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エピローグ(レインルート)

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 世界中に点在していた小さな集落は、やがて国となり文明を築いていった。
 それぞれの文明は、蒸気機関を元に超蒸気機関文明とでもいうべき発展を遂げていき、エーテルや原子力に頼ったかつての文明の過ちを繰り返すことはなかった。

 ふたりは、ユワがきっと自分たちの代わりに人類を正しく導いてくれているのだと思った。


 しかし、10万年が過ぎた頃、西の海に島がひとつ、東の海に大陸がふたつ、突如として現れた。

 それらは、11万2000年前に、外宇宙に存在するアリステラの母なる星へと転移したはずのアトランティス島やムー大陸、レムリア大陸だった。

 アリステラの母なる星は恒星の超新星爆発に巻き込まれ、すでに宇宙の塵となってしまっていたため、それらの文明は何もない宇宙空間に転移し滅亡したと思われていた。

 だが違った。

 3つの超古代文明を転移させた3人の賢者は、母なる星がすでに存在しないことを知っていたのだ。
 ヤルダバオト(=遣田ハオト)に騙されたふりをしていただけだったのだろう。

 3人の賢者は3つの超古代文明に対し、空間ではなく時間の転移を行っていた。
 そして、11万2000年の時を超えて、再びこの星にその姿を現したのだ。

 3つの超古代文明は、世界に再び終末の危機をもたらした。


「今度こそ世界が終わりますわね」

 窓の外を眺めながら、レインはタカミに言った。

「そうだね。きっとこうなる運命(さだめ)だったんだろうね」

 隣にいたタカミはレインにそう答えた。

 人類の枠組みから外れてしまったふたりにとって、人類の滅亡や世界の終焉といったことは、いつの間にか自分たちには関係のない事柄になってしまっていた。
 これからどんな災厄が世界に降りかかろうとも、ふたりが死んでしまうようなことはないからだった。

 ふたりは決して神のような存在になったわけではなかった。
 10万年の時を生き長らえてきたふたりは、身体は若く健康そのものであったが、その精神はとうに擦りきれかけていた。人類を見守り続けることに疲れてしまっていたのだ。
 ただ、それだけだった。


「ちょっとお兄ちゃん、いくらなんでもそれはあんまりなんじゃないの?」

 懐かしい声が聞こえた。

「レインさんもさー、この人ならお兄ちゃんを任せても大丈夫かなって思ったのに、何その感じ。感じ悪ぅ」

 ふたりの前に陽炎のようなゲートを超えて現れたのは、

「ふたりともわたしがいないと本当に駄目なんだから」

 機械仕掛けの身体と翼を持つ持つ、10万年前と全く変わらない姿をした少女だった。

「ほら、さっさと行くよ。
 ショウゴくんとかアンナさんとか、一条さんにハルミさんにソウジくん、アリステラの歴代の女王様たちと、それからあとあの遣田とかいう憎たらしい奴とか、色んな時代から戦力になりそうな人たちをかき集めてくるの、結構大変だったんだからね」

 少女はそう言って、ふたりに手を差し出すと、

「同窓会ついでに世界を救っちゃおうよ」

 にひひ、と嬉しそうに笑った。

 その笑顔につられて、ふたりも笑い、ゲートに勢いよく飛び込んだ。

 ふたりが笑ったのは、何万年ぶりかのことだった。
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