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2 ただ戦いと強さを求める男の性
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さて、学園生活もだいぶ慣れ、いよいよソフィアの恋人づくりに取り掛かる事にした。
まず、最初に目をつけたのはこいつ。
火の国の王子アラン。上級生。
俺と同じように筋肉質でしまった体、精悍で目鼻立ちがくっきりした顔。
それでいて、笑うと少年のような表情となり、女達はその笑顔に大概やられる。
王道イケメンといったところか。
で、性格はさっぱりとしていて、典型的な脳筋バカの類。
俺と通じるところがある。
こいつなら、きっと分かってくれるだろう。
「すまない、突然なのだが……」
俺は、校舎裏にアランを呼び出し頼み込んだ。
「……で、マリア、君の妹とデートしろと?」
「ああ、そう言うことだ。妹はソフィアという。可愛いしお前も気にいると思う。どうか頼む」
「……残念だな」
「残念? 何がだ?」
「内心、君に告白されるのかと思ってワクワクしていたからさ。マリア、俺は、前から君のこと気になっていた。俺好みの女だって」
ニコリと笑う。
普通の女なら間違いなくこれで堕ちていただろう。
そう、オリジナルのマリアもきっとそうだ。
(だが、俺は男。助かったぜ)
「ふっ、そうだったのか? 悪いな。いい友人にはなれそうだが、さすがに恋人はないな」
「……そうか。でも、こうやってお近づきになれたんだ。いずれそうならないとも限らないだろ?」
どうかな。俺は、そんな意味を込めて肩をすくむゼスチャーをした。
「ところで、君の妹さんとのデートだが、タダというのは面白くない。勝負に勝ったら、というのではどうか? そして、俺が勝負に勝ったら君は俺のいう事を一つきく」
「勝負だと?」
「ああ、こいつでさ」
アランはウインクして、腰に吊るしていた剣をポンと叩いた。
****
アランと俺は、学園の演習場にきた。
「ルールは簡単だ。剣術勝負。2本先取で勝敗を決する」
「いいぜ、異論はない」
「そうか、マリア。君の噂の剣の腕前、見せてもらうぜ」
剣術勝負とはなんと粋な計らい。
腕がなる。
俺は、前世では、剣道は段持ち、それに居合いも多少の心得がある。
それで、授業の模擬戦では、いっさい負けなし。
学園内では、美人剣士の愛称で名が通っている。
一方、剣術に関してはアランも有名人。
上の学年の間では100年に1人の逸材などと噂されている。
まさに、手合わせしたかった好敵手。
テンションが上がらないわけがない。
「こっちこそ、見せてもらうぜ! アラン、剣聖と名高いお前の腕を!」
****
カーン! カーン!
打ち合いが続く。
「さすがだな、アラン……」
「マリア、お前こそ……なかなかのものだ」
(マジで強い。しかし、それ以上に楽しいぜ。張り詰めた緊張の糸が途切れる一瞬……堪らない)
俺は、神経を研ぎ澄ませ、一気に間合いを詰める。
そして、渾身の力で剣を横一閃に振り抜いた。
「うぐっ……」
アランは唸った。模擬刀が輝きを放つ。
1本入ったのだ。
アランは、息を荒げ、俺の方を見る。
「はぁ、はぁ……マリア、君は何てすごいんだ。まさか、俺から一本とるなんて。正直舐めていたよ……少し剣が使えるだけの美人令嬢かと思っていた……ここまでとは驚きしかない……」
「ふっ。本気だせよ、アラン。まだ、本気出してないんだろ?」
「……そこまでお見通しとはな……嬉しいな。俺が本気を出せる相手に巡り会えるなんて……」
アランは、ニコリと笑った。
嬉しくて仕方ない。そんな男の笑顔。
互いを認め合う。最高に気持ちいい。
キュン……。
(え!? 何だ今の!? 胸の中でキュンと音がしたぞ……)
心臓の鼓動が早まるのが分かる。
明らかな体の変化。
「……俺は本気を出す。だから、マリア。君も全力で来い!」
「あ、ああ……」
(ちょっとまて……この感情はなんだ。キュンって何だよ……よりによって勝負中に……)
「いくぜ!!」
アランの剣術奥義がさく裂する。
カーン! カーン!
俺は防戦一方。
(だ、ダメだ……勝負に集中できない。何故だろう、アランの顔から目が離せない……)
うぐっ!!!
いつの間にか、アランの剣が俺の肩を直撃していた。
アランの模擬刀の光が目に入った。
(一本、とられたのか……)
「どうした、マリア。さっきの勢いは? 俺をがっかりさせるなよ」
俺は、目を閉じた。
「すまない、アラン。確かに、俺は集中を欠いていた。今から本気を見せる」
「ああ、楽しみにしている」
集中力を高める。
静かな水面に波紋ができる感覚。
無の境地。
「はぁ!!!」
俺は居合をぶちかます。
おそらく抜きの速さを目で追うのは不可能。
決まったか、と思ったが、アランはギリギリ交わしていた。
野生の感、というものなのか。
「……すごいな。危なかったよ……」
「まだまだ、これからだ!」
俺は、間髪入れずに剣技を放つ。
もてる限りの技のコンビネーション。
しかし、どれもアランにはギリギリ届かない。
俺は、攻めきれず一旦距離を取った。
「……すごいぞ! マリア、それでこそ、君は俺のライバルにふさわしい」
「ら、ライバル……」
「ああ、ライバルだ」
キュンキュン……。
(あっ……まただ。
それも、もっと激しい……)
汗が飛び散るアランの表情がキラキラと輝いて眩しい。
(……こいつに惹かれる自分がいる……こいつを特別だと感じる……何故だ)
「……いくぞ!」
(いかん、集中だ!)
アランは、出し惜しみせず剣技を繰り出した。
俺は、その全てを受け切った。
はずだったのだが……。
腹部に強烈な痛み。
「うぐ ……かはっ」
俺は腹を抱え、片膝をついた。
「ここまでだな、マリア」
「ま、負けた……完敗だ」
「しかし、いい戦いだった。ほら、手を貸す」
「ありがとう……アラン、お前の足元にも及ばなかった気がする」
「ふっ、そんな事はない。俺とてギリギリだった。運が良かっただけだ」
俺が身なりを整ると、改めてアランは俺に握手を求めた。
そして、握手からの互いの健闘を讃えるハグ。
「マリア、これで、俺たちは親友だな」
「親友……そうだな。アラン」
ああ、熱い。
やっぱりいいな、男同士の真剣勝負ってのは。
試合の後は、こうやって互いを認め合う。
くぅ!! 痺れるぜ!
「……マリア。唐突だが、俺がなぜ君に惹かれるのか、理由が分かった気がする」
「え? 何を突然言い出す?」
「最初は君の美しさに惹かれた。しかし、こうやって剣を交えてみて、それだけじゃなかった事に気が付いた。マリア、君は戦いの美学をちゃんと理解している。だから、君とは心で通じ合う事ができるんだ。すごい事だ。だから、俺は、君に惹かれてる。どうしようもなく……きっと、愛しているんだ、君の事を。君は俺にとっての運命の人……天使なんだ」
「ば、馬鹿野郎!!! 何、突然、告ってんだよ! 恥ずかしいんだよ! お前!」
「ははは……悪い。ちと本音が出ちまった。どうも、マリアが相手だと調子が狂うぜ。確かに恥ずいな、俺」
アランは真っ赤になったほっぺをぽりぽりと描いた。
キュンキュンキュン……。
な、なんだ今のは?
ドキドキの波が押し寄せてきて、心臓が破裂しそうだ。
あ、あれ? 何か変だ……体が何かに乗っ取られるような……ああ、気が遠くなる……。
「おい、大丈夫か? マリア、マリア! しっかりしろ!!」
抱き抱えられるのが記憶の片隅で感じられた。
****
目を開けると、そこにアランの顔があった。
「ここは?」
「気が付いたか? 良かったぜ、安心しろ、治癒室のベッドだ。しかし、びっくりしたぜ、急に倒れて」
「ああ、すまない……普段はこんな事はないんだが……まぁ、貧血みたいなものかな」
(あれ?
胸のドキドキが治ってない。
なんだこれ?)
体が熱い……特に下腹部。男のモノ。
(ま、まさか、これは性的な興奮によるもの?
嘘だろ!
誰に対して?
まさか、アランに対してなのか!?)
「……なぁ、マリア。勝負の約束は覚えているか?」
「勝負の約束……ああ、何でもひとつ願い事をきく、だったな」
「ああ」
「いいぜ、何でも言えよ」
「単刀直入に言う。君を抱いてもいいか?」
(ヘ? こいつは何を言ってる? 冗談だろ?)
アランは、じっと真剣な眼差しを俺に向ける。
(ちょっと待て。いくらこいつがいい奴だからって、どうして男に抱かれなくちゃいけねぇんだよ。答えは、ノーに決まってる)
しかし、俺の答えは違った。
「いいぜ。俺を抱いて……でも、俺は初めてなんだ。優しくしてくれ……」
(はぁ!!! 俺は、一体何を言ってるんだ!!)
「そうか、初めてなのか……嬉しいじゃないか。精一杯、優しくする……だから、安心してくれ」
(ど、どうして、こうなる!!
はっ、まさか、これがストーリー強制力!?
抗う事が出来ずに、ストーリー通りに進んで行く、これが……)
アランの手が俺の衣服を一枚、また一枚と剥いでいく。
(ダメだ、ダメだ、俺は男のなんて受け入れる覚悟なんてできてねぇ! やめろ! やめてくれ!!)
「……緊張してるのか? ふふふ、大丈夫だ。初めては痛いかも知れない。でも、しっかり気持ちよくしてやるから」
「ああ、頼む……」
そのまま、アランは裸になった俺の上にのしかかった。
****
女子寮の部屋。
俺は、リビングに倒れ込んだ。
ソフィアが、慌てて駆けつける。
「お姉様! こんな時間まで何処へ行ってたのですか!」
「いや……ちょっとな」
「ボク、すごく心配しました。今日は、早く戻られるって言っていたのに……」
「悪かった。ごめんよ、ソフィア。あれ? どうした? 泣いているのか?」
「な、泣いてなんかいません!!」
俺は、ソフィアを抱き寄せて、よしよしと頭を撫でる。
「……お姉様、もう、ボクを独りにしないで下さい……ボク、お姉様が居ないと寂しいんですから……」
「そうか……ごめんな」
甘えん坊のソフィア。
いつもこうやってなだめてやる。
すると、次第に機嫌が治っていく。
「じゃあ、許してあげます、お姉様!! ふふふ、さて、お夕食は如何しましょうか? 久しぶりに街に食べに行きませんか?」
にっこりウキウキ顔。
こんなところも愛おしい。
「あれ!? お姉様……」
「ん? どうした?」
「お姉様いつもより美しいというか……可愛いらしいというか……何かいつもと雰囲気が違うようです」
(うっ、もしかして、アランに抱かれた事と関係が?
女性は、初めてを経験すると美しくなるときく。
まさか……)
「とっても素敵です!!」
ソフィアは、嬉しそうに身支度を始めた。
(それにしても……。
なんて事だ。
初めて男同士でしてしまった)
どうせ、体が男と分かれば諦めるだろう、なんて期待したが、そこも関係なく、
「マリア、いい体してるじゃないか、興奮するよ」
とか言って、当たり前のように、男の体をいやらしく愛撫し、躊躇なく男の体を攻めてくる。
実際に、抱かれた感想だが、正直、気持ち良すぎて頭がおかしくなるかと思った。
下腹部から溢れて止まらない快楽の渦。
あれがエクスタシーってやつなのだろう。
望まずして、男に抱かれたってのに、最高に満たれた気持ちなのが、よりいっそう悔しい。
『さあ、マリア。後ろを向けよ。その可愛いお尻を見せてくれ。いい揉み心地だ……柔くて綺麗だよ』
『……入れるぞ、マリア。お尻の力を抜いて……そう、その調子。ああ、入っていく……君の中に……大丈夫、最高のエクスタシーを感じさせてやるから』
『はぁ、はぁ、すごい締め付け……声出していいからな……何、恥ずかしがってんだよ……我慢せずに、気持ちよくなっちまえよ』
『……え? 痛いだけだったって? 嘘つけ、本当は、気持ち良かったんだろ? ほら、前だってこんなに出してるくせに……照れるなって……いいんだよ、俺にはさらけ出して……ったく、君って意外と可愛いところあるよな』
(アランの野郎、イケメンじゃねぇか。あれじゃ、オリジナルのマリアもゾッコンだったに違いない)
「お姉様、早く支度してください!! 出発しますよ!!」
「ああ、分かった! すぐに支度する!」
(とにかく、俺が、恋人候補の1人を寝取っちまったのは事実。
つまり、今のところストーリー通り。
でも、まだ始まったばかりだ。
残り3人も残ってる。
大丈夫だ)
俺は、そう自分に言い聞かせた。
まず、最初に目をつけたのはこいつ。
火の国の王子アラン。上級生。
俺と同じように筋肉質でしまった体、精悍で目鼻立ちがくっきりした顔。
それでいて、笑うと少年のような表情となり、女達はその笑顔に大概やられる。
王道イケメンといったところか。
で、性格はさっぱりとしていて、典型的な脳筋バカの類。
俺と通じるところがある。
こいつなら、きっと分かってくれるだろう。
「すまない、突然なのだが……」
俺は、校舎裏にアランを呼び出し頼み込んだ。
「……で、マリア、君の妹とデートしろと?」
「ああ、そう言うことだ。妹はソフィアという。可愛いしお前も気にいると思う。どうか頼む」
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「内心、君に告白されるのかと思ってワクワクしていたからさ。マリア、俺は、前から君のこと気になっていた。俺好みの女だって」
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普通の女なら間違いなくこれで堕ちていただろう。
そう、オリジナルのマリアもきっとそうだ。
(だが、俺は男。助かったぜ)
「ふっ、そうだったのか? 悪いな。いい友人にはなれそうだが、さすがに恋人はないな」
「……そうか。でも、こうやってお近づきになれたんだ。いずれそうならないとも限らないだろ?」
どうかな。俺は、そんな意味を込めて肩をすくむゼスチャーをした。
「ところで、君の妹さんとのデートだが、タダというのは面白くない。勝負に勝ったら、というのではどうか? そして、俺が勝負に勝ったら君は俺のいう事を一つきく」
「勝負だと?」
「ああ、こいつでさ」
アランはウインクして、腰に吊るしていた剣をポンと叩いた。
****
アランと俺は、学園の演習場にきた。
「ルールは簡単だ。剣術勝負。2本先取で勝敗を決する」
「いいぜ、異論はない」
「そうか、マリア。君の噂の剣の腕前、見せてもらうぜ」
剣術勝負とはなんと粋な計らい。
腕がなる。
俺は、前世では、剣道は段持ち、それに居合いも多少の心得がある。
それで、授業の模擬戦では、いっさい負けなし。
学園内では、美人剣士の愛称で名が通っている。
一方、剣術に関してはアランも有名人。
上の学年の間では100年に1人の逸材などと噂されている。
まさに、手合わせしたかった好敵手。
テンションが上がらないわけがない。
「こっちこそ、見せてもらうぜ! アラン、剣聖と名高いお前の腕を!」
****
カーン! カーン!
打ち合いが続く。
「さすがだな、アラン……」
「マリア、お前こそ……なかなかのものだ」
(マジで強い。しかし、それ以上に楽しいぜ。張り詰めた緊張の糸が途切れる一瞬……堪らない)
俺は、神経を研ぎ澄ませ、一気に間合いを詰める。
そして、渾身の力で剣を横一閃に振り抜いた。
「うぐっ……」
アランは唸った。模擬刀が輝きを放つ。
1本入ったのだ。
アランは、息を荒げ、俺の方を見る。
「はぁ、はぁ……マリア、君は何てすごいんだ。まさか、俺から一本とるなんて。正直舐めていたよ……少し剣が使えるだけの美人令嬢かと思っていた……ここまでとは驚きしかない……」
「ふっ。本気だせよ、アラン。まだ、本気出してないんだろ?」
「……そこまでお見通しとはな……嬉しいな。俺が本気を出せる相手に巡り会えるなんて……」
アランは、ニコリと笑った。
嬉しくて仕方ない。そんな男の笑顔。
互いを認め合う。最高に気持ちいい。
キュン……。
(え!? 何だ今の!? 胸の中でキュンと音がしたぞ……)
心臓の鼓動が早まるのが分かる。
明らかな体の変化。
「……俺は本気を出す。だから、マリア。君も全力で来い!」
「あ、ああ……」
(ちょっとまて……この感情はなんだ。キュンって何だよ……よりによって勝負中に……)
「いくぜ!!」
アランの剣術奥義がさく裂する。
カーン! カーン!
俺は防戦一方。
(だ、ダメだ……勝負に集中できない。何故だろう、アランの顔から目が離せない……)
うぐっ!!!
いつの間にか、アランの剣が俺の肩を直撃していた。
アランの模擬刀の光が目に入った。
(一本、とられたのか……)
「どうした、マリア。さっきの勢いは? 俺をがっかりさせるなよ」
俺は、目を閉じた。
「すまない、アラン。確かに、俺は集中を欠いていた。今から本気を見せる」
「ああ、楽しみにしている」
集中力を高める。
静かな水面に波紋ができる感覚。
無の境地。
「はぁ!!!」
俺は居合をぶちかます。
おそらく抜きの速さを目で追うのは不可能。
決まったか、と思ったが、アランはギリギリ交わしていた。
野生の感、というものなのか。
「……すごいな。危なかったよ……」
「まだまだ、これからだ!」
俺は、間髪入れずに剣技を放つ。
もてる限りの技のコンビネーション。
しかし、どれもアランにはギリギリ届かない。
俺は、攻めきれず一旦距離を取った。
「……すごいぞ! マリア、それでこそ、君は俺のライバルにふさわしい」
「ら、ライバル……」
「ああ、ライバルだ」
キュンキュン……。
(あっ……まただ。
それも、もっと激しい……)
汗が飛び散るアランの表情がキラキラと輝いて眩しい。
(……こいつに惹かれる自分がいる……こいつを特別だと感じる……何故だ)
「……いくぞ!」
(いかん、集中だ!)
アランは、出し惜しみせず剣技を繰り出した。
俺は、その全てを受け切った。
はずだったのだが……。
腹部に強烈な痛み。
「うぐ ……かはっ」
俺は腹を抱え、片膝をついた。
「ここまでだな、マリア」
「ま、負けた……完敗だ」
「しかし、いい戦いだった。ほら、手を貸す」
「ありがとう……アラン、お前の足元にも及ばなかった気がする」
「ふっ、そんな事はない。俺とてギリギリだった。運が良かっただけだ」
俺が身なりを整ると、改めてアランは俺に握手を求めた。
そして、握手からの互いの健闘を讃えるハグ。
「マリア、これで、俺たちは親友だな」
「親友……そうだな。アラン」
ああ、熱い。
やっぱりいいな、男同士の真剣勝負ってのは。
試合の後は、こうやって互いを認め合う。
くぅ!! 痺れるぜ!
「……マリア。唐突だが、俺がなぜ君に惹かれるのか、理由が分かった気がする」
「え? 何を突然言い出す?」
「最初は君の美しさに惹かれた。しかし、こうやって剣を交えてみて、それだけじゃなかった事に気が付いた。マリア、君は戦いの美学をちゃんと理解している。だから、君とは心で通じ合う事ができるんだ。すごい事だ。だから、俺は、君に惹かれてる。どうしようもなく……きっと、愛しているんだ、君の事を。君は俺にとっての運命の人……天使なんだ」
「ば、馬鹿野郎!!! 何、突然、告ってんだよ! 恥ずかしいんだよ! お前!」
「ははは……悪い。ちと本音が出ちまった。どうも、マリアが相手だと調子が狂うぜ。確かに恥ずいな、俺」
アランは真っ赤になったほっぺをぽりぽりと描いた。
キュンキュンキュン……。
な、なんだ今のは?
ドキドキの波が押し寄せてきて、心臓が破裂しそうだ。
あ、あれ? 何か変だ……体が何かに乗っ取られるような……ああ、気が遠くなる……。
「おい、大丈夫か? マリア、マリア! しっかりしろ!!」
抱き抱えられるのが記憶の片隅で感じられた。
****
目を開けると、そこにアランの顔があった。
「ここは?」
「気が付いたか? 良かったぜ、安心しろ、治癒室のベッドだ。しかし、びっくりしたぜ、急に倒れて」
「ああ、すまない……普段はこんな事はないんだが……まぁ、貧血みたいなものかな」
(あれ?
胸のドキドキが治ってない。
なんだこれ?)
体が熱い……特に下腹部。男のモノ。
(ま、まさか、これは性的な興奮によるもの?
嘘だろ!
誰に対して?
まさか、アランに対してなのか!?)
「……なぁ、マリア。勝負の約束は覚えているか?」
「勝負の約束……ああ、何でもひとつ願い事をきく、だったな」
「ああ」
「いいぜ、何でも言えよ」
「単刀直入に言う。君を抱いてもいいか?」
(ヘ? こいつは何を言ってる? 冗談だろ?)
アランは、じっと真剣な眼差しを俺に向ける。
(ちょっと待て。いくらこいつがいい奴だからって、どうして男に抱かれなくちゃいけねぇんだよ。答えは、ノーに決まってる)
しかし、俺の答えは違った。
「いいぜ。俺を抱いて……でも、俺は初めてなんだ。優しくしてくれ……」
(はぁ!!! 俺は、一体何を言ってるんだ!!)
「そうか、初めてなのか……嬉しいじゃないか。精一杯、優しくする……だから、安心してくれ」
(ど、どうして、こうなる!!
はっ、まさか、これがストーリー強制力!?
抗う事が出来ずに、ストーリー通りに進んで行く、これが……)
アランの手が俺の衣服を一枚、また一枚と剥いでいく。
(ダメだ、ダメだ、俺は男のなんて受け入れる覚悟なんてできてねぇ! やめろ! やめてくれ!!)
「……緊張してるのか? ふふふ、大丈夫だ。初めては痛いかも知れない。でも、しっかり気持ちよくしてやるから」
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「いや……ちょっとな」
「ボク、すごく心配しました。今日は、早く戻られるって言っていたのに……」
「悪かった。ごめんよ、ソフィア。あれ? どうした? 泣いているのか?」
「な、泣いてなんかいません!!」
俺は、ソフィアを抱き寄せて、よしよしと頭を撫でる。
「……お姉様、もう、ボクを独りにしないで下さい……ボク、お姉様が居ないと寂しいんですから……」
「そうか……ごめんな」
甘えん坊のソフィア。
いつもこうやってなだめてやる。
すると、次第に機嫌が治っていく。
「じゃあ、許してあげます、お姉様!! ふふふ、さて、お夕食は如何しましょうか? 久しぶりに街に食べに行きませんか?」
にっこりウキウキ顔。
こんなところも愛おしい。
「あれ!? お姉様……」
「ん? どうした?」
「お姉様いつもより美しいというか……可愛いらしいというか……何かいつもと雰囲気が違うようです」
(うっ、もしかして、アランに抱かれた事と関係が?
女性は、初めてを経験すると美しくなるときく。
まさか……)
「とっても素敵です!!」
ソフィアは、嬉しそうに身支度を始めた。
(それにしても……。
なんて事だ。
初めて男同士でしてしまった)
どうせ、体が男と分かれば諦めるだろう、なんて期待したが、そこも関係なく、
「マリア、いい体してるじゃないか、興奮するよ」
とか言って、当たり前のように、男の体をいやらしく愛撫し、躊躇なく男の体を攻めてくる。
実際に、抱かれた感想だが、正直、気持ち良すぎて頭がおかしくなるかと思った。
下腹部から溢れて止まらない快楽の渦。
あれがエクスタシーってやつなのだろう。
望まずして、男に抱かれたってのに、最高に満たれた気持ちなのが、よりいっそう悔しい。
『さあ、マリア。後ろを向けよ。その可愛いお尻を見せてくれ。いい揉み心地だ……柔くて綺麗だよ』
『……入れるぞ、マリア。お尻の力を抜いて……そう、その調子。ああ、入っていく……君の中に……大丈夫、最高のエクスタシーを感じさせてやるから』
『はぁ、はぁ、すごい締め付け……声出していいからな……何、恥ずかしがってんだよ……我慢せずに、気持ちよくなっちまえよ』
『……え? 痛いだけだったって? 嘘つけ、本当は、気持ち良かったんだろ? ほら、前だってこんなに出してるくせに……照れるなって……いいんだよ、俺にはさらけ出して……ったく、君って意外と可愛いところあるよな』
(アランの野郎、イケメンじゃねぇか。あれじゃ、オリジナルのマリアもゾッコンだったに違いない)
「お姉様、早く支度してください!! 出発しますよ!!」
「ああ、分かった! すぐに支度する!」
(とにかく、俺が、恋人候補の1人を寝取っちまったのは事実。
つまり、今のところストーリー通り。
でも、まだ始まったばかりだ。
残り3人も残ってる。
大丈夫だ)
俺は、そう自分に言い聞かせた。
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