「キヅイセ」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな

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【第二部 異世界転移奇譚 RENJI 2 】「気づいたらまた異世界にいた。異世界転移、通算一万人目と10001人目の冒険者。」

第173話 アンサー

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 処刑されたキリストが三日後に復活を遂げたという話はレンジも知っていた。

 だが、父とショウゴによれば、キリストはその後、数人の使者を連れて日本に渡来したという説があるのだという。
 日本にはキリストの墓が存在し、伊勢神宮にはユダヤ人がダビデの星と呼んでいた六芒星が刻まれたものが存在するという。

 キリストが来日した際に、ロンギヌスの槍もまた日本に持ち込まれ、草薙の剣と呼ばれるようになったということだった。

「匣は、箱の形をしているとは限らないんだ。
 ロンギヌスの槍は、形状を自由に変化させることが出来た」

 だから、日本に持ち込まれてからは、剣の形となり、草薙の剣と呼ばれるようになったのだという。

「ロンギヌスの槍を手にした者が世界を制する力を持つ、という話は知っているか?」

 レンジは父の言葉にうなづいた。

「だから、第二次世界大戦のとき、ヒトラーが血眼になってそれを探してたって何かで読んだことがあるよ」

 彼もまさか同盟国であった日本にそれがあったとは思いもよらなかっただろう。


「ロンギヌスの槍が世界を制する力を持つと言われていたのは、キリストの処刑の際に使われたからでも、形状が変化するからでもないんだ。
 匣はすべて、古代のリバーステラに、現在のリバーステラやテラよりもはるかに進歩した文明がもたらした、超小型大容量記憶端末だったからだ」

 アンサーと呼ばれる、外宇宙からやってきた古代宇宙飛行士という存在が複数存在し、72個の匣をもたらしたのだという。


 日本に存在した3つの匣は、元々邪馬台国が持っていたが、大和朝廷に奪われたのだという。

 その後は大和朝廷の王が代々管理していたが、藤原家がそれを奪い、朝廷の実権を握ってしまった。

 そして平将門の手に渡り、次は平氏の時代が訪れたが、壇之浦の戦いの際に源義経がそれを手にした。
 壇之浦では、幼い天皇が草薙の剣と共に入水自殺をしたとされているが、天皇は剣を義経に託していた。

 だから源頼朝は匣を奪うために義経を殺そうとしたが、義経は匣を頼朝に差し出し、そして大陸へと渡り、チンギス・ハンになったという。


「じゃあ、明智光秀が本能寺の変を起こしたのも……」

「匣の存在に気づいた秀吉が、光秀に命じたからだ。
 だが、同じ命令を彼は家康からも受けていた。
 光秀は、用済みになれば自分が秀吉に殺されるとわかっていた。
 だから、家康に天下を取らせ、天海という名の坊主になり、江戸幕府を支える重鎮となった」


 江戸時代の末期に起きた黒船の来訪もまた、鎖国を終わらせ、日本にある3つの匣を奪うのが目的であったという。

 幕末の時代、新選組は幕府が持つ匣を守るために戦った。
 だが、坂本龍馬が匣のひとつを手にしてしまったため、原田佐之助ら新選組の隊士たちは土方歳三の指示を受け、匣を奪うために龍馬を暗殺した。

 そのときにはもう、土方歳三の目的は、近藤勇に天下を取らせることへと変わっていたという。
 幕府への忠誠心は彼には元々なく、彼にあるのは近藤勇への忠誠心だけであった。
 近藤勇を征夷大将軍とする新たな幕府を開くこと、そして匣の力で沖田総司の結核を治すことが彼の目的だった。

 だが、土方歳三は匣を手にすることも、龍馬を暗殺することもかなわなかった。

 匣はすでに西郷隆盛たちに渡されており、龍馬は西郷らによって殺害されていた。

 幕府は滅び、再び天皇が匣をすべて手にした。

 しかし、匣は間もなく軍のものになり、最終的には東條英機の手に渡った。

 そして、日本には二発の原爆が落とされた。

 日本でも原爆の開発は進められていたが、原子力を利用した発電や核兵器は、匣がもたらした技術であった。
 合衆国もまた匣を複数所持しており、匣がもたらした技術の威力と試すと同時に、匣を奪うために原爆を落とした。

 日本に存在した3つの匣はGHQに奪われた。

 合衆国はその後も戦争を続け、00年代にアフガニスタンとイラクから匣を回収し、そのすべてを揃えた。


 それが、日本における匣をめぐる戦争の歴史であった。


 匣はすべて回収し、アリスが作ったという73番目の匣によって完全に消滅させなければいけなかった。

 匣は大東洋に沈んでいると思われたが、それ自体に移動手段があるのか、まるで願いをかなえたあとのドラゴンボールのように、すでに世界中に散っていた。
 ドラゴンボールは七つ集めれば良いが、匣は72個もあった。

 ジパングのふたりの女王・マヨリとリサが匣の大体の場所をサーチし、レンジとピノア、ショウゴとイルルは二人で一組となり、サトシとサタナハマアカは単独で匣を探すことになった。
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