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最終章 本物の恋
第63話 年末特番2・カウントダウン
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年末特番の今年の振り返りランキングが続いていた。
「それでは気を取り直して第三位の発表ですわー! ピュイピュイピュイピュイ——」
人妻口笛助かる。
「ででん! 第三位は、梅雨の服装特番ですわー!」
あー、あれかー。俺がビッキーと初めて会ったのがこの放送の少し前だったよな。
「風華ちゃんが枝豆のコスプレをしたせいでグリーンバックの背景と同化してしまったのですわ」
「ソラマメじゃなかったでしたっけ?」
どっちでもいいだろ! コスプレなら大して変わんねぇよ!
過去の映像が流れる。マヌケな枝豆が阿鼻叫喚している。今見ると面白いなー。お天気お姉さんがやる事ではないけどな!
「どんどん行きますわ。続いて第二位は、ピーヒョロロロロロロ——」
人妻トンビは……まぁカワイイか。ちょっと信者力を試されるな。
「ででん! 社員寮破壊事件ですわー!」
はいはい、あれね。風華がバット振ってビッキーの部屋の壁を破壊したやつ。
「風華ちゃん、覚えていますの?」
「悲しい冤罪事件でしたね」
よし、コイツを死刑にしよう!
ビッキーの軽蔑した視線が風華に向けられる。俺に向けてくれ!
社員寮の映像が映し出された。風華が壁を破壊するシーンが流れる。穴をカレンダーで隠し、スタッフを飴玉で買収していた。コントにしか見えねぇ。
「この犯人にモザイク掛けた方がいいですよ」
自分で言うな。
そして次へ。
「いよいよ第一位の発表ですわ。映えある一位は……カレーぶち撒け事件ですわ」
テンションが低い。ビッキーが最大の被害者だもんな。
風華はニヤニヤしている。性格悪いなコイツ。
「とても辛い、じゃなかった、辛い事件でしたね……」
煽ってんじゃねぇぞ。
「それでは映像があるので観てみましょうか……」
公園。ヒールを履いた風華がビッキーに走り寄る。直後、バランスを崩してカレーの容器が宙を舞った。
そしてカレーがビッキーの頭に掛かった瞬間。
「キャハハハハ!」
スタジオの風華が大笑いしていた。
よし、ビッキーよ、コイツを煮込んでカレーにしてやろうぜ!
ビッキーが無言で風華をにらむ。
「あ、すみません」
さすがにビビったのか風華は真顔になった。
「コホンッ、私のぶち撒けレトルトカレーも公式サイトで販売していますので、よければお買い求めくださいな」
笑顔で宣伝するビッキー。さすが、プロ意識高い。
「さて、これで今年あったことの振り返りランキングは終了ですわね。本当に風華ちゃんの年でしたわ」
一位から五位まで埋めやがって。シーズンMVPじゃねぇか。
「せんきゅーせんきゅー」
またドヤ顔。誇っていいことじゃねぇだろ。不名誉な称号だぞ。
それから雑談していると、零時が近づいてきた。
「あ、そろそろカウントダウンが始まりますわ! 皆様準備してくださいまし」
画面に数字が表示される。
「あわわわ、どうしますか!? 天気でも予報しますか!?」
世界の終わりじゃあるまいし、もう黙っとけよ。
残り十秒。
色々あった一年だったな。弱男としては、この一年に人生の全てのイベントが凝縮されていたと言っても過言ではない。……もう二度とこんな濃厚な年はないだろうな。
五、四、三、二、一、ゼロ。
「あけましておめでとうございますわー!」
拍手が巻き起こる。
一方で空子はスヤスヤと寝息を立てて寝ていた。ま、そうなると思ったよ。コイツはこういうイベントに興味ないだろうしな。俺も風華が出ていなければ寝ていただろう。起きてても腹が減るだけだし。
その時、スマホが鳴る。なんだ? もしかしてあけおめメールか? 俺に友達はいないし、ないか。年賀状も学生時代に出したっきりだしな。
見ると、メールは風華からだった。あれ? 生放送中だよな?
スタジオが映った画面を見るが、楽しげに新年を祝ったままだ。
とりあえずメールを開く。
『あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』
なるほど、予約か。
俺も送っといた方がいいよな。
『あけましておめでとう。今年も』
そこまで打って止まる。
今年、どうだろうな。このままの関係が続くとは思えない。
俺は一度、文を消去し、『あけおめ』とだけ打ち直して素早く送信した。
「それでは気を取り直して第三位の発表ですわー! ピュイピュイピュイピュイ——」
人妻口笛助かる。
「ででん! 第三位は、梅雨の服装特番ですわー!」
あー、あれかー。俺がビッキーと初めて会ったのがこの放送の少し前だったよな。
「風華ちゃんが枝豆のコスプレをしたせいでグリーンバックの背景と同化してしまったのですわ」
「ソラマメじゃなかったでしたっけ?」
どっちでもいいだろ! コスプレなら大して変わんねぇよ!
過去の映像が流れる。マヌケな枝豆が阿鼻叫喚している。今見ると面白いなー。お天気お姉さんがやる事ではないけどな!
「どんどん行きますわ。続いて第二位は、ピーヒョロロロロロロ——」
人妻トンビは……まぁカワイイか。ちょっと信者力を試されるな。
「ででん! 社員寮破壊事件ですわー!」
はいはい、あれね。風華がバット振ってビッキーの部屋の壁を破壊したやつ。
「風華ちゃん、覚えていますの?」
「悲しい冤罪事件でしたね」
よし、コイツを死刑にしよう!
ビッキーの軽蔑した視線が風華に向けられる。俺に向けてくれ!
社員寮の映像が映し出された。風華が壁を破壊するシーンが流れる。穴をカレンダーで隠し、スタッフを飴玉で買収していた。コントにしか見えねぇ。
「この犯人にモザイク掛けた方がいいですよ」
自分で言うな。
そして次へ。
「いよいよ第一位の発表ですわ。映えある一位は……カレーぶち撒け事件ですわ」
テンションが低い。ビッキーが最大の被害者だもんな。
風華はニヤニヤしている。性格悪いなコイツ。
「とても辛い、じゃなかった、辛い事件でしたね……」
煽ってんじゃねぇぞ。
「それでは映像があるので観てみましょうか……」
公園。ヒールを履いた風華がビッキーに走り寄る。直後、バランスを崩してカレーの容器が宙を舞った。
そしてカレーがビッキーの頭に掛かった瞬間。
「キャハハハハ!」
スタジオの風華が大笑いしていた。
よし、ビッキーよ、コイツを煮込んでカレーにしてやろうぜ!
ビッキーが無言で風華をにらむ。
「あ、すみません」
さすがにビビったのか風華は真顔になった。
「コホンッ、私のぶち撒けレトルトカレーも公式サイトで販売していますので、よければお買い求めくださいな」
笑顔で宣伝するビッキー。さすが、プロ意識高い。
「さて、これで今年あったことの振り返りランキングは終了ですわね。本当に風華ちゃんの年でしたわ」
一位から五位まで埋めやがって。シーズンMVPじゃねぇか。
「せんきゅーせんきゅー」
またドヤ顔。誇っていいことじゃねぇだろ。不名誉な称号だぞ。
それから雑談していると、零時が近づいてきた。
「あ、そろそろカウントダウンが始まりますわ! 皆様準備してくださいまし」
画面に数字が表示される。
「あわわわ、どうしますか!? 天気でも予報しますか!?」
世界の終わりじゃあるまいし、もう黙っとけよ。
残り十秒。
色々あった一年だったな。弱男としては、この一年に人生の全てのイベントが凝縮されていたと言っても過言ではない。……もう二度とこんな濃厚な年はないだろうな。
五、四、三、二、一、ゼロ。
「あけましておめでとうございますわー!」
拍手が巻き起こる。
一方で空子はスヤスヤと寝息を立てて寝ていた。ま、そうなると思ったよ。コイツはこういうイベントに興味ないだろうしな。俺も風華が出ていなければ寝ていただろう。起きてても腹が減るだけだし。
その時、スマホが鳴る。なんだ? もしかしてあけおめメールか? 俺に友達はいないし、ないか。年賀状も学生時代に出したっきりだしな。
見ると、メールは風華からだった。あれ? 生放送中だよな?
スタジオが映った画面を見るが、楽しげに新年を祝ったままだ。
とりあえずメールを開く。
『あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』
なるほど、予約か。
俺も送っといた方がいいよな。
『あけましておめでとう。今年も』
そこまで打って止まる。
今年、どうだろうな。このままの関係が続くとは思えない。
俺は一度、文を消去し、『あけおめ』とだけ打ち直して素早く送信した。
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