「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

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【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】「やったね!魔法少女ピノアちゃん大活躍!!編」

第198話 ガールズプリント

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 ピノアは出発前に、スマホを鞄から取り出し、ちゃんとあってよかった、とほっとしていた。

 なぜ彼女がスマホを? と真依は思ったが、タカミやミカナたちが行った異世界には、100年前からこちらの世界から転移者を積極的に招いている国が存在し、転移者は合計で10001人もいたらしかった。

 そのうちの9998人は異世界で死亡してしまっており、そのスマホは亡くなった人たちの遺品だという。

 ミカナが産み出したエーテルという魔素によって、以前はスマホは充電用ケーブルを挿したり、置くだけ充電をしなくても、自動的に「大気充電」されていたそうだ。

 異世界では、17年前に『我々』や『匣』との戦いが終わった後、ピノアが異世界に存在するという精霊たちと共に、魔法やエーテルの存在をなくしてしまっていた。
 精霊たちもまたミカナが産み出した存在であったため、精霊たちはそれを知っていたのかどうかまではわからないが世界と一体化する道を選び、一度有限になった星のエネルギーは無限に戻ったという。
 神話や聖書などは残ってはいるが、ミカナが作り替えてしまう前の世界にある程度戻した結果、スマホは大気充電されなくなってしまったらしかった。

 10001人の転移者のうち、生存している3人のうちのひとりは、ピノアがミカナとしていた恋ばなに出てきたレンジという少年だった。
 彼は異世界に残ったが、残りのふたりはこの世界に帰還しており、それがサトシとショウゴだった。


「去年の11月、父親は11年前に、息子はその月に、親子二代でふたりとも神隠しにあったって家のことがニュースになったの覚えてる?」

 タカミに言われて、真依は「レンジ」という名前に聞き覚えがあったことを思い出した。

「レンジくんが一万人目の転移者で、そのお父さんのサトシさんが一人目の転移者だったんだ」

 異世界とこの世界を繋ぐゲートは八十三市(やとみし)内にあり、それが作られたばかりの頃は大変不安定だったという。
 だから、レンジが幼い頃に、彼の父親のサトシは、100年前の異世界に転移させられてしまったという。

「そういえば、今年の2月にお父さんの方だけが帰ってきたってニュースでやってたわね」

 行方不明になってから10年以上も経っていたため、何年か前に亡くなったことになっており、そのこともワイドショーなどが取り上げていた。


 ピノアがスマホを探していたのは、サトシに写真を見せたかったからだった。

「毎年、一年に一回だけスマホの電源を入れて、サクラの誕生日にみんなで写真を撮ってたんだ。
 レンジはその写真を、スマホ自体と、スマホの中に挿さってるマイクロなんとかってのに保存してて、スマホの電池? が切れたら、別のスマホにそれを差し替えてって感じで」

 ピノアは、その写真をサトシに見せてあげようとしていた。

「でも、ぼくたちやレンジくんたちが行ったあの世界は、あのあと大厄災が起きたんだろ?
 大厄災を起こしたサトシさんとピノアちゃんだけが生き延びて、それ以外の人や人が産み出したものはすべて消えた。
 そして、サトシさんを神とする新しい人の歴史が始まった。
 その世界に、ぼくたちの後にこっちに帰ってくるはずだったレンジくんとショウゴくんとステラちゃんは飛ばされた……
 新しい世界でもエウロペは転移者を招いてたの?」

「ううん、招いてないよ。
 だから、レンジのお父さんとショウゴが帰った後は、スマホはレンジが持ってたのと、レンジのお父さんがレンジに託したものと、わたしとステラが一台ずつ持ってた四台しかなかった」

 普段電源を切っていたとしても、スマホの電池は減っていってしまう。
 だから、最初の年は良くても、次の年には電源を入れようとしても全部電池切れになっているはずだった。

「わたしが持ってるスマホだけ、魔物や魔人みたいに勝手にエーテルと一体化して進化してたんだ。
 ス魔ホって言ったらいいのかな? ミカナ的な発想でいうと。
 結晶化したエーテルから作られた魔装具が魔法使い放題だったみたいに、このスマホは常にフル充電なんだ。
 わたしが精霊たちとエーテルを消した後も、わたしやステラは魔人としていられたし、カオスから魔物に戻った子たちも魔物のままたくさんいたんだ。
 わたしたちは大気中からエーテルを消しただけだったからね。
 けど、レンジもサクラもただの人だったから、ふたりが先に死んじゃって、その後数百年もふたりがいない世界を生きるのがいやだったから、わたしたちはただの人になることを選んだんだよね」

 ピノアの話を聞きながら申し訳なさそうにしていたミカナに、

「ミカナのおかげで、あの世界でスマホが使えるようになったんだから、ミカナはすっごくいいことをしたんだよ。
 おかげで、レンジのお父さんに、孫のサクラの写真を見せてあげられるんだから」

 ピノアはそう言って、微笑んだ。




 タクシーが目的地につくと、富嶽サトシという四十代の男性と、大和ショウゴという高校生くらいの男の子が、四人を出迎えた。

「連絡ありがとう。タカミくんにミカナちゃんだね。それに真依ちゃんかな」

「わっ、タカミさんの彼女、あ、今は奥さんだっけ? まじでジパングの女王様にそっくりなんだ?」

 本当にこの人たちも、異世界にいるもうひとりのわたしを知ってるんだな、と真依はなんとも言えない不思議な気持ちになった。

「はじめまして」

 と、タカミとミカナはサトシに挨拶し、真依もあわててそれに続いた。
 ふたりも彼とは面識がなかったとは知らなかった。

「ひさしぶりだね、ショウゴくん。元気そうで何よりだよ」

「その節は……なんと言うかお恥ずかしいところを……」

 ショウゴという少年とはふたりは面識があるようだったが、人見知りをしないはずのミカナの様子を見る限り、よく知る仲というわけではないようだった。

「あー、ミカナさんがもうひとりの女王様といっしょに、素っ裸で人を駄目にするソファに寝っ転がって、わたしは救厄の聖者じゃないって散々駄々こねてたくせに、タカミさんがやべーってなったらいきなりブライさんを木っ端微塵にしたことは全然覚えてないから大丈夫っすよ」

「全部覚えてんじゃねーか! ちくしょう!!」

 ミカナは叫び、真依は、あー、なんか、いろいろあったんだなーと思った。

「あ、俺、こっちに帰ってきたあと、偶然ミカナさんが宅コス自撮りをアップしてるサイト見つけたんで、月額会員になってるんでよろしくです」

「死にたい!! 知り合いに、ネットにアップしてるえっちな自撮り写真を見られてるとか、まじで今すぐ首を釣りたい!!」

「こないだ、ツイッターでミカナさんのファンが、ミカナさんの写真で自分用に一枚だけTシャツ作ってもいいですか? って聞いてたじゃないですか」

「あー、その前にもわたしの写真を光沢紙にプリントしてポストカード作ったり、日めくりカレンダー作ってた人でしょ」

 ショウゴは、前を閉じていたアウターを開き、

「あれ、俺です」

 と、ミカナのほぼ全裸に近いようなコスプレ写真をプリントしたTシャツを見せた。

「ミカナ、あとで話がある……」

「うん……ごめんなさい……おにーちゃん……」

 ショウゴは一気に、場を和やかにしてくれた。

 サトシは、

「ピノアちゃんも元気そうで何よりだよ」

 と、ピノアに優しく微笑んだ。

「レンジもステラもサクラも元気だよ。あとで写真を見せてあげるね。
 それに、レンジのお父さんとショウゴが今度こそちゃんと戻ってて安心した」

 ピノアは嬉しそうだった。

 四人は、サトシの家に招かれた。



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