187 / 266
【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】「やったね!魔法少女ピノアちゃん大活躍!!編」
第187話 白き匣
しおりを挟む
大厄災を起こす者は、「我々」を名乗る組織の手駒にしか過ぎなかった。
そして「我々」という組織もまた、「匣」の手駒にしか過ぎなかった。
雨野ミカナは、「我々」が有していた「72個の匣」とは別の匣、「白き匣」の手駒にしか過ぎなかった。
雨野ミカナが兄のタカミを超える力を持っていたことは、ジパングのふたりの女王が、転移してきたふたりを出迎えたときからわかっていた。
白き匣もまた、女王に仕える陰陽師である比良坂ヨモツ・コヨミとしてその場にいたからだ。
ジパングのふたりの女王に、リバーステラに存在する雨野タカミとミカナという兄妹をこの世界に転移させるよう指示したのは、精霊たちの姿を借りた白き匣だった。
白き匣は、ふたりの女王に、初代女王や二代目の女王と同じ、「太陽の巫女」としての本来の力である「世界の理を変える力」を与えたつもりだった。
だが、彼女たちはただのシャーマンに過ぎず、その力を持っていはいなかった。
その力は、何故かリバーステラに存在する雨野兄妹が持っていた。
ふたりの女王は異世界から雨野兄妹を転移させる力さえ持ってはいなかったから、儀式だけを行わせ、実際には白き匣が転移させた。
山汐メイという者までついてきてしまったのは計算外であったが、彼女は何の力も持ってはいなかったから、いざというときにミカナを守るための盾にするつもりでいた。
だが、計算外の存在も時には役に立つ物だ。
テラを作ったのは「我々」であり、彼らはその際にリバーステラを元にした。
そのため、ふたつの世界には同じ名前、同じ顔をした者が多数存在した。
「我々」は異世界からこの世界に召喚できる者に明確なルールを定めていた。
それは、どちらの世界にも存在する者は互いの世界を行き来できない、というものだった。
ミカナは、恋愛感情を抱いていた実の兄を、リバーステラに存在する返璧真依に取られてしまったばかりであった。
そして、この世界に存在する返璧マヨリもまた、タカミに恋をした。
同じ名前、同じ顔をした女に二度も兄を取られるかもしれないと考えたミカナは、タカミとマヨリと距離を置くようになった。
もうひとりの女王であるリサや、共に転移してきたメイが彼女の心の拠り所になってくれた。
計算外の存在だけでなく、使い物にならないふたりの女王までが、ミカナとタカミの距離を広げ、溝を深める役割をしてくれたのだ。
白き匣は、タカミの前に精霊たちの姿で現れ、「我々」が存在しない4番目のリバーステラを作らせる役割を与えた。
「我々」のことはすでに見限っていたからだった。
「テラはこのままではいずれ滅びる運命にある」
「本来ならばふたりの女王が持つ力を、なぜか異世界に存在する君たち兄妹が持っていた」
「君たちには女王の代わりにこの世界を滅びの運命から救ってほしい」
「だがひとつだけ問題がある。この世界が滅亡した後の世界が、君たちの世界なんだ」
「だから、タカミ、君にはふたつの世界を切り離してほしい」
「ミカナにもその力はあるが、おそらく彼女には力のコントロールはできない」
「精霊であるぼくたちにもできないことを、ただの人がするんだ。成功したとしても失敗したとしても命に関わる」
「君にそんな仕事をまかせてしまわなければならない、無力なぼくたちをゆるしてほしい」
「だが、君にしかできないんだ」
10年も自室に引きこもり、妹にしか心を開かなかったタカミは、実際にはただの共依存でしかなかったものの、実の兄妹でありながら互いに恋愛感情を抱いていた。
しかし彼は、妹ではなく、別の女を好きになり恋人関係になってしまった。
タカミ自身が抱いていた罪悪感と、妹を家族として純粋に愛する気持ちの両方を言葉巧みに利用することにした。
同じ時間軸に存在する過去の世界と未来の世界を切り離させるのではなく、リバーステラ自体を新たに作り直すのでもなく、「我々」という存在だけを排除した、それ以外は全く同じ世界を作らせていることを、タカミに気づかれないようにするためには多少苦労したが、彼に大きな役割を与えることによって、ミカナと接する時間が減り、ふたりの距離や溝はさらに深まってくれた。
そして「我々」という組織もまた、「匣」の手駒にしか過ぎなかった。
雨野ミカナは、「我々」が有していた「72個の匣」とは別の匣、「白き匣」の手駒にしか過ぎなかった。
雨野ミカナが兄のタカミを超える力を持っていたことは、ジパングのふたりの女王が、転移してきたふたりを出迎えたときからわかっていた。
白き匣もまた、女王に仕える陰陽師である比良坂ヨモツ・コヨミとしてその場にいたからだ。
ジパングのふたりの女王に、リバーステラに存在する雨野タカミとミカナという兄妹をこの世界に転移させるよう指示したのは、精霊たちの姿を借りた白き匣だった。
白き匣は、ふたりの女王に、初代女王や二代目の女王と同じ、「太陽の巫女」としての本来の力である「世界の理を変える力」を与えたつもりだった。
だが、彼女たちはただのシャーマンに過ぎず、その力を持っていはいなかった。
その力は、何故かリバーステラに存在する雨野兄妹が持っていた。
ふたりの女王は異世界から雨野兄妹を転移させる力さえ持ってはいなかったから、儀式だけを行わせ、実際には白き匣が転移させた。
山汐メイという者までついてきてしまったのは計算外であったが、彼女は何の力も持ってはいなかったから、いざというときにミカナを守るための盾にするつもりでいた。
だが、計算外の存在も時には役に立つ物だ。
テラを作ったのは「我々」であり、彼らはその際にリバーステラを元にした。
そのため、ふたつの世界には同じ名前、同じ顔をした者が多数存在した。
「我々」は異世界からこの世界に召喚できる者に明確なルールを定めていた。
それは、どちらの世界にも存在する者は互いの世界を行き来できない、というものだった。
ミカナは、恋愛感情を抱いていた実の兄を、リバーステラに存在する返璧真依に取られてしまったばかりであった。
そして、この世界に存在する返璧マヨリもまた、タカミに恋をした。
同じ名前、同じ顔をした女に二度も兄を取られるかもしれないと考えたミカナは、タカミとマヨリと距離を置くようになった。
もうひとりの女王であるリサや、共に転移してきたメイが彼女の心の拠り所になってくれた。
計算外の存在だけでなく、使い物にならないふたりの女王までが、ミカナとタカミの距離を広げ、溝を深める役割をしてくれたのだ。
白き匣は、タカミの前に精霊たちの姿で現れ、「我々」が存在しない4番目のリバーステラを作らせる役割を与えた。
「我々」のことはすでに見限っていたからだった。
「テラはこのままではいずれ滅びる運命にある」
「本来ならばふたりの女王が持つ力を、なぜか異世界に存在する君たち兄妹が持っていた」
「君たちには女王の代わりにこの世界を滅びの運命から救ってほしい」
「だがひとつだけ問題がある。この世界が滅亡した後の世界が、君たちの世界なんだ」
「だから、タカミ、君にはふたつの世界を切り離してほしい」
「ミカナにもその力はあるが、おそらく彼女には力のコントロールはできない」
「精霊であるぼくたちにもできないことを、ただの人がするんだ。成功したとしても失敗したとしても命に関わる」
「君にそんな仕事をまかせてしまわなければならない、無力なぼくたちをゆるしてほしい」
「だが、君にしかできないんだ」
10年も自室に引きこもり、妹にしか心を開かなかったタカミは、実際にはただの共依存でしかなかったものの、実の兄妹でありながら互いに恋愛感情を抱いていた。
しかし彼は、妹ではなく、別の女を好きになり恋人関係になってしまった。
タカミ自身が抱いていた罪悪感と、妹を家族として純粋に愛する気持ちの両方を言葉巧みに利用することにした。
同じ時間軸に存在する過去の世界と未来の世界を切り離させるのではなく、リバーステラ自体を新たに作り直すのでもなく、「我々」という存在だけを排除した、それ以外は全く同じ世界を作らせていることを、タカミに気づかれないようにするためには多少苦労したが、彼に大きな役割を与えることによって、ミカナと接する時間が減り、ふたりの距離や溝はさらに深まってくれた。
0
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。
SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。
サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
Age43の異世界生活…おじさんなのでほのぼの暮します
夏田スイカ
ファンタジー
異世界に転生した一方で、何故かおじさんのままだった主人公・沢村英司が、薬師となって様々な人助けをする物語です。
この説明をご覧になった読者の方は、是非一読お願いします。
※更新スパンは週1~2話程度を予定しております。
ゲスいお嬢様的日常(仮)
胸の轟
ファンタジー
お気に入り登録ありがとうございます。すごく励みになります。
【乳首を吸うだけの簡単なお仕事です。経験不問】その広告を見た瞬間赤ちゃんになりました。うん、そんなことだと思ってたから悔しくなんてない(血涙)ごく普通の私は、ごく普通に授業サボったり、ごく普通に美少年の匂い嗅いだり、たまにバイオレンスしたりしてだらだら過ごします。
※たまに直してます
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる