時計塔には秘密が眠っている

無名小女

文字の大きさ
上 下
3 / 20

NO.2

しおりを挟む
「えーと、ここの階段を掃除すればいいんだな?」
俺はほうきとちりとりを持って時計塔内の長い階段をじっと見ていた。
先生は会議があると言って行ってしまったし、ここは魔法で適当に掃除でもしておいて時計塔の中でも散策するか。

俺はほうきとちりとりが自動的に掃除をするように魔法をかけ、長い階段の脇にあるあちらこちらにある扉を開けてみた。

すると、俺は資料がいっぱいありそうな部屋を見つけた。
本棚だけでうめつくされた部屋には大量の本があり、なかなか期待できる情報が見つかる予感がした。

しかし、一つだけ気ががりなことがある。
時計塔は普段立入禁止の場所だ。
なのにどこかから俺以外の人の気配を感じるのだ。
教師かもしれない。
俺は透明になる魔法を小声で唱え、自分にかけた。
そして悪魔の子について有力な情報を探した。

「見つからねなー。」
本はこんなにたくさんあるのになかなか出てこない。
俺は疲れきって捜査はまた明日こっそり来てやろうかなと考えていると本棚の一つが隠し扉になってるのを発見した。

「ちょっと開けてみるか」
俺はその扉をそっと開けた。
すると…

「透明になる魔法をかけた悪戯な少年が来たね。元来、時計塔には立入禁止のはずなんだけどね。」

そこには本を読んでいるすごい背丈の小さな少女がいた。
こちらを見て悪戯な笑みを浮かべる。

俺が警戒をしていると
「大丈夫よ。先生には言わないわ。だから姿を見せてくれない?透明人間さん。」
その少女はクスッと笑って俺の目の前に立った。
すごく強い魔力の人間だってすぐわかった。

魔法を使っていることに気がつくだけでなく透明になってるのにどこにいるかまでバレているのだから。

俺は渋々透明になる魔法をといた。
そしてこの力の強いのであろう少女をじっと見た。
確かに背丈は小学生くらいだが紫色という魔導師の中でも珍しい色をした瞳ははっきりとこちらを捉えている。

その少女はふわふわとした癖っ毛の長い金髪をふわっと揺らしニコッと笑った。
そして突然こう話し始める
「私はメリー、あなたは?」

俺が黙っているとメリーという少女は一冊の本を召喚して、何か魔法を使い、じっと読んだあと俺を見た。

「あなた、リックって言うのね。ソレスト村出身で、現在はこの学校の寮生。13歳で中学一年生、学校での態度はやっぱり結構問題児なのね。へー…」
メリーという少女は淡々と俺について話し始める。

「ちょっと待て、なんでそれがわかる?」
俺は混乱していた。この不思議な少女に。
「今、その人について詳しくわかる魔法の本を召喚したの。」
「そんな本、あるのか?聞いたことない。」

すると、彼女はそんなことも知らないのかみたいな顔をして説明しだした。
「あるわ。今、君の知らない間に髪の毛を一本もらってその本に吸い込んだの。髪さえ吸い込めばその人について知りたいことがなんでもわかることから危険だからって言われて長い間、この学校が封印してる本の一つよ。今回はこっそり封印を解いて持って来ちゃったけどね(笑)」

俺は衝撃を受けた。
メリーという少女は俺の知らない間に、本の封印を解いて召喚し髪を取り、吸い込ませ、俺の情報を調べあげたのだから。

「お前…」
「メリーよ。私、リックに興味を持ったわ。ずっとこの時計塔のこの部屋にいて暇だったの。これからも来てくれる?」

俺は迷っていた。彼女には謎が多すぎる。
関わることで情報を集めにくくなる場合も…

俺が悩んでいると彼女は紫色の瞳をじっと俺に向け静かな声でこう続けた。
「悪魔の子を探してるんだってね。」
「!!」
「村を燃やした悪魔の子と呼ばれている魔導師を。倒し方なら私が教えてあげる。自分で言うのもなんだけどこう見えても私、結構強いのよ。それなら悪くないでしょ?来る気にならない?」

正直、かなり悪くない条件だ。
それに彼女ならもしかしたら悪魔の子を探せるかもしれない。
仲良くなって損はないはずだとこの言葉を聞いて感じた。

「ああ、悪くない条件だ。約束さえ守ってくれれば毎日でも来るよ。よろしく、メリー。」
俺はそう言って握手を求めた。
メリーはそれに頷き、微笑みながら握手に応えた。

これが俺と謎の少女メリーの出会いだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

この世界で唯一『スキル合成』の能力を持っていた件

なかの
ファンタジー
異世界に転生した僕。 そこで与えられたのは、この世界ただ一人だけが持つ、ユニークスキル『スキル合成 - シンセサイズ』だった。 このユニークスキルを武器にこの世界を無双していく。 【web累計100万PV突破!】 著/イラスト なかの

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...