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【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】「やったね!魔法少女ピノアちゃん大活躍!!編」
第186話 雨野ミカナの秘密 ②
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ミカナは自室にいた。
そして、タクシーの中で考えていたことの続きに思いを馳せていた。
彼女があの世界にいたときに考えた小説の設定で、エーテルの次に考えたのは、テラにはなぜ世界の言語がひとつしかないのかについてだった。
旧約聖書によれば、大洪水とノアの方舟のエピソードの後に、バベルの塔のエピソードがあり、人は神の怒りをかった。
神は塔を破壊するだけでなく、言語を分けたという。
テラには、そのような神話も聖書もなかった。
だから、ミカナは旧約聖書をベースに神話を作ることにした。
これもエーテルと同じく、小説の設定だった。
蒸気機関が発展した大正時代を舞台にしたゲームが、太正時代となっていたように、旧約聖書を救厄聖書にしよう。
バベルの塔のエピソードは、神の怒りをかうことがなかったか、それ自体がなかったことにしよう。
最初はそんな感覚だった。
救厄聖書という名前から、聖書の編纂者が預言者であることにし、その最後には終末の預言があることにしよう。
世界の終末が、ただの厄災ではちょっと物足りない。
だから、大厄災にしよう。
大厄災という終末の預言と、それを防ぐ者たちが現れるという預言にしよう。
救厄の聖者たちの預言があるから、救厄聖書。
そんな風に思い付きを箇条書きにしてまとめていった。
タクシーの中で真依が大厄災についてスマホで調べているのを見て、ゼルダなんてやったことなかったからまさか被っていただなんて……とミカナは実は驚愕としていた。
(※ 作者も愕然としました)
ミカナは次に、では大厄災とは、一体何なのかを考えた。
ただ単に世界が滅ぶだけではつまらない。
大厄災は人災で、それを起こす者以外のすべての人と、人が存在した痕跡を跡形もなく消すというものはどうだろうか。
そうすれば、大厄災を起こした者だけが残り神となる。
自らに似せて人を作り、新たな人の歴史が始まる。
そして、また大厄災を起こす者が現れる。
大厄災の結果自体は変わらないが、それを起こす条件や手段が毎回変わることにすればおもしろいのではないだろうか。
聖書の内容や預言も毎回変わることにしよう。
人類最初の殺人の動機や殺害方法などが、そのまま大厄災を起こす者の動機や条件、手段につながるのはどうだろう。
ミカナがそんな風に考えをまとめたら、次の日からジパングのふたりの女王や民たちは大厄災について口にするようになり、救厄聖書まで、彼女が考えていた以上の内容のものになって存在していた。
エーテルについても口にし始めた。
自分は夢でも見ているのだろうか。
それとも、テラの神になってしまったのだろうか?
自分が持つ、世界の理さえも変えてしまう力を知らなかったミカナは、困惑しつつもあふれでてくるアイデアを止めることができなかった。
・大厄災を起こす者を、言葉巧みに操り操られていることさえも気づかせない組織が存在する。
・その組織は、テラではなく、自分たちが生まれ育った世界に存在する。
・テラは放射性物質のゴミ処理場にされ、放射性物質はエーテルに取り憑き、ダークマターという新たな魔素となる。
・テラは、組織が作った異世界に過ぎず、何度も大厄災を起こし人の歴史を繰り返させ、放射性物質の浄化方法を編み出させようとしている。
・組織は、古代宇宙飛行士が残した超小型大容量記憶端末を有しており、それは匣と呼ばれており、全部で72個存在する。
・だが、組織さえもその存在を知らない匣がテラにふたつ生まれる。
・ふたつの匣は、ひとつはすべての匣を破壊するために、もうひとつはすべての匣を再生するために存在する。
それらのアイデアは、すべてテラの世界の理を変えていった。
歴史そのものまで。
ミカナは、自分が兄と同じ世界の理を変える力を持っていると気づいたとき、テラはもう彼女にはどうすることもできないような状況になっていた。
彼女が一度変えてしまった理は、彼女には戻すことは不可能だった。
兄にしかできなかった。
ミカナが持つ力は兄よりも上だったのか、兄は理が変えられてしまっていることにも気づいていなかった。
話せなかった。
自分がすべての元凶だなんて。
死にたいとすら思った。
兄から自分が救厄の聖者の最後のひとりだと告げられたとき、ミカナは大厄災自体を産み出した自分にそんな資格はないと思った。
だから駄々をこねた。
あのとき、アンフィスがかけてくれた言葉も、正直何を言っているんだろうと思った。
何も知らないくせに、と。
だが、ブライ・アジ・ダハーカという男が兄や聖者たちに敗れ、世界を滅ぼすほどのエネルギーを貯め自爆しようとしたとき、兄とメイのことだけは守らなければと思った。
気づいたら、聖者たちとは比べ物にならない力でブライという男を破壊していた。
リバーステラに帰ることができたとき、ほっとした。
同時に兄に対して抱いていた恋愛感情を諦めることもできた。
だが、ミカナが変えた理は、テラだけでなく、リバーステラまでをも巻き込み始めた。
カーズウィルスによるパンデミックだ。
あれも、ミカナが小説用に考えたアイデアのひとつだった。
ピノアがこの世界にやってきているとわかったとき、ミカナは思った。
この子はすべての元凶がわたしだと気づき、わたしを殺しにきたのだ、と。
だが、どうやら違うようだった。
彼女はミカナが産み出した、組織さえも知らないふたつの匣のうちのひとつが、自分のところにやってくるための交通手段に過ぎなかった。
真っ暗なミカナの部屋には、ヒトの姿をした「すべての匣を再生する匣」がいた。
見覚えのある顔だった。
「主よ、私はあなたの望みをすべて叶えるために参りました」
彼はそう言った。
「あなた、名前はあるの?」
そう尋ねたミカナに、
「比良坂ヨモツと申します。
主がジパングにいらっしゃられた頃から、ずっと主をお守りしておりました」
かつてジパングの陰陽師であったその青年は言った。
彼にはコヨミという妹がいたはずだが、今はヨモツでありコヨミでもあるのだという。
「わたしが望むことは、たったひとつ。
おにーちゃんが幸せでいてくれること。
おにーちゃんの幸せを壊す存在はすべての世界から排除して」
「かしこまりました」
比良坂ヨモツは、そう言い終えるとミカナの首をはねた。
床にごろんと転がったミカナは、
「ありがとう。わたしが持つ力はすべてあなたにあげる。
あとはあなたの判断にすべてまかせるわ」
そう言って息を引き取った。
ヨモツはその頭部を踏み潰すと、その姿をミカナに変えた。
「おまかせください。
ではまず、ピノア・オーダー・ダハーカを始末致します。
そのあとは璧隣寝入、雨野ムスブ、雨野真依、そして最後に雨野タカミをこの世界から排除します。
主の本当の望みは、主を裏切ったあの男を最も苦しませてから殺すことですから」
そして、タクシーの中で考えていたことの続きに思いを馳せていた。
彼女があの世界にいたときに考えた小説の設定で、エーテルの次に考えたのは、テラにはなぜ世界の言語がひとつしかないのかについてだった。
旧約聖書によれば、大洪水とノアの方舟のエピソードの後に、バベルの塔のエピソードがあり、人は神の怒りをかった。
神は塔を破壊するだけでなく、言語を分けたという。
テラには、そのような神話も聖書もなかった。
だから、ミカナは旧約聖書をベースに神話を作ることにした。
これもエーテルと同じく、小説の設定だった。
蒸気機関が発展した大正時代を舞台にしたゲームが、太正時代となっていたように、旧約聖書を救厄聖書にしよう。
バベルの塔のエピソードは、神の怒りをかうことがなかったか、それ自体がなかったことにしよう。
最初はそんな感覚だった。
救厄聖書という名前から、聖書の編纂者が預言者であることにし、その最後には終末の預言があることにしよう。
世界の終末が、ただの厄災ではちょっと物足りない。
だから、大厄災にしよう。
大厄災という終末の預言と、それを防ぐ者たちが現れるという預言にしよう。
救厄の聖者たちの預言があるから、救厄聖書。
そんな風に思い付きを箇条書きにしてまとめていった。
タクシーの中で真依が大厄災についてスマホで調べているのを見て、ゼルダなんてやったことなかったからまさか被っていただなんて……とミカナは実は驚愕としていた。
(※ 作者も愕然としました)
ミカナは次に、では大厄災とは、一体何なのかを考えた。
ただ単に世界が滅ぶだけではつまらない。
大厄災は人災で、それを起こす者以外のすべての人と、人が存在した痕跡を跡形もなく消すというものはどうだろうか。
そうすれば、大厄災を起こした者だけが残り神となる。
自らに似せて人を作り、新たな人の歴史が始まる。
そして、また大厄災を起こす者が現れる。
大厄災の結果自体は変わらないが、それを起こす条件や手段が毎回変わることにすればおもしろいのではないだろうか。
聖書の内容や預言も毎回変わることにしよう。
人類最初の殺人の動機や殺害方法などが、そのまま大厄災を起こす者の動機や条件、手段につながるのはどうだろう。
ミカナがそんな風に考えをまとめたら、次の日からジパングのふたりの女王や民たちは大厄災について口にするようになり、救厄聖書まで、彼女が考えていた以上の内容のものになって存在していた。
エーテルについても口にし始めた。
自分は夢でも見ているのだろうか。
それとも、テラの神になってしまったのだろうか?
自分が持つ、世界の理さえも変えてしまう力を知らなかったミカナは、困惑しつつもあふれでてくるアイデアを止めることができなかった。
・大厄災を起こす者を、言葉巧みに操り操られていることさえも気づかせない組織が存在する。
・その組織は、テラではなく、自分たちが生まれ育った世界に存在する。
・テラは放射性物質のゴミ処理場にされ、放射性物質はエーテルに取り憑き、ダークマターという新たな魔素となる。
・テラは、組織が作った異世界に過ぎず、何度も大厄災を起こし人の歴史を繰り返させ、放射性物質の浄化方法を編み出させようとしている。
・組織は、古代宇宙飛行士が残した超小型大容量記憶端末を有しており、それは匣と呼ばれており、全部で72個存在する。
・だが、組織さえもその存在を知らない匣がテラにふたつ生まれる。
・ふたつの匣は、ひとつはすべての匣を破壊するために、もうひとつはすべての匣を再生するために存在する。
それらのアイデアは、すべてテラの世界の理を変えていった。
歴史そのものまで。
ミカナは、自分が兄と同じ世界の理を変える力を持っていると気づいたとき、テラはもう彼女にはどうすることもできないような状況になっていた。
彼女が一度変えてしまった理は、彼女には戻すことは不可能だった。
兄にしかできなかった。
ミカナが持つ力は兄よりも上だったのか、兄は理が変えられてしまっていることにも気づいていなかった。
話せなかった。
自分がすべての元凶だなんて。
死にたいとすら思った。
兄から自分が救厄の聖者の最後のひとりだと告げられたとき、ミカナは大厄災自体を産み出した自分にそんな資格はないと思った。
だから駄々をこねた。
あのとき、アンフィスがかけてくれた言葉も、正直何を言っているんだろうと思った。
何も知らないくせに、と。
だが、ブライ・アジ・ダハーカという男が兄や聖者たちに敗れ、世界を滅ぼすほどのエネルギーを貯め自爆しようとしたとき、兄とメイのことだけは守らなければと思った。
気づいたら、聖者たちとは比べ物にならない力でブライという男を破壊していた。
リバーステラに帰ることができたとき、ほっとした。
同時に兄に対して抱いていた恋愛感情を諦めることもできた。
だが、ミカナが変えた理は、テラだけでなく、リバーステラまでをも巻き込み始めた。
カーズウィルスによるパンデミックだ。
あれも、ミカナが小説用に考えたアイデアのひとつだった。
ピノアがこの世界にやってきているとわかったとき、ミカナは思った。
この子はすべての元凶がわたしだと気づき、わたしを殺しにきたのだ、と。
だが、どうやら違うようだった。
彼女はミカナが産み出した、組織さえも知らないふたつの匣のうちのひとつが、自分のところにやってくるための交通手段に過ぎなかった。
真っ暗なミカナの部屋には、ヒトの姿をした「すべての匣を再生する匣」がいた。
見覚えのある顔だった。
「主よ、私はあなたの望みをすべて叶えるために参りました」
彼はそう言った。
「あなた、名前はあるの?」
そう尋ねたミカナに、
「比良坂ヨモツと申します。
主がジパングにいらっしゃられた頃から、ずっと主をお守りしておりました」
かつてジパングの陰陽師であったその青年は言った。
彼にはコヨミという妹がいたはずだが、今はヨモツでありコヨミでもあるのだという。
「わたしが望むことは、たったひとつ。
おにーちゃんが幸せでいてくれること。
おにーちゃんの幸せを壊す存在はすべての世界から排除して」
「かしこまりました」
比良坂ヨモツは、そう言い終えるとミカナの首をはねた。
床にごろんと転がったミカナは、
「ありがとう。わたしが持つ力はすべてあなたにあげる。
あとはあなたの判断にすべてまかせるわ」
そう言って息を引き取った。
ヨモツはその頭部を踏み潰すと、その姿をミカナに変えた。
「おまかせください。
ではまず、ピノア・オーダー・ダハーカを始末致します。
そのあとは璧隣寝入、雨野ムスブ、雨野真依、そして最後に雨野タカミをこの世界から排除します。
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