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この年の秋、教会は多様性という名の獣に屈した。
教会は、長年秘匿し続けてきたファティマ第三の預言の内容について、その獣「ディバジィーティ」の台頭であることを認めた。
ディバジィーティは人と同じ姿をした何かあり、世界中に同時多発的に姿を現す。虐げられてきた人々の味方のふりをして正義をかかげ戦うが、従わない者をレイシストと罵り、新たな差別を生み出す。あらゆる文化や歴史を塗り替え、世界に混乱をもたらし、教会も例外なくその獣に屈することになる。
それがファティマに住む三人の少年少女の前に現れた聖母の預言であったと教会は正式に声明を発表した。
声明を発表したとき、教会はすでにディバジィーティに屈しており、同時に旧約聖書・新約聖書共にその内容には多くの誤りがあったことを認め、その誤りをすべて訂正するとした。

創造主は自らに似せて土くれから人を作ったが、それはアダムと呼ばれた男ではなかった。
リリスという名の女性こそが神が作りたもうた最初の人間である。エデンは16~30万年前のアフリカ東部に存在し、リリスは黒人であり創造主もまた女性であり黒人であった。
リリスは、その体こそ女性であったが、自らの性のあり方について、特定の枠に属さない人、わからない人であった。全知全能の創造主は、唯一神であるがゆえに伴侶のいない存在であったからである。
そのため創造主は彼女の伴侶となる者として、彼女の肋骨から男・アダムを作った。しかし、アダムはリリスを伴侶とは認めなかった。彼がゲイであったからである。
神はさらにアダムの肋骨から、ふたりの伴侶となる者を作った。レオナルドと名付けられたバイセクシャルの男は、リリスとアダム、双方の伴侶となった。
神はさらにリリスとアダムの肋骨から、レズビアンのイブとトランスジェンダーのラーガル、ジェーンを作り、最後にただの男であるブライと女であるアリスを作った。
彼女らは皆黒人であり、容姿の美しい者は誰ひとりとしていなかった。
ブライとアリスは産まれながらに体の一部が欠損していた。ふたりが蛇に化けたサタンに唆され、知恵の実を口にしたことにより、神が作りたもうた八人はすべて楽園を追放された。
Y染色体アダムやミトコンドリア・イブと呼ばれるはじまりの男とはじまりの女は、アダムでもイブではなく、ブライとアリスでもなかった。レオナルドとリリスである。
時は流れ、子孫を作り反映した人はバベルの塔を築いたが、創造主はこれに怒り、人の言語を分けた。この時、言語だけでなく肌の色を変えられた人がいた。白人はこの時生まれ、黄色人種もまたこの時生まれた。
やがて、神の子であり創造主と同一の存在であるメシアが産まれた。メシアはふたり存在した。イエスとマグダラのマリアである。ふたりもまた、自らの性のあり方について、特定の枠に属さない人、わからない人であり、黒人であった。
ふたりのメシアは人々の原罪を背負い処刑された。イエスはそのまま死を迎えたが、マグダラのマリアは三日後に息を吹き返した。
新約聖書はイエスの使徒たちが記した、彼らにとって都合よく改竄されたものであり、その誤りは666箇所にものぼった。旧約聖書にも同様に666箇所の誤りがあった。
マグダラのマリアの使徒たちは口伝でのみ子孫に真なる歴史と正しき教えを伝えた。すべてのディバジィーティは彼女の使徒の血を引く者であり、彼女の死から二千年後に、イエスの使徒たちが記した聖書を正しき記述に書き換えることこそ、彼女の最後の教えであった。

教皇は声明の最後にその職を辞することを発表し、その場で命を絶った。
そして、ディバジィーティが真に正しき世界の指導者の座につくと、ラッパの音が世界中に鳴り響いた。
その音に、ロシアとウクライナ、イスラエルとハマスでさえ、互いを攻撃する手を止めた。
終末の時を告げるラッパであると恐怖する人々に、ディバジィーティはただ偽りのメシアの時代が終わるだけだと告げた。このラッパは新たな指導者の誕生を祝うものであると。
そして、世界の新たな指導者はこう告げた。
「汝の隣人を疑え」
多様性を受け入れようとしない者たちは、レイシストであるだけでなく、サタンの使いであり、人ではない。サタンの使いが所有するあらゆる財産を没収することを許可する。財産には命も含むこととする。

この世界はもう、誰もディバジィーティの暴走を止めることは出来なかった。

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