【完結】弱男だけどなぜかお天気お姉さんと付き合うことになった件

一終一(にのまえしゅういち)

文字の大きさ
上 下
43 / 68
第2章 無限イチャイチャ計画

第43話 忍ばないデート3・チアガール

しおりを挟む
 野球のショートのショート動画を撮り終えた後、ノックをしてくれたビッキーはすぐに帰っていった。

 ぐすん、もっと居てくれよぉ。

 俺の泣き言はビッキーに届くはずもなくつゆと消えて、時が経ち、今度はダンススタジオに来ていた。風華の知り合いから借りたらしい。

 上級国民め、人脈を見せつけてきやがって。

 その風華はというと、汗や泥を落とすため併設へいせつしてあるシャワールームに行っている。

 俺は、知らない人が来ませんようにと願いながらスタジオの隅でほこりのように縮こまっていた。

 数分後、風華が戻ってきた。驚くことにチアガール衣装を着ている。ポニーテール。手にはポンポン。

「じゃーん! どうですか?」

 黄色、青、白の三色で構成された服はコスプレ衣装丸出しだ。チープだがエロい。

「チアガールの衣装好きでしょう?」

 好きではあるが、同時に脳破壊のトラウマも思い出すので複雑な気持ちだ。前に話した淡い恋心を抱いていたチア部の子がサッカー部の男と付き合っていたというやつだ。思い出したら悲しくなってきた。誰か俺の脳に悲しき過去データ消去ボタンを付けてくれ。

「まぁ良いんじゃないか。で、今度はチアダンスの撮影か?」

「そゆこと。しっかり撮影してくださいねっ」

 喜色満面きしょくまんめんの笑顔を向けてくる。

 あまりのかわい……まぶしさに俺は目を逸らした。

「お、おう。じゃあ撮るぞ」

 誤魔化すようにスマホを構えて、リズミカルな曲を再生する。

 曲に合わせて踊り出す風華。足を頭に付くくらい上げて、太ももが露わになる。クッ、さすがにエロ過ぎる。何も考えるな俺。

「がんばれっ、がんばれっ!」

 風華が謎の応援をし始めた。そういうの聞くとエロ同人が頭に浮かんでさらに変な気持ちになる。俺よ、無になれ、無になるのだ。そう考えながらスタジオの天井の隅を眺める。

「どこ見てるんですか? 幽霊を見つけた猫のマネですか?」

「そんなホラー要素はない!」

 一旦、曲が止まる。すると、風華がしゃがんで足を前後に大開脚した。

「うお、すげぇな」

「そうでしょう? 柔軟は得意なんですよ」

 今度はそのままの姿勢で足を横にほぼ180度開いた。さらに上半身を床につけている。

「す、すげぇ」

 悔しいがエロい。くそぉ、煩悩ぼんのうが俺の脳をショッキングピンクに染めていくぅ。やめろ俺。コイツにエロスを感じるんじゃない。

 そして悶々もんもんとしたまま、休憩に入った。

 風華の汗を拭く無防備な仕草に少しドキリとした俺は水を飲んで誤魔化していた。

「ところで空雄さん。私と響さん、どっちが好きですか?」

 不意をついた質問に思わず水を吹き出しそうになる。

「……な、なんだよ急に」

「いいから答えてください」

 いつになく真剣な表情で見つめてくる。

 それはビッキーだろ、という当然の一言がなぜか引っかかって言えない。

 一応、彼氏だしな……。他の女の名前を言うのは良くない、と思う。

「……ふ、風華、かな」

「え? なんですかぁ? 聞こえませんねぇ?」

 ニヤニヤしている。絶対聞こえてるだろ。

「ビッキーだよ」

「この泥棒猫!」

 それ相手側に言うセリフだろ!

 で。

 それからすぐに撮影を再開。風華の揺れるポニーテール、胸、尻、脚に、時折り見えるお腹と脇。理性が崩壊しそうだった。

 これ以上この作業を続けていたら体が爆散しそうだ。と、思い始めたくらいにようやく撮影が終了した。た、助かった。

 片付けが終わってスタジオを出ると、すっかり夜になっていた。

「ご飯行きましょうか。もちろん私のおごりで」

「うん、行く!」

 人の金で食べる飯が好きな俺は無邪気な少年のように返事をした。

 予約をして着いた店は、個室付きの小洒落た居酒屋だ。誰かに見られるのはまずいので時間をずらして一人ずつ入店することにした。

 先に入っていた俺の元へ風華がやってくる。化粧直しをしていて綺麗だ。

「お待たせしました」

「いや、大丈夫だよ」

 風華が対面に座る。チアガールの残像が頭をよぎって、気まずくなった俺は彼女から視界を外すようにメニュー表に目を通した。

 注文が終わり、店員が運んできた美味そうなご飯を黙々と食べ始める。追加の注文をしようか考え始めた時、風華が話しかけてきた。

「今日は楽しかったですか?」

「疲れたよ」

「じゃあ今日はいやしてあげます」

 癒すって……俺は思わず風華の胸を見てしまった。85か……。おい、俺のバカ。セクハラで訴えられるぞ。

「い、癒すってなんだよ」

「そりゃあもうアレに決まってるじゃないですかぁ」

「…………」

「マッサージですよぉマッサージ」

「な、なんのだよ」

「とりあえず寝転がってください」

 なにこの展開。ここ怪しいお店だったの?

 とか考えつつ、言われるがまま座敷に寝転がる。

「仰向けじゃなくてうつ伏せです」

「あ、そ、そうだよな!」

 し、知ってたし!

 俺は慌てて、お好み焼きのようにくるん、とひっくり返ってうつ伏せになった。

「後ろは見ないでくださいね」

「は、はい」

 衣擦れの音が聞こえた後、腰の辺りに柔らかい質量を感じた。

 お、おい、これはまさか尻、なのか? ザ・ヒップ? ダメだ、何も考えるな俺。これはそう、桃だ。いや、それもダメだ。そうだ、ゴリラの胸筋ということにしよう。なぜかゴリラが俺の腰に胸筋を押し付けてきたんだ。そういうことにしておこう。

「うんしょ、うんしょ」

 風華が幼女みたいな甘い声を出しながら腰の上辺りを指で押している。

「あひぃ」

「変な声出さないでくださいよ。バレちゃいますよ?」

「う、うん、ごめん」

 マッサージが続く。素直に気持ちいいが、前後に動くゴリラの胸筋が気になって集中できない。

 そうだ心の中で歌おう。それがいい。あー、ゴリラの胸筋がぁー、前後に動いてぇー、ピンクに染まっていくぅーウホホのホー! そうやって自作のクソ歌で誤魔化し続けた。

 どれくらい時間が経っただろうか。間違いなく浦島太郎が竜宮城にいた時間ぐらいは経っているに違いない。きっとそうだ。

 ようやくマッサージの手が止まる。どうやら終わったらしい。

 すると、体から質量が消える。かと思ったら耳元に息が掛かり、風華が甘い声でささやく。

「気持ちよかったですか?」

 あひぃ。ムズムズする。コイツ本当に男と付き合ったことないのかよ。魔性の女すぎるだろ。

「う、うん、ありがとう、疲れ、取れた」

 代わりに頭と下半身が疲れたが。

 そして何事もなかったようにご飯が終わった。一緒に帰るとまずいのでここで解散だ。

「それじゃあ帰りますね。今日は付き合ってくれてありがとうございました!」

 頭を下げる時に胸の谷間が見える。クッ、今日は誘惑が多いな。

「うぎぎ、ま、またな」

「どうしたんですか? オイル差し忘れたロボットみたいな声出して」

「い、いや何でもない。男にはそういう時が来るんだよ……」

「?」

 その後、家に帰った俺は、怪しいチアガールの動画を見て何かをしたのは言うまでもない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

転生したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...