で、どうしてお前は女装しているんだ?

いちみりヒビキ

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2-2 同級会 ~カオル~

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オレの名前は、カオル。
美映留みえる市内の専門学校に通う専門学生。
彼女いない歴イコール年齢の完全なる童貞。

というのは、さておき。
オレには、好きな人がいる。
察しの通り、幼なじみのケンイチだ。

ケンイチは背が高くて、やせ過ぎず、太り過ぎずの標準体型。
顔は面長で切れ長の目、髪の毛は無造作に伸びているが不潔には見えない。

ハンサムの部類だが、これまで彼女がいないってのも不思議な話。
きっと、選り好みをしているのだろう。

まぁ、中途半端にカッコいいやつの典型とも言える。
それに、ケンイチの場合、一般人と趣味が微妙にズレているのも影響しているの、かもな。



で、オレの話にもどす。

オレがいつからケンイチを好きだったかというと、それはもう、物心ついた時からずっと。
幼稚園でも、小学校でも、中学でも、ずっとだ。

幼稚園の時は、ケンイチのペニスをじっくり見る為、池におしっこを飛ばす遊びを提案。
わざと負けて、おしっこが弾けるケンイチのペニスをじっくりと観察した。
この時すでに、こいつのペニスに触れてみたいという欲求が生まれていた。

小学校の時は、自由研究と称して、ミミズにおしっこをひっかけるとペニスが腫れるという都市伝説の検証をケンイチに勧めた。
そして、腫れてないか確かめる手伝いをかってでて、見事直接ペニスに触る事に成功した。

中学の時は、どうしてもケンイチの勃起ペニスを握ってみたくて用意周到な作戦を決行した。
エロビデオで家に誘い、勃起の固さ勝負というその場の雰囲気ならでは勝負をけしかけ、見事勃起ペニスを握る事に成功したのだ。
ちなみに、オレは、エロビデオではなく、ケンイチの勃起ペニスに興奮して勝負に勝ったというのは言うまでもない。


という、一見、あからさまとも言えるミエミエの悪戯をしてきたわけだが、ケンイチというやつはかなり鈍い。
そんな、オレの欲望丸出しのいたずらを見抜くことができないのだ。


高校は、親の転勤でこの街を離れた。
オレは、絶望に陥ったが、一方でチャンスだと思った。
この3年間で、ケンイチ好みになってやる、という決心が芽生えたのだ。

ケンイチは、ノンケである事は百も承知。
だから、オレが女になるしかない。

もちろん、体をいじるなんて事は高校生には不可能。
という事で女装に行き着いた。


まず、服飾の基礎を頭にたたき込んだ。

書籍とネットを駆使し、単に洋服の作り方だけでなく専門用語、構造や素材、縫製の知識、そしてデザインの歴史といった周辺情報も含め貪欲に学んだ。

一通りの知識を得たところで、バイトで貯めた金でミシンを買った。
そして、姉貴をモデルとしてコスプレ衣装作りに着手し、徐々に腕を磨いていったのだ。

ちなみに、姉貴は一切服は作れない。

オレが作った服をきて、イベントに嬉々として参加する。
で、そこでの自慢話がオレの自信へと変わっていった。



という真の姿がある。



で、高校卒業後、単身、再びこの美映留みえるの地に戻って来た俺は、一人暮らしを始めた。
服飾系の専門学校へ通うためだ。

実際、ここで学ぶべき事はあまり無い。
しかし、この地の学校に通っているというのは、ケンイチの近くで一人暮らしをする上で重要事項なのだ。
ちなみに、卒業したら実家に戻って就職することが、交換条件になっていた。

ということで、ケンイチには姉貴と一緒に暮していると言ったがもちろん嘘。
姉貴は、実家でのうのうと暮らしている。



さて、二十歳をすぎ、そろそろ専門学校にも居られなくなりそうになり焦り始めた時、偶然にもケンイチから連絡があった。
どうやら、オレがこっちに住んでいることをどっからか聞きつけたらしい。

で、内容を聞いてみると、『ゴスロリ☆にゃんにゃん』というふざけたネーミングのアイドルグループのコンサートへ一緒に行って欲しい、とのお願いだった。

オレは、飛び上がるほど嬉しい気持ちだったが、渋々受けた形を取った。
これはまたとないチャンス。

オレは、今まで培ってきた女装の技を見せる時が来たと決意を新たにしたのだ。

前回、初詣には全身全霊をかけ、ケンイチが好きなゴスロリ衣装を作り上げたのはいうまでもない。
おかげで、目標にしていた、ケンイチと手を繋ぐ、を達成することができた。

ふぅ。
今、思い出しても、あいつの手。
あんなにでかくて、たくましくて。

手を握っているだけなのに、体を包まれているような感覚。
オレは、終始、興奮しっぱなしで、我慢するのがやっとだった。

王子様が自分を迎えにきて、そして、手を取りどこか遠くへ連れて行ってくれる。

人には恥ずかしくて絶対に言えないが、小さい頃から、密かに信じて生きてきた。
それが、一日中、ケンイチと手を繋ぎ、ケンイチに導かれ、それは確信へと変わった。
間違いない。
オレの王子様は、やっぱりケンイチ。お前なんだ……。





で、今回はミニスカートときた。
普通の衣装は特徴がない分、実は難易度が高い。

他にケンイチ好みの特徴が分かればもっと楽だっただろう。
丈の長さ、生地、かたち、色。

オレは、ケンイチが大好きだ。
愛してる。

愛する人の好みぐらい分からなくてどうする。
自分自身を鼓舞し、イメージを膨らませた。


ちなみに、同級会なんてそもそもない。
ケンイチと会うための方便だ。
一応のため、ここに記す。


で、いよいよ本日、本番の同級会。いや偽同級会。
オレは、メイクもばっちり決め、待ち合わせ場所に向かった。

そして、この姿をケンイチにお披露目できたところまではよかったのだが……。





ケンイチが言った。

「なぁ、カオル」
「なんだ?」

「今日の格好は割と普通だよな? この間は、コスプレって言ってなかったか? 姉貴の趣味って」
「へっ?」

しまった。
こいつ、普段は鈍いくせに、妙なところで鋭い。
オレは、焦りを隠しつつ平静を装い答えた。

「ああ、これな。ケンイチ、お前、TLって知っているか?」
「あぁ、タイムライン?」

「いや、違う方のやつ。ほら、女性向けのマンガとかアニメのやつ」
「ふむふむ」

ケンイチは、ぽーっとした表情でオレを見ている。

ほっ。
やっぱり、この分野はこいつは何も知らない。
これなら、適当なことを言っても平気だな。

「それで、人気アニメの衣装なわけよ」
「へぇ、なんだかよくわからないけど、それもコスプレって事か?」

「まぁ、そうだな」
「そっか。コスプレも奥が深いんだな……」

ふぅ。
あっぶね。
ケンイチが鈍くて助かった。

ホッとしているところへ、ケンイチが話しかけてきた。

「なぁ、カオル」
「なんだ?」

「お前さ、めちゃめちゃ可愛いんだけど。その格好」

キターーー!
よし! よし! よし!
ここ一週間、練りに練って、作り直し3回、苦労した甲斐があった。

「よせよ、ケンイチ。男に可愛いとかよ」
「いや、確かによ、カオルは男だけどよ。可愛いんだから仕方ない。その、チェックのミニスカートに黒タイツとか俺のどストライクだぜ」

「へっ、そうかよ。そりゃ良かったな」

やっぱり、チェックにして正解だったな。
中学の時の女子の制服、ずっと、いいって言っていたからな。
オレ、ナイス!

「てかさ、カオル。お前ってさ、服もだけど、顔、可愛くない?」
「へっ?」

トクン……。

「おっ、オレの顔?」

やばい。
なんだこれ……。
オレ自身が可愛いって?
ちょっと、無防備。
やばい……顔に出ちまう。

「そのメイクってお姉さんにしてもらっているわけ?」
「まっ、まぁな」

ちょ、ちょっと、そんなに見つめるなって。ケンイチ……。

「へぇ、お前さ。前も言ったかもしれないけど、女だったら即告白だったな。ははは」
「まっ、まぁ、オレが女だったら、即、ごめんなさい、だったな。ははは」

はぁ、はぁ。
うそ、うそ、うそ。
ここまで、ケンイチがオレをほめてくるとか、ちょっと想定外。
うわっ。マジで?

「いうねぇ! ははは。よし、せっかくだから、二人だけど同級会行くか?」
「ああ、そうだな。ケンイチが行きたいっていうんだったらな」

「おう、行こう、行こう。彼女持ちっぽく見られて気持ちいいぜ」
「あー、そうかよ。よかったな」

はぁ、はぁ。
やべぇ。
オレってケンイチ好みになっているって事だよな?
油断すると顔がにやける。

うおー。
テンションが上がるぜ!
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