「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

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【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】「やったね!魔法少女ピノアちゃん大活躍!!編」

外伝「ピノアとミカナ」⑤

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ミカナとピノアはその日も、クーラーがガンガンに効いたミカナの部屋で、人を本当に心底駄目にするソファーに身を預けていた。

昨日までと違うことと言えば、ふたりともキャミソールにパンツだけの姿ではなく、魔法少女風のコスプレをしていたことである。

ピノアはその日、アマゾンで買ったその服が届くと(わざわざ午前中配送に指定していたらしい)、早速着替えては、瞬間移動の魔法でミカナの目の前に現れ、

「なんでわたしまでこんな格好させられてるんだろ……」

彼女に無理矢理、別の魔法少女の服を着せたのだった。
ピノアがまどかで、ミカナはほむらだった。ちゃんと度なしのメガネまでついており、三つ編みにもさせられた。

かつて異世界のジパングに、ブラジャーやパンツや靴などの服飾革命をもたらし、着物や装束などをアレンジしたエロい衣装をジパング中の女性に流行らせたこともあったミカナであったが、当時はまだ高校2年で、16,7歳だった。

「世界の理を変える力」を使い、ミカナやタカミやメイは成長こそするが、身体的に最もピークとなる時期から全く老いることはない、サイヤ人のような体を手に入れていた。
そのため、異世界で過ごした11年間と、この世界に帰還してからの12年間の計23年、当時のままの若さを維持していたわけだが、

「わたし、もう40なんだけど……」

さすがにいくら見た目が女子高生時代のままとはいえ、40で魔法少女のコスプレは精神的になかなかにつらいものがあった。

「でもミカナって、わたしがこっちの世界に来るまで、ファンティアでくっそエロいアニメキャラのコスプレ写真を堂々と公開して、小遣い荒稼ぎしてなかったっけ?」

「すみません、してました、それはわたしの黒歴史なのでどうか忘れてください、お願いします」

ミカナはその瞬間、おそらく40年の人生で一番の俊敏な動きを見せた。ソファーから体を起こした次の瞬間にはピノアに土下座をしていたのだ。

「それ、わたしが知ってる土下座と違う。もっと半沢か大和田常務みたいにやって」

「無茶振りが過ぎる! あれは銀行員にしかできないやつだよ! ってか銀行員もやらねーよ!!」

「大丈夫だよ、ミカナ。わたしなんか4000年以上生きてるし、わたしたちふたりとも、どこからどうみても美少女戦士だから」

「魔法少女どこいった!? それ、セーラームーンじゃねーか!!
あと4000年以上生きてるって、今さらだけどお前マジで地味にやべーやつだな!」

ミカナやタカミやメイがこの世界に帰還した後のことは大体は聞いていた。
ピノアは、レンジやショウゴ、そしてステラの3人を2021年のこの世界に送り出したはずだったが、何者かに行き先を変えられてしまったのだと。
そのことを知らなかったピノアは、アンフィスと共に生きていくことを一度は選んだ。
だが、起きるはずのない大厄災が起きてしまい、異世界では人類の歴史のリセットが行われたのだと。
そしてピノアは目の前でアンフィスの存在時代が消えるのを目撃した。
大厄災を起こした者だけが消滅を免れ、異世界の新たな神として自らに似せて人を作り、新たな人類の歴史を始めたのだが、ピノアだけはなぜか消滅を免れた。
4000年後に同じ救厄の聖者であるレンジやショウゴ、ステラが現れるという預言を信じ、ひたすら待ち続けていたのだと。

この世界でも医療の発達から、すでに人生100年という時代が到来していたが、100年という時ですらミカナには途方もない時間に思えた。
4000年という、そのさらに40倍も途方もない時を生きてきたピノアは、よく心が壊れなかったものだと思う。
自分だったらきっと、起きるはずのない大厄災が起きた瞬間に、心が壊れていただろう。

だが、いくら力に無自覚であったとはいえ、異世界の理をそんな風に作り変えてしまい、彼女に4000年もの長い時間つらい思いをさせてしまったのは、他ならぬミカナ自身であった。
だから、いくら勢い余ってしまったとはいえ、バケモンは言い過ぎだったと反省した。あ、バケモンとまでは言ってなかった。やべーやつって言ったんだった。ま、いっか。たぶん気にしてないだろう。でも一応、後でわたしのプリンをあげとこう。

ピノアといっしょにいると毎日疲れるが、それくらい楽しく、楽しすぎて困るくらいで、決して飽きることはなかった。

この日の謎の魔法少女コスプレサプライズも、着せるだけ着せといて、写真を撮るわけでもなく、すぐにソファーでふたりともぐでんぐでんしてるとか、

「もしかして、ちょっと前にいっしょにまどマギを観たから、ただ着てみたかっただけとかじゃないよね?」

「え? 着てみたかっただけだよ?」

ピノアはそういう子だった。

きっとこれからも彼女とはこんな風に毎日を過ごしていくんだと思う。
ずっとこんな毎日が続けばいいなと思う。

ピノアがいてくれて、この世界に来てくれて、友達になれて、本当によかったとミカナは思った。

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