「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

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【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】「やったね!魔法少女ピノアちゃん大活躍!!編」

外伝「ピノアとミカナ」⑦

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 ミカナとピノアは、その日ももはや「以下略」としたいくらいに、クーラーがガンガンに効いたミカナの部屋で、人を本当に心底駄目にするソファーに身を預けていた。
 魔法少女のコスプレはもうしておらず、ふたりとも元通りのキャミソールにパンツ姿であった。

 テレビでは相変わらず、オリンピック中継が続いていたが、

「あ、明日で終わるって、これ。終わった途端、開会式の日に戻ったりしないといいけど」

 ピノアはまだエンドレスエイト説を推していた。
 最近ひぐらしにハマってるし、春にはシン・エヴァを一緒に8回観に行ったりもしたからというのももしかしたらあるのかもしれない。

「いやいや、もしハルヒ的な誰かが世界規模でそんなことをやらかしてたとしても、キョン的な人がなんとかがんばってくれるだろうし」

 そのハルヒ的な誰かがオリンピックに出るまでループが終わらないとかじゃなければ、であったが、

「そもそもピノアなら長門ちゃんみたいに二周目の時点で気づくし、何万回も繰り返したりする前に、魔法でなんとかできるでしょ」

 ミカナの目の前には、選手でもないのにオリンピックに参加しちゃったお馬鹿さんがいたから、本当になんとかできる気がした。彼女は宇宙人・未来人・超能力者に続く異世界人でもあったから尚更だった。

「確かにわたしは、ハルヒがたとえ何をしでかしても、キョンたちよりうまく止められる自信がある……」

 とピノアは言った。ハルヒ的な人じゃなくて、もうハルヒって言っちゃったよ、この子。あれアニメだからね? いくらあんたが異世界人で魔法使いでも、あれはあくまでアニメだからね?

 けれど、思い返してみれば、昨日一昨日の魔法少女コスプレもループするアニメのものだったから、この一週間くらいのピノアの言動のすべてが、ミカナには伏線に思えてきてしまった。
 ピノアがそのハルヒ的な人だったりするのとかだけはマジで勘弁してほしいなと思った。

「ねー、なんかDVD観ようよ。トム・クルーズのオール・ユー・ニード・イズ・キルとかでいいから」

 それもループものだよね!? なんで今そのチョイス!?
 ほんとにいたるところに伏線張り巡らそうとしてないか、この子。
 あ~、わたし、この子と「8回」もシン・エヴァ観に行ってるし!!

 だがミカナもまた、ピノアほどではないにせよ、この2週間だか3週間だかを本当に長く感じていた。
 オリンピックやパラリンピック、ひいてはスポーツ全般に、全く興味がない者にとってこの手のイベントはそういうものだということを声を大にして言いたかった。

 オリンピックのためにテレビを買い換える人もいるらしいが、正直まったく理解できなかった。ブラウン管から地デジに変えるタイミングがちょうどオリンピックに重なったとかならまだ理解できる。でもそれ以前の、カラーのブラウン管からカラーのブラウン管に買い替えてたのは何? って思う。

 だが、そんなことを言えば非国民だと言われかねない空気がオリンピックにはあるから困ったものだ。
 アニメや特撮に全く興味がない人がいるようにスポーツに全く興味がない人がいるのが個性というものであり、それはオリンピックの理念にもたぶん当てはまるはずだ。知らんけど。
 だから、興味がない人を非国民扱いする人の方が、その理念に反しており、むしろ非国民なのではないか。知らんけど。
 てか、非国民とか、いつまでこの国の人々は戦時中のいやーな言葉を使い続けるつもりなんだろう。

 大体、1年遅れたとはいえ今年無事に開催できたのは、この世界にピノアが来てくれたり、ミカナの兄夫婦が「世界の理を変える力」によって、カーズウィルスのパンデミックを終結させたからなのだから、むしろ感謝してほしいくらいだ。もっともそれを知る者は雨野家とピノアが住む秋月家の者たちくらいではあったが。

 あと、一体いつからオリパラって略すようになったのか謎だった。オリエンタルラジオがRADIO FISH名義で歌を出し始めたときみたいに、オリエンタルパラダイスっていう新しいことでも始めたのかなと思ったくらいだ。
 知らないうちにあっちゃん吉本やめてたけど。シンガポールかどっかに住んでたけど。

 そんなことをぐだくだ長々とミカナが考えていると、

「アニメとか漫画ってさ、キャラの名前が現実にありそうなのと、そうじゃないのがあるよね」

 と、ピノアは何の脈絡もなく唐突にぶっこんできた。

「うん、確かにあるね。デスノートとか、絶対に現実にいなさそうな名前の人ばっかり名前書かれてたし」

 作者がリアリティーを重視したい場合には、キャラクターの名前も現実にありそうな名前にしていることが多いように思う。
 逆に現実にはなさそうな名前の場合は、キャラクターの個性を名前に反映させたかったり、キャラクターと同じ名前であることでいじめなどが起きないような配慮だったりもするのだろう。

「現実にありそうな名前で、しかも途中で死んじゃうキャラっているじゃん?」

「あー、たまーにいるね。現代の日本が舞台だったりすると」

 誰でも知ってるような有名な作品のそういうキャラと同じ名前の人は、芸能人と名前が同じなくらい、人生がめんどくさそうだなと思った。

「そういうキャラの名前で、一番有名なのってミカナは誰だと思う?」

 これは難しい大喜利だな、とミカナは思った。
 真っ先に思い浮かんだのは、タッチの上杉和也だったのだが、あだち充先生やカッちゃんには非常に申し訳ないが、自分の親世代の作品だから、おそらくカッちゃんをピノアは知らないと思ったし、たとえ知っていたとしても、もっと面白い回答を期待しているに違いないと思ったのだ。

「わたしはやっぱり上杉和也だと思うんだけど」

 カッちゃんで正解だった!
 この子、タッチど真ん中世代のサトシさんに本気でオタク教育されてたんだった!!

「秋月ピノアは、上杉和也って名前なのに、甲子園めざしてる高校球児がもしいたら、金メダルをあげたいです。
オリンピックのどの選手よりも」

 しかも、うまいこと言おうとして、全然うまく言えてないんだけど!!

「あ、うん、そうだね……その子のメンタルがもう金メダルだよね……あと、名前つけた親もね……」

 以上が、ミカナもピノアもオリンピックには全く興味がなかったが、スポーツ漫画やアニメはお互いに結構好き、むしろ大好物! ということが判明した、蒸し暑い夏の日の夕暮れの出来事だった。

 その後、滅茶苦茶ループもののアニメを観た。

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