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(07) 楽しい調教の日々
しおりを挟む「何々?」
織田が何やら察知してて、小声で聞いてくる。
「もしかして、約束があった?」
「……あー……ていうか、聞いてたけど、日時とか入れといてって言ったきり、忘れてたっていう話」
「そうなんだ。今日だったの?」
「ん」
「そっか……じゃあ高瀬、そっちに行っても、いいよ?」
「え?」
織田はクスッと笑って、電話には聞こえないように。
「オレは、明日ゆっくり高瀬と美味しいもの食べにいければ、全然。先に帰ってるよ?」
織田は、ほんとに良いよと思ってそうだが。
そんな訳にはいかない。
「いいよ、別にまたすぐ会うだろうし」
「いつぶりなの?」
「二、三か月位……?」
そう言うと、織田は、んーと考えた後。
「いいよ、ほんとに。家で待ってるから」
何だか本当に先に帰ってしまいそうな。
全然嫌そうでないのが織田のすごいとこだと思うんだけれど。
「織田、一緒に行く? 嫌じゃなければ」
「え?」
「一緒に来れば? って言ってるんだけど」
「ん? オレが一緒に行くの? 高瀬の友達のところに?」
「……ちょっと待って」
さすがに織田もちょっと不思議そうなので、オレは、もう一度スマホを耳に当てた。
「誠ー、ほんとに一緒で良い訳?」
『ん? ああ、良いって言ってんじゃん。前に佐藤の彼女とかもついてきたことあったろ』
「……ああ。そういや、そんなこともあったけど……」
ちら、と織田を見つめると。ん? にっこり笑う織田。
「……来て良いって言ってんだけど……どうする?」
「えーと……良いなら行くけど」
けろっとしてそう言って笑う織田に、ああ、そういうタイプだっけな、と苦笑い。
一瞬、大丈夫か聞こうと思ったけれど、これは大丈夫だなと、判断した。
「……じゃあ連れてく。店は?」
『地図とかも入れてある。待ってるからー』
「了解」
電話を切って、場所を確認する。
「近い?」
「ん、電車乗って十五分位」
「そっか。行こ行こ」
織田がオレを見上げてにっこり笑う。
「ほんとにいいのか?」
「え? いいよ。だって、オレも高瀬の学生時代のこと知りたいし」
「……いい話じゃないかもよ?」
「そう? でも別に。だって、なんとなく知ってるような気がするし」
歩き始めながら、そんな話をしていると、織田がそう言って笑った。
「クールな感じでモテモテだったんでしょ?」
「――――……」
「なんとなく分かるから、平気。どんだけカッコよかったか、聞きたいだけだから。聞けると思うし」
絶対本気なんだろうなと思う表情で、そんなことを言って笑うから。
オレまで、笑ってしまう。
「高瀬がモテるのなんか知ってるし、学生時代とかに、誰とどれだけ付き合ってたって平気。……ていうか、オレも結構モテたし」
悪戯っぽく笑う織田に、そうだろうな、と返すと。
「……そこ、つっこんでくれないと、恥ずかしい」
「え、何で? 織田は、モテたと思うけど?」
「オレより百倍モテてそうな高瀬に言われると、余計恥ずいです……」
困った顔をしているのが可笑しくて、くしゃ、と髪をなでると。
ますます照れてるし。
どうしてこんなに可愛く生きてこれるのか、謎。
なんて。また思ってしまった。
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