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第11章 第3話
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「それにしても、皮肉なものね。
アナスタシア=朝倉レインや『彼』が、新生アリステラから人類を守るために、人造人間兵士たちやその魔導人工頭脳を利用して、せっかくわたしたちを黄泉返らせてくれたというのに。
人類を救うどころか、女王同士が偶数翼の強硬派と奇数翼の穏健派に分かれて、新生アリステラや人類のことなんてお構いなしに、滅ぼし合おうとしているなんて」
彼、というのは自分のことだろうか。
青年は思った。
「本当にそうですよね……
アシーナ様もご存知の通り、わたしの名は、いずれはアリステラの女王になる者の名であるにも関わらず、アリステラの言葉で『人類の擁護者』や『人類の守護者』を意味します。
わたしの存在が、アリステラと人類の架け橋となるようにと、先代の女王が付けてくださったのですが……」
「まぁこの時代、アレクサって言ったら、すごく便利な家電製品みたいだけど」
「それは言わないでください!」
「アレクサ、着替えてる途中だけどカーテン全開にして」
「なんで露出狂!?」
「あ、着替えてるのもアレクサだから。アレクサが渋滞してるわね」
「はぁ……まったく、一体いつ、どこでそんな現代知識を覚えたんですか?」
「アマヤと戦ってたときに『彼』が言ってた女の子たちの名前、アンナとか? ユワとか? あと、何だったかな……とにかくその子たちの知識を覗いたの。並列化で。
彼女とかだったら嫌だなって、ちょっと気になったから。違ってたし、ふたりとももう死んでたし、アンナって子しか黄泉返ってなかったから、かーなーりー安心した」
「アシーナ様って、もし現代に生まれてたら、電話番号とかメールアドレスから気になる男子のSNSを特定するみたいなことしそうですよね」
「え? アレクサはしないの? 嘘でしょ? 普通するよね? 裏アカ見つけるまでやめないよね?」
大変微笑ましい(?)会話だったが、それをぶち壊す勢いでふたりがいる部屋(?)に駆け込んできた者がいた。
「アシーナ様、アレクサ様、敵襲です!」
ふたりの会話に割り込んだ3人目の女性はそう叫び、3人の間に緊張が走るのを、青年はどこにあるのかすらわからない肌でピリピリと感じた。
「そんな……まさか、偶数翼にもうこの場所が気付かれてしまったの!?」
「はい……アマラ様曰く、おそらくわたしたちの魔導人頭脳が持つ、情報の並列化による弊害だと……」
「アシーナ様、彼の肉体の修復には、まだ時間がかかります。
今ここを離れるわけには……」
「落ち着きなさい、アレクサ。
わたしが偶数翼の女王のふりをしていたように、奇数翼の女王もまた、こちらに潜り込んでいたというだけのこと。大したことじゃないわ」
「ですが……」
「それに、並列化による弊害というのは違うと思うわ。
翼と脚をひとつずつ、増やすか減らすかしたところで、騙せるのは所詮見た目だけ。並列化によって得られる情報は変わらないのだから」
「並列化によって、わたしたちは本来会話などしなくても、互いのすべてをわかりあえてしまう存在になった……
それなのに、わたしたちは機械ではなく人であろうとし、本来必要のない会話を楽しんでいたから……」
「そうね、並列化で情報を得られなくても、会話から得た情報を仲間に並列化させることはできるもの。
それが今回仇(あだ)となってしまったという方が正しいでしょうね。
それで、エーベル、敵の数は?」
3人目の女性は、どうやらエーベルという名前らしい。
アシーナやアレクサという女性を「様」付けで呼んでいることから、3人の中では一番立場が下なのだろう。
アシーナという人が一番偉く、アレクサという人がその次に偉いようだ。
「飛翔艇オルフェウスが一機、それも16年前にトルコのアララト山で人類によって残骸が発見された、10万年前の1番艦『エウリュディケ』です」
アナスタシア=朝倉レインや『彼』が、新生アリステラから人類を守るために、人造人間兵士たちやその魔導人工頭脳を利用して、せっかくわたしたちを黄泉返らせてくれたというのに。
人類を救うどころか、女王同士が偶数翼の強硬派と奇数翼の穏健派に分かれて、新生アリステラや人類のことなんてお構いなしに、滅ぼし合おうとしているなんて」
彼、というのは自分のことだろうか。
青年は思った。
「本当にそうですよね……
アシーナ様もご存知の通り、わたしの名は、いずれはアリステラの女王になる者の名であるにも関わらず、アリステラの言葉で『人類の擁護者』や『人類の守護者』を意味します。
わたしの存在が、アリステラと人類の架け橋となるようにと、先代の女王が付けてくださったのですが……」
「まぁこの時代、アレクサって言ったら、すごく便利な家電製品みたいだけど」
「それは言わないでください!」
「アレクサ、着替えてる途中だけどカーテン全開にして」
「なんで露出狂!?」
「あ、着替えてるのもアレクサだから。アレクサが渋滞してるわね」
「はぁ……まったく、一体いつ、どこでそんな現代知識を覚えたんですか?」
「アマヤと戦ってたときに『彼』が言ってた女の子たちの名前、アンナとか? ユワとか? あと、何だったかな……とにかくその子たちの知識を覗いたの。並列化で。
彼女とかだったら嫌だなって、ちょっと気になったから。違ってたし、ふたりとももう死んでたし、アンナって子しか黄泉返ってなかったから、かーなーりー安心した」
「アシーナ様って、もし現代に生まれてたら、電話番号とかメールアドレスから気になる男子のSNSを特定するみたいなことしそうですよね」
「え? アレクサはしないの? 嘘でしょ? 普通するよね? 裏アカ見つけるまでやめないよね?」
大変微笑ましい(?)会話だったが、それをぶち壊す勢いでふたりがいる部屋(?)に駆け込んできた者がいた。
「アシーナ様、アレクサ様、敵襲です!」
ふたりの会話に割り込んだ3人目の女性はそう叫び、3人の間に緊張が走るのを、青年はどこにあるのかすらわからない肌でピリピリと感じた。
「そんな……まさか、偶数翼にもうこの場所が気付かれてしまったの!?」
「はい……アマラ様曰く、おそらくわたしたちの魔導人頭脳が持つ、情報の並列化による弊害だと……」
「アシーナ様、彼の肉体の修復には、まだ時間がかかります。
今ここを離れるわけには……」
「落ち着きなさい、アレクサ。
わたしが偶数翼の女王のふりをしていたように、奇数翼の女王もまた、こちらに潜り込んでいたというだけのこと。大したことじゃないわ」
「ですが……」
「それに、並列化による弊害というのは違うと思うわ。
翼と脚をひとつずつ、増やすか減らすかしたところで、騙せるのは所詮見た目だけ。並列化によって得られる情報は変わらないのだから」
「並列化によって、わたしたちは本来会話などしなくても、互いのすべてをわかりあえてしまう存在になった……
それなのに、わたしたちは機械ではなく人であろうとし、本来必要のない会話を楽しんでいたから……」
「そうね、並列化で情報を得られなくても、会話から得た情報を仲間に並列化させることはできるもの。
それが今回仇(あだ)となってしまったという方が正しいでしょうね。
それで、エーベル、敵の数は?」
3人目の女性は、どうやらエーベルという名前らしい。
アシーナやアレクサという女性を「様」付けで呼んでいることから、3人の中では一番立場が下なのだろう。
アシーナという人が一番偉く、アレクサという人がその次に偉いようだ。
「飛翔艇オルフェウスが一機、それも16年前にトルコのアララト山で人類によって残骸が発見された、10万年前の1番艦『エウリュディケ』です」
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