていく。
「それでもいいさ。わかりたくない、認めたくないなら、それでいい」
「けれど、お前はここで負ける」
日向葵は崩れ落ち、
「そうか……ぼくは死ぬのか……このぼくが……だけど負けたわけじゃない」
そう言い残して、彼は灰と化した。
「終わったか……」
蓮治が言った。
「いや、まだだ。これから始まるんだよ」
学はそう言って、空を見上げた。
空にはまだ超巨大宇宙戦艦、マザーが存在していた。
無数のガチャガチャのカプセルのようなものがマザーから射出されるのが見えた。それらは隕石のように地球の各地に落下した。
「今度はなんだ?」
無数のカプセルのうちの一つは学や蓮治のすぐそばに落下していた。
パカッという音と共にカプセルが開いて、中から新たなマスカレイドアバターが現れた。
「まじかよ……」
無数のカプセル、流星群のように地球に降り注ぐ。
「あれ全部がマスカレイドアバターなのか……?」
来るべき約束の時。
星間戦争が始まる。
「来るべき約束の時がついに訪れたようだ」
突如現れた超巨大宇宙戦艦に絶望する者。
「我々の二千年の悲願がここに」
マスカレイドアバターとして覚醒しつつある学の存在を喜ぶ者。
「結局、覚醒を遂げたのはあの忌々しい男の息子であったか……」
それを良くは思わない者。
「しかし、それでいい」
すべてを受け入れる者。
「我々の役目は終わった。あとはあの青年にまかせるとしよう」
しかし、彼らにも予想外の事象が起きていた。
「!? タイプゼロがまだ……!」
「なんだと!?」
息絶えていたはずの日向葵がゆっくりと起き上がった。
「いてて……。まったく、最期の最期まで君たちはおもしろい玩具だったね」
腹部に大きな穴があいていたが、日向葵はまるで、かすり傷程度を負ったかのように笑いながらそう言った。
腹部の穴の下のその腰には、さらなるベルトがあった。
「どうして……」
蓮治が言った。どうしてまだ生きているのか。どうしてまだベルトが存在するのか。蓮治には何もわからなかった。
「加藤学、一応の覚醒をとげた君ならもうわかっているだろう? タイプゼロの部位が四八個だけに分けられたわけじゃなかったということ」
学はうなづいた。
「本当は一〇八個に分けられていた」
日向葵は嬉しそうに微笑んだ。
「ご名答。そこの彼が一〇八の武器に分離するようにね。そしてぼくは、生まれながらに残りの六〇の部位を所持している」
それは彼がはじめて見せる、作り物の笑顔ではなく、本物の笑顔だった。その顔は不気味なほど美しかった。
「……そんな、まさか……」
絶望的だった。蓮治は震えた。四八の部位を手にしたミサですら、変身もしていないのにあの強さだったのだ。日向葵はさらに十二の部位を所持しているという。そして腰にはベルトがある。変身した彼が一体どれほどの力を持っているか想像すらできなかった。
日向葵は空を見上げた。そこには超巨大宇宙戦艦があった。
「どうやらマザーのお迎えが来たようだ。さっさと君を殺して、ぼくは一〇八のすべての部位を手に入れ、あの船と融合する。ぼくはこの星を旅立つ。イエスがかつて旅立ったようにね。タイプゼロの一〇八の部位は来るべき約束の時に、宇宙のすべてを手に入れるためのキーだったんだ。さぁ、正真正銘最後の戦いを始めようか」
そう言って、日向葵はベルトのバックルに手をかざした。
「システム起動、アルファ・オメガ!」
ベルトが、「全て」そして「永遠」という意味の言葉を発した。
「変……身!」
「マスカレイドアバター!!!!」
マスカレイドアバターアルファ・オメガの降臨だった。
アルファ・オメガは40メートルはある巨大なマスカレイドアバターだった。
それが超巨大宇宙宇宙戦艦マザーを背に立っていた。
「嘘だろ……こんなのに勝てるのかよ……」
「力を貸してくれ蓮治」
絶望する蓮治に、学は言った。
「力を貸せって言ったって……」
蓮治は不思議だった。圧倒的なアルファ・オメガの姿を目の当たりにしても、学の顔には勝機があるように見えたからだった。
「お前の全身の武器を貸してくれ」
学の考えていることが、彼にはなんとなくだがわかった。
「そうか……わかった……。あとはお前にまかせる」
だから彼にすべて任せることにした。
蓮治の体が、再び一〇八の武器に分かれ、空中に飛散した。
「はじめて俺の名前を呼んでくれたな。嬉しいぜ加藤学。なぁ、生き残ることができたら、友達になってくれるか? 俺の最初の友達に」
飛散した一〇八の武器がアルファ・オメガを包囲する。
「ああ……こちらこそよろしく頼むよ」
「……ありがとう」
学はベルトを腰に装着した。
「システム起動、アンサーソング!」
学はミサの死体を見た。家にいる麻衣のことを思った。負けられない。
「見ててくれ。これが俺の最後の変身だ! 変身!」
「マスカレイドアバター!!!!!!!!!」
ベルトから鳴り響く音声が鳴り止むのを待たず、新たなマスカレイドアバター、アンサーに変身しながら学は高く飛んだ。
そして空中に浮かんだ蓮治の一〇八の武器を次々に手に取り、シックスナインに一〇八回の連続攻撃を浴びせた。
それは一〇八回の核攻撃に等しい攻撃だった。
「馬鹿な……このぼくが……負ける……?」
悲痛な声を上げるアルファ・オメガに、学は最後の一撃を与えるべく、さらに高く飛んだ。
暴走したベルセルクと戦ったときに手にした日本刀、それが今、学の手にはあった。
「それは……天叢雲剣……」
シックスナインがその日本刀の名を呼んだ。
「お前ならこいつが本当は何と呼ばれていたかわかるだろう?」
学はそう言って、天叢雲剣を振りかざした。
──マスカレイドアバターが日本刀を持ってるなんて珍しいよな。
暴走したベルセルクとの戦いの途中、学はミサとそんな話をした。
──たぶんそれは天叢雲剣よ。別名草薙の剣。
──それってこの国の三種の神器のひとつだろ? それに確か、草薙の剣は壇ノ浦の戦いで水没したって……。
──この国の歴史では天叢雲剣は四本あるのよ。
平家滅亡の折に、平時子が腰に差して入水し、そのまま上がっていないものがまずひとつ。
安徳天皇の都落ち後に即位した後鳥羽天皇は、その後も捜索を命じたが結局発見されず、以前に伊勢神宮の神庫から後白河法皇に献上されていた剣を形代の剣としたとされているわ。
南北朝時代に後醍醐天皇が敵を欺くために偽造品を作らせたことがあったといわれていて、また室町時代には南朝の遺臣らによって勾玉とともに強奪されたことがあったのだけれど、なぜか剣だけが翌日に清水寺で発見され回収された。これが現在の皇居の吹上御所の「剣璽の間」に安置されている剣。
さらに神話の記述の通りであれば熱田神宮の奥深くに神体として安置されているものが存在するの。
──それって五本ない?
──四本よ。おそらく壇ノ浦で水没したものはダミーだったの。二つ目が本物だったんじゃないかしら。
皇居に安置されているものもレプリカ。
一本しかないはずの天叢雲剣が、現在熱田神宮と皇居に、二本ある。でも、どちらもダミー。
その刀がおそらく本物の天叢雲剣よ。
──証拠はあるのか?
──あなたはイエス・キリストが処刑された後、三日後に復活を遂げて、この日本に渡ったという説を知っている?
──知らないな。ありえないだろ。
──この説を、日本人ユダヤ人始祖説っていうのだけれど、そのときにイエスと共に日本にもたらされたもののひとつに、ロンギヌスの槍があったと言われているの。
──新世紀なんちゃらゲリオンのか?
──イエスの処刑に使われたという槍よ。
──それが一体何の関係があるんだ?
──ロンギヌスの槍は日本にもたらされ、この国の三種の神器のひとつである天叢雲剣になったと、その説にはあるのよ。
おそらくそれがロンギヌスの槍で、天叢雲剣だと思うわ。
ロンギヌスの槍には手にした者が世界をその手にできるという伝説があるの。太平洋戦争のときに、オカルト好きのアドルフ・ヒトラーが血眼になって探したっていう話だけれど、まさか同盟国の日本にあったとは彼は思いもよらなかったでしょうね。
「形状変化!」
学は叫んだ。
振りかざしていた天叢雲剣は一瞬で槍の姿になり、シックスナインの額を貫いた。
「ロンギヌスの槍……まさか君が持っていたなんて……うがあああああああ!!」
槍を持った学はアルファ・オメガの体を貫通し、地面に着地した。
元の姿に戻った蓮治が、学に駆け寄る。
「勝ったのか?」
「多分な……」
そう言って、学は変身を解除した。
「なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ! なぜぼくが貴様らのような虫けらに、人間ごときに……!」
しかしアルファ・オメガは変身こそ解けてしまっていたが、まだ日向葵、タイプゼロのクローンとして、生きていた。
「お前は一度でも自分の意志で生きたいと思ったことが、現状を変えたいと本気であがいたことがあるか?」
学は彼に問う。
「何を言っている、ぼくはすべてを持って生まれた神の子だぞ。そんな感情、持ち合わせているはずがないだろう」
「だからお前は俺たちに負けたんだ」
学は言った。
「……?」
理解できない、日向葵の顔はそう言っていた。
「ひきこもっていた間、俺はずっと変わりたいと思っていた。けれど、変わろうと本気であがいたことがなかった。だから十六年もの間何も変われなかった」
けれど今、学はやっと変われた気がしていた。
「何を言っているんだ?」
日向葵は言った。
世界を、妹を守りたい。だから学は変わることができた。
「まだわからないのか?」
蓮治が問う。
「わかりたくもない。ぼくは認めない、決して認めないぞ、ぼくが貴様らに敗北するなんて」
日向葵の体が崩れていく。
「それでもいいさ。わかりたくない、認めたくないなら、それでいい」
「けれど、お前はここで負ける」
日向葵は崩れ落ち、
「そうか……ぼくは死ぬのか……このぼくが……だけど負けたわけじゃない」
そう言い残して、彼は灰と化した。
「終わったか……」
蓮治が言った。
「いや、まだだ。これから始まるんだよ」
学はそう言って、空を見上げた。
空にはまだ超巨大宇宙戦艦、マザーが存在していた。
無数のガチャガチャのカプセルのようなものがマザーから射出されるのが見えた。それらは隕石のように地球の各地に落下した。
「今度はなんだ?」
無数のカプセルのうちの一つは学や蓮治のすぐそばに落下していた。
パカッという音と共にカプセルが開いて、中から新たなマスカレイドアバターが現れた。
「まじかよ……」
無数のカプセル、流星群のように地球に降り注ぐ。
「あれ全部がマスカレイドアバターなのか……?」
来るべき約束の時。
星間戦争が始まる。
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