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06 ヒットメーカー(2)
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「きゃー! ダイチくーん!」
「……ありがとう! みんな、ありがとう! これからも応援よろしく!」
「キャー!!」
ダイチは、歌、ダンス、そしてセックストレーニングを続け、無事デビューを果たした。
あれだけ心配された歌だったが、ふたを開ければベテラン顔負けの表現力。
これには、さすがのプロダクション事務所の社員たちも、ヒビキの実力に脱帽するほかなかった。
舞台袖。
ステージから戻ってくるダイチをヒビキが出迎える。
「ダイチ、中々、いいパフォーマンスだったぞ」
「……そうですか……ありがとうございます……」
無表情で楽屋の方へ去っていくダイチ。
最近のダイチは、ステージに立っている時以外は基本テンションが低く物静か。
ヒビキは、ダイチの背中を見送る。
「相変わらずか……でも、それでいい。淡々と仕事をこなすのも悪くない」
それに、ヒビキは知っている。
自分は嫌われているだろう事を。
「……ダイチをセックス漬けにしたんだからな……恨まれて当然だな」
ダイチは、プロダクションの看板アイドルとして大々的に売り出しを開始。
悪ぶった少年のような可愛さが、男女年齢層問わず幅広い支持を受け、人気に火が付いた。
デビュー後の滑り出しも順調で、テレビ、雑誌、各種メディアに取り上げられ、第二のソラ誕生、なんてキャッチコピーが広まり人気に拍車を掛けた。
本業である歌の方は、言わずもがな。
ヒットメーカーであるヒビキのプロデュースである。
宣伝効果も含め、大ヒットは約束されたようなもの。
事実、楽曲の良さは、メディアで時折特集を組まれる程であり、インフルエンサー達による、歌ってみた、でトレンド入りが常連化するなどネット界隈も賑わせた。
「……この感じ。あの時と同じだ」
ヒビキは、自分のデスクで物思いにふける。
売れる時は、なにもかもがうまくいくものだ。
それは、かつてソラの時に経験した。
ふと、ヒビキは無性にソラの声が聞きたくなり、衝動的に電話を掛けた。
ツーコール目が鳴る前に繋がった。
「ヒビキさん? まじでヒビキさんだ! うぉー、ヒビキさんが電話くれるなんて、オレすげぇ嬉しいです!」
「……ちょっと声が聞きたくなってな。ソラ」
「オレの声を!? ああ、オレ嬉しくて涙が出てきました。ヒビキさんがオレの声を聞きたいって……夢? これは夢ですか?」
「ソラ……今現場か?」
「あっ……すみません、周りうるさかったですか?」
「いいや、大丈夫だ……悪りぃ、仕事中に……」
「仕事中だってヒビキさんからの電話なら、オレ絶対に取りますから!」
「バーカ! それはダメだろ? 仕事が一番だ」
「はい! ヒビキさん! やったぜ、久しぶりにヒビキさんに叱られた! 嬉しすぎるっ!」
「ははは、なんかお前の元気な声が聞けて、俺も元気が出てきた。ありがとな」
「何言ってんですか! オレなんてヒビキさんの声が聞けて元気満タンすよ。あと一週間は元気元気!」
「ふふふ……そっか。なぁ、ソラ」
「なんすか?」
「……うん、いいや、何でもない。今日はありがとな。仕事忙しそうだし切るぞ」
「ああ、もう! もっと話したかったのに……でもこれ以上望むとバチが当たりそうだから諦めます。またいつでも電話して下さい、じゃあ!」
通話が切れた。
「ふっ、思いのほか元気そうだったな。ソラのやつ……」
ヒビキとソラとの出会いは、もう10年以上前に遡る。
まだ、少年だったソラは橋の上で一人歌を歌っていた。
その日、その日を生き抜く為に……。
ヒビキはソラの身柄を引き取る事にした。
歌の才はある。
いずれ、自分の名声の為に利用出来るはず。
そう考えての事だった。
「年頃になったら犯しまくって情で縛るか……アナルセックスは育成にもなるしな」
当時のヒビキは、男同士のセックスで何故相手の歌唱力が伸びるのか不思議に思っていた。
それが、セックスシンフォニックという現在では失われつつある特殊能力のせいなのだとは、後になるまで知らない。
さて、痛いけな少年を手なづけようと画策したヒビキだったが、無理をせずとも少年の方から進んで慕ってくるようになった。
仔犬のように従順なソラ。
ヒビキはいつしか愛情を持ってソラに接するようになっていった。
ソラはいつだて健気で一生懸命。
それはセックスの時も同じ。
ヒビキのねっとりとしたセックスに必死に応えようとソラは懸命に腰を振る。
「はぁ、はぁ……ヒビキさん、僕もう、いきそうです……でも、もうすこし……ヒビキさんを気持ちよくさせるんだ………ああ、でも、気持ちいいよ……あっ、ああっ……ダメッ……ごめんなさい……僕、いちゃう、いちゃうっ……」
そうやってエッチで可愛い声をあげていた。
ヒビキは、通話口のソラの元気な声で、そんな若かりしき少年の頃のソラをふと思い出してしまった。
思い出したら最後、もうムラムラは止まらない。
「くそっ………」
ヒビキは、トイレに駆け込んだ。
個室に入ったヒビキは、自分のペニスを露わにし、思いっきり握った。
「……ソラ、俺はやっぱりお前の事、忘れられない……まだ愛している……お前を捨てておいて、なんて酷い奴だと思うだろう……でも、俺は……」
ヒビキの脳裏には、セックスの時のソラの顔が浮かんでいる。
ソラは、気持ちいいのを必死に受け入れる。
そして、最後には決まって歓喜の涙を流すのだ。
そんな時、ヒビキは、「女々しいぞ……ソラ」と、優しく涙を拭ってやる。
すると、
「こんな俺にしたのはヒビキさんでしょ?」
と、ほっぺを少し膨らませて、でも叱られるのが嬉しいかのように優しい目を向ける。
「そうだな……」
ヒビキは、そう言ってソラの額にキスをする。
すると、ソラはトロトロの甘え顔で、にっこりと笑うのだ。
「はぁ、はぁ……ソラ、ソラ……俺のソラ……いくっ……」
ペニスの先端から行くあてのない精液が宙を舞う。
届かぬ思いがそうであるように……。
ヒビキは、トイレの扉に拳を当てた。
「はぁ、はぁ、くそっ、俺は一体何をしているんだ……」
ヒビキはそう独り言呟き身なりを整えると、何事もなかったかのようにダイチの楽屋へとツカツカと歩き出した。
「……ありがとう! みんな、ありがとう! これからも応援よろしく!」
「キャー!!」
ダイチは、歌、ダンス、そしてセックストレーニングを続け、無事デビューを果たした。
あれだけ心配された歌だったが、ふたを開ければベテラン顔負けの表現力。
これには、さすがのプロダクション事務所の社員たちも、ヒビキの実力に脱帽するほかなかった。
舞台袖。
ステージから戻ってくるダイチをヒビキが出迎える。
「ダイチ、中々、いいパフォーマンスだったぞ」
「……そうですか……ありがとうございます……」
無表情で楽屋の方へ去っていくダイチ。
最近のダイチは、ステージに立っている時以外は基本テンションが低く物静か。
ヒビキは、ダイチの背中を見送る。
「相変わらずか……でも、それでいい。淡々と仕事をこなすのも悪くない」
それに、ヒビキは知っている。
自分は嫌われているだろう事を。
「……ダイチをセックス漬けにしたんだからな……恨まれて当然だな」
ダイチは、プロダクションの看板アイドルとして大々的に売り出しを開始。
悪ぶった少年のような可愛さが、男女年齢層問わず幅広い支持を受け、人気に火が付いた。
デビュー後の滑り出しも順調で、テレビ、雑誌、各種メディアに取り上げられ、第二のソラ誕生、なんてキャッチコピーが広まり人気に拍車を掛けた。
本業である歌の方は、言わずもがな。
ヒットメーカーであるヒビキのプロデュースである。
宣伝効果も含め、大ヒットは約束されたようなもの。
事実、楽曲の良さは、メディアで時折特集を組まれる程であり、インフルエンサー達による、歌ってみた、でトレンド入りが常連化するなどネット界隈も賑わせた。
「……この感じ。あの時と同じだ」
ヒビキは、自分のデスクで物思いにふける。
売れる時は、なにもかもがうまくいくものだ。
それは、かつてソラの時に経験した。
ふと、ヒビキは無性にソラの声が聞きたくなり、衝動的に電話を掛けた。
ツーコール目が鳴る前に繋がった。
「ヒビキさん? まじでヒビキさんだ! うぉー、ヒビキさんが電話くれるなんて、オレすげぇ嬉しいです!」
「……ちょっと声が聞きたくなってな。ソラ」
「オレの声を!? ああ、オレ嬉しくて涙が出てきました。ヒビキさんがオレの声を聞きたいって……夢? これは夢ですか?」
「ソラ……今現場か?」
「あっ……すみません、周りうるさかったですか?」
「いいや、大丈夫だ……悪りぃ、仕事中に……」
「仕事中だってヒビキさんからの電話なら、オレ絶対に取りますから!」
「バーカ! それはダメだろ? 仕事が一番だ」
「はい! ヒビキさん! やったぜ、久しぶりにヒビキさんに叱られた! 嬉しすぎるっ!」
「ははは、なんかお前の元気な声が聞けて、俺も元気が出てきた。ありがとな」
「何言ってんですか! オレなんてヒビキさんの声が聞けて元気満タンすよ。あと一週間は元気元気!」
「ふふふ……そっか。なぁ、ソラ」
「なんすか?」
「……うん、いいや、何でもない。今日はありがとな。仕事忙しそうだし切るぞ」
「ああ、もう! もっと話したかったのに……でもこれ以上望むとバチが当たりそうだから諦めます。またいつでも電話して下さい、じゃあ!」
通話が切れた。
「ふっ、思いのほか元気そうだったな。ソラのやつ……」
ヒビキとソラとの出会いは、もう10年以上前に遡る。
まだ、少年だったソラは橋の上で一人歌を歌っていた。
その日、その日を生き抜く為に……。
ヒビキはソラの身柄を引き取る事にした。
歌の才はある。
いずれ、自分の名声の為に利用出来るはず。
そう考えての事だった。
「年頃になったら犯しまくって情で縛るか……アナルセックスは育成にもなるしな」
当時のヒビキは、男同士のセックスで何故相手の歌唱力が伸びるのか不思議に思っていた。
それが、セックスシンフォニックという現在では失われつつある特殊能力のせいなのだとは、後になるまで知らない。
さて、痛いけな少年を手なづけようと画策したヒビキだったが、無理をせずとも少年の方から進んで慕ってくるようになった。
仔犬のように従順なソラ。
ヒビキはいつしか愛情を持ってソラに接するようになっていった。
ソラはいつだて健気で一生懸命。
それはセックスの時も同じ。
ヒビキのねっとりとしたセックスに必死に応えようとソラは懸命に腰を振る。
「はぁ、はぁ……ヒビキさん、僕もう、いきそうです……でも、もうすこし……ヒビキさんを気持ちよくさせるんだ………ああ、でも、気持ちいいよ……あっ、ああっ……ダメッ……ごめんなさい……僕、いちゃう、いちゃうっ……」
そうやってエッチで可愛い声をあげていた。
ヒビキは、通話口のソラの元気な声で、そんな若かりしき少年の頃のソラをふと思い出してしまった。
思い出したら最後、もうムラムラは止まらない。
「くそっ………」
ヒビキは、トイレに駆け込んだ。
個室に入ったヒビキは、自分のペニスを露わにし、思いっきり握った。
「……ソラ、俺はやっぱりお前の事、忘れられない……まだ愛している……お前を捨てておいて、なんて酷い奴だと思うだろう……でも、俺は……」
ヒビキの脳裏には、セックスの時のソラの顔が浮かんでいる。
ソラは、気持ちいいのを必死に受け入れる。
そして、最後には決まって歓喜の涙を流すのだ。
そんな時、ヒビキは、「女々しいぞ……ソラ」と、優しく涙を拭ってやる。
すると、
「こんな俺にしたのはヒビキさんでしょ?」
と、ほっぺを少し膨らませて、でも叱られるのが嬉しいかのように優しい目を向ける。
「そうだな……」
ヒビキは、そう言ってソラの額にキスをする。
すると、ソラはトロトロの甘え顔で、にっこりと笑うのだ。
「はぁ、はぁ……ソラ、ソラ……俺のソラ……いくっ……」
ペニスの先端から行くあてのない精液が宙を舞う。
届かぬ思いがそうであるように……。
ヒビキは、トイレの扉に拳を当てた。
「はぁ、はぁ、くそっ、俺は一体何をしているんだ……」
ヒビキはそう独り言呟き身なりを整えると、何事もなかったかのようにダイチの楽屋へとツカツカと歩き出した。
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