ひとりの少女を守るために70億の命を犠牲になんてできないから、ひとりの少女を犠牲にしてみた結果、事態がさらに悪化した件。

あめの みかな

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第8章 第7話

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 タカミたちは、まずは女王に接触し、彼女がユワであるのかどうかを確かめる必要があった。

 だが、女王のそばにはおそらくハルミだけでなく、アリステラの民の末裔によって組織された親衛隊のようなものが存在するだろう。
 衛星写真から確認できた巨大な翡翠色の城の中に、一体どれだけの兵士がいるかもわからない。

 アリステラは人類に対しては疫病や天変地異による攻撃しか行ってはいない。
 しかし、城の中は別だ。

 女王を守る親衛隊や兵士たちは、おそらくレインが作って見せたようなヒヒイロカネの武器や防具で完全武装しているだろう。
 ヒヒイロカネによる武装に加え、エーテライズと呼ばれる魔法のようなものや、遣田ハオトが見せたような特殊能力で、侵入者であるタカミたちを全力で排除しようとしてくるだろう。
 全員が千年細胞を持っている可能性もあった。

 はっきり言って、自分は戦力外だった。
 ショウゴのように戦闘経験があるわけでもなく、相手の心を読み攻撃を先読みできたりもしない。
 レインは戦闘経験こそ皆無だが、タカミは彼女のようにエーテルの扱いに長けてはいない。
 足手まといだと言ってもいいだろう。
 自分がいることでショウゴやレインが自分のフォローにまわらざるをえなくなることが度々発生し、ふたりだけで攻め込んでもらう場合より、こちら側の戦力が落ちてしまうことは容易に想像がついた。
 ゲームのように使えないキャラクター(タカミ)には馬車の中にでもいてもらい、戦闘に参加させないといったことは現実では不可能なのだ。

 そもそも、あれはゲームの方がおかしいのだ。
 仲間が少なくとも7、8人、多いときには108人もいるというのに、世界の命運をかけた最後の戦いに、4、5人しか戦闘に参加できないというのは、どう考えてもおかしいと常々思っていた。
 あれは、あくまでシステム上の都合であったり、仲間全員が戦闘に参加することで起きるであろう処理落ちやフリーズを回避するといった理由でしかない。
 その気になれば世界を滅ぼすことさえも可能な魔王や邪神が、二度、三度と姿を変え全力を出してきたとしても、戦闘に参加できるだけの人数でなんとかなってしまう程度の強さにしか設定されていない。

 ゲームであれば、タカミの存在は、ショウゴを主人公とし、その仲間にレインがいるパーティに同行こそするものの戦闘には一切参加せず、ユワやハルミを説得するシーンにだけ登場してストーリーを盛り上げるだけのキャラクターだっただろう。

 だが、現実は違う。
 ユワやハルミを説得するためには、タカミはショウゴたちに同行するだけではなく、戦闘に参加せざるを得ない。
 そして、タカミは一番弱く、死にやすい。仲間に生き返らせてもらうこともできない。
 一度死んでしまったら、ショウゴやレイン、ユワやハルミたち、そしてこの世界がどんな行く末をたどるのかすら、見守ることさえできない。

「まったく、ぼくって奴は本当に使えないんだな……」

 城内の兵士や親衛隊の排除は、極力ショウゴとレインに任せるしかないだろう。
 汚れ仕事を他人に任せ、自分は高みの見物を決め込むようで最悪の気分だったが、そうせざるをえなかった。
 それを仕方がないで済ませてしまえるような無神経さがタカミにはなかった。

 なんとか生き延びて、女王の元にたどり着かなければいけなかった。
 女王がユワであるならば、タカミとショウゴのふたりで説得する。
 説得して、アリステラによる疫病や天変地異を止めさせる。
 ハルミについては一条がいない今、タカミがひとりで説得するしかない。
 ふたりとも必ず日本に、雨野市に連れ帰る。

 だが、もし説得が成功しなかったら?
 女王がユワではなかったら?

 そのときは、女王もハルミも殺すしかない。そうしなければ人類が滅びてしまう。
 ショウゴには、ユワはもちろん、ユワと同じ顔をした女王も殺すことはできないだろう。
 彼は今でもユワを想ってくれている。そんな彼に二度もユワを殺させたくはなかった。
 自分が野蛮なホモサピエンスを代表して、女王もハルミもアリステラも滅ぼすしかなかった。

 戦闘力が皆無なタカミでは返り討ちに遭うのがオチだが、なんとかするしかなかった。
 なんとかなるかどうかはやってみなければわからないが、策はすでにあった。
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