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第43話「小説投稿サイト攻略指南(仮)」⑨
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これ以上何をすれば、ランキング上位に食い込めるのか、俺にはもうわからなかった。
まだ連載開始から2週間しか経っていないのだから、こんなものだと諦めるしかないのだろうか。
今のままの体制を続けていくだけで、1ヶ月後か2ヶ月後にはランキングの上位に食い込めるのか? 3ヶ月後か? 半年後か?
本当にそうか?
まだ何かできることがあるんじゃないのか?
すでに第2部まで書き上がっており、半年先まで更新予約がされていたから、1日の更新量を倍にすることをまず俺は考えた。
だが、それは連載期間を短くしてしまうだけだ。
ネット小説は、毎日決まった時間に更新され、連載期間は長ければ長いほどいいはずだった。
第2部まででストーリーは一応完結しているのだから尚更だった。
第3部はピノアが主人公となり、第4部以降は新たな主人公とピノアの物語になる。それは続編ではあるが、世界観を引き継いだ別の作品でもあると言えなくもなかったからだ。
「お兄ちゃん、わたしが作ったご飯、おいしくない?」
俺はよほど深刻な顔をしていたのだろう。
せっかく妹が夕御飯を作ってくれたというのに、俺は黙って黙々とそれを食べてしまっていた。
両親とは同居しているが、ふたりとも帰宅するのはいつも遅く、俺たちはふたりきりで食事をすることがもう何年も続いていた。
まるで、子どもの頃に見ていた、母の料理を一度も誉めたことがなかった父のようだな、と自分が嫌になった。
「ごめんな。ちょっと考え事をしてて。雪が作ってくれる料理はいつも美味しいよ」
「じゃあ、また何か悩んでるんだね」
俺はいつも妹に心配かけてばかりだ。
我ながら情けない兄貴だなと思う。
「それは、いつもみたいにわたしに相談出来ないことなのかな」
「出来なくもない、けど……」
「わたしが口が固いことは、お兄ちゃんが一番知ってるでしょ?」
そうだった。
別に妹になら話しても構わないことだった。
きっと亜美も珠莉も許してくれる。
だが、今回は俺の18年の人生で一番の難問だ。
だから解決策が出てくる見込みは正直薄いように思う。
だが、本当にそうかどうかは話してみなければわからないことだった。
「ふーん、お兄ちゃん、破魔矢梨沙と友達になってたんだー?
なんでそんな面白いこと黙ってるかなー。
で、お兄ちゃんも、その亜美さんだっけ? も、お互いのこと大好きで、ていうか亜美さんはわざわざお兄ちゃんに会うために、あの大学を選んで来てくれてた、と。
おまけに『キヅイセ』の作者はその亜美さん、つまりは破魔矢梨沙で、メインヒロインのステラよりかわいいピノアは、お兄ちゃんが理想とするヒロイン。
言われてみたら、お兄ちゃんが好きそうな感じだよねー。ロリコンだし。
お兄ちゃんは、そんなピノアが登場する小説を、亜美さんに書いてもらって、それがアニメ化してフィギュア化したら、ふたりは結婚する約束をした、と……
ごめん、それ、何マン? バク何?」
妹は思いっきり呆れていた。
「ま、前にも言ったけど、お兄ちゃんのことをわたしよりも理解してくれそうなのは、破魔矢梨沙くらいだと思ってたから別にいいんだけどね。
それにしても、あの破魔矢梨沙でも、ペンネームや文体を変えたら小説のアクセス数が伸びないとか、ネット小説の世界まじやばいね」
スマホを手に取り、何か操作をすると、画面を俺に見せてきた。
ツブヤイターの画面だった。
アイコンは妹の顔写真で、名前も妹のものだった。
「お前、顔出しして、ツブヤイターやってんの?」
「やっぱりそこに食いつくよね。
でも、見て欲しいのはそこじゃなくて、フォロワーの数なんだよね」
妹のフォロワーは10万人を超えていた。
「お前、普通の女子高生だったよね?」
普通の女子高生がフォロワー10万人なんてありえないことだった。
「去年まではね。でもね、今は違うの」
そして、妹は俺に言った。
「お兄ちゃん、インフルエンサーって知ってる?」
妹がキヅイセの存在を知ったのは、とりにくチキンが自作を宣伝しているつぶやきを、妹がフォローしていた学校の友達の誰かがリツブヤキートしていたのを見たからだという。
「わたしが、この小説面白いよってリツブヤキートするだけで、お兄ちゃんが抱えてる悩みくらい、すぐに解決しちゃうんだよねー」
妹は、「ポチっとな」と今時の女子高生らしくない口調で画面をタップした。
その夜、キヅイセのアクセス数が爆発した。
まだ連載開始から2週間しか経っていないのだから、こんなものだと諦めるしかないのだろうか。
今のままの体制を続けていくだけで、1ヶ月後か2ヶ月後にはランキングの上位に食い込めるのか? 3ヶ月後か? 半年後か?
本当にそうか?
まだ何かできることがあるんじゃないのか?
すでに第2部まで書き上がっており、半年先まで更新予約がされていたから、1日の更新量を倍にすることをまず俺は考えた。
だが、それは連載期間を短くしてしまうだけだ。
ネット小説は、毎日決まった時間に更新され、連載期間は長ければ長いほどいいはずだった。
第2部まででストーリーは一応完結しているのだから尚更だった。
第3部はピノアが主人公となり、第4部以降は新たな主人公とピノアの物語になる。それは続編ではあるが、世界観を引き継いだ別の作品でもあると言えなくもなかったからだ。
「お兄ちゃん、わたしが作ったご飯、おいしくない?」
俺はよほど深刻な顔をしていたのだろう。
せっかく妹が夕御飯を作ってくれたというのに、俺は黙って黙々とそれを食べてしまっていた。
両親とは同居しているが、ふたりとも帰宅するのはいつも遅く、俺たちはふたりきりで食事をすることがもう何年も続いていた。
まるで、子どもの頃に見ていた、母の料理を一度も誉めたことがなかった父のようだな、と自分が嫌になった。
「ごめんな。ちょっと考え事をしてて。雪が作ってくれる料理はいつも美味しいよ」
「じゃあ、また何か悩んでるんだね」
俺はいつも妹に心配かけてばかりだ。
我ながら情けない兄貴だなと思う。
「それは、いつもみたいにわたしに相談出来ないことなのかな」
「出来なくもない、けど……」
「わたしが口が固いことは、お兄ちゃんが一番知ってるでしょ?」
そうだった。
別に妹になら話しても構わないことだった。
きっと亜美も珠莉も許してくれる。
だが、今回は俺の18年の人生で一番の難問だ。
だから解決策が出てくる見込みは正直薄いように思う。
だが、本当にそうかどうかは話してみなければわからないことだった。
「ふーん、お兄ちゃん、破魔矢梨沙と友達になってたんだー?
なんでそんな面白いこと黙ってるかなー。
で、お兄ちゃんも、その亜美さんだっけ? も、お互いのこと大好きで、ていうか亜美さんはわざわざお兄ちゃんに会うために、あの大学を選んで来てくれてた、と。
おまけに『キヅイセ』の作者はその亜美さん、つまりは破魔矢梨沙で、メインヒロインのステラよりかわいいピノアは、お兄ちゃんが理想とするヒロイン。
言われてみたら、お兄ちゃんが好きそうな感じだよねー。ロリコンだし。
お兄ちゃんは、そんなピノアが登場する小説を、亜美さんに書いてもらって、それがアニメ化してフィギュア化したら、ふたりは結婚する約束をした、と……
ごめん、それ、何マン? バク何?」
妹は思いっきり呆れていた。
「ま、前にも言ったけど、お兄ちゃんのことをわたしよりも理解してくれそうなのは、破魔矢梨沙くらいだと思ってたから別にいいんだけどね。
それにしても、あの破魔矢梨沙でも、ペンネームや文体を変えたら小説のアクセス数が伸びないとか、ネット小説の世界まじやばいね」
スマホを手に取り、何か操作をすると、画面を俺に見せてきた。
ツブヤイターの画面だった。
アイコンは妹の顔写真で、名前も妹のものだった。
「お前、顔出しして、ツブヤイターやってんの?」
「やっぱりそこに食いつくよね。
でも、見て欲しいのはそこじゃなくて、フォロワーの数なんだよね」
妹のフォロワーは10万人を超えていた。
「お前、普通の女子高生だったよね?」
普通の女子高生がフォロワー10万人なんてありえないことだった。
「去年まではね。でもね、今は違うの」
そして、妹は俺に言った。
「お兄ちゃん、インフルエンサーって知ってる?」
妹がキヅイセの存在を知ったのは、とりにくチキンが自作を宣伝しているつぶやきを、妹がフォローしていた学校の友達の誰かがリツブヤキートしていたのを見たからだという。
「わたしが、この小説面白いよってリツブヤキートするだけで、お兄ちゃんが抱えてる悩みくらい、すぐに解決しちゃうんだよねー」
妹は、「ポチっとな」と今時の女子高生らしくない口調で画面をタップした。
その夜、キヅイセのアクセス数が爆発した。
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