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第12話
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翌日の昼休み。
俺の大学デビュー部での活動二日目。
昨日は興奮状態にあったが、家に帰り冷静になってみると、メイドカフェにただ行っただけで、大学デビューとは程遠い活動だった気がする。
今日こそそれらしい活動をしてくれることを祈りながら、俺は昨日買ったばかりのおしゃれ靴を履き、宇宙考古学研究会の部室に顔を出した。
すでに加藤麻衣と小島雪、藤本花梨がいた。
セリカとタカコというまだ見ぬ部員の姿は今日もなかった。
3人は何やら会話に夢中で俺がやってきたことに気づいているかどうかも怪しい。今日は空気椅子で座れと言われることもなかったので空いている席に腰を下ろし、俺は彼女たちの会話に耳を傾けた。
「あのね、わたしやってみたいことがあってね」
小島雪が言った。
「メイド漫画喫茶ってどうかな?
メイドさんが漫画を読んで聞かせてくれるの」
ズコー!
俺は豪快に椅子から転げ落ちた。
「またメイドカフェの話ですか!?」
大学デビューはどうなった。
それでようやく三人は俺の存在に気づいたようで、
「あぁ君か。いたのか」
と加藤麻衣。
「ごきげんよう」
藤本花梨が優しく微笑んでくれた。
「ちっ」
小島雪は舌打ち。俺、この人に何か嫌われるようなことしただろうか。
先ほどの小島雪の言葉に、
「ふむ」
加藤麻衣はじっくりと考えているようで、
「読み聞かせは実は結構難しい技術だし、漫画は一人でゆっくり読みたいって人の方が多いと思う」
そう言った。
「それに客1:1メイドになっちゃうからコスト的に無理だと思う」
「そっかー」
小島雪は残念そうにうなだれた。
「ですが、漫画喫茶の店員が全員メイドさんっていうのは絶対当たると思いますわ」
藤本花梨がフォローした。
「ターゲットにする層がほぼイコールですし、漫画喫茶ならある程度客をほっておけますから、シフトに入れるメイドの数もそれ程多くなくて済みますし。
何より『今まで誰も一緒に行ってくれる人がいないがためになかなかメイド喫茶に行けないでいた友達ゼロおたく』どもを獲り込めます」
藤本花梨がちらりと俺を見る。や、俺、別に、そんなんじゃないこともないです。
「なんで?」
「だって漫画喫茶はカラオケやファミレスと違って一人で入るのがフツーの店ですもの。恥ずかしくないですから。もっとも最近はカラオケにひとりで行く人も多いみたいですけど。
それに基本は漫画喫茶なのですから、リピーターも当然多い。というより新刊が出れば自動的に来ますわよね。
漫画喫茶はゲームができたりもしますから、オプションとして一緒に対戦ゲームってのを付ければいいんですよ。
マッサージサービスを付けてもいいかもしれませんね。漫画喫茶には寝に来るお客さんも多いですから。皆疲れてるんですね……。
ただ漫画喫茶は基本個室ですから、個室ペアシートにお客さんとメイドさんを二人っきりにするのが怖いっていう不安要素はありますわね」
だめだ、こいつら、マジでメイドを使った新事業について話し合ってやがる……。
俺は嘆息せざるをえなかった。
「では、こういった店はどうだろうか?」
続いて口を開いたのは加藤麻衣だった。
「わたしは大須にガ○プラ喫茶なるお店をオープンさせたい」
おい、メイド関係なくなってるぞ。
俺の大学デビュー部での活動二日目。
昨日は興奮状態にあったが、家に帰り冷静になってみると、メイドカフェにただ行っただけで、大学デビューとは程遠い活動だった気がする。
今日こそそれらしい活動をしてくれることを祈りながら、俺は昨日買ったばかりのおしゃれ靴を履き、宇宙考古学研究会の部室に顔を出した。
すでに加藤麻衣と小島雪、藤本花梨がいた。
セリカとタカコというまだ見ぬ部員の姿は今日もなかった。
3人は何やら会話に夢中で俺がやってきたことに気づいているかどうかも怪しい。今日は空気椅子で座れと言われることもなかったので空いている席に腰を下ろし、俺は彼女たちの会話に耳を傾けた。
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小島雪が言った。
「メイド漫画喫茶ってどうかな?
メイドさんが漫画を読んで聞かせてくれるの」
ズコー!
俺は豪快に椅子から転げ落ちた。
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それでようやく三人は俺の存在に気づいたようで、
「あぁ君か。いたのか」
と加藤麻衣。
「ごきげんよう」
藤本花梨が優しく微笑んでくれた。
「ちっ」
小島雪は舌打ち。俺、この人に何か嫌われるようなことしただろうか。
先ほどの小島雪の言葉に、
「ふむ」
加藤麻衣はじっくりと考えているようで、
「読み聞かせは実は結構難しい技術だし、漫画は一人でゆっくり読みたいって人の方が多いと思う」
そう言った。
「それに客1:1メイドになっちゃうからコスト的に無理だと思う」
「そっかー」
小島雪は残念そうにうなだれた。
「ですが、漫画喫茶の店員が全員メイドさんっていうのは絶対当たると思いますわ」
藤本花梨がフォローした。
「ターゲットにする層がほぼイコールですし、漫画喫茶ならある程度客をほっておけますから、シフトに入れるメイドの数もそれ程多くなくて済みますし。
何より『今まで誰も一緒に行ってくれる人がいないがためになかなかメイド喫茶に行けないでいた友達ゼロおたく』どもを獲り込めます」
藤本花梨がちらりと俺を見る。や、俺、別に、そんなんじゃないこともないです。
「なんで?」
「だって漫画喫茶はカラオケやファミレスと違って一人で入るのがフツーの店ですもの。恥ずかしくないですから。もっとも最近はカラオケにひとりで行く人も多いみたいですけど。
それに基本は漫画喫茶なのですから、リピーターも当然多い。というより新刊が出れば自動的に来ますわよね。
漫画喫茶はゲームができたりもしますから、オプションとして一緒に対戦ゲームってのを付ければいいんですよ。
マッサージサービスを付けてもいいかもしれませんね。漫画喫茶には寝に来るお客さんも多いですから。皆疲れてるんですね……。
ただ漫画喫茶は基本個室ですから、個室ペアシートにお客さんとメイドさんを二人っきりにするのが怖いっていう不安要素はありますわね」
だめだ、こいつら、マジでメイドを使った新事業について話し合ってやがる……。
俺は嘆息せざるをえなかった。
「では、こういった店はどうだろうか?」
続いて口を開いたのは加藤麻衣だった。
「わたしは大須にガ○プラ喫茶なるお店をオープンさせたい」
おい、メイド関係なくなってるぞ。
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