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第96話 アルビノの魔人の覚醒 ③
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ピノア・カーバンクルは、ステラ・リヴァイアサンのために生まれた。
ステラは、アルビノの魔人として、この時代に確かに生まれながらも、しかし、あまりにも強大すぎる力を持って生まれてきてしまった。
それゆえに、その力を大賢者によってふたつに分けられた。
ピノアは、ステラから分けられた力が、自ら実体や自我を持つようになった存在だった。
ピノアが人工的に生み出されたというのは、そういう意味だった。
しかし、ピノアとは本来、ステラがノベラと呼んでいた彼女の方だった。
幼少期、孤独に苛まれていた彼女は、空想のお友達を作り出した。
誰とでも仲良くなることができる、自分には持っていないものを全部持っているようなお友達を。
それがステラたちの知るピノアであり、彼女がステラと友達になることで、ふたりのピノアは救われた。
だから本来のピノア(ノベラ)は、空想のお友達のピノアに身体も力もすべてをを明け渡すことにした。
その方がきっと、何もかもうまくいく気がしたからだった。
そして、ピノアの肉体や魂、力を残したまま、ステラの一部になることによって、彼女の中に眠る9998人の巫女の力を目覚めさせたのだ。
そのために必要なのは、本来のピノアの魂だけだったからだ。
ステラ・リヴァイアサンは、自分が本来持っていた力を取り戻すことによって、父がなぜその力をふたつに分けたのかさえもわかった。
大賢者であった父は、育ての親ではなく、ステラの本当の父親であった。
父は、決して自分の才能に嫉妬したのではなかった。
生まれたばかりのステラは、生まれ持った強大すぎる力を抑えることができず、産んでくれた母親に大火傷や凍傷を負わせて殺してしまった。
そして、ステラ自身もまた、その力に耐えることもできず、放っておけばそのまま死んでしまうことがわかったからだった。
だから、父はステラをふたつに分けた。
ピノアの苗字であるカーバンクルは、母の旧姓だった。
母の名は、アリス・カーバンクル。
父はステラと本当の父であると同時に、ピノアの本当の父でもあったのだ。
そして、ネクロマンサーでもあった父は、死んだ9998人の巫女の肉体は土へ還し、魂もまたアカシックレコードへと向かわせていた。
父は、巫女の力だけを集めていた。
父がその力を集めはじめたのは、最初はおそらく自分のためだっただろう。
しかし、父はその力を、ステラが自らの力を制御できるための力にすることにした。
「不思議ね……」
ステラは言った。
「これが、ピノアやアンフィスが見ていた世界なのね」
先ほどまでとは、見えている世界の情報量があまりにも違った。
だから、とても不思議だったのだ。
それに、使えなかったはずの魔法が使えることや、知らないはずの魔法さえも使えるようになっていることが不思議だった。
ゲルマーニの医療魔法も、ヘブリカの召喚魔法も、究極召喚と呼ばれるものや機動召喚と呼ばれるものも、ジパングの陰陽道も、世界中の知らない魔法がすべて使えるのがわかったのだ。
闇の精霊の魔法も。時の精霊の魔法も。存在すら知らなかった、次元の精霊の魔法も。
「これは、ゲルマーニにしかない、魔人専用の治癒魔法よ」
ステラは、ピノアとアンフィス、そして自分に、三人が先ほどダークマターの浄化に使ってしまった体内のエーテル細胞をすべて元通りにする魔法をかけた。
「こんな魔法があるのか」
アンフィスはただただ驚いていた。どうやって身体を元に戻せばいいのかさえわからないくらい、三人とも身体がぼろぼろだったからだった。
「そして、これが、ヘブリカの機動召喚魔法」
ステラの手には、エメラルドのビーズがちりばめられた剣があった。
「これは、スラエータオナの剣。
どうやら、ブライ・アジ・ダハーカを殺すためにある剣のようね」
「まさか、神話や伝説上の存在たちの武器だけを召喚したのか?」
アンフィスが驚いていた。
当然の反応だった。
本来の召喚魔法は、神話や伝説上の存在たちを召喚するものだからだ。
しかし、機動召喚魔法は、神話や伝説上の存在たちの武器や防具だけを一時的に借りるのだ。
究極召喚魔法は、そのような存在と術者が融合するものだということもわかった。一度使ってしまったら元には戻れないため、召喚魔法使いの最終手段といったところだろう。
「もうすぐ、ここにレンジとレオナルドが来るわ。ふたりとものんびり屋さんね。
レオナルドは武器を持っていないようだから、いくつか借りておいてあげようかしら」
「どうして、レオナルドちゃんに武器がいるの?」
「それは、もうすぐわかるわ。きっとピノアはびっくりすると思うから期待してて」
ステラにそう言われたピノアは、うん、と顔をほころばせた。
ステラは次々に武器を召喚した。
黄金の剣「クリューサーオール」、悪魔殺しの剣「シャムシール・エ・ゾモロドネガル」、先端が二股に分かれた曲剣「ズルフィカール」。
「あら、これは、ピノアが好きそう」
ステラは「クリューサーオール」とは別の黄金の魔剣を召喚すると、
「ブルンツヴィークの剣っていうそうよ。
手に取って命じるだけで敵の首を落とすことが出来るんですって」
「ステラの中のわたしのイメージ、どうなってるの!?」
ステラは、冗談よ、と言って笑った。
彼女は剣だけでなく、アンフィスの苦手な槍も召喚した。
悪魔が使用するという二又槍「ピッチフォーク」、「屠殺者(とさつしゃ)」という奇妙な名の槍先が灼熱しているだけでなく、さらに毒を持つという設定が渋滞したもの、
「これは、ドラゴン退治に用いたとされる槍だから、ケツァルコアトルたちも嫌かしら」
アスカロンという名らしい槍を召喚するとそう言った。
「あと、これも、ブライ・アジ・ダハーカ用ね」
その槍というよりはどちらかと言えば矛というべき形をしたものは、「ガルシャースプの矛」という武器だという。
ステラが次々とピノアやアンフィスも知らないような魔法を試していると、レンジとレオナルドが遅れて飛空艇にやってきた。
ふたりはステラがアルビノの魔人になっているのを見て驚いていたが、アンフィスはレオナルドが狼の姿でもレンジの甲冑でもなく、甲冑だけのヒト型の姿であることに驚かされた。
しかし、ピノアは、
「期待しすぎて損した……レオナルドちゃんの方がかわいかった……」
ヒト型のレオナルドを見て、大きくため息をついた。
ステラは、アルビノの魔人として、この時代に確かに生まれながらも、しかし、あまりにも強大すぎる力を持って生まれてきてしまった。
それゆえに、その力を大賢者によってふたつに分けられた。
ピノアは、ステラから分けられた力が、自ら実体や自我を持つようになった存在だった。
ピノアが人工的に生み出されたというのは、そういう意味だった。
しかし、ピノアとは本来、ステラがノベラと呼んでいた彼女の方だった。
幼少期、孤独に苛まれていた彼女は、空想のお友達を作り出した。
誰とでも仲良くなることができる、自分には持っていないものを全部持っているようなお友達を。
それがステラたちの知るピノアであり、彼女がステラと友達になることで、ふたりのピノアは救われた。
だから本来のピノア(ノベラ)は、空想のお友達のピノアに身体も力もすべてをを明け渡すことにした。
その方がきっと、何もかもうまくいく気がしたからだった。
そして、ピノアの肉体や魂、力を残したまま、ステラの一部になることによって、彼女の中に眠る9998人の巫女の力を目覚めさせたのだ。
そのために必要なのは、本来のピノアの魂だけだったからだ。
ステラ・リヴァイアサンは、自分が本来持っていた力を取り戻すことによって、父がなぜその力をふたつに分けたのかさえもわかった。
大賢者であった父は、育ての親ではなく、ステラの本当の父親であった。
父は、決して自分の才能に嫉妬したのではなかった。
生まれたばかりのステラは、生まれ持った強大すぎる力を抑えることができず、産んでくれた母親に大火傷や凍傷を負わせて殺してしまった。
そして、ステラ自身もまた、その力に耐えることもできず、放っておけばそのまま死んでしまうことがわかったからだった。
だから、父はステラをふたつに分けた。
ピノアの苗字であるカーバンクルは、母の旧姓だった。
母の名は、アリス・カーバンクル。
父はステラと本当の父であると同時に、ピノアの本当の父でもあったのだ。
そして、ネクロマンサーでもあった父は、死んだ9998人の巫女の肉体は土へ還し、魂もまたアカシックレコードへと向かわせていた。
父は、巫女の力だけを集めていた。
父がその力を集めはじめたのは、最初はおそらく自分のためだっただろう。
しかし、父はその力を、ステラが自らの力を制御できるための力にすることにした。
「不思議ね……」
ステラは言った。
「これが、ピノアやアンフィスが見ていた世界なのね」
先ほどまでとは、見えている世界の情報量があまりにも違った。
だから、とても不思議だったのだ。
それに、使えなかったはずの魔法が使えることや、知らないはずの魔法さえも使えるようになっていることが不思議だった。
ゲルマーニの医療魔法も、ヘブリカの召喚魔法も、究極召喚と呼ばれるものや機動召喚と呼ばれるものも、ジパングの陰陽道も、世界中の知らない魔法がすべて使えるのがわかったのだ。
闇の精霊の魔法も。時の精霊の魔法も。存在すら知らなかった、次元の精霊の魔法も。
「これは、ゲルマーニにしかない、魔人専用の治癒魔法よ」
ステラは、ピノアとアンフィス、そして自分に、三人が先ほどダークマターの浄化に使ってしまった体内のエーテル細胞をすべて元通りにする魔法をかけた。
「こんな魔法があるのか」
アンフィスはただただ驚いていた。どうやって身体を元に戻せばいいのかさえわからないくらい、三人とも身体がぼろぼろだったからだった。
「そして、これが、ヘブリカの機動召喚魔法」
ステラの手には、エメラルドのビーズがちりばめられた剣があった。
「これは、スラエータオナの剣。
どうやら、ブライ・アジ・ダハーカを殺すためにある剣のようね」
「まさか、神話や伝説上の存在たちの武器だけを召喚したのか?」
アンフィスが驚いていた。
当然の反応だった。
本来の召喚魔法は、神話や伝説上の存在たちを召喚するものだからだ。
しかし、機動召喚魔法は、神話や伝説上の存在たちの武器や防具だけを一時的に借りるのだ。
究極召喚魔法は、そのような存在と術者が融合するものだということもわかった。一度使ってしまったら元には戻れないため、召喚魔法使いの最終手段といったところだろう。
「もうすぐ、ここにレンジとレオナルドが来るわ。ふたりとものんびり屋さんね。
レオナルドは武器を持っていないようだから、いくつか借りておいてあげようかしら」
「どうして、レオナルドちゃんに武器がいるの?」
「それは、もうすぐわかるわ。きっとピノアはびっくりすると思うから期待してて」
ステラにそう言われたピノアは、うん、と顔をほころばせた。
ステラは次々に武器を召喚した。
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「あら、これは、ピノアが好きそう」
ステラは「クリューサーオール」とは別の黄金の魔剣を召喚すると、
「ブルンツヴィークの剣っていうそうよ。
手に取って命じるだけで敵の首を落とすことが出来るんですって」
「ステラの中のわたしのイメージ、どうなってるの!?」
ステラは、冗談よ、と言って笑った。
彼女は剣だけでなく、アンフィスの苦手な槍も召喚した。
悪魔が使用するという二又槍「ピッチフォーク」、「屠殺者(とさつしゃ)」という奇妙な名の槍先が灼熱しているだけでなく、さらに毒を持つという設定が渋滞したもの、
「これは、ドラゴン退治に用いたとされる槍だから、ケツァルコアトルたちも嫌かしら」
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「あと、これも、ブライ・アジ・ダハーカ用ね」
その槍というよりはどちらかと言えば矛というべき形をしたものは、「ガルシャースプの矛」という武器だという。
ステラが次々とピノアやアンフィスも知らないような魔法を試していると、レンジとレオナルドが遅れて飛空艇にやってきた。
ふたりはステラがアルビノの魔人になっているのを見て驚いていたが、アンフィスはレオナルドが狼の姿でもレンジの甲冑でもなく、甲冑だけのヒト型の姿であることに驚かされた。
しかし、ピノアは、
「期待しすぎて損した……レオナルドちゃんの方がかわいかった……」
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