20 / 26
第20話
しおりを挟む
「宮沢さん、この間麻衣さんとアリスカフェに行かれたそうですね?
今度はぜひ私とふたりで大須に遊びにいきませんか?」
藤本花梨からのメールに誘われて、大須へと繰り出したのは翌週末の土曜のことだった。
「ただしその日は就活イベントの帰りのため、わたしはリクルートスーツ仕様になりますが……」
加藤麻衣や小島雪よりひとつ年上、3年生の藤本花梨はすでに就職活動中をはじめており、リクルートスーツで来るとのことだった。
面接ごっこ的な新しいプレイを開拓できるかもしれないと思ったのは内緒だ。
「普段の私を考えると斬新な格好になりますが、ピザデブ腐女子なのでスーツをレイプしてしまってる可能性が……」
レイプて。
21歳の女の子が男子とのメールのやりとりでレイプて。
しかし当日になって、やむにやまれぬ用事があり就活イベントを諦めた藤本花梨は私服でやってくると連絡があった。
やむにやまれぬ用事が何なのかは聞かないでおくことにした。
どうせろくでもない用事に決まっている。
しかし、藤本花梨も、加藤麻衣や小島雪に負けない、お洒落で小さくかわいらしい女の子で、
「なぜリクルートスーツで着てくれなかったんですか……」
それが俺の第一声だった。
本当に、面接ごっこ的な新しい遊びを開拓できたかもしれないのに!
「お酒でも飲みに行きましょう」
藤本花梨に誘われて、俺たちは再びコスプレカフェへ向かうことになった。
俺には前回行ったときにお気に入りの女の子ができていた。
あずまんが大王のちよちゃんのコスプレをしていた女の子だ。
家に帰ってから、ちゃんとネットで調べたのだがサコちゃんというらしい。
コモックへ向かう道中で、
「そういえば、加藤さんとずいぶん仲がいいみたいですけど、藤本さんも腐女子なんですか?」
という、俺の問いに、
「はい、腐女子です」
と平然と答える藤本花梨。
「というより、麻衣さんに腐女子を感染されました」
藤本花梨は笑いながら言った。
加藤麻衣が宇宙考古学研究会を乗っ取ってすぐ(藤本花梨は決してそんな言い方はしないが実際にはそう見るのが普通である)、藤本花梨のマンションにはBL同人誌が大量に詰め込まれたダンボール箱が送られてきたのだという。
「おかげさまで今では知識は麻衣さんにも負けませんよ」
藤本花梨は自慢げにそう言った。
「今にもレイプされそうな女の子を助けるとするじゃないですか。
『あのお名前を……』
そう訪ねられたりするじゃないですか。
わたしはそのときこう答えます。
『いえ、名乗るほどのものではありません。
ただの腐女子です!』」
意味不明なエピソードもさることながら、21歳の女の子が、レイプである。
今度はメールではなく、肉声でレイプである。
「消しゴムと鉛筆の関係がわたしたちの腐女子の永遠のテーマだと思うんです。
わたしは消しゴムの童貞攻めだと思うんですけど、でも消しゴムの誘い受けだって言われたら否定できないわたしがいるんです」
「わたしはオヤジ好きで、プロ野球選手ものや、政界ものにぐっとくるものがあるんですよ。
プー○ン大統領は誘い受け、ローマ○王はヘタレ攻めだとわたしはよく妄想をして楽しんでいたりします。
その妄想だけで一日過ごせてしまう自分が少し怖いです」
藤本花梨はかなり誇らしげの表情で、さすが加藤麻衣の友人だけあるなと思った。
そんな彼女はカウボーイビバップのジェットが嫁だそうだ。
ジェットの嫁じゃなくて、ジェットが嫁なのだそうだ。
まだ五時過ぎ。
飲むには少し早い時間だった。
コモックに向かう途中にあるゲーマーズの前で、
「折角だから抱き枕でも見ていきましょうか?」
という俺の提案に、
「み、み、み、見たいです!」
藤本花梨まさかの食いつきぶり。
いつかアニメキャラクターの抱き枕を買うのが、高校時代からの俺の夢だった。
俺は早速ゲーマーズの三階で、
「これがぼくがいつか買おうと思ってる抱き枕なんですが……」
その抱き枕は、ダカーポというエロゲーのヒロインだ。
俺はまだそのエロゲーどころかエロゲーというもの自体やったことがない。エロゲーとネトゲには手を出さないと決めていた。一度手を出したら、俺は確実に廃人になることが自分でよくわかっていたからだ。
そんな俺だったが、数ヶ月前そのキャラクターに一目ぼれしてしまった。
「この抱き枕、裏返すとこんないやらしい格好をしてるわけなんですけど……」
「ほうほう」
「このリボンをね、口にくわえてるのがグッときませんか?
リボンを口にくわえてるのがグッときませんか!?」
なぜか二度言う俺に、
「グッときます!」
藤本花梨がサムズアップで返してきた。
「これとこれも、裏返すとこんないやらしい格好をしてるわけなんだけど……」
「ふむふむ」
「この片手に持った持った携帯に、グッとくるものがない?」
「グッときます!」
「その携帯でどんな写メをとられたいんだい?
どんな動画をニコ動にアップされたいんだい?ひっひっひっ」
「…………」
……ひくなよ、腐女子。
そしていよいよ俺たちはコスプレカフェへ。
今度はぜひ私とふたりで大須に遊びにいきませんか?」
藤本花梨からのメールに誘われて、大須へと繰り出したのは翌週末の土曜のことだった。
「ただしその日は就活イベントの帰りのため、わたしはリクルートスーツ仕様になりますが……」
加藤麻衣や小島雪よりひとつ年上、3年生の藤本花梨はすでに就職活動中をはじめており、リクルートスーツで来るとのことだった。
面接ごっこ的な新しいプレイを開拓できるかもしれないと思ったのは内緒だ。
「普段の私を考えると斬新な格好になりますが、ピザデブ腐女子なのでスーツをレイプしてしまってる可能性が……」
レイプて。
21歳の女の子が男子とのメールのやりとりでレイプて。
しかし当日になって、やむにやまれぬ用事があり就活イベントを諦めた藤本花梨は私服でやってくると連絡があった。
やむにやまれぬ用事が何なのかは聞かないでおくことにした。
どうせろくでもない用事に決まっている。
しかし、藤本花梨も、加藤麻衣や小島雪に負けない、お洒落で小さくかわいらしい女の子で、
「なぜリクルートスーツで着てくれなかったんですか……」
それが俺の第一声だった。
本当に、面接ごっこ的な新しい遊びを開拓できたかもしれないのに!
「お酒でも飲みに行きましょう」
藤本花梨に誘われて、俺たちは再びコスプレカフェへ向かうことになった。
俺には前回行ったときにお気に入りの女の子ができていた。
あずまんが大王のちよちゃんのコスプレをしていた女の子だ。
家に帰ってから、ちゃんとネットで調べたのだがサコちゃんというらしい。
コモックへ向かう道中で、
「そういえば、加藤さんとずいぶん仲がいいみたいですけど、藤本さんも腐女子なんですか?」
という、俺の問いに、
「はい、腐女子です」
と平然と答える藤本花梨。
「というより、麻衣さんに腐女子を感染されました」
藤本花梨は笑いながら言った。
加藤麻衣が宇宙考古学研究会を乗っ取ってすぐ(藤本花梨は決してそんな言い方はしないが実際にはそう見るのが普通である)、藤本花梨のマンションにはBL同人誌が大量に詰め込まれたダンボール箱が送られてきたのだという。
「おかげさまで今では知識は麻衣さんにも負けませんよ」
藤本花梨は自慢げにそう言った。
「今にもレイプされそうな女の子を助けるとするじゃないですか。
『あのお名前を……』
そう訪ねられたりするじゃないですか。
わたしはそのときこう答えます。
『いえ、名乗るほどのものではありません。
ただの腐女子です!』」
意味不明なエピソードもさることながら、21歳の女の子が、レイプである。
今度はメールではなく、肉声でレイプである。
「消しゴムと鉛筆の関係がわたしたちの腐女子の永遠のテーマだと思うんです。
わたしは消しゴムの童貞攻めだと思うんですけど、でも消しゴムの誘い受けだって言われたら否定できないわたしがいるんです」
「わたしはオヤジ好きで、プロ野球選手ものや、政界ものにぐっとくるものがあるんですよ。
プー○ン大統領は誘い受け、ローマ○王はヘタレ攻めだとわたしはよく妄想をして楽しんでいたりします。
その妄想だけで一日過ごせてしまう自分が少し怖いです」
藤本花梨はかなり誇らしげの表情で、さすが加藤麻衣の友人だけあるなと思った。
そんな彼女はカウボーイビバップのジェットが嫁だそうだ。
ジェットの嫁じゃなくて、ジェットが嫁なのだそうだ。
まだ五時過ぎ。
飲むには少し早い時間だった。
コモックに向かう途中にあるゲーマーズの前で、
「折角だから抱き枕でも見ていきましょうか?」
という俺の提案に、
「み、み、み、見たいです!」
藤本花梨まさかの食いつきぶり。
いつかアニメキャラクターの抱き枕を買うのが、高校時代からの俺の夢だった。
俺は早速ゲーマーズの三階で、
「これがぼくがいつか買おうと思ってる抱き枕なんですが……」
その抱き枕は、ダカーポというエロゲーのヒロインだ。
俺はまだそのエロゲーどころかエロゲーというもの自体やったことがない。エロゲーとネトゲには手を出さないと決めていた。一度手を出したら、俺は確実に廃人になることが自分でよくわかっていたからだ。
そんな俺だったが、数ヶ月前そのキャラクターに一目ぼれしてしまった。
「この抱き枕、裏返すとこんないやらしい格好をしてるわけなんですけど……」
「ほうほう」
「このリボンをね、口にくわえてるのがグッときませんか?
リボンを口にくわえてるのがグッときませんか!?」
なぜか二度言う俺に、
「グッときます!」
藤本花梨がサムズアップで返してきた。
「これとこれも、裏返すとこんないやらしい格好をしてるわけなんだけど……」
「ふむふむ」
「この片手に持った持った携帯に、グッとくるものがない?」
「グッときます!」
「その携帯でどんな写メをとられたいんだい?
どんな動画をニコ動にアップされたいんだい?ひっひっひっ」
「…………」
……ひくなよ、腐女子。
そしていよいよ俺たちはコスプレカフェへ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作
如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる