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NO.4
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「遅かったわね、リック」
俺がメリーの元へ行くと膨れっ面な彼女がそこにいた。机にはポットとティーカップ、クッキーが置いてある。俺をもてなすつもりだったのかもしれない。
「ごめん、友達に捕まっててさ」
美味しそうだなあ、と心の中で舌舐めずりしながら彼女に軽く謝る。
「まあいいんだけどね。ほら、早く座って。紅茶が冷めちゃうわよ」
メリーはそう言って、金縁で薔薇の柄をあしらったカップにセット物であろう同じ柄のポットで紅茶を注いだ。カップと飴色の紅茶が合わさると絢爛豪華な雰囲気を醸し出す。
この部屋そのものも白を基調としており、繊細な金属の装飾が良く映えて豪華に見える。メリーが今着ている服だってそうだ。フリルが多く付けられパニエで膨らんでいるスカート部分は、どこか上流階級の人が着る服に似ている。もしかしたらメリーは金持ちの娘で特別扱いされてるのかもしれない。
「じゃあ勉強でもしましょうか。わからないところはある?」
メリーは背丈は小学校低学年のようだが俺よりも遥かに賢い。何を聞いてもスラスラと答えてくれるのだ。俺はあることがふと気になってメリーに尋ねた。
「あのさ、メリーって歳いくつ?」
すると、瞬く間にメリーの顔に苦悩と不安の色が漂った。まずいことを聞いてしまったのかもしれない。
「すまん。嫌なら言わなくていい」
「歳はまだ言えない。でもあなたよりは年上よ。リック」
そう言うとメリーは先程の表情を誤魔化すかのような優雅さで紅茶を飲んだ。
「年上!? じゃあなんでそんなに背が低いのさ」
俺は衝撃を受けずにはいられなかった。こんなに背の小さい少女が俺より年上だなんて。その反応を想定してたのかメリーはティーカップを皿の上に丁寧に置くと、静かに……小さく頷いた。
「私、実はね、呪いを受けてるの」
時が止まったかのような部屋に、何処からか嘲笑うような声が入り込む。
「……呪い?」
重々しい空気の中聞き返す。
「ええ、背が伸びなくなる呪い。それが5歳の頃かかったの。だから私は5歳の時から背が伸びてないわ。リックは気が付かなかったかもしれないけど……」
メリーが小さく魔法の名前を口ずさむ。上手く聞き取れなかったが、物を浮かせる浮遊魔法か何かだと思われた。
「右目に注目して」
彼女は俺の顔を覗き込みながらそう言った。俺も彼女の瞳をじっと見つめる。
「!?」
そこには紋章が浮かび上がっていた。
よく見ないと分かりづらいが、ハートのような形をしている紋章が小さく、しかしくっきりと。場違いな感想だけれども綺麗だと思った。
「わかった? これが私のうけた呪いの証。他の生徒や先生には内緒よ? このことも……私自身の存在も」
また何処からか嘲笑う声が聞こえる。でもそれ以上に、メリーの表情がどこまでも真剣で俺は頷くしかなかった。
この時俺は彼女の謎に少し触れた気がした。そう意識してしまったら最後、胸の鼓動が高まっていく。
俺しか知らない彼女の秘密。
それはまるで子供の頃、秘密基地を作って大人にバレない邪魔されない世界で遊ぶような感覚に似ていた。
「さあ、また勉強を始めましょう? テストまで時間がないんだから」
俺はこの日から謎めいた少女、メリーにずっとドキドキしていた。
この気持ちの答えを俺はまだ知らない。知りたくなかった。
――知ったら全てが壊れてしまいそうだったから……
俺がメリーの元へ行くと膨れっ面な彼女がそこにいた。机にはポットとティーカップ、クッキーが置いてある。俺をもてなすつもりだったのかもしれない。
「ごめん、友達に捕まっててさ」
美味しそうだなあ、と心の中で舌舐めずりしながら彼女に軽く謝る。
「まあいいんだけどね。ほら、早く座って。紅茶が冷めちゃうわよ」
メリーはそう言って、金縁で薔薇の柄をあしらったカップにセット物であろう同じ柄のポットで紅茶を注いだ。カップと飴色の紅茶が合わさると絢爛豪華な雰囲気を醸し出す。
この部屋そのものも白を基調としており、繊細な金属の装飾が良く映えて豪華に見える。メリーが今着ている服だってそうだ。フリルが多く付けられパニエで膨らんでいるスカート部分は、どこか上流階級の人が着る服に似ている。もしかしたらメリーは金持ちの娘で特別扱いされてるのかもしれない。
「じゃあ勉強でもしましょうか。わからないところはある?」
メリーは背丈は小学校低学年のようだが俺よりも遥かに賢い。何を聞いてもスラスラと答えてくれるのだ。俺はあることがふと気になってメリーに尋ねた。
「あのさ、メリーって歳いくつ?」
すると、瞬く間にメリーの顔に苦悩と不安の色が漂った。まずいことを聞いてしまったのかもしれない。
「すまん。嫌なら言わなくていい」
「歳はまだ言えない。でもあなたよりは年上よ。リック」
そう言うとメリーは先程の表情を誤魔化すかのような優雅さで紅茶を飲んだ。
「年上!? じゃあなんでそんなに背が低いのさ」
俺は衝撃を受けずにはいられなかった。こんなに背の小さい少女が俺より年上だなんて。その反応を想定してたのかメリーはティーカップを皿の上に丁寧に置くと、静かに……小さく頷いた。
「私、実はね、呪いを受けてるの」
時が止まったかのような部屋に、何処からか嘲笑うような声が入り込む。
「……呪い?」
重々しい空気の中聞き返す。
「ええ、背が伸びなくなる呪い。それが5歳の頃かかったの。だから私は5歳の時から背が伸びてないわ。リックは気が付かなかったかもしれないけど……」
メリーが小さく魔法の名前を口ずさむ。上手く聞き取れなかったが、物を浮かせる浮遊魔法か何かだと思われた。
「右目に注目して」
彼女は俺の顔を覗き込みながらそう言った。俺も彼女の瞳をじっと見つめる。
「!?」
そこには紋章が浮かび上がっていた。
よく見ないと分かりづらいが、ハートのような形をしている紋章が小さく、しかしくっきりと。場違いな感想だけれども綺麗だと思った。
「わかった? これが私のうけた呪いの証。他の生徒や先生には内緒よ? このことも……私自身の存在も」
また何処からか嘲笑う声が聞こえる。でもそれ以上に、メリーの表情がどこまでも真剣で俺は頷くしかなかった。
この時俺は彼女の謎に少し触れた気がした。そう意識してしまったら最後、胸の鼓動が高まっていく。
俺しか知らない彼女の秘密。
それはまるで子供の頃、秘密基地を作って大人にバレない邪魔されない世界で遊ぶような感覚に似ていた。
「さあ、また勉強を始めましょう? テストまで時間がないんだから」
俺はこの日から謎めいた少女、メリーにずっとドキドキしていた。
この気持ちの答えを俺はまだ知らない。知りたくなかった。
――知ったら全てが壊れてしまいそうだったから……
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