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最終章 本物の恋
第54話 密着お天気お姉さん二十四時1・クソお天気お姉さん
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密着お天気お姉さん二十四時という番組が始まる当日。
俺はオンボロテレビの前で、頭から毛布を被って暖をとりながら待機していた。
我が家にあるエアコンという貴族の暖房器具は極限まで使ってはならないことになっている。理由はもちろん電気代節約のため。下級国民は温まることも許されないとは悲しいね。
俺がやさぐれたマッチ売りの少女が言いそうなことを考えていると番組が始まった。
まずはオープニングが始まる。ヴァイオリンの演奏曲だ。気取りやがって。好きだけどさ。
続いて風華がスタジオで真面目な顔をしながら原稿を読んでいる映像が映し出された。真剣な表情をしている時は女優のようでカッコいいんだけどな。残念ながら少し喋り始めると芸人になる。
そして映像は進み、ナレーションが入る。
『わずか半年でSNSのフォロワー五十万を突破した今をときめくお天気キャスター乃和木風華。今回はそんな彼女の素顔に迫る』
画面端にナレーターの名前が表示された。乃和木風華、と書かれている。
いや、自分かよ! こういうのは専用のナレーターとかいるだろ!
相変わらず何やらせてもツッコミどころしかないヤツだな! そこがいいんだけどよ!
番組内の時刻で午前六時半。社員寮から風華が出て来る。
サングラスとマスクをしていた。おいおい、芸能人気取りかぁ?
画面右端にスタッフの言葉が表示される。
——なぜサングラス?
「ノーメイクなのでこれです。いつも会社に着いてからメイクするんですよ。今はのっぺらぼうです」
大げさだろ。多分スッピンも美人だよな。しらねぇけど。
——昨晩は眠れましたか?
「まぁまぁですね。今日はブランチ時間の出番なので睡眠時間に余裕がありました。なので昨日は夜中までゲームしちゃいましたね」
眉毛がピクピクしている。サングラスで見えないが、キリッとした顔をしているのだろう。威張るんじゃねぇよ。
午前七時。会社に到着。
控え室でヘアメイクを開始。真面目な顔で鏡と向き合っている。
——ヘアメイクはいつも自分でしているんですか?
「そうですね。スタイリストさんがいることもありますけど基本は自分でやってます。変だったらスタッフさんや、お局……じゃなかった、響さんが教えてくれるので問題ないですね」
ビッキーさーん! 見てたらコイツ殴っちゃっていいですよー!
とにかく化粧が終わり、見た目だけはいつもの清楚な風華が出来上がった。
「どうですか? 風華ちゃん完全体は? カワイイですか?」
ドヤ顔。スタッフにだる絡みすんなよな。……まぁかわいいけど。
——素敵です。
「でしょうね」
またしてもドヤ顔。めんどくせぇ。
続いて打ち合わせに向かう。風華は天気の画面を真剣に見ている。まるで別人だ。今のうちにミシンで口を縫い付けた方がいいと思う。
その後、リハーサルが始まった。
「はい、どーもー! 乃和木風華でございますぅー! パチパチパチパチ」
「風華さん、その出方はやめた方がいいかと」
ディレクターっぽい人に注意されている。
どう見ても芸人の出方だもんな。未だにこんなことしてたのかよ。早くこのクソお天気お姉さんクビにしろ。
時間は進み、午前九時。いよいよ本番だ。
風華もさすがに緊張した面持ちをしている。
「おはようございます。本日のブランチ時間は私、乃和木風華でお送りします」
まじめな挨拶。まじめな口調で、まじめな顔。ここだけ切り取れば完璧なのにな。
「それではまずゲームの話しますか!」
天気予報やれよ!
早くもボロ出してんじゃねぇぞ。まぁこれがコイツの人気の秘訣でもあるから難しいところだけどな。
でも天気予報はやれ。
俺はオンボロテレビの前で、頭から毛布を被って暖をとりながら待機していた。
我が家にあるエアコンという貴族の暖房器具は極限まで使ってはならないことになっている。理由はもちろん電気代節約のため。下級国民は温まることも許されないとは悲しいね。
俺がやさぐれたマッチ売りの少女が言いそうなことを考えていると番組が始まった。
まずはオープニングが始まる。ヴァイオリンの演奏曲だ。気取りやがって。好きだけどさ。
続いて風華がスタジオで真面目な顔をしながら原稿を読んでいる映像が映し出された。真剣な表情をしている時は女優のようでカッコいいんだけどな。残念ながら少し喋り始めると芸人になる。
そして映像は進み、ナレーションが入る。
『わずか半年でSNSのフォロワー五十万を突破した今をときめくお天気キャスター乃和木風華。今回はそんな彼女の素顔に迫る』
画面端にナレーターの名前が表示された。乃和木風華、と書かれている。
いや、自分かよ! こういうのは専用のナレーターとかいるだろ!
相変わらず何やらせてもツッコミどころしかないヤツだな! そこがいいんだけどよ!
番組内の時刻で午前六時半。社員寮から風華が出て来る。
サングラスとマスクをしていた。おいおい、芸能人気取りかぁ?
画面右端にスタッフの言葉が表示される。
——なぜサングラス?
「ノーメイクなのでこれです。いつも会社に着いてからメイクするんですよ。今はのっぺらぼうです」
大げさだろ。多分スッピンも美人だよな。しらねぇけど。
——昨晩は眠れましたか?
「まぁまぁですね。今日はブランチ時間の出番なので睡眠時間に余裕がありました。なので昨日は夜中までゲームしちゃいましたね」
眉毛がピクピクしている。サングラスで見えないが、キリッとした顔をしているのだろう。威張るんじゃねぇよ。
午前七時。会社に到着。
控え室でヘアメイクを開始。真面目な顔で鏡と向き合っている。
——ヘアメイクはいつも自分でしているんですか?
「そうですね。スタイリストさんがいることもありますけど基本は自分でやってます。変だったらスタッフさんや、お局……じゃなかった、響さんが教えてくれるので問題ないですね」
ビッキーさーん! 見てたらコイツ殴っちゃっていいですよー!
とにかく化粧が終わり、見た目だけはいつもの清楚な風華が出来上がった。
「どうですか? 風華ちゃん完全体は? カワイイですか?」
ドヤ顔。スタッフにだる絡みすんなよな。……まぁかわいいけど。
——素敵です。
「でしょうね」
またしてもドヤ顔。めんどくせぇ。
続いて打ち合わせに向かう。風華は天気の画面を真剣に見ている。まるで別人だ。今のうちにミシンで口を縫い付けた方がいいと思う。
その後、リハーサルが始まった。
「はい、どーもー! 乃和木風華でございますぅー! パチパチパチパチ」
「風華さん、その出方はやめた方がいいかと」
ディレクターっぽい人に注意されている。
どう見ても芸人の出方だもんな。未だにこんなことしてたのかよ。早くこのクソお天気お姉さんクビにしろ。
時間は進み、午前九時。いよいよ本番だ。
風華もさすがに緊張した面持ちをしている。
「おはようございます。本日のブランチ時間は私、乃和木風華でお送りします」
まじめな挨拶。まじめな口調で、まじめな顔。ここだけ切り取れば完璧なのにな。
「それではまずゲームの話しますか!」
天気予報やれよ!
早くもボロ出してんじゃねぇぞ。まぁこれがコイツの人気の秘訣でもあるから難しいところだけどな。
でも天気予報はやれ。
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