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(21) 宗近 6 求め合う男達と事件の終わり

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昼下がりの公園は、ポカポカしてとても気持ちがいい。
学童の子供達が列になって行進している。

拓海は、ぼうっとしながらベンチ座っていた。
と、そのベンチの端にドカっと宗近が座った。

拓海は一瞥もせず、何事も無かったかようにパンくずを食べる小鳥達を見つめている。

宗近は貧乏ゆすりを始めた。
しかし、拓海は、宗近の事はまったくの無視。

(この野郎! また、人のことを軽く見やがって!)

いよいよ、我慢の限界。
宗近は拓海に怒鳴った。

「おい、拓海! なにシカトこいているんだよ!」
「ああ、宗近か? 元気だったか?」

「この野郎!」

殴りかかろうとして、腕を振り上げた。
しかし、そのまま腕を下ろした。

「……まぁ、いいや」

宗近は、冷静になって拓海の真横に座り直した。
沈黙。

ふと、拓海が呟いた。

「で、何か用か? 宗近? また、抱いてほしいのか?」

(くっ……こいつ、さり気無く図星をついてきやがって……)

宗近は、動揺を隠すように言い返した。

「ふん! な、何を言っているんだ! お、オレが四六時中、お前の事を考えていると思ったら大間違いだぞ!」
「いや……そっか。そうだよな……はぁ」

どうせ、皮肉の一つでも言ってくるのだろう。
そう待ち構えていたのだが、気の抜けた返事。

(どうしたんだろ? 本当に元気がなさそうだ。拓海……)

宗近は、心配そうに拓海の顔を覗き込んだ。

「……拓海。お前、まだ『双頭の蛇』の事を考えているのか?」
「へ!?」

拓海は、顔を宗近の方に向けると、目を見開いた。

「お前、どうして『双頭の蛇』を知っている!!」

(あっ……しまった……)

宗近は、頭をぽりぽりと掻いた。


****


「ち、チカちゃんが宗近だと!? 嘘だろ?」

拓海は驚いて声を上げた。

「嘘じゃねぇよ。オレは正直、なんでお前が気が付かないのか不思議でしょうがねぇよ。ったくよ……ぶつぶつ」

宗近は、腕組みをしながら文句を垂れた。
拓海は言った。

「つまり、ムーランルージュで話していたことは筒抜けだったってことか?」
「そういうこと! だから、オレは『双頭の蛇』はもう解決したって事も知っているんだよ」

宗近は、得意気に鼻を膨らませた。

事件の後、拓海はムーランルージュへ、チカちゃんに会いに行っていた。
その時、それは自慢げに語っていたのだ。

拓海は、真剣な表情で宗近を見る。
それに気が付いた宗近が言った。

「な、何を見ているんだ?」
「お前って凄いのな……まさか、本当にチカちゃんだったなんて……正直、驚いたよ……でも、お前が女装すれば確かにチカちゃんだな……」

「ふふふ。どうだ? お前のお気に入りの子がオレだったってことなんだぞ?」

宗近は意地悪そうな顔で拓海を見た。

(うしし、くやしいだろ?)

しかし、拓海の反応は違った。
拓海は、それに構わずにくんくんと鼻をひくつかせた。
そして、ボソッとつぶやいた。

「……そういえば、宗近とチカちゃんって確かに同じ匂い……だから、最初からチカちゃんを可愛いって思ったのかもな……」
「へ!? 何それ?」

宗近の思考はぐるぐると回りだした。

可愛い? オレと同じ匂いだから? えっ、なにそれ?
ま、まさか……。
オレの事を可愛いっていっている、って事でいいんだよな?
いや、しかし……。

「ん? 宗近。お前、何そんなに顔を真っ赤にしているんだ?」
「ば、バカ! してねぇよ! ふざけんなよ!」

宗近は、照れ隠しに顔をぷいっと横に向けた。


****


「で、なんで、そんな顔で悩んでいるんだ? 拓海。ため息なんかして……まるで恋する男の顔じゃねぇか?」

宗近は本題に戻して質問した。

「ああ、それな……」

拓海は、再び深いため息をついた。

「……俺の逃走を手伝ってくれた女がいてな。その女の事ばかり考えている。あの女は俺の窮地を救ってくれた……あの女は間違いなく俺に無い物を持っている。惚れたとしてもおかしくない」

拓海の言葉に、宗近は肩をすくめて返した。

「その女の事をベタ褒めだな……ははは……まぁ、なんだ。よかったな、拓海。好きな相手が出来てさ……人生、楽しんだもの勝ちって事だな!」

宗近がさりげなくいったセリフ。
それに、拓海は敏感に反応した。

「へ!? 宗近! お前、今なんて……!?」

拓海は、身を乗り出して聞き返す。
宗近は、ウインクしながら答えた。


「人生楽しんだもの勝ち!」


拓海は、手をわなわなさせて言った。

「その言葉……まさか……お前……」
「やっと気が付いたか? 拓海! お前、遅えよ! あの女はオレだ! こんな身近にいるのに気づかないとは、ほんと、お前も大した事ないぜ! あははは」


****


「でも、そんな訳は……う、うそだろ? チカちゃんのように女装ってレベルじゃないぞ。確かに、女だった。それも、とびっきりの美女だ……」

宗近は、驚く拓海を、まぁまぁ、と手で制してすくっと立ち上がった。
そして、深呼吸をして目を閉じる。
それは、宗近が役に入るときのスイッチ。

目を開けた顔は、すでに別人のようになっていた。
まぶたを細めとろんとした男を誘うような目つき。

唇をツンと突きだし、女性特有の柔らかい仕草で小首を傾げ、前髪をかき上げる。
女装をしているわけではないのに、正真正銘、女性に見える。

宗近は拓海に手を差し出した。

『さぁ、早く、乗って……』

女性の声色。
拓海は、驚きのあまりしばらく口をポカンと開けていた。
しばらくして、

「たしかに、あの女のように見える……」

と、呟いたが、すぐに腑に落ちない顔をした。

「でも、おかしいじゃないか? 宗近だったとしたら、何故、女に化ける必要があったんだ?」

宗近は、チッ、チッ、チッ、と指を振りながら言った。

「拓海、お前、分かってないな。ヒーローのピンチには美女が助けに来るってのは相場だろ? ……で、その後はお約束のラブロマンス。最後は熱々のハッピーエンド……って、別にオレは下心が有ってした訳じゃないからな! ……ちょっとは有るけど……ごにょごにょ」

最後の方のトーンは小さくなった。
宗近は、恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっていた。

「と、とにかく、オレは拓海が一人で潜入するって聞いて心配になって張り込んでいたわけ……えっ!」

突然、拓海は宗近の体を抱いた。
それも、ギュッと息ができないくらいにきつく。

宗近は、苦しくて声を上げた。

「い、痛いって……どうしたんだ? 拓海」
「ありがとう、宗近。本当に……お前が居なかったら、俺はどうなっていたか分からないよ」

すこし涙交じりの声に、宗近も拓海の背中をぽんぽんと軽くたたいた。

「……ど、どういたしまして……」

体を離すと、二人は顔を見合わせた。
そして、どちらからともなく唇を合わせた。


****


拓海と宗近は、手を繋いでベンチに座った。
爽やかな風が吹き、木々がざざっと騒めく。

拓海のウェーブの掛かった癖っ気の髪が優しく揺れた。
拓海は、青空を眺めながら宗近に言った。

「なぁ、宗近……俺のパートナーになってくれないか?」

「えっ?」

(そ、それって……プロポーズ!?)

宗近は、一瞬、頭の中が真っ白になった。
しかし次の瞬間、目の前の景色がキラキラと鮮明に映り、それが現実で有ることが分かった。

宗近は、張り裂けそうな胸を抑えて答えた。

「な、な……いきなり、ちょ、ちょっと……そ、その心構えというか……」

「探偵のパートナーに……」
「ぶーっ!」

宗近は盛大に吹いた。
拓海は、ん? どうした? と宗近の顔を覗き込んでいる。

宗近は、口を拭いながら言った。

「お前な……言い方!! 言い方に気をつけろよ!」
「もちろん、私生活でも一緒に暮らして……いやか?」

拓海は、柄にもなく頬を赤くして言った。
そのハニカム笑顔は、宗近の心を鷲掴みにする。

(な、お前……ず、ずるいぞ……拓海!)

宗近は、はぁ、とため息をついて言った。

「お、お前がそうしたいっていうんだったらな……しかたない……何だったら、そ、その……せ、せせ、ックスの相手だって、し、してやってもいいぜ……」
「ありがとう、宗近」

拓海は、宗近の後頭部に手を当てて自分の胸に押し付けた。
宗近は目を閉じた。

拓海の温もり。心臓を打つ音……。
それが、心地よく宗近の中に伝わってくる。

(嬉しい……オレは、お前とこうなるのをどんなに夢見てたか……)

と、その時に、宗近の頬に水滴が落ちた。
宗近は、え? と拓海を見上げる。

すると、拓海は泣いていた。
宗近は、慌てて言った。

「拓海、どうして……泣いているんだ?」
「うっ、ううう……ご、ごめん……分からない、分からないんだ」

拓海は、涙を堪えようと唇を噛み締めて必死に耐えている。
そんな拓海を見た宗近は、キュンと胸が痛くなり、思わず拓海を抱きしめた。

拓海は宗近の背中に手を添えて言った。

「俺、きっと嬉しいんだ。やっと出会えた事に。お前のような俺と同じ目線で、俺を支えてくれる男に出会えた事……」



「……きっとこれは、『幸せ』ってやつなんだと思う……」



『しあわせ』

その言葉を耳にした宗近は、胸が詰まって言葉を出せなかった。

宗近が、小さい頃、さかんに母親に言っていたセリフ。
それは、台所に立つ母親のエプロンを握りしめて言っていた。

『お母さん、ボクね、すごい役者になって、皆を幸せにする大人になるんだ!』
『へぇ、すごいわね、チカ。そうなれるといいね?」

『うん! ボクね、頑張るんだ!』

宗近の頭を撫でながら、にっこりと笑う母親。

ふとそんな昔の自分を思い出して、宗近も目頭が熱くなった。
そして、すぐに涙が滲み出た。

(長い道のりだった。オレの夢はやっと叶うんだ……たった一人だけど、オレが一番大事な男を幸せにできる……)

宗近は、震える声で拓海に言った。

「なぁ、拓海……泣くなよ……男が泣くなんてだらしないぜ」
「なんだよ。宗近……お前だって泣いているぞ」

「ば、馬鹿。仕方ないだろ……ううっ……」

二人は、自分の泣き顔を隠すように、抱き合ったまま男泣きに泣いた。


****


落着きを取り戻した二人は、体を離した。
少し気まずい空気。

それを払拭するかのように拓海が言った。

「なぁ、宗近。お前、さっき、セックスしたいって言っていたよな?」
「お、お前なぁ、したいなんて言ってねぇ! してやってもいいぜって言ったんだ!」

宗近はムキになって言い返す。
その言葉に、拓海は気取った言い方で返した。

「なぁ、宗近、セックスしようぜ」

宗近は、一瞬、拓海が何を言っているのか分からなかった。
しかし、直ぐに出会った時の会話を思い出した。

「ふっ、拓海。またオレのアナルをちゃんと悦ばしてくれるんだろうな?」

拓海は、すぐにニヤッとして答えた。

「ああ、任せておけよ。前よりももっといい思いをさせてやるって!」

二人、目が合うと大笑いをした。
もう涙はどこかへ行っていた。


****


朝日を浴びて、宗近はベッドから起き上がった。
その姿は全裸。

「ふあーあ」

大きな欠伸。

ふと、横に寝る男に目をやる。
その男も全裸。

(よく寝てるな……拓海)

昨夜は、散々お互いの体を貪り合ったのだ。
そして眠りについて朝になった。

宗近は、そっと、拓海の頬に顔を近づける。

スー、スー、スー。

安らかな寝息。
宗近は、それを聞いて、唇にチュッとキスをした。

(ふふふ。オレのダーリン、可愛いな……)

もう一度、キス。

「うーん……」

拓海は、ごろっと仰向けになった。
宗近は、ヤバい、と思って、すこし退く。

しかし、その股間にそそり立つ勃起したペニスが目に入った。

(うわっ……すげぇ……昨日は、あんなにオレを可愛がってくれたのに、もうかよ……)

宗近は、そっと手を伸ばして男のそれに触れた。

(かてぇし、熱いな……はぁ、はぁ、ヤバい…興奮してくる)

宗近は、もう一度そっと拓海の顔を見て、寝ている事を確認すると、ペニスをパクっと口に含んだ。
口の中で拓海のがビクビクと脈を打つ。

(ダメだ……オレもう止まらねぇ……)

ちゅっぱ、ちゅっぱ……。

舌をレロレロとさせて本格的なフェラを始める。

(んぷっ、んぷっ……すげぇ、どんどんおっきくなっていく……やべぇ、アナルがヒクつく……)

宗近のアナルは、拓海のペニスを無条件に求めてしまう。
それは、気持ちだけでなく体の方も拓海を性のパートナーとして認識しているという事。
引かれ合う雄と雄の肉体。

やがて、拓海のペニスの先からは我慢汁がぬるぬると吹き出す。
宗近は、ここぞとばかりに、それを指に絡めて自分のアナルへ塗りたくった。
すると、宗近のアナルは、嬉しそうにヒクヒクする。

(やべぇ……気持ちいい……拓海の汁、ぬるぬるして堪らねぇ……うっ、はあぁ)

宗近は、はぁ、はぁ、と喘ぎながら、アナルに挿れた指を出し入れして擦りづける。
すると、直ぐに下腹部にビクビクッとしたメスイキの快感が訪れた。

(うっ、イキそうっ……ああつ、ああ)

「いくっ!」

その時、拓海の声がした。

「こら! 宗近! なにしてる!」
「あ?」

宗近は、そのイキの拍子に、自分の勃起したペニスの先からトコロテンのように、ドピュっと射精した。


****


バックから犯された。
拓海は、汗ばんだ体を後ろから被せながら、宗近の耳を甘噛みした。

「はぁ、はぁ、宗近、なに一人で気持ちよくなっているんだ……」
「うっ……うう、ご、ごめん……い、いくーっ」

激しい拓海の突き上げ。
繰り返されるメスイキ。

涎がだらだらと滴りおち、半立ちの自分のペニスの先からはタラっと透明な汁が糸を引いた。
そしてそれはシーツに大きな染みを作った。

新たに拓海によって開発された雄膣の中の性感帯は容赦なく攻められる。

宗近は、全身を襲う快感に、シーツをギュッと握りしめて耐えようとした。
しかし、抵抗虚しく、手足から力が抜けそのままうつぶせに崩れた。

そこからはメスイキ地獄。

寝バックの体勢となった宗近の体に、拓海の筋肉質の体がのしかかり、それはアナルの奥底へ食い込む快感に加え、雄の部分を徹底的に押しつぶす感覚を生み、メスイキを加速していく。

イキの快感でピーンと伸ばした両足。
その付け根をガッチリと抑えられ、宗近の体の芯まで拓海の巨根がぶっ刺さる。

体をビクビクっと震わせ、ひたすら拓海のピストンの餌食。

ギシギシ……。
男同士のセックスの激しさに耐えかねて悲鳴を上げるベッド。

「うっうう、いくーっ、いくっ……た、拓海、すごいのくれ、もっと、もっと」
「はぁ、はぁ、よし、いくぞ、一緒に……」

拓海は、宗近のお尻をパチンパチンと叩きながら、腰の突き上げを早くする。

「いきそう……いくっ」

拓海は、宗近の腰を掴んで、ぐぐぐっと、奥まで差し込んだ。
そこは宗近のとろとろになった最奥の性感部。
宗近は、歯をガクガクさせて白目を向いた。

「あーっ……」

二人は同時に絶頂に達した。


****


ベッドで手を繋ぐ二人。

「ったく、宗近。今度、一人でオナニーとかしたら、只じゃすまないぞ……」
「……ごめん……」

二人は横になりながら、唇を合わせた。
仲直りのキス。

宗近は言った。

「なぁ、拓海。お前って結構野生的だよな? これがお前のやりたいセックスなんだろ?」
「……嫌だったか?」

「いや、結構好き!」

宗近は、そういうと拓海の体に抱きついた。
そして、キスをしてくれとねだった。

(好きに決まっているだろ? お前のしたいセックス。オレにだけ見せるお前の素の欲望の姿なんだからよ……)


****


爽やかなある日の公園。
二人、手を繋いで歩く。

公園を抜けると、その先には行きつけのカフェレストラン”ボーノ”がある。
新しい依頼を受けるときには、決まってそこにいく。

「なぁ、拓海。次の依頼ってどんなだろうな?」
「……ん? どうした? 心配か?」

「いや、大丈夫。どんな仕事だって、拓海。オレはお前をしっかり守ってやるからな」

拓海は、ニヤッと笑うと、宗近をギュッと引き寄せる。
そして身を屈めてキスをした。

体が離れると拓海は言った。

「よろしくたのむ相棒……俺の背中を預けられるのはお前しかいないからな」
「ああ……そうさ。任しておけよ」

宗近は、顔を少し赤らめて鼻の下を擦った。
そして、拓海の手をギュッと握り締めて走り出す。

「さぁ、急ごうぜ!」
「おいっ、宗近! 引っ張るなって!」

「あははは!」

二人は笑顔で走り出した。

その進む先は、もっともっと輝かしい未来へと続いている。
二人の背中は、そんな事を予感させる希望の光に満ち溢れていた。




* 私立探偵と男達の愛 おわり
 


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