小説投稿サイト攻略指南小説「美少女フィギュアのパンツを見るのが何より好きな俺は、理想のヒロインのパンツ見たさにラノベ作家になることにした。」

雨野 美哉(あめの みかな)

文字の大きさ
上 下
49 / 61

第49話「とりにくチキン」④ 加筆修正版

しおりを挟む
 第1部でパーフェクト・ピノアとなったピノアは、第2部でさらにアルティメット・ピノアとでも言うべき存在に進化した。

 第3部はまだ書かれていなかったが、ピノアを主人公とし、異世界人であるピノアが逆に1部と2部の主人公であったレンジが生まれ育った街に転移してくる話になるという。
 そうなれば、アルティメット・ピノアはライジングアルティメット・ピノアともいうべき存在になるだろう。

 ピノアがメインヒロインになる4部以降は、ピノア・コンプリート21だろうか。

 キヅイセは全九部作、さらにスピンオフが三作予定されている。
 それ以降のピノアは、亜美の力を借り、俺の中でもはや形容する言葉がないくらいの存在に進化するだろう。

 おかしな話をしているのはわかっていた。
 オタクという者は、みんな現実と虚構の区別がちゃんとできているものだ。
 現実のパートナーと虚構の推しは全く別物で、顔はもちろん性格も全然似ていなかったり、正反対だったりする。
 それがオタクという者のごくごく自然な生き方だ。
 だが俺は、俺の中にしかいなかった虚構の推しを、現実のパートナーになるかもしれない女の子に育ててもらったのだ。
 育てた本人が、最強最悪の恋敵と表現するくらいに。

 オタクはどうして、漫画やラノベ、アニメやゲームのキャラクターに恋をするのか。
 その答えは簡単だ。
 それがたとえ一方通行のものでしかなかったとしても、キャラクターは自分を裏切らないからだ。
 作品の中で誰かと恋仲になろうが、たとえ死んでしまったとしても、オタクは脳内で自分にとって不都合な情報を排除し、自分にとって都合のいいように補完することができるからだ。

 まぁ、一部の過激なオタクの中には、恋愛禁止のはずのアイドルの熱愛が発覚したときのドルオタのように、作中で恋人ができたり過去に恋人がいたとわかるやいなや、まるで日本国旗を燃やす近隣諸国の過激な人達のように、単行本を燃やしたり円盤を割ったりする輩もいたりするのだが。
 俺に言わせれば、そういう連中は想像力が足りないと言わざるを得ない。

 想像力があれば、脳内でキャラクターは自由に補完できる。一方通行でしかなかったはずのものを、そうじゃなくすることができる。脳内で会話をすることだって可能になる。
 出来ないことは、手を繋ぐだとか、抱き締めるだとか、キスをするだとか、体を重ねるといった物理的なことだけだ。

 そして、それはオタクに限ったことではない。

「西日野は、ピノアと会話しようと思ったら、頭の中で出来たりするよな」

「そうね。ピノアだけじゃなく、ステラも。
 レンジやニーズヘッグも、ケツァルコアトルやアルマ、アンフィス、ライトにリード、ショウゴにタカミ、ミカナ、それにブライやサトシとも会話できるわ。
 それはキヅイセのキャラクターに限ったことじゃないの。破魔矢梨沙の小説のどんなキャラクターともわたしは会話が可能よ」

 もしかしたら、それが小説家というものなのかもしれない。
 どのキャラクターが何を考え、どんな行動をとるか、小説家は常にキャラクターと向き合いながら、物語を組み立てていくからだ。
 少なくとも亜美は、破魔矢梨沙は、とりにくチキンは、そういう小説家だった。

 俺が何を言わんとしているのか、彼女にはもうわかっていたのだろう。

「珠莉が言ってた。
 あなたが、恋は必ずいつか終わりが来るものだって言ってたって。
 だから、わたしとの関係は現状維持を望んでるって。
 わたしを好きでいてくれるけど、付き合うつもりはないみたいだって。付き合わないんじゃなくて、付き合えないんだって言ってたって。
 きっと何か理由があって、恋をするのが怖いんだと思うって言ってた」

「西日野もすごいヤツだけど、あいつも相当すげーヤツだよな。何でもお見通しなんだから」

「わたしは、幼い頃からずっと、あの子の方がわたしなんかよりもずっとすごいと思ってるわ。
 わたしはきっと、どこに行ってもうまく立ち回れない。
 小学生のころから高校までクラスではずっと浮いてたし、いつもあの子に助けてもらって、何とか学校に通えてたくらいだから。
 今だってあの子やあなたがいなかったらって考えたらゾッとするくらいだもの」

 コンビニのバイトも、彼女は仕事を覚えるだけで精一杯だったという。
 だが珠莉は、彼女の代わりに、彼女のふりをして、たまにシフトに入ったりしていただけなのに、あっという間に仕事を覚えてしまったという。
 最近はずっと珠莉が彼女の代わりをしてくれており、うまくやってくれているそうだ。

「わたしは小説を書くことしかできないけれど、あの子は書かないだけで、たぶんわたしよりもずっと面白い小説を書けるんじゃないかってわたしは思ってるの。きっと、書かないだけじゃなくて、書く気もないだろうけど。
 それくらい、あの子はすごいの。わたしは幼い頃からずっと、あの子には何もかなわないって思って生きてきたの」

「俺も妹がとんでもないやつだからな。歩くコミュ力みたいな。だから、なんとなくわかるよ」

 俺たちは本当によく似ていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。 偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。 シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。 現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。 ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。 公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。 魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。 厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。

ようこそ!アニマル商店街へ~愛犬べぇの今日思ったこと~

歩く、歩く。
キャラ文芸
 皆さん初めまして、私はゴールデンレトリバーのべぇと申します。今年で五歳を迎えました。  本日はようこそ、当商店街へとお越しいただきました。主人ともども心から歓迎いたします。  私の住まいは、東京都某市に造られた大型商業地区、「アニマル商店街」。  ここには私を始め、多くの動物達が放し飼いにされていて、各々が自由にのびのびと過ごしています。なんでも、「人と動物が共生できる環境」を目指して造られた都市計画だそうですね。私は犬なのでよくわからないのですが。  私の趣味は、お散歩です。いつもアメリカンショートヘアーのちゃこさんさんと一緒に、商店街を回っては、沢山の動物さん達とお話するのが私の日常です。色んな動物さん達と過ごす日々は、私にとって大事な大事な時間なのです。  さて、今日はどんな動物さんと出会えるのでしょうか。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

眠らせ森の恋

菱沼あゆ
キャラ文芸
 新米秘書の秋名つぐみは、あまり顔と名前を知られていないという、しょうもない理由により、社長、半田奏汰のニセの婚約者に仕立て上げられてしまう。  なんだかんだで奏汰と同居することになったつぐみは、襲われないよう、毎晩なんとかして、奏汰をさっさと眠らせようとするのだが――。  おうちBarと眠りと、恋の物語。

穢れなき禽獣は魔都に憩う

クイン舎
キャラ文芸
1920年代の初め、慈惇(じじゅん)天皇のお膝元、帝都東京では謎の失踪事件・狂鴉(きょうあ)病事件が不穏な影を落としていた。 郷里の尋常小学校で代用教員をしていた小鳥遊柊萍(たかなししゅうへい)は、ひょんなことから大日本帝国大学の著名な鳥類学者、御子柴(みこしば)教授の誘いを受け上京することに。 そこで柊萍は『冬月帝国』とも称される冬月財閥の令息、冬月蘇芳(ふゆつきすおう)と出会う。 傲岸不遜な蘇芳に振り回されながら、やがて柊萍は蘇芳と共に謎の事件に巻き込まれていく──。

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

処理中です...