48 / 54
第2章 無限イチャイチャ計画
第48話 弱男の手
しおりを挟む
風華のクソゲーム実況が終わって数日後。俺は自宅であるボロアパートでミイラのように干からびていた。
というのも時は七月後半。暑さのピークである。
俺はなんと扇風機で凌いでいた。
体が溶けかけていると、何者かが盗掘屋のように不躾に家へ上がってきた。まぁいつものガサツ女だよな。
「こんにちは! って暑い! なんですかこの部屋は! 亜熱帯地域ですか!?」
素直に否定できないのが辛いところである。
「エアコンつけましょうよ!」
「ダメだ。我が家では幻覚が見えるまで稼働してはならないという鉄の掟がある」
「バカですか! 死んじゃいますよ!」
「まだだ、まだいける……!」
「……もぅ、仕方ありませんね。これどうぞ」
手渡されたのは一万円札だった。
「こ、これは?」
「エアコン稼働代です。お釣りは入りませんよ?」
「よし! 今日は大盤振る舞いで二十五度にしよう!」
俺は砂漠でオアシスを見つけたかのように信じられないスピードでエアコンをつけた。エアコンの風を直に浴びる。ああ、これが生きるってことなんだ。俺が生の喜びを感じていると、風華が白けた視線を向けてきた。
「なんだよ?」
「別にぃ」
ふん、俺がこういう奴だと分かっているだろう。金持ちが札束をばら撒けば喜んで地面を這い回って集める。それがエリート弱男の俺だ。
「それよりまたフォロワー増えたんですよ。えへへ」
「よかったな」
この前のゲーム実況がバズったお陰でまたSNSのフォロワーが伸びていた。どうなってんだ世の中。こんなポンコツに騙されるなよ。
「そうだ、ちょっと手を見せてください」
「なんでだよ」
「ええ、実は殺人事件の調査をしていまして」
「ミステリードラマの見過ぎだろ」
そう言いつつ、手を見せる。一万円を没収されたら嫌だからな。
「空雄さんの手って綺麗ですねぇ。苦労してない人の手です」
「嫌味かよ」
「やだなぁ、三分の一は冗談ですよ」
「せめて過半数を占めろ!」
「手を広げてください」
嫌々ながらも手を開くと、風華がその手に重ねてきた。
ドキリとした。
手のひらと手のひらを合わせた状態。風華からわずかに伝わる熱と、手のひらの柔らかさに俺自身の体温が上がるのを感じた。
「さすがに大きいですねぇ。肝っ玉は小さいのに」
「ひとこと多いぞ。で、これ何の意味があるんだ」
「企業秘密です」
なんの企業だ。
「それより今度花火大会があるんです」
「あー、知ってる。会社でも中継するんだろ? 予告動画見たぞ」
「それもあるんですけど……」
「どうした?」
「それとは別に二人で花火大会見に行きませんか?」
またまたドキリとした。ま、まぁ一応付き合ってるし、デートするのは普通だよな。
「……いいけど。どうせ暇だしな」
「やったぁ!」
無垢な笑顔。目を逸らす俺。
花火か……女どころか男とすらまともに花火大会なんて見たことない。どうしたらいいんだ? 服装は? 所持金はどれくらいだ?
脳みその皺がハテナの形に変わってきたぐらいに風華が助け舟を出してきた。
「当日どうしたらいいんだろう? って顔してますね」
心を読むな。
「空雄さんはただ居てくれたらいいんですよ。私がリードしてあげます」
てめぇ、それじゃあ俺が異性に対して何もできない情けない男みたいじゃねぇか。
はい、その通りです!
というのも時は七月後半。暑さのピークである。
俺はなんと扇風機で凌いでいた。
体が溶けかけていると、何者かが盗掘屋のように不躾に家へ上がってきた。まぁいつものガサツ女だよな。
「こんにちは! って暑い! なんですかこの部屋は! 亜熱帯地域ですか!?」
素直に否定できないのが辛いところである。
「エアコンつけましょうよ!」
「ダメだ。我が家では幻覚が見えるまで稼働してはならないという鉄の掟がある」
「バカですか! 死んじゃいますよ!」
「まだだ、まだいける……!」
「……もぅ、仕方ありませんね。これどうぞ」
手渡されたのは一万円札だった。
「こ、これは?」
「エアコン稼働代です。お釣りは入りませんよ?」
「よし! 今日は大盤振る舞いで二十五度にしよう!」
俺は砂漠でオアシスを見つけたかのように信じられないスピードでエアコンをつけた。エアコンの風を直に浴びる。ああ、これが生きるってことなんだ。俺が生の喜びを感じていると、風華が白けた視線を向けてきた。
「なんだよ?」
「別にぃ」
ふん、俺がこういう奴だと分かっているだろう。金持ちが札束をばら撒けば喜んで地面を這い回って集める。それがエリート弱男の俺だ。
「それよりまたフォロワー増えたんですよ。えへへ」
「よかったな」
この前のゲーム実況がバズったお陰でまたSNSのフォロワーが伸びていた。どうなってんだ世の中。こんなポンコツに騙されるなよ。
「そうだ、ちょっと手を見せてください」
「なんでだよ」
「ええ、実は殺人事件の調査をしていまして」
「ミステリードラマの見過ぎだろ」
そう言いつつ、手を見せる。一万円を没収されたら嫌だからな。
「空雄さんの手って綺麗ですねぇ。苦労してない人の手です」
「嫌味かよ」
「やだなぁ、三分の一は冗談ですよ」
「せめて過半数を占めろ!」
「手を広げてください」
嫌々ながらも手を開くと、風華がその手に重ねてきた。
ドキリとした。
手のひらと手のひらを合わせた状態。風華からわずかに伝わる熱と、手のひらの柔らかさに俺自身の体温が上がるのを感じた。
「さすがに大きいですねぇ。肝っ玉は小さいのに」
「ひとこと多いぞ。で、これ何の意味があるんだ」
「企業秘密です」
なんの企業だ。
「それより今度花火大会があるんです」
「あー、知ってる。会社でも中継するんだろ? 予告動画見たぞ」
「それもあるんですけど……」
「どうした?」
「それとは別に二人で花火大会見に行きませんか?」
またまたドキリとした。ま、まぁ一応付き合ってるし、デートするのは普通だよな。
「……いいけど。どうせ暇だしな」
「やったぁ!」
無垢な笑顔。目を逸らす俺。
花火か……女どころか男とすらまともに花火大会なんて見たことない。どうしたらいいんだ? 服装は? 所持金はどれくらいだ?
脳みその皺がハテナの形に変わってきたぐらいに風華が助け舟を出してきた。
「当日どうしたらいいんだろう? って顔してますね」
心を読むな。
「空雄さんはただ居てくれたらいいんですよ。私がリードしてあげます」
てめぇ、それじゃあ俺が異性に対して何もできない情けない男みたいじゃねぇか。
はい、その通りです!
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界
レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。
毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、
お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。
そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。
お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。
でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。
でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる