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第36話「破魔矢梨沙≒とりにくチキン」⑤
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「できないんじゃない。しないんだ。
俺もあいつも、今はまだ、この関係がもう少し続くことを望んでるんだよ」
「亜美のこと、好きなんだよね?」
「好きだよ」
「亜美も日永くんのことが好きなんだよ?」
「知ってるよ」
「さっき、あの子が大学選んだときのことまで、わたしにありがとうって言ったよね?
それって、あの子が日永くんに会うためだけにこんな辺境の地まで来たってこと、あの子から聞いたってことだよね?」
「おいこら、A県は辺境の地じゃねぇ。
このあたりは昔万博もやってたし、その頃からリニアモーターカーも走ってんだぞ。リニアモーターカーだぞ? 大都会だろ」
「わたしたちの地元じゃもっと昔から空をモノレールが走ってるから。夢の国だけじゃなくて、竜宮城もあるから」
「地元、C県かよ。電車が空走ってるとかまじやべーな。超都会じゃねーか」
竜宮城はホテルだか温泉だったか。確か芸人の茅原ジュニアさんのお気に入りだったような。コンケバさんとやってるニツケという番組でよく話題に上がっていた気がした。
「地元自慢とかどうでもいいし。
どうして好き同士なのに付き合わないの?」
「恋は、いつか終わるからだよ。
終わっちゃったら、友達には戻れないだろ」
「日永くんと亜美は友達なの?
付き合ってなかったら、お互いに好きでも友達になるの?
男女の友情は、両方が相手を恋愛対象として見てない場合しか成立しないんだよ?
どっちかが相手を好きになった瞬間から、それはもう友達じゃなくなるんだよ?
亜美、かわいいし、おとなしいから、わたしよりモテるよ? もし亜美に彼氏が出来たらどうするつもり?」
こいつ、さりげなく自分もモテる自慢入れて来やがった。
「気を遣って少し距離をとったりするでしょ? 最初は少しだったのが、段々遠く離れてくんじゃないの? 最後は、ただスマホに連絡先だけが残るだけでしょ。
日永くんのことだから、亜美から何ヵ月も連絡が来なかったら、連絡先消しちゃうでしょ? それって友達って言えるの?」
「どうしてそんなにくっつけたがるんだよ」
「恋はいつか終わるって何?
この関係がもう少し続くことを望んでるっていつまで?
終わるのがこわいから、結局何もしないまま、大学にいる間の3年半は現状維持するってこと? そのあとは?」
「まだ知り合ったばかりだろ」
「そうだね。高2の春から一年半以上もファンレターを送り続けてた人と、それを糧に小説を書き続けてた子だけどね。
まだ知り合ったばっかりだもんね」
その夜は眠れなかった。
勿論、女の子の家にはじめてお泊まりしたからじゃない。
俺は自分が何を望んでいるのか、わからなくなってしまったのだ。
考えても答えが出ないことを、いくら考えたところでしかたがなかった。
今俺がすべきことは何かを考えることにした。
小説はすでにある。
これだけの分量があれば、以前から考えていた通り、サイトの1ページあたりの分量を2000文字弱にすれば150ページ以上になる。
読者が続きが気になり、翌日の更新を楽しみにしてくれるような引きが、2、3ページ毎に必ずあり、最低でも2ヶ月は毎日更新が可能だった。
2ヶ月もあれば、亜美は第2部を書き上げてくれるだろう。
無論、彼女の体調や本業、学業が最優先だ。無理だけは絶対にさせるつもりはなかった。
ある程度読者数を獲得できれば、1日あたりの更新を1ページにしてもいいだろう。そうすれば3、4ヶ月は毎日更新が可能になる。
俺には彼女の代わりに小説を書くことなど到底出来ないが、小説内で明らかになっていることを、激震の巨人のコミックスのおまけページのように「現段階で公表できる資料」としてまとめることくらいはできるはずだ。
まだ未回収の伏線が多くちりばめられていることや、今後も伏線が増えていくことも考えれば、ギャラクシーウォーズやジョジョジョのように、亜美の中ではすでに全9部くらいの構想があってもおかしくはなかった。
あとはいつから連載をはじめ、どれだけ読者を増やし、書籍化やアニメ化、そしてフィギュア化までもっていくかだ。
それは俺の手にかかっていた。
たぶんだが、警察も初動捜査が肝心なように、ネット小説も最初の数日が肝心のはずだ。
始めるなら、すぐだ。
俺は前もって登録しておいた小説投稿サイト4つに、毎日午後6時に2、3ページずつ更新されていくように投稿予約をした。
更新後、それを宣伝をするツブヤイターのアカウントも作った。
その作業は朝まで続いた。
「ありがとな、西日野。後は俺にまかせてくれ」
決して失敗はできなかった。
だが、俺は失敗した。
ネット小説における一番大事なことを俺は見落としていたのだ。
俺もあいつも、今はまだ、この関係がもう少し続くことを望んでるんだよ」
「亜美のこと、好きなんだよね?」
「好きだよ」
「亜美も日永くんのことが好きなんだよ?」
「知ってるよ」
「さっき、あの子が大学選んだときのことまで、わたしにありがとうって言ったよね?
それって、あの子が日永くんに会うためだけにこんな辺境の地まで来たってこと、あの子から聞いたってことだよね?」
「おいこら、A県は辺境の地じゃねぇ。
このあたりは昔万博もやってたし、その頃からリニアモーターカーも走ってんだぞ。リニアモーターカーだぞ? 大都会だろ」
「わたしたちの地元じゃもっと昔から空をモノレールが走ってるから。夢の国だけじゃなくて、竜宮城もあるから」
「地元、C県かよ。電車が空走ってるとかまじやべーな。超都会じゃねーか」
竜宮城はホテルだか温泉だったか。確か芸人の茅原ジュニアさんのお気に入りだったような。コンケバさんとやってるニツケという番組でよく話題に上がっていた気がした。
「地元自慢とかどうでもいいし。
どうして好き同士なのに付き合わないの?」
「恋は、いつか終わるからだよ。
終わっちゃったら、友達には戻れないだろ」
「日永くんと亜美は友達なの?
付き合ってなかったら、お互いに好きでも友達になるの?
男女の友情は、両方が相手を恋愛対象として見てない場合しか成立しないんだよ?
どっちかが相手を好きになった瞬間から、それはもう友達じゃなくなるんだよ?
亜美、かわいいし、おとなしいから、わたしよりモテるよ? もし亜美に彼氏が出来たらどうするつもり?」
こいつ、さりげなく自分もモテる自慢入れて来やがった。
「気を遣って少し距離をとったりするでしょ? 最初は少しだったのが、段々遠く離れてくんじゃないの? 最後は、ただスマホに連絡先だけが残るだけでしょ。
日永くんのことだから、亜美から何ヵ月も連絡が来なかったら、連絡先消しちゃうでしょ? それって友達って言えるの?」
「どうしてそんなにくっつけたがるんだよ」
「恋はいつか終わるって何?
この関係がもう少し続くことを望んでるっていつまで?
終わるのがこわいから、結局何もしないまま、大学にいる間の3年半は現状維持するってこと? そのあとは?」
「まだ知り合ったばかりだろ」
「そうだね。高2の春から一年半以上もファンレターを送り続けてた人と、それを糧に小説を書き続けてた子だけどね。
まだ知り合ったばっかりだもんね」
その夜は眠れなかった。
勿論、女の子の家にはじめてお泊まりしたからじゃない。
俺は自分が何を望んでいるのか、わからなくなってしまったのだ。
考えても答えが出ないことを、いくら考えたところでしかたがなかった。
今俺がすべきことは何かを考えることにした。
小説はすでにある。
これだけの分量があれば、以前から考えていた通り、サイトの1ページあたりの分量を2000文字弱にすれば150ページ以上になる。
読者が続きが気になり、翌日の更新を楽しみにしてくれるような引きが、2、3ページ毎に必ずあり、最低でも2ヶ月は毎日更新が可能だった。
2ヶ月もあれば、亜美は第2部を書き上げてくれるだろう。
無論、彼女の体調や本業、学業が最優先だ。無理だけは絶対にさせるつもりはなかった。
ある程度読者数を獲得できれば、1日あたりの更新を1ページにしてもいいだろう。そうすれば3、4ヶ月は毎日更新が可能になる。
俺には彼女の代わりに小説を書くことなど到底出来ないが、小説内で明らかになっていることを、激震の巨人のコミックスのおまけページのように「現段階で公表できる資料」としてまとめることくらいはできるはずだ。
まだ未回収の伏線が多くちりばめられていることや、今後も伏線が増えていくことも考えれば、ギャラクシーウォーズやジョジョジョのように、亜美の中ではすでに全9部くらいの構想があってもおかしくはなかった。
あとはいつから連載をはじめ、どれだけ読者を増やし、書籍化やアニメ化、そしてフィギュア化までもっていくかだ。
それは俺の手にかかっていた。
たぶんだが、警察も初動捜査が肝心なように、ネット小説も最初の数日が肝心のはずだ。
始めるなら、すぐだ。
俺は前もって登録しておいた小説投稿サイト4つに、毎日午後6時に2、3ページずつ更新されていくように投稿予約をした。
更新後、それを宣伝をするツブヤイターのアカウントも作った。
その作業は朝まで続いた。
「ありがとな、西日野。後は俺にまかせてくれ」
決して失敗はできなかった。
だが、俺は失敗した。
ネット小説における一番大事なことを俺は見落としていたのだ。
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